やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


百五十三話

暫く人生双六を続け、中間地点に差し掛かっていた。

 

 

「うふふ、上々ですわね」

 

 

現在トップのテレサが上機嫌に紅茶を飲む。ちなみに現在の順位は以下の通りである。

 

一位 テレサ 所持金:8756リル(財産+6462リル)

二位 システィーナ 所持金:5028リル(財産+658リル)

三位 エルザ 所持金:4987リル(財産+962リル)

四位 ギイブル 所持金:4892リル(財産+829リル)

五位 リィエル 所持金:4852リル(財産+387リル)

六位 フランシーヌ 所持金:4798リル(財産+589リル)

七位 エレン 所持金:4785リル(財産+1215リル)

八位 セシル 所持金:4726リル(財産+328リル)

九位 エル 所持金:4683リル(財産+680リル)

十位 コレット 所持金:4599リル(財産+486リル)

十一位 ウェンディ 所持金:4387リル(財産+956リル)

十二位 ジニー 所持金:4221リル(財産+406リル)

十三位 オーヴァイ 所持金:4015リル(財産+251リル)

十四位 ルミア 所持金:3985リル(財産+687リル)

十五位 カッシュ 所持金:1589リル(財産+924リル)

十六位 ウィリアム 所持金:-4259リル(財産+12854リル)

 

財産は現在は含まれていないが、最終集計時には含まれる。それを考えれば見た通りではないにしろ、剛運のテレサがダントツのトップである。

 

 

「借金が辛い……完済できるかなぁ……?」

 

「何言ってやがるウィリ野獣。お前には財産があるじゃねえか?」

 

 

現在最下位のウィリアムの呟きに、カッシュが神経を逆撫でする声色で指摘する。

ウィリアムはアイテムマスに止まると、ほぼ『衝動買い』のアイテムを引いてしまっている。たまに別のアイテムを引くも、それも『災害』や『火災』、『事故』等の不幸を引き寄せるアイテムのオンパレードである。

しかも、財産は売れない為、借金返済の役には一切立たない。その上、借金の多さからか、ルーレットの数字がウィリアムの時だけ1~4だけと、不幸街道まっしぐらである。

ルーレットもボタンを押して回すタイプというのもあり、まさにウィリアムの素の引き運の悪さがおもいっきり出てきた結果となっていた。

 

 

「よしよし」

 

『おとーさん、元気だして?』

 

 

そんなウィリアムに、リィエルとエルが頭を撫でて慰めるという、情けなくも微笑ましい光景が出来上がっている。

 

 

「元気出してください、ウィルさん」

 

「そうですよー。これはゲームですからもっと気楽にいきましょう、ウィリアム先輩」

 

 

エルザもウィリアムに紅茶を差し出し、オーヴァイもお茶菓子を出してウィリアムを元気づけようとしている。

 

 

「……ありがとなー…………」

 

 

ウィリアムは若干涙目でお礼を言い、紅茶とお菓子を口にしていった。

あの記憶の展開では借金はなかったので、ここまで違うと本当に泣けてしまう。

 

 

「本当に同情するわ……」

 

「一人だけ大量に借金があるからね……」

 

「これで勝っても嬉しくないな……」

 

「……もっと不幸になれ、ウィリ野獣(ボソッ)」

 

 

そんなウィリアムに、多くは同情していた……約一名は背後に鼠の幻影を揺らめかせ、怨嗟の声を零していたが。

 

 

「もうじき結婚マスですねー……」

 

「……うん。そうだね」

 

 

そんな中、エルザとオーヴァイは中間地点にあるマスと、自身の駒を交互に見比べながら話し合う。

結婚マス。このマスは基本的にはここで一度止まり、プレイヤー同士、もしくは双六内のキャラクターと文字通り結婚できるマスだ。

プレイヤー同士なら財産と借金が共有され、双六内のキャラクターなら、給付金の追加とランダムでイベントが起こるようになる。勿論、結婚しないという選択肢もある。

大抵の場合は双六内のキャラクターと結婚するのだが、エルザとオーヴァイは勿論、一人のプレイヤーとの結婚を狙っていた。

例え、盤面でのイベント、ゲームの中とはいえ、好きな人と結婚できるのだ。ごく当たり前の感情である。

 

 

「じゃあ、回すね……えい」

 

 

現在一番マスを進んでいるルミアがルーレットを回し、最初に結婚マスへと到達する。

 

 

『結婚マスに到達しました。ここではプレイヤー、もしくは双六内のキャラクターと結婚できます。双六内の男性キャラクターは以下の通りです』

 

 

――――――――――――――――――――――――

レイン=グーダス 職業:教師 ギャンブル好きの青年。

ツースト=ル=ノエール 職業:教授 年下好きの紳士。

オーウル=センダー 職業:発明家 常にトラブルを起こす青年。

ファンゼル=ルークス 職業:考古学者 無断で遺跡を調査する弾かれ者。

ハーゲン=ピカレイア 職業:準教授 生え際が後退している神経質な青年。

ギル=G=アルバート 職業:医者 苦労人の青年。

チャトル=テイスター 職業:芸術家 常に女性の神秘を追っている紳士。

カット=ビンガー 職業:農家 気さくだが女好きの青年。

ウィスター=メイデン 職業:大工 基本やる気のない青年。

リッツ=オールトン 職業:…………

…………

――――――――――――――――――――――――

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

石板に表示された、明らかに実在している人物をモデルにしているキャラクター達のプロフィールに、一同は何とも言えない気分になる。

 

 

「それじゃあ、このレインさんと……」

 

「ちょっと待ってルミアッ!?このキャラクターはどう見ても外れでしょ!?」

 

「そうですわ!ここは一番安全そうなギルさんにすべきではなくて!?」

 

「そうだぜ!?ここは慎重に行くべきだ!!」

 

 

ルミアが迷わずにレイン=グーダスに告白しようとボタンを押そうとしたところで、システィーナとフランシーヌ、コレットの三人が止めにかかる。

 

 

「これはゲームだしルミアがどうしようと私には関係ないけどッ!そのキャラクターだけは選んではいけないわ!生贄には私がなるから!!」

 

「そうですわ!このキャラクターだけは選んではいけません!!ですから、レインさんはわたくしがもらいます!!」

 

「いや、アタシが犠牲になる!!レインさんはアタシのもんだッ!!」

 

「おもいっきり本音が洩れてますよ、発情期の雌犬共」

 

 

欲望が滲み出ているシスティーナ達に、ジニーが辛辣なツッコミを入れる。

 

 

「……ごめんね」

 

 

ルミアはそう言って、一切躊躇わずにボタンを押した。

 

 

「あああああーーッ!?」

 

「ルミア、本当に押しちゃったの!?」

 

「お、落ち着け!告白しても一発で成功するわけが―――」

 

『所持していたアイテム『運命の赤い糸』により、レイン=グーダスへの告白に成功。無事に結婚しました』

 

「ええええええええええええ―――ッ!?」

 

「しまったぁああああああああああ―――ッ!?」

 

「ルミアさんが最初に手に入れたあのアイテムの存在を、すっかり忘れていましたわーーッ!?」

 

『皆さんから祝儀も送られました。これからの人生、頑張ってください』

 

「はい」

 

 

システィーナ達が騒ぐ中、全員から計百リルの祝儀を受け取ったルミアは天使のような笑みを浮かべていた。

 

 

「まったく、ただのゲームで……」

 

「ですが、気持ちは何となくわかりますわ」

 

「うふふ……私はどうしようかしら?」

 

「ほらお嬢様。次はお嬢様の番ですからさっさと回してください」

 

 

一部を覗く面々は朗らかな気分で双六を続けていく。

だが……

 

 

「この『小悪魔』のアイテムでエルザさんの移動を二巡するまで封じますね」

 

「……チッ。でしたら、『後退』アイテムをオーヴァイさんに使います」

 

「やりますねー。出てきた数字は……五、ですか……」

 

「これでオーヴァイさんは最低でも二回回さないと到達できませんね。リィエルは最低三回回さないと到達できませんから、私が先に到達できそうです」

 

「ですが、止まったマスはアイテムマスなのでまだわかりませんよー?……『ダブルルーレット』、ルーレットを二回回せるアイテムですねー」

 

「運が良いですね、オーヴァイさん……うふふ」

 

「いえいえ、そんなことないですよー……あはは」

 

 

エルザとオーヴァイの小競り合いにより、一気に重苦しくなっていた。

 

 

「……すっかり失念していたわね」

 

「うん……」

 

「だから、たかがゲームで―――」

 

「「何か言いました(か)?」」

 

「……何でもない」

 

「本当に何が違うんだよ……」

 

「あはは……」

 

 

そんな重苦しい空気の中、順当にルーレットを回して駒を進めていき、リィエルの番となる。

 

 

「えい」

 

 

リィエルがルーレットを回してアイテムマスに止まり、アイテムを引くと……

 

 

『『ハネムーン』。このアイテムは自動で発動します。このアイテムにより、貴女は結婚可能となりました』

 

「ん?」

 

「「……え?」」

 

 

出てきたアイテムにリィエルは首を傾げ、エルザとオーヴァイは目を見開いて固まった。

 

 

『プレイヤーと双六内のキャラクター、どちらと結婚致しますか?』

 

「じゃあ、ウィルと結婚?する」

 

「……は?何で俺となんだ?」

 

 

まさかの即答に、ウィリアムは思わず目が点となって問い詰めてしまう。

そんなウィリアムに、リィエルが上目遣いで聞き返す。

 

 

「……嫌なの?」

 

「いや……そういう訳じゃないが……」

 

「じゃあ、問題ない」

 

 

リィエルはそう言ってボタンを押し、ウィリアムもなし崩し的にボタンを押して……

 

 

『貴女はプレイヤーと結婚しました。よって、財産と借金は共有となり、貴女の資金は借金返済に使われました』

 

 

プレイヤー同士の結婚が成立した。

 

 

「やっぱり、リィエルは凄いなぁ……(ボソッ)」

 

「最早、運命ですかね……(ボソッ)」

 

「だけど……」

 

「ええ……」

 

「「現実では愛人という路線も存在しますから!(ボソリッ)」」

 

 

エルザとオーヴァイが小声で何かを呟いており、内容は聞き取れなかったが、物凄く不穏なことを言っていた感じがした。

その後、エルザはウィスター=メイデンと結婚。オーヴァイは独身を選ぶこととなった。

ゲームは、まだまだ続く。

 

 

 




たくましい剣士二人……主に無自覚に大胆行動をおこす青髪剣士のせいで
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