てな訳でどうぞ
修羅場によって重苦しい空気のまま終わった交流歓迎会の翌日。
ウィリアムはルミアとリィエル、オーヴァイと一緒となってグレンの補佐として、『魔力測定』を行う会場へと向かっていた。
「…………」
「先生、大丈夫ですか?どこか顔色が悪いような……」
「……大丈夫だ」
相変わらず顔色が良くないグレンをルミアが心配するも、グレンはどこか感情を押し殺したように返すだけだ。
(本当にどうしたんだよ、先公……)
ウィリアムはそんなグレンの様子に疑問を感じつつも、何を言う訳でもなく付いていく。……苺タルトを栗鼠のようにモグモグと食べているエルを肩車した状態で。
やがて、試験を行う魔術競技場の姿が視界一杯に迫ってきた……その時。
ざっ!
「ふん。君を待っていた」
どこか陰鬱なダウナー系の雰囲気だが、情熱が奥底で燻るように燃えている男―――学院の魔導考古学教授であり、タイプは違うがツェスト男爵やオーウェル、チャールズ並みの変態、フォーゼル=ルフォイが立ちはだかった。
ちなみに、フォーゼルはシスティーナと同類の人間である。
「君がグレンだな?話は聞いたぞ、僕に付いて来るんだ」
フォーゼルはそう言ってグレンの胸ぐらを、不作法にひっ掴み―――
「そぉおおおおおいいいいっ!」
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーッ!?」
間髪入れず、グレンは全く躊躇わずにフォーゼルを投げ飛ばした。
「ほら……行くぞ」
投げ飛ばされて気絶したフォーゼルを放置して、ウィリアム達はグレンに続いて会場へと辿り着く。
そして、代表候補達の魔力測定を行うのだが……
《
《
「な……」
その内の一人―――金髪を三つ編みに纏めたクライトス校の女子生徒の測定結果に誰もが絶句していた。
その女子生徒―――エレン=クライトスが出した結果に、他のクライトス校の生徒達は本当に信じられないといった表情だ。
彼らの話を聞く限りでは、一月前の測定で出たエレンの数値は、
「凄い努力をしたのよ……文字通り、“地獄”のね……」
背筋が凍る凄絶な笑みで、エレンは動揺している周りにそう答える。
確かに
「システィーナ……
エレンは憎悪と憤怒の感情と、積年の恨み辛みが燃えるような
その後ろ姿を―――
「…………」
グレンは苦虫を噛み潰した表情で見つめていた……
――――――――――――――――――――――――
その日の深夜の職員室。
「『すぅ……すぅ……』」
「全く……まぁ、仕方ないか……」
グレンの手伝いをしていて、途中でぐっすりと眠ってしまったリィエルとエルに、ウィリアムは呆れながらも微笑ましげな笑顔を向ける。
「先生……この問題だけ、もの凄く難しくないですか?」
グレンに紅茶を注いでいたルミアが、明日のテストの問題用紙を見て、苦笑いしながら問いかける。
「ああ……その問題だけは俺でもさっぱりだ。魔導演算器でランダムに選出され、もう色々準備しちまったから変えられん」
「そ、そうなんだ……」
どこか投げやり気味にグレンはそう返し、ルミアは苦笑いしたまま受け止める。
ウィリアムは普段なら流すところではあったが、どうも様子がおかしく感じるグレンを前にどうも気になってしまい、グレンとルミアの下へと近寄っていく。
「……こりゃ、確かに解けんわ」
ルミアの横からテストの問題用紙を覗きこんだウィリアムは、
「そうだな……
グレンはそう言って書類を整理していき、ウィリアム達は揃って帰路につくのであった。
――――――――――――――――――――――――
そして―――次の日の座学試験。
午前中を目一杯使った座学試験が終わった昼休みの学生食堂にて。
「……えーと、この配置は?」
「『?』」
「平等に考えた結果です」
「うん。平等に考えた結果だよ」
ウィリアムは右隣にリィエル、左隣にエルザ、対面にオーヴァイ、膝の上にエルという配置で一つのテーブルを陣取っていた。
スペース的にはまだ空いているが、そのテーブルには誰も近寄らない。というか、近寄れない。近づいた瞬間、龍と狼の幻影が威嚇するからである。もちろん、龍と狼の背後には巨大子犬もいる。
ちなみに、カッシュが血涙流して近づこうとした瞬間、龍と狼が吼え、背後の鼠が吹き飛ぶと同時に踵を返したのは言うまでもない。
つまり、近寄るな、危険!!である。
「ほら、あーん」
『あーん』
そこら辺の思考を放棄したウィリアムは切り分けたミートパイをエルの口に運んで食べさせていく。それを見たエルザとオーヴァイは無言で頷きあい……
「ウィルさん、忙しそうですね。なので私達が食べさせてあげます」
「ええ。遠慮せずご厚意を受け取ってください、ウィリアム先輩」
にこやかな笑顔で、ウィリアムにそう提案していた。
「……?よくわかんないけど、わたしもウィルに食べさせる」
さらに、リィエルもよくわかっていないにも関わらずに名乗りを上げる。
その後は……エルザとオーヴァイが惚けた笑顔で食事していたことで察するべしだろう。
そして、昼休みが終わると同時に発表された座学試験の結果は―――
……
システィーナ=フィーベル 950点 二位
……
エレン=クライトス 1000点 一位
「…………は?」
何故なら、この数字だけは絶対にあり得ないからだ。
「……悪い、ちょっと行ってくる」
「?ウィル?」
『?おとーさん?』
ウィリアムはよく理解していないリィエルとエルにそう言ってその場を離れ、エレンを探し始める。
少しして、廊下を歩くエレンを見つけたのでウィリアムはすぐに声をかけた。
「おい!」
「え?……ッ!?貴方は確か……」
「ウィリアム=アイゼンだ。こうして話すのは初めてだな、エレンさん……なあ、エレンさんよ。今日のテストの二十問目……あれ、どうやって解いた?」
「……実力で解いたんですよ。凄く勉強して」
「へー、実力かぁ。だとしたら凄いな、お前。
「!?」
ウィリアムのその言葉に、エレンは驚愕に目を見開く。
「実はその問題、昔一度見て知っているんだよ。俺の師匠がアルフォネア教授と友人だったからな。教授がからかい目的で師匠に渡してやらしてからかって、その師匠が更に、俺をからかう為に渡してやらせたんだよ。だから、昨日、問題用紙を見てその問題だとすぐに気づいた。当時はそんな解けない
「…………」
「正直、めんどくせぇがあんたを無視する訳にはいかねぇ。この事は、この三日間、どこか様子がおかしかったグレンの先公に話させてもらうぜ?」
「……私が不正をしたと?証拠はあるんですか?」
「ねぇよ。証拠は何処にもない。だけど、急成長のトリックも存在しない。人の急成長には他の人とは違う何かが存在する。優秀な師だったり、一点だけを集中的に鍛えたりな……それすらないから怪しいんだよ」
「…………」
「お前は絶対に何かを隠している。悪いがそれをはっきりさせてもらう。それが不正のものじゃないなら掲示しても大丈夫だろ?」
すると。
「……
「……何だと?」
エレンの意味不明な言葉に、ウィリアムは一瞬目を見開くが、すぐに目付きを鋭くさせる。
「一応、善意で伝えておきます、ウィリアム君。グレン先生共々、私に関わらないでください……お願いします」
「……断る。どうやらお前には、色々と聞く必要があるからな」
ウィリアムが険しい表情で決然と告げ、エレンに近寄って、肩を掴む。
同時に風が廊下を駆け抜け―――
ぼんっ!
そんな音とともに、ウィリアムの身体に凄まじい衝撃が襲い、自身の胸に大穴が出来上がった。
「……は?」
ウィリアムの口の端から血が伝っていき、そのまま床に背を向けて倒れこむ。
「本当に……グレン先生のように勘が鋭いんですね。私、貴方のことも嫌いです」
どこか諦観と倦怠を滲ませたエレンの言葉に、ウィリアムは鉛のように重くなった頭を必死に上げると、エレンの背後に奇妙な異形が立っていた。
その奇妙な異形は、身体の半分が歯車やゼンマイ、ネジにバネ等の部品によって機械化され、全身が拷問拘束具で拘束され、その拘束具も虚空から伸びる無数の鎖で繋がっており、目隠しと猿轡までされた、背中に羽を生やした少女だった。
「そいつ……は……一体……ッ?」
「
(
「ウィリアムッ!?」
意識が暗く、沈んでいく中、グレンの焦燥の声が聞こえてくる。
「ウィリアムッ!しっかりしろ、ウィリアムッ!!」
「グレン先生……
「くそ……くそ……くそぉッ!!」
グレンの悲痛な叫びとエレンの意味不明な声が聞こえてくるが……最早、どうでもよかった。
(……本当に……俺は……死ぬのか?)
今までにない死の実感を前に、ウィリアムの心と魂が押し潰されていく。
そんなウィリアムの脳裏に、イルシアにシオン、ユリウス、グレン、アルベルト、イヴ、システィーナにルミア、セリカ、オーヴァイにエルザ、エル……今まで出会った人達が次々と現れて浮かんでいき……
最後に―――淡青髪の少女がウィリアムに薄く微笑んで。
(ごめ……ん……な……)
それを最後に、ウィリアムの意識は永遠の闇の中に消えていった―――
――――――。
「共同戦線をはりましょう」
「わかりました」
二日目の放課後、学院の裏庭で『三人にさせない同盟』を結んだエルザとオーヴァイの図。
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