やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ
※本編の都合から少し変更しました


第十四章・魔術祭典と王国の騎士
百五十五話


快晴の大空。アルザーノ帝国魔術学院の魔術競技場にて。

 

ドォン!ドォン!ドォン!

 

 

「ほらほらどうした?そろそろ一本取ってみろよ、二人とも」

 

 

銃、というより砲と呼ぶに相応しい武器を二丁、両手に構えたウィリアムは目の前で対峙する二人―――システィーナとレヴィンにその砲口を向けていた。

 

 

「分かってますよ!―――《大いなる風よ》ッ!」

 

 

代表入りしたクライトス校のレヴィンが黒魔【ゲイル・ブロウ】の突風を放つも、ウィリアムは足で軽く地面を叩くだけで分厚い鋼鉄の壁を錬成してあっさりと防ぐ。

 

 

「甘いわよウィリアム!」

 

 

そんな声と共にシスティーナはウィリアムの右側に回り込んで左手をかざしているも、それより早く、ウィリアムは見もせずにその砲口をシスティーナに向けていた。

轟音と共に放たれるドッジボールサイズの非殺傷弾。システィーナはこの一週間で何度も見ていたので動揺せず、【エア・ブロック】を足場に高く跳躍してその砲弾をかわす。

ウィリアムはその事を特に気にすることなく跳躍しながら砲弾を放ってシスティーナを牽制していき、左手の武器を手放して、レヴィンに空いた左手の人差し指を向ける。

 

 

「《雷精よ》―――《踊れ》」

 

 

【ショック・ボルト】を四射同時起動し、七つの紫電をレヴィンの周囲に落としてその場に釘つけにする。そして、瞬時に左手に拳銃を錬成し、鍛え抜かれた早撃ち(クイックドロウ)で非殺傷弾を全弾放つ。

 

 

「《大気の壁よ》ッ!―――《雷精の紫電よ》ッ!」

 

 

レヴィンは【エア・スクリーン】でその非殺傷弾をあっさりと防ぎ、すぐさまマナ・バイオリズムを整えて地面に着地したウィリアムに紫電を飛ばす。

ウィリアムは紫電を体捌きで難なくかわし、続いて迫ったもう一つの紫電を【トライ・レジスト】を付呪(エンチャント)していた右手の武器であっさりと防いだ。

 

 

「まさか、これ程強い人が彼女以外にいたとは……!」

 

 

覚えたばかりである、二反詠唱(ダブル・キャスト)による【ショック・ボルト】をいとも簡単に対応された事にレヴィンは悔しげに呟くも、ウィリアムは何てことのないように答える。

 

 

「強くなきゃ特別コーチとして参加させられていねぇよ。……もの凄く面倒だけどな」

 

 

そう、代表選手団でもないウィリアムがこの場にいるのは、代表選手団の総監督を務める羽目になったグレンと魔術選インストラクターに選ばれたイヴからの要請だからである。

元々、普段の授業をサボる為にマネージャーとして参加しようとしたのだが、総監督に選ばれたグレンはそれの八つ当たりのようにウィリアムをコーチとして参加するよう命令してきたのだ。

イヴも右手に炎を宿してコーチをしろと言ってきたので、ウィリアムは仕方なく、本っ当に仕方なくコーチをする羽目になったのである。

 

 

「……まさかとは思いますが、面倒だから代表入りを辞退したのではないでしょうね?」

 

「……どうだろうな?」

 

 

レヴィンの疑わしげな視線をウィリアムはしれっと受け流し、後ろに向かって左手を向けて予唱呪文(ストック)していた【ホワイト・アウト】を放つ。同時に非殺傷弾をレヴィンの顔面に向けて放つ。

 

 

「《大気の壁よ》ッ!!」

 

 

後ろから攻撃を仕掛けようとしていたシスティーナはすぐに【エア・スクリーン】を張って防ぎ、レヴィンは咄嗟に横に飛んで迫ってきていた非殺傷弾を避ける。

 

 

「《拒み阻めよ・嵐の壁よ・その下肢に安らぎを》―――ッ!」

 

 

システィーナは視界が悪い状況のまま、黒魔改【ストーム・ウォール】を使い、ウィリアムをその場に縛り付けた―――筈だった。

 

ズボッ!

 

 

「―――ッ!?」

 

 

地面から腕が生え、足首をがっしりと掴まれた事にシスティーナは驚愕するも、その腕は容赦なくシスティーナを地面の中へと引き摺り込んだ。

 

 

「システィーナッ!?」

 

 

視界が良好となって早々、生首のような状態で地面に埋められたシスティーナの姿にレヴィンが目を奪われた瞬間、地面から鋼鉄が生え、レヴィンの手足を容赦なく鋼鉄の中へと閉じ込めた。

 

 

「ま、また負けですか……」

 

「本当に反則でしょ、その錬成速度……」

 

 

またしても負けを喫したことにレヴィンとシスティーナは悔しげに呟く。

タネは簡単。ウィリアムは二人の視界から外れた瞬間に錬金術を使って地面の中に潜り、下から仕掛けたのだ。ご丁寧に【イリュージョン・イメージ】の偽物を残して。

そんな見事にやられた二人の前で、地面から紫電が爆ぜて一つの穴が出来上がる。その穴からウィリアムが身軽な動作で飛び出て来た。

 

 

「自分の持つ手札を最大限に活かせる使い方をしているからな。如何に自分の土俵とペースに持っていくかも―――」

 

「ひぃああああああああ―――ッ!!」

 

 

ウィリアムの言葉を遮るように大きく、情けない悲鳴が響き渡る。

その声にウィリアムは呆れたように視線を向けると、そこには仄かに桃色がかった、色素の薄い髪のアルザーノ帝国魔術学院の制服を来た一年の女子生徒が、ウィリアムが用意したハリセンを持って眠たげな無表情のリィエルに後ろから追いかけられていた。

そして、その少女はリィエルに追いつかれ……

 

バチーンッ!!

 

 

「いったぁッ!?」

 

 

無慈悲に頭をハリセンで叩かれ、その場で蹲った。

 

 

「うぅ……死んじゃう……このままだと私、死んじゃいますよぉ~~~ッ!」

 

「……ん、死ぬの?なら、埋める穴を今すぐ用意する」

 

「助けて!助けてください!グレン先生ぇ~~~ッ!!」

 

 

完全に涙目のその少女は助けを求めるようにグレンに向かって走っていき、そのまま縋るように抱きついた。

 

 

「あー、また先公に泣きついてるのかよ。あの一年……」

 

 

何とも情けない少女の姿に、ウィリアムはうんざり気味に溜め息を吐く。

彼女の名前はマリア=ルーテル。代表選手団に選ばれた才女なのだが、一年次生ゆえに体力と経験が劣っているので、ド地味で、とてつもなくキツいメニューが主体となっている。

それゆえに、マリアは頻繁に音を上げてグレンに泣きついてくるのだ。

……そのド地味で、とてつもなくキツいメニューを組んだのはグレンとウィリアムではあるのだが。

なので、ウィリアムは面倒くさげにグレンとマリアに近づき、マリアを容赦なくグレンから引き剥がした。

 

 

「ああ!?またですかウィリアム先輩!!また私をリィエル先輩を使って苛めるんですね!?」

 

「文句を言ってないで、さっさと訓練に戻れ」

 

 

毎回同じやり取りをしているため、ウィリアムは今回もマリアの言葉は基本的には無視してさっさと再開するように促していく。当然ながら、マリアは駄々を捏ねて反発する。

 

 

「嫌ですよぉ!身体強化魔術を維持したままフィールド百週に加え、後ろからハリセンを持ったリィエル先輩に追いかけられるのはもう嫌です!!もう死んだ方がマシです」

 

「そんなに文句を言う程元気なら、重しを追加してやろうか?」

 

「悪魔!悪魔が目の前にいます!!こんなに冷たい仕打ちなのに、リィエル先輩とはベッドの上であんな事やこんな事を―――」

 

 

ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!ドパンッ!

 

マリアの唐突な事実無根(?)の言葉に、ウィリアムはこめかみにはっきりと青筋を浮かべ、容赦なく非殺傷弾(威力、最大)をマリアに浴びせていった。

 

 

「痛い痛い!!ウィリアム先輩、痛いですぅ!!」

 

「ほぉ?まだ喋れる余裕があるのか。なら、電撃も追加してやる」

 

 

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!

 

 

「アビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャビャッ!!」

 

 

以外としぶとく、頑丈なマリアに、ウィリアムは固有魔術(オリジナル)【詐欺師の工房】で具現召喚した【招雷霊(ヴォルト)(フェイク)】の電撃(手加減)も追加し、電撃も喰らったマリアは奇怪な悲鳴を上げていく。

少しして電撃と非殺傷弾が止み、制裁されたマリアは白煙を上げて地面に突っ伏しているも、ビクンッビクンッと痙攣している。

 

 

「……うぅ、酷いですよ。こんなか弱い女の子である私にここまで手を上げるなんて……主もウィリアム先輩は、救いの手を差しのべないグレン先生と共に地獄に落ちるべきだと仰っています」

 

 

目を閉じて―――実際は薄目でグレンをチラチラと見て―――仰向けとなり、胸元で手を組んで十字の聖印を握りしめ、足を真っ直ぐに揃えて、そんなことを宣うマリアに……

 

 

「よし。生き埋めか水没、どっちがいいか選べ」

 

「今すぐ穴を掘ってやるからどっちにするか考えておけ。リィエルはそいつが逃げないように押さえておいてくれ」

 

「ん。わかった」

 

「ひやぁあああああああああああああ!?だ、誰か助けてぇええええええええええええーーッ!!!」

 

 

グレンとウィリアムが錬成したウーツ鋼のスコップを使って目の前で穴を掘っていく。その光景に、リィエルに取り押さえられたマリアは涙目で暴れて抵抗するも、素の身体能力でも勝てる筈もなく、バタバタと体を暴れさせるだけで逃げ出すことは出来ない。

と、そこに、マリアにとっての救世主が現れる。

 

 

「あはは。その辺にしてあげませんか?」

 

「マリアさんはこれでも真面目に頑張ってますから、そのくらいで勘弁したらどうです?少し早いですが休憩しましょうよー」

 

 

大きなケトルに水を汲んだルミアと、人数分のタオルを持ってきたオーヴァイにグレンとウィリアムは疲れ気味に応じる。

 

 

「はぁ、わぁーったよ」

 

「区切りとしては丁度いいし休憩にするか……」

 

 

ルミアとオーヴァイに毒気を抜かれたグレンとウィリアムがそう応じた途端。

 

 

「大好きですぅ、二人ともぉ~~~ッ!!お二人は私の天使ですぅ~~~!!」

 

 

大歓喜して喜びを表現する、マリアの現金すぎる姿にグレンとウィリアムは深い溜め息を吐くのであった。

 

 

 




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