やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

19 / 215
てな訳でどうぞ


放置は大敵・2

無数の石棺が所狭しと並んでいる部屋にて。

 

 

「本当に、何でこんな事に……」

 

 

ブツクサと文句を言いながら、ウィリアムは作業をしながら数日前の出来事を思い出す―――

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

―――数日前の日が沈みかけた、フェジテの夕暮れにて。

ウィリアムはちょっとした小包を片手にアルフォネア邸の玄関前に佇んでいた。

小包の中にはとある銘柄のお酒とコップ一杯程度の小さな小瓶、コップ、『スルメ』と呼ばれるイカを乾燥させたつまみが入っている。

ウィリアムは玄関前の呼び鈴を鳴らし少し待っていると、玄関の扉がおもむろに開き、そこから明らかに不機嫌なセリカが現れた。

 

 

「一体、何のようだ?」

 

「……あー、そろそろ師匠の命日なんで、師匠が好きだったお酒を墓に供えてもらおうとファムにお願いに来て……余ったお酒は教授に飲んでもらえないかと……」

 

 

むすっとしたセリカに、ウィリアムは少したじろぎながら今回の来訪理由を話す。

 

 

「……そうか。もうそんな時期か」

 

 

理由を聞いたセリカは懐かしむような顔をする。セリカがユリウスと最後に飲んだのはグレンを引き取って数ヶ月経った時だ。

その時はユリウスのお気に入りの、コメを発酵させて作ったと言われるお酒とスルメをつまみに楽しく飲んだのは、セリカにとってもいい思い出だ。

 

 

「まぁ、ひとまず上がれよ。お茶も出してやる」

 

 

そうして、アルフォネア邸にウィリアムは上がり、必要な物を小箱に詰め、ファムに改めて頼んで翌朝、墓へと運んでくれる事となったが……

 

 

「それで……何で不機嫌だったんですか?」

 

 

余ったスルメをつまみながらお酒を飲むセリカに、ウィリアムは玄関前の不機嫌だった理由を訊く。

 

 

「……グレンが私をほったらかしにしているんだ。通信にも全く応じないし……」

 

「……そうですか」

 

 

あまりにもセリカらしい理由に、ウィリアムは当たり障りのない言葉で返す。下手にグレンを擁護したら矛先がこちらに向くからだ。

 

 

「だから、そんな薄情な息子をお仕置きする必要がある。せっかくだから、お前も手を貸せ」

 

「……え?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――そんな訳で。

ウィリアムはセリカの要望(脅し)によって今回のグレンへのお仕置きに強制参加する羽目となった。

 

 

「はぁ……何でこんな茶番劇に……」

 

 

文句を言いながらも、作業を終わらせたウィリアムは部屋を後にし、セリカ達がいる奥の部屋へと向かいながら各部屋の仕掛けの準備や確認をしていく。

その十数分後―――

 

 

『……棺だよな?』

 

『間違いなく棺ですね』

 

 

グレン達は例の部屋の入り口付近に到着していた。ちなみに、音声や映像は各所に設置された小型魔導器からセリカから渡された各種仕掛けも操作できる石板型の魔導演算器に随時送られてくるので、全く問題はない。

 

 

『ふっ……俺は―――生徒達(あいつら)のことを―――』

 

『早ッ!?諦めるの早すぎでしょッ!?』

 

『だって、こんなヤバいものが出てきそうな場所に踏み込むなんて絶対無理だって!』

 

『魔術師が、し、死霊とか怖がるなんて、恥ずかしいと思わないんですか!?』

 

『そういうのは、滅茶苦茶ガクブルしてる膝を隠してから言えよ!?』

 

 

何とも情けない争いをしているグレンとシスティーナを他所に……

 

ぎぃ……かりかり……かりかり……

 

ぎぃ……ばたん。

 

 

『うーん……』

 

 

リィエルは棺の中に生えている『黄金苔』を採集しており、ルミアは棺の中を確認していた。

ルミアの所業に気づいたグレンとシスティーナは大慌てでルミアを取り押さえ、顔を真っ青にして喚き立てるのを見たウィリアムは、こちらの声が怨嗟の声に変換拡声する機能を使って仕掛けた。

 

 

「己·····我らの寝所を荒らす不敬者共よ········汝等に災い在れ·······」

 

 

映像から見事にビビり始めたグレンとシスティーナに追い討ちをかけるように、魔導演算器を操作し、複数人が発する音声機能も使って告げる。

 

 

「災い在れ…………汝等に災い在れぇえええええええッ!」

 

 

ガタガタガタガタガタガタッ!!

 

 

『『ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいーーッ!?』』

 

 

向こうでは無数で響き渡る怨嗟の声と無数の石棺の蓋が同時に揺れ動いた事に、グレンとシスティーナが仲良く抱き合って情けない悲鳴を上げる。

 

 

「ぷっ……くくく……」

 

 

その映像と情けない悲鳴に、ウィリアムは手元の魔導演算器を顔から遠ざけて必死に笑い声を抑える。

なんだかんだでウィリアムもノリノリであった。

 

 

『どうする!?このままじゃ()()()が……ッ!?』

 

()()()が……祟り殺されちゃう……どうしたら……ッ!?』

 

 

失礼な事をしたのはルミアだけではないので、ウィリアムは笑いを堪えながらはっきりと告げる。

 

 

「言っておくが、()()()()だからな……?我等の眠りを妨げただけでなく、我等の寝床を粗末に扱い、我等と、我等の寝床を、散々愚弄したのだからな……ッ!」

 

『『デスヨネ、すみませんでしたぁあああああああああああああーーッ!?』』

 

『い、いくら欲しいんだ!?金ならセリカが払うから―――』

 

『ごめんなさいお祖父様!祟り殺される不甲斐ない私を許してぇえええええええーーっ!?』

 

 

完全にパニックになっているグレンとシスティーナ。そんな二人の姿にウィリアムは―――

 

 

「くくっ……やばい……本当に笑える……ッ」

 

 

必死に笑い声を抑えていた。

そんな中、ルミアが真摯訴えかけて赦しを乞うのだが……

 

かりかり……かりかり……

 

リィエルが未だに『黄金苔』を棺の中から採集しているので説得力がなかった。なので指摘する事にする。

 

 

「なら、今も尚、我等の寝床を粗末に扱っている、その娘の蛮行をどう説明するつもりだ……?」

 

『『え……?』』

 

 

その指摘でグレン達は漸くリィエルの行動に気付き、グレンとシスティーナは顔を再び青ざめさせる。

 

 

『リィエルお前ッ!?マジでなにやってくれちゃってんのぉおおおおおおおおおーーッ!?』

 

『こけ、集めてた』

 

『ごめんなさいごめんなさい!本ッ当にごめんなさぁあああああああああああああいッ!?』

 

『本当にごめんなさい、皆さん。リィエルの行動も私の責任です。先ほど申した通り、そのお怒りは私に向けて下さい』

 

『……ナラ、謝罪シロ。貴様等全員、身体ゴト頭ヲ垂レ、我等ヲ敬ウナラ、特別ニ赦シテヤル』

 

 

ウィリアムではなく、同型の魔導演算器を持つ、最奥の部屋にいるセリカの言葉に―――

 

 

『『誠に申し訳ありませんでしたぁあああああああああああああーーッ!!』』

 

『本当に、申し訳ありませんでした』

 

『……グレン、痛い』

 

 

グレンとシスティーナは神速と思える程の素早い動作で土下座し、ルミアも丁寧に土下座し、リィエルはグレンに頭を掴まれて強引に土下座させられた。

そこから静寂がグレン達がいる部屋を支配し、少しして、グレンとシスティーナはびくびくしながら顔を上げ、ルミアも顔を上げ、聖印を切って祈りを捧げる。

 

 

『……ふふっ、よかった。ちゃんと赦してもらえて』

 

『……ああ、全くだ』

 

『本当によかった……もし、赦してくれなかったら、一体どうなっていたことか……』

 

『その時は浄化(ほろぼ)しますよ、彼らを』

 

 

穏やかな笑顔で、あっさりとルミアはグレン達にそう返す。

その事に絶句するグレンとシスティーナを流し見て、ウィリアムは手元の石板を操作し、棺の蓋を再び揺り動かす。

 

ガタッ!

 

 

『『ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいーーッ!?』』

 

 

グレンとシスティーナは再びビビり、ルミアとリィエルを連れて大急ぎで部屋を後にしていった。

 

 

『あっ、こけ……』

 

『あれはもう置いとけぇえええええええええええええーーッ!?』

 

「ぷぷっ……」

 

 

……リィエルだけはいつも通りであり、ウィリアムは再び笑いを堪えるのであった。

 

 

 




今回は仕掛ける側となったオリ主であった····
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。