やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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筆がよく進む
てな訳でどうぞ


百四十四話

――――――。

 

 

「―――ウィル」

 

「……んお?」

 

 

肩を揺すられたウィリアムは意識を今へと戻し、肩を揺すっていたリィエルに顔を向ける。

 

 

「ぼーっとしてたけど大丈夫?」

 

「……あー、大丈夫だ。ちょっと変なもんが見えただけだから。白昼夢を見るとか疲れてんのかな」

 

 

()()()()()()()()()()()ウィリアムは目をほぐした後、グレンに向かってぎゃんぎゃん吼えるシスティーナ、そんなシスティーナを諌めるルミア、他のクラスメイトに、ウィリアムを見てどこか安堵しているようなグレンを見やる。

 

 

「グレン、かわいそう」

 

『グレンおにーちゃん、だいじょーぶ?』

 

 

リィエルがぼそりと零し、特注の制服に身を包んだエルも心配げに呟く。

 

 

「にしても、先公の顔色が悪いよな……」

 

 

十日間の疲れか、これからのことでか、寝ていた割には顔色が悪いグレンの様子にウィリアムは訝しむも……

 

 

「まぁ、とりあえず頑張れ」

 

 

一応の激励を送るのであった―――

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――そして、修羅場によって重苦しい雰囲気のまま交流歓迎会が終わり、宴の片付けも終わった深夜。

 

 

「本当に胃が痛かった……」

 

 

ウィリアムはお腹に手を当てながら、夜のフェジテの街中を歩いていた。

 

 

「そう?わたしはエルザに会えて、よかった」

 

「そ、そうね、良かったわね、リィエル。……見ていてすごく怖かったけど」

 

「?なんで?」

 

「あはは……あれは確かにすごかったね……あれが本当の修羅場なんだね……」

 

「?」

 

『すぅ……』

 

 

そんなウィリアムのすぐ近くにはシスティーナとルミア、すっかり眠っているエルを抱き上げているリィエルが並んで歩いている。グレンは用事が残っているといってまだ学院にとどまっていてこの場にはいない。

そんな最中で。

 

 

(しかし……交流会の時、クライトス魔術学院の学院長といたあの女子生徒……時々、こっちに鋭い視線を送っていたよな……)

 

 

誰もがあの修羅場を視界から外す中、金髪を三つ編みで纏めた女子生徒だけは鋭い視線を送っている事にウィリアムは気づいていた。

 

 

(それに、グレンの先公の様子もおかしかったし……本当に何なんだよ……)

 

 

どうもすっきりしない気分で、ウィリアムはそんな気分を払うように周りを見渡しながら歩いていると―――

 

 

「―――は?」

 

 

路地の奥に背中に異形の翼を生やした少女―――ナムルスがいた。ただし、見た目は普段のはっきりとした霊体ではなく、淡く青白く発光する半透明だ。

 

 

「?ウィル、急にどうしたの?」

 

「いや、あの路地にあり得ないもんが……」

 

 

ウィリアムのその言葉に、三人娘はナムルスが佇んでいる路地に視線を向けるも―――

 

 

「?何もないけど?」

 

「一体どこにあり得ないものがあるのよ、ウィリアム?」

 

(ナムルスの姿が見えていない?一体どういうことだよ!?)

 

 

嘘を言っているようには見えない彼女達にウィリアムは混乱しかけるも、改めてナムルスがいる筈の路地の奥に視線を向ける。

改めて視線を向けると、やはりそこに佇んでいたナムルスは人差し指を立てて口元に当てた後、人差し指をくいくいと自分の方へ傾ける仕草をしていた。

 

 

(……黙ってついてこい?)

 

 

ナムルスのジェスチャーにウィリアムは微かに小首を傾げると、ナムルスはくるりと背を向け、さらに路地の奥へゆっくり移動を開始していく。

よくわからないが、ナムルスはウィリアムだけに用があるみたいだ。

 

 

「…………」

 

「どうしたのよウィリアム?急に黙りこんで……」

 

「あー……悪い。どうやら見間違いだったみたいだ」

 

「何よそれ、しっかりしなさいよね!」

 

「あはは……」

 

「悪かったよ……げっ!?」

 

「今度は何!?」

 

「学院に忘れもんがあった!!今からそれを取りに戻ってくから、お前らは先に帰っててくれ!!」

 

「あ、ちょっ!?」

 

 

ウィリアムは小芝居をうってリィエル達から離れ、ナムルスの後を追うのであった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

複雑に入り組んだ路地裏を駆け抜けた、小さな広場にて。

 

 

『遅いわよ、ウィリアム……前と違って時間がないんだから早くしなさいよね』

 

「会って早々文句かよ……それで、俺に何のようがあるんだよ?ナムルス」

 

 

その中央で待っていたナムルスの意味不明な辛辣な言葉に、ウィリアムはうんざりしながらも息を整え、ナムルスに歩み寄る。

 

 

『……やっぱりね。一度は切れていたけど、一応私と“縁”がある貴方が殺された時、グレン同様に“見えなかった”からもしやと思ったけど……思った通り、回線が一時的に繋がったわ』

 

「いきなり何わかんねぇこと言ってんだよ?そもそも、お前は遺跡にしか姿を現せない筈じゃないのか?」

 

『悪いけど、貴方の質問に答えてる暇はないの。だから必要なことだけ伝えるわ』

 

 

相変わらず意味不明なことを口にするナムルスは、どこかうんざりしたような仕草で、言った。

 

 

『5051回』

 

「……は?」

 

『5051回よ。この一週間を繰り返(ループ)した回数。六回前にようやく接触できたグレンと同じ反応をしないで』

 

「…………」

 

 

ナムルスの呆れたように告げた言葉に、ウィリアムは言葉を失った。

 

 

「……えーと、よくわからんが、今日から一週間後を、俺達はその5051回?繰り返していると?あの俺が殺される夢は実際に起きていたと?」

 

『そうよ。グレンと違って理解しようとしてくれて助かるわ……正直、グレンと接触した時より時間がないから、グレンと同じ方法で貴方の記憶を蘇らせる。その後はグレンから聞きなさい』

 

「ちょっ、おい―――」

 

 

ナムルスは取り合わずに半透明の指をウィリアムの額につけ―――

 

ばちり!

 

次の瞬間、ウィリアムの脳内に稲妻のような衝撃が走り、走馬灯のように記憶が蘇る。

―――閉ざされた一週間の記憶が。

 

 

「な―――」

 

 

最初の数回のループは、ほとんど同じ展開。

リィエルに肩を揺すられ意識を今へ戻すところから始まり(A)、メイン・ウィザードにシスティーナの名前が発表され、その瞬間、全てが暗転して終わる(Ω)

そして―――

 

 

―――ウィル。

 

―――……んお?

 

 

―――初日の繰り返しの始まり(A)へと戻る。

だが、七回前からの繰り返しは違っていた。

七回前の座学試験で、このループの中で唯一変化があるエレンが満点を叩き出し、その放課後の屋上で―――グレンが胸に大きな穴を空けて血だまりに沈んで死んでいたのだ。誰もがグレンの死に動揺し、泣き叫ぶ中、そこで終わり(Ω)始まり(A)へと戻った。

六回前はグレンが帰り道でナムルスがいたと叫んだ翌日、グレンがエレンに接触した瞬間、グレンの胸に大きな穴を空けて倒れ、その場にいたエレン以外が阿鼻叫喚に包まれる中、そこで終わった(Ω)

五回から二回前も同様に、初日、二日でグレンがエレンに接触した瞬間に死んで終わり(Ω)始まり(A)へと戻っていく。

だが、前回のループで死んだのはグレンではなく―――ウィリアムだ。

座学試験の前日、グレンの様子がおかしかったから、ウィリアムは今までの繰り返しで無視していた問題用紙に初めて目を向け、セリカが作った絶対に解けない問題を見て満点は絶対にないと確信した。

だが、エレンはその座学試験で満点を叩き出した為、ウィリアムはエレンに接触し探ろうとした。

その結果―――ウィリアムはエレンの背後にいつの間にかいた異形の存在に、おそらくグレンと同じ手段で殺されたのだ。

そこでウィリアムの視点で前回のループは終わり(Ω)始まり(A)へと戻った。

 

 

「ぅ……ぉおええぇ……ッ!?」

 

 

全ての記憶を思い出した訳ではないが、あの時の死の感触も思い出したウィリアムは口元を押さえて蹲った。

 

 

『……ちゃんと思い出してくれたようね。後はグレンから―――』

 

 

いつの間にか蜃気楼のように揺らめいていたナムルスは最後にそう言い残して―――完全に消滅した。

 

 

「まじでどうなっているんだよ……ッ!?最後までちゃんと説明してから消えろよ……ッ!」

 

 

一方的にしか教えなかったナムルスに悪態を吐きつつも、ウィリアムは何とか気持ちを整え立ち上がる。

 

 

「とにかく、今は先公に会って話を聞くしかないか……幸い、学院に忘れもんをしたと嘘をついて別れたから、多少時間がかかっても大丈夫の筈だ」

 

 

ウィリアムはそう呟いて、まだグレンがいる筈の学院に向かうのであった。

 

 

 




キリがいいのでここで切ります
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