やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


放置は大敵・3

全ての部屋の仕掛け等の確認と準備を終えたウィリアムは、セリカ達がいる最深部の部屋に到着した。

 

 

「一応、仕掛けを含めたもん全てを終わらせてきたぞ教授」

 

『今ノ我ハ《狂王》ダゾ、ウィリアム』

 

「ハイハイ、そうでしたね」

 

 

セリカの指摘にウィリアムは投げやりに応答し、部屋の奥にある牢屋の中にいるクラスメイトの方へと歩んでいく。

 

 

「はぁ……とんだ災難ですわ……」

 

「ウィリアムぅ……何で止めなかったんだよ……」

 

「知っているなら、何とかしてほしかったね」

 

 

カッシュとギイブルがウィリアムに文句を言うも……

 

 

「俺に拗ねた教授を止められると?」

 

 

ウィリアムは至極全うな疑問で反論した。

 

 

「……無理、だな……」

 

「……すまない……」

 

「気にすんな……」

 

 

カッシュとギイブルは気まずそうに謝り、ウィリアムは疲れ気味返す。

ウィリアムはそのまま牢屋の中に入ろうとするも―――

 

 

『ウィリアム。オ前ニハマダ手ヲ貸シテモラウゾ?』

 

「……は?」

 

 

セリカがそれを引き留めた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

『何デコンナ格好ヲ……』

 

『中々似合ッテイルゾ、ウィリアム』

 

『ホント、気ガ重イ……ヤッパリヤリタクナ―――』

 

『ヤラナイト、異次元空間ニ追放スルゾ♪』

 

『ココマデキタラ、最後マデヤルカナァ』

 

 

セリカと同様の姿となったウィリアムはあっさりと要望(脅し)に屈した。

ちなみに牢屋組は―――

 

 

「憎い……憎い……」

 

「ここで音を鳴らして……っと」

 

「グレン先生とシスティーナ、スッゲェビビっているなぁ」

 

「さらに落とし穴を起動して……」

 

「ルミアが落ちたけど、胸でつっかえて助かるというオチ……グッジョブッ!!」

 

「リィエルちゃんが古典的な罠にかかって檻の中に……」

 

「起動できる罠は……睡眠、痒み、幻覚、感電、発情……悩むなぁ……ハァハァ……」

 

「ルーゼルゥッ!?悩んでないで早く決めろよ!?」

 

「そうこうしている内にグレン先生が檻を壊して救出しちまったじゃねぇか!!」

 

 

魔導演算器を使って各種仕掛けを起動したりして暇潰しに遊んでいた。

そうとは知らないグレン一行は数々の仕掛けや障害に苦しみながら進んでいく。

 

 

『頼むから同時に押してくれよッ!?人骨が降ってきたり、首なし騎士が襲いかかるとか、もう沢山だ!!』

 

『わかってますよ!一、二の三で押しますよ!?』

 

『『一、二の三!!』』

 

『また失敗かよ!?次は一体なんだ!?』

 

『今度はゾンビぃいいいいいいいいいいい―――ッ!?』

 

 

―――そんなこんなで。

数々の仕掛けに苦しみながらグレン達は一番奥の部屋の扉の前に辿り着いたので、セリカとウィリアムは祭壇に立って待ち構える。

そして、グレンが扉を開き、システィーナ達もそれに続いていく。

 

 

『ヨク此処マデ来タナ……』

 

「へっ……来てやったぜ《狂王》……ッ!覚悟は出来ているだろうな!?」

 

 

牢屋の中に入る生徒達の姿を視界に収めたグレンは、激情のままにセリカとウィリアムを睨み付ける。

 

 

『我ガ直々ニ相手ヲスル前ニ、我ノ腹心タル《邪臣》ヲ倒シテミセルガイイ……ッ!』

 

 

セリカの言葉に、ウィリアムは渋々といった気分でセリカの前に立ち、グレン達と対峙する。

 

 

「そうかよ……いくぜ、《邪臣》―――ッ!」

 

『……』

 

「うぉおおおおおおおおおーーッ!!」

 

 

グレンは雄叫びと共に突進しながら、愚者のアルカナを引き抜く。だが、悲しい事にその愚者のアルカナはセリカがすり替えた偽物。つまり、切り札の【愚者の世界】は展開されていないのである。

なので普通に魔術を使えるのだが、セリカから強者オーラを出せという要望(脅し)から固有魔術(オリジナル)を利用した攻撃で仕掛ける事にする。

 

パチンッ

 

ウィリアムが指を鳴らすと、グレンの正面に爆炎と爆風が巻き上がった。

 

 

「何ぃっ!?」

 

 

グレンは辛うじて踏みとどまった事で爆炎に呑まれずに済んだが、その顔は信じられないといった表情である。

この攻撃は【詐欺師の工房】で錬成した酸素や目に見えない粉塵を、火打石を錬金術を応用して手袋に加工したものを火種として放ったものである。

速効性と隠密性に優れてはいるが、誤爆のリスク、領域内限定、本当の意味での無差別攻撃、即興改変で他者を巻き込まずに済む【ブレイズ・バースト】に威力も大きく劣る為、没案となった攻撃手段だ。

 

 

「な、なんで……ッ!?どうして……ッ!?」

 

「なんで魔術が使えるんだよ……ッ!?しかも、呪文を唱えずに……ッ!?」

 

 

だが、そんな事など露も知らないグレンとシスティーナは魔術が使える事に戦慄の表情を向ける。

 

 

『クク……《貴様達ニ・更ナル絶望ヲ・刻ンデヤロウ》……ッ!』

 

 

そんなグレン達に追い討ちをかけるように、セリカは呪文を唱え、お仕置き魔術の特大火炎を頭上に掲げた。

 

 

「そんなッ!?《狂王》までッ!?」

 

「くそ……ッ!?それでも、俺は―――ッ!!」

 

『サァッ!イサギヨク、逝クガイイッ!!』

 

 

セリカの宣言と共に、お仕置き魔術が脂汗を流すグレンに迫っていく。

グレンは迫ってくる特大火炎を避けようと、右に飛んで避けようとするも―――

 

 

「―――うごっ!?」

 

 

ウィリアムがこっそり錬成した粘着性の足場に足を取られ、ものの見事にずっこける。

そのまま特大火炎はグレンに迫り―――

 

ちゅどぉおおおおおおおおおおおんッ!!!

 

 

「ぎゃああああああああああああああーーっ!?」

 

 

着弾。爆発。壮絶なる爆発音とグレンの断末魔の叫びが辺りに反響した。

 

 

「せ、先せぇええええええええぇぇぇぇぇぃ……?」

 

 

システィーナの悲痛な叫びが響き渡るも、爆発のわりに衝撃がこちらにほとんど来ていない事と、爆発が収まった先のグレンは全身真っ黒焦げになりながらもピクピクと痙攣し、しっかりと生きているので尻すぼみとなっていく。

 

 

『イヤァー、スッキリシタッ!』

 

 

セリカは上機嫌でそう言い、変身を解除してその姿を現していく。

正体を現したセリカにシスティーナとルミアは驚きを露にする。

 

 

「あ、アルフォネア教授ッ!?」

 

「まさか、教授が全部仕組んだのですか?」

 

「その通りだ!【イクスティンクション・レイ】を利用して洞窟を掘り、ウィリアムに内装を整えさせ、オーウェルに融通してもらった仕掛けや小道具を各所に設置して新たな探索領域を作ったのさ!愚者のアルカナもこっそり偽物にすり替えもした!」

 

 

清々しいまでのセリカのネタばらしに、システィーナは激しく脱力しながら訊いた。

 

 

「……ひょっとして、この設定はライツ=ニッヒ著作の小説『狂王の試練』を……」

 

「ああ!」

 

「じゃあ、そこの《邪臣》は……」

 

 

システィーナに懐疑の目を向けられたウィリアムは嘆息とともに変身を解き、姿を現す。

 

 

「やっぱりウィリアムだったのね……」

 

「そうだ。教授に少し用があって家に訪れたら見事に巻き込まれた」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

「ちなみに、最初の部屋の声は俺がリアルタイムで流した声だ。謝罪要求の声は教授だが」

 

「ルミア放してッ!こいつを殴れないッ!!」

 

「お、落ち着いてシスティ」

 

 

怒りを露に暴れるシスティーナを、ルミアが後ろから押さえていると―――

 

ビュゴォオオオオオオオオッ!!!

 

剛速剣の一閃がウィリアムに襲いかかった。

 

 

「うおわッ!?」

 

 

ウィリアムは辛うじて避けるも剣圧に煽られ、地面をゴロゴロと転がっていく。

 

 

「いきなり何すんだ、リィエルッ!?」

 

「……」

 

 

ウィリアムの文句に答えず、仕掛人のリィエルはいつも以上の無表情で錬成した大剣を構え直す。

―――巨大骸骨騎士型の魔導人形を粉々にした時に見せた、奇妙な威圧感と迫力を背負って。

 

 

「……ひょっとして、怒っているのか?」

 

「……斬る」

 

 

脂汗を流しながら問い質したウィリアムに答えず、リィエルはそれだけ言って再び斬りかかっていく。

床を、壁を、剛速剣で爆砕させながら、リィエルはウィリアムに襲いかかっていく。

 

 

「悪かった!苺タルトを好きなだけ奢るから許してくれ!!」

 

 

いつも通りではあったが、実際は不安で心配させていた事に気づいたウィリアムは謝罪と共にリィエルに許しを請うも―――

 

 

「やぁあああああああああ―――ッ!!!」

 

 

リィエルは全く止まらずに剣を振り回し続ける。

リィエルにとって、ウィリアムは一番の『拠り所』でもある為、こうなるのはある意味当然の結果である。

 

 

「だったら、今度お前のお願いを一回だけ聞いてやるから!頼むから許してくれ!!」

 

 

その言葉に、リィエルはピタリッと動きを止める。

 

 

「……ホントに?」

 

「ホントホント」

 

「……じゃあ、許す」

 

 

リィエルはそう言って、大剣を魔力の粒子に霧散させて消していき、ウィリアムは脱力して盛大に息を吐くのであった。

 

 

 

―――後日。

目覚めたグレンは再びセリカを怒らせてしまい、放置したお詫びにフィーベル家御用達の超高級料理店で食事をする羽目となり、ウィリアムはリィエルのお願いで今度の週末の休日は二人きりで遊び回る事となった。

勿論、出費は言わずもがなであり、『夜、背後から刺すべき男リスト』に載っているウィリアムの優先順位が上がったのは言うまでもない。

 

 

 




指パチもロマン
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