やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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オリジナルのお話。これもやっぱりやってみたかった
てな訳でどうぞ


幕間五・人生双六で息抜き
百五十二話


―――本当の選抜会の三日目。

選抜会の座学試験の発表も無事に終わり、明日から総当たり魔術決闘戦に備え、午後の授業が休講となった放課後にて。

 

 

「せっかくなので、この双六でもやりませんか?中々変わっていて楽しいですよ。上がりで競うのではなく、持ち前の資産で競う双六です」

 

 

聖リリィ魔術女学院組も含めた二組の面々に向かってオーヴァイがそう言い、大きめの箱から取り出したのは、ルーレット等が取り付けられた盤面―――繰り返しで何度も見た、オーウェルお手製『人生双六』というタイトルの双六だ。

 

 

「……見た目からして、すごく怪しいんだけど」

 

「これは何処から持ってきたの?」

 

 

前回の『恐怖のサマービーチ』や最悪のソフトの件から、システィーナはジト目に、ルミアは困ったような笑顔でこの双六の出所を聞く。

 

 

「お察しの通り、シュウザー教授の発明品です。ですが安心してください。これは教授が本当に暇潰しに作ったもので、一度試しに遊んで、安全は確認してますので」

 

「よく無事でいられるな……」

 

 

毎回進んで生贄になるオーヴァイに、ウィリアム以外のアルザーノ組は本当に何とも言えない気分になる。

 

 

「なあ、そのシュウザー教授ってのは誰なんだ?」

 

「係わってはいけない人物トップ3に入っている人物よ」

 

 

コレットの質問に、システィーナが切り捨て気味に答える。

ちなみに、オーウェル、ツェスト男爵、チャールズが不動の同率一位、四位はフォーゼルである。……あくまで生徒間ではだが。

 

 

「その双六はどうやって遊ぶのですか?」

 

「先程も言った通り、上がり順ではなく、最終的な手持ちの資金で競い合うゲームです。最初に職業を選んでからマスを進んで、様々なイベントをこなしながらゴールを目指します」

 

 

ウィリアムは繰り返しでこれの安全性は知っており、()()以外は問題ないことは知っているので、その辺りは聞き流している。

 

 

「どんな職業があるんだ?」

 

「職業は教師、考古学者、小説家、鍛冶師、軍人、研究員、料理人等、色々ありますよー。どうですか?」

 

 

オーヴァイが一同を見回して確認すると。

 

 

「面白そうだからやってみようぜ!!」

 

「ええ!息抜きには丁度いいですわ!」

 

「安全なら一回やってみるか!」

 

「ふん、下らないな。そんな暇があるくらいなら……」

 

「でも、根を詰めすぎても良くないから、気分転換にやってみたら?」

 

「そうね。息抜きには丁度いいわね。エレンもどう?」

 

「どうしようかな……」

 

「わたしもやる。ウィルとエルは?」

 

「……せっかくだし、やるか」

 

『エルもやる!』

 

「私も……やってみようかな」

 

 

そんな訳で。

ウィリアムは鍛冶師、リィエルはパティシエ、エルは小説家、オーヴァイは料理人。

システィーナは考古学者、ルミアは医師。

カッシュは農家、ウェンディはプロダンサー、セシルは研究員、テレサは行商人、ギイブルは学者。

エルザ、ジニーは軍人、フランシーヌ、コレットは教師。

エレンは細工師。

この職業で『人生双六』をする事となった。

 

 

「最初はわたくしからですわ!」

 

 

ウェンディがそう息巻いてルーレットを回す。1~8の数字が刻まれたルーレットの針が示したのは……4だ。

 

 

「まずは四マスですわね」

 

 

ウェンディが自身の駒を四マス進め、ドクロのマスで止まると、盤面の外側にある石板から文字が浮かび上がる。

 

 

『練習中、足首を捻って劇場を休むこととなった。よって、今回は一回休みとなり、給付金が下がります』

 

「……え?」

 

 

ウェンディがその文字に呆けていると、別のルーレットが起動してぐるぐると回っていく。

このルーレットはボタンを押す、もしくは暫く放置すると止まり、結果が表示される。オーヴァイ曰く、放置すれば大抵、悪い結果が出やすいとのことだ。

 

 

「えっと、これでしたわね!?」

 

 

ウェンディは慌て気味にルーレットを止めるボタンを押す。結果は……

 

 

『マイナス三リル四クレス。よって次回からの給付金は十四リル六クレスとなります』

 

「ちらりと見えた六リル七クレスと比べれば、今回のマイナスはまだマシですわね」

 

 

ウェンディは強気にそう口にする。ちなみに全員の初期の給付金は十八リルである。

 

 

「次は私ね……それ!」

 

 

二番手のシスティーナがルーレットを回し、3の数字が出たので三マス進む。結果は……

 

 

「やった!給付金が二リル五クレス上がったわ!」

 

 

お金のマスで止まって、給付金アップという、幸先のいいスタートであった。

 

 

「次は俺か……(確か、ここで出た数字は……)」

 

 

三番手のウィリアムは、繰り返しの記憶を思い出しながらルーレットを回す。

出た数字は……7だ。

 

 

(七は確か、アイテムマスだったな……繰り返しに気付いてからはやらなくなったが、この辺りは同じなんだな……)

 

 

ウィリアムは繰り返しに気付く前の記憶を掘り起こしながら、駒を七マス目まで進め、イベント用のルーレットが回り始める。

 

 

(ここで出たのは……『スカ』という、何も貰えない結果だったな……)

 

 

そう考えながら、ウィリアムはボタンを押して、ルーレットを止めると―――

 

 

『衝動買い』

 

「…………は?」

 

 

記憶と全く違う結果に、ウィリアムは思わず目が点となった。

 

 

『このアイテムは自動で発動します。よって、衝動買いにより、貴方は有名な画家の絵を六十リルで購入してしまった』

 

「…………」

 

『そして、お金が足りず、貴方は四十二リルの借金を負ってしまった。頑張って返済しましょう』

 

「……なぁあああああああああああああッ!?」

 

 

繰り返しの時とは全く違う、借金を背負うという結果に、ウィリアムは思わず叫んでしまい、そのまま四つん這いとなった。

 

 

「ウィル……ついてない」

 

『おとーさん、元気出して?』

 

「えっと……御愁傷様ですウィルさん」

 

「幸先悪いスタートですねー、ウィリアム先輩。頑張ってください」

 

 

リィエル達の慰めの声が聞こえてくるが、ウィリアムショックから気付けていない。

 

 

(なんで違うアイテムがでたんだよ!?繰り返しで参加してなかったエレンが今回参加しているからか!?)

 

 

よくよく考えれば、少し違うだけでも結果は変わることは度々あった。その上、これは運の要素もあるから違う結果が出やすいこともすっかり失念していたのだ。

 

 

「いい様だなウィリ野獣ッ!!次は俺だッ!」

 

 

カッシュが意気揚々とルーレットを回し……

 

 

『マイナス十リル。よって、次回からの給付金は八リルとなります』

 

「ちくしょぉおおおおおおおおおおおおお―――ッ!!」

 

 

ウェンディと同じマスで止まり、見事に撃沈した。そんなカッシュにさらに追い討ちがかかる。

 

 

『さらに運の悪いことに、作物が猪の被害にあった!』

 

「へ?」

 

『その建て直しに三十リルの出費がかかった!そして、お金が足りず、貴方は十二リルの借金を負ってしまった。頑張って返済しましょう』

 

「最悪だぁあああああああああああああ―――ッ!?」

 

 

減給だけでなく、借金まで背負ったことに、カッシュは頭を抱えて天井を見上げた。

 

 

「いきなり波乱万丈ですねー……それ!」

 

 

それを尻目に、オーヴァイがルーレットを回すと……

 

 

『プラス四リル。よって、次回からの給付金は二十二リルとなります』

 

「やたー!給料アップです!」

 

「次は私だね」

 

 

上機嫌なオーヴァイに続くように、エルザがルーレットを回すと……

 

 

『『お守り』。このアイテムは一度だけ貴女を不幸から守ります』

 

「まずまずだね……」

 

「次は私ね」

 

 

今回参加しているエレンがルーレットを回すと……

 

 

『プラス三リル二クレス。よって、次回からの給付金は二十一リル二クレスとなります。さらに、顧客を確保したことで、三十リルが特別賞与で与えられます』

 

「凄いじゃないエレン!」

 

「うん……そうだね」

 

 

かなり幸先のいいスタートとなり、システィーナからも褒められて、エレンはゲームと言えど、照れ臭くなってしまう。

 

 

『エルもーッ!』

 

 

そんなエレンに続こうと、エルがルーレットを回すも……

 

 

『マイナス一リル七クレス。よって、次回からの給付金は十六リル三クレスとなります』

 

『うわーんッ!』

 

 

悪い結果に、エルは泣き出してしまった。

 

 

「よしよし……」

 

「泣かない泣かない。ゲームはまだまだこれからだから、次で挽回すればいいさ」

 

『グスッ……うん……』

 

 

リィエルが頭を撫で、ウィリアムが励ましたことにより、エルは素直に頷いて泣き止んだ。

 

 

「親子ですねー」

 

「うん、親子ですね……」

 

 

……若干、羨望の視線がウィリアムに突き刺さっていたが。

 

 

「じゃあ、回しますねー」

 

 

ジニーが無視してルーレットを回すと……

 

 

「二リルアップですか。ぼちぼちですね」

 

「次は私だね……」

 

 

ルミアがルーレットを回すと……

 

 

『『運命の赤い糸』。このアイテムを持って結婚マスに行くと、一発で選んだ相手と結婚できます』

 

「…………」

 

「次はわたくしですわ!」

 

 

顔を真っ赤に固まるルミアを脇に、フランシーヌがルーレットを回すも……

 

 

『衝動買い』

 

「いやぁあああああああああああ―――ッ!?」

 

 

ウィリアムと同じアイテムを引き当ててしまい、フランシーヌは叫んで頭を振った。

続けてギイブルがルーレットを回すと……

 

 

「十八リルアップか……まずまずだね」

 

「よぉーしッ!次はアタシだな!見てろよッ!」

 

 

コレットがやる気満々でルーレットを回すと……

 

 

『衝動買い』

 

「ちくしょぉおおおおおおおおおおおおお―――ッ!?」

 

「次は私ね」

 

 

崩れ落ちたコレットを無視して、テレサがルーレットを回すと……

 

 

『大手との商談に成功。よって次回からの給付金は七十八リルとなり、臨時収入で百リル追加されます』

 

「うふふ……幸先がいいですね」

 

 

持ち前の剛運で、見事に幸運に恵まれていた。

 

 

「次は僕だね……」

 

 

このゲームの一番の強敵を実感しつつ、セシルがルーレットを回すと……

 

 

「四リル三クレスアップだね」

 

「最後はわたし。えい」

 

 

一番最後のリィエルがルーレットを回し、アイテムマスで止まる。そして、イベント用のルーレットを止めると……

 

 

『援助金』

 

「ん?」

 

『このアイテムは自動で発動します。よって、一番資産のある人物から半分の資産を援助金として贈与されます』

 

「あらあら……せっかくのお金が持っていかれましたね」

 

 

アイテムの効果によって、一番資産があったテレサからお金を貰い、リィエルはトップに踊り出た。

 

ゲームはまだ始まったばかりである。

 

 

 




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