やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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久しぶりだけど番外編
本編は……この作品のヒロインが不在というショックと現状から安易に進めなくなってしまいました
次巻の本編で復帰して欲しいなぁ……
てな訳でどうぞ


釣りは巣潜りではない

―――とある日の晴天のフェジテ。魔術学院の校外のとある森の湖畔にて。

 

 

「―――と、いうわけで、本日の課外授業は『釣り』をしてもらう!!」

 

 

後ろに素人感丸出しの釣竿の束を携え、グレンは連れてきた二組の生徒達に力強く宣言した。

 

 

「……何で釣りをするんですか?釣りと魔術は全く関係ないですよね?」

 

 

システィーナがジト目で指摘すると、一部を除く他の生徒達もうんうんと頷いて同意する。そんな彼らに、グレンは力強い声色のまま語り始めていく。

 

 

「甘いぞお前らッ!まず、竿を振ることで鍛えられる『腕力』!魚が餌に食らいつくまで待つことで培われる『忍耐力』!そして、食らいついた魚を釣り上げることで得られる『集中力』と『駆け引き』!どうだ!?釣りと魔術は無関係じゃないだろ!?」

 

「た、確かに……って、《そんなわけ・あるか》ぁああああああ―――ッ!!」

 

 

あまりにも自信満々なグレンの言葉に、システィーナは一瞬騙されかけるも、すぐに即興改変の【ゲイル・ブロウ】を唱えた。

 

 

「どわぁああああああああああああ―――ッ!?」

 

 

システィーナの【ゲイル・ブロウ】が今回も見事に炸裂し、グレンは情けない悲鳴と共に吹き飛ばされた。

 

 

「どう見ても、私達を使って食料を得ようとしてますよね!?」

 

「うっせーよ!こちとらシロッテの枝で食い繋ぐのも限界に来てるんだよ!!」

 

「最低!最低です!!そもそも、その釣竿はどこから調達したんですか!?」

 

「決まっているだろう?……俺が全部作ったんだよ!」

 

「その情熱を普段の方に回しなさいよ!」

 

 

本当にいつも通りのやり取り。そんなやり取りを前に、我らが大天使ルミアがいつもの笑顔で仲裁に入っていく。

 

 

「システィもみんなも、気分転換には丁度いいんじゃないかな?」

 

「……そうかもな」

 

「……先日のシュウザー教授の騒動は散々だったからな」

 

「……あれは本当にやばかったよな」

 

「うーん……ルミアがそう言うなら……私もあれは早く忘れたいし……」

 

 

先日の『大天使争奪戦争事件』と名付けられた、オーウェル特製惚れ薬を被って、周りから一歩間違えれば貞操を奪われかれなかったルミアの言葉に、薬でまんまと理性が吹き飛んでいた面々は複雑な表情で同意する。

ちなみにウィリアムは、咄嗟に《詐欺師の盾》の絶対防御の魔力障壁を展開して一人難を逃れていたりする。グレンがこのことにぶつくさ文句を垂れて鬱陶しかったので、非殺傷弾で黙らせた後、金ののべ棒一本押し付けて手打ちにさせたが。

 

 

(よし!本命が上手く誤魔化せたぜ!)

 

 

そんな中、グレンは内心でガッツポーズを取っていた。グレンの真の狙いはこの湖畔で目撃されたと噂されている、魔獣ゴールドフィッシャーの捕獲だったからだ。

ゴールドフィッシャーは文字通り、全身が黄金に輝く体長一メートル程の蛇のような魚である。警戒心が非常に強く、中々お目にかかれない魔獣であるが、『黄金錬成』と呼ばれる自身の排泄物が根源素(オリジン)レベルまで黄金であるという生成能力を持った、金の成る木ならぬ金の成る魚である。

さらに、ゴールドフィッシャーの身体の構成物は全て純金。一説では伝説の魔法金属、神鉄(アダマンタイト)を生み出す過程で生まれた魔獣とも呼ばれているが、今はいいだろう。

ちなみにのべ棒はトランプカードを持つバニーガールさんの肥やしとなった。

 

 

「さぁ、頼むぞお前らッ!頑張って俺のご飯を調達してくれよ!!」

 

「もう、隠す気ないんですね……」

 

 

グレンの表向きの動機からの宣言に、システィーナは力なく溜め息を吐く。

 

 

「……わかった。わたしが魚をたくさん釣る」

 

 

今の今まで、蚊帳の外だったリィエルがそう呟くと、皆の前でいそいそと制服を脱ぎ始めた。

 

 

「って、何故服を脱ごうとしているんだ!?」

 

 

そんな羞恥心の欠片もないリィエルの行動を、ウィリアムが大慌てでリィエルの両腕を掴んで強引に中断させる。対するリィエルはきょとんとした表情だ。

 

 

「?魚を釣るためだけど?」

 

「それは釣りじゃなくて巣潜りだ!」

 

 

至極真っ当なウィリアムの言葉に、システィーナとルミアはもちろん、他のクラスメイト達もうんうんと頷いて同意する。

 

 

「そうなの?」

 

「そうだ。だから、今回は釣竿で魚を釣れ」

 

「……わかった」

 

 

ウィリアムの言葉に素直に頷くリィエル。端から見れば、常識のない妹に苦労するお兄さんである。

とりあえず、グレン製の釣竿はあまりにも酷かったので、ウィリアムはお得意の錬金術で釣竿を錬成して釣りをすることにした。

したのだが……

 

 

「……ねぇ、ウィリアム」

 

「ん?どうした、システィーナ?」

 

「なんでアンタの釣竿だけ、皆に用意した釣竿と違うのかしら?一目で便利と分かるものなんだけど」

 

 

システィーナの指摘通り、ウィリアムが皆に用意した釣竿は金属製の竿に糸を付けただけのものなのだが、ウィリアムが手に持っている釣竿は、糸が巻かれている筒のようなものが付いているのだ。加えて、その筒にはレバーのようなものまで付いている。

そんなシスティーナの質問に、ウィリアムはあっけからんとした様子で答えた。

 

 

「釣りは使い慣れたもんを使うのが一番だろ?」

 

「……えぇー……」

 

 

システィーナの力なき呟きに構わず、ウィリアムは竿を振るって釣り針を飛ばす。同時に、釣糸が巻き付いている筒も

回転して釣り針を遠くへと飛ばしていく。

ウィリアムは椅子を錬成してその場に座り、紙煙草モドキを取り出して口に加え、オイルライターで火を付けて煙をふかせていく。その姿は、意外と様になって……

 

 

「って、何しれっと煙草を吸ってるのよ!?」

 

 

あまりにも自然過ぎる動作だった為、思わず流しかけていたシスティーナは我に返ってギャンギャンとウィリアムに吠えたてていく。対するウィリアムは澄まし顔だ。

 

 

「これは紙煙草の形をしたアロマセラピーだ」

 

 

実際、これには依存性も副作用もなく、単にリラックス効果をもたらすだけの“遊び”も兼ねて作った品物だ。たまたま、必要な素材が市場に出回っていたので購入して久しぶりに作ったのである。

断じて、煙草を吸う姿に若干の憧れを感じて作ったわけではないと、念入りにシスティーナに伝える。

 

 

「……あんたも男って訳ね……」

 

 

ウィリアムの説得虚しく、システィーナから若干残念な評価を貰う羽目となった。ついでに周りの目も生暖かい。

そんなこんなで、二組の面々は釣りへと興じていく。

 

 

「おっ、また釣れたぜ!」

 

「……以外とここは釣れやすいのかもしれないな」

 

「……小ぶり、ですわね」

 

 

以外にも魚は大量に釣れていた。

 

 

「……素焼きでもマトモな飯だからよっぽどいけるぜ……モグモグ……」

 

 

グレンはそれなりの大きさの魚を回収しては裁き、焼いて、ガツガツと食べていた。

 

 

「……むぅ、釣れない」

 

「ま、そういう時もあるさ」

 

 

そんな中、リィエルだけは一匹も魚を釣れないでいた。隣で何匹も大きな魚を釣り上げているウィリアムが励ますも、リィエルの眉間は八の字に歪んだままだ。

リィエルは不機嫌そうに釣糸を睨んでいると……

 

ピクンッ!

 

 

「……来た!」

 

 

釣糸が引き寄せられた瞬間、リィエルは力一杯釣竿を引き上げる。

ざぱぁっ!!という音と共に豪快に釣り上げられたのは……全身が金色に輝く蛇のような魚だった。

地面に引き上げられた金の魚はヌルヌル、ピチピチと地面の上で踊る姿を、釣り上げた本人であるリィエルは眠たげな眼で見下ろした。

 

 

「……これ、何?」

 

「ゴールドフィッシャーという魔獣だな。警戒心が非常に強く、滅多に御目にかかれない魔獣なんだが……」

 

「……食べられる?」

 

「こいつの身体は全て純金で構成されている。全く食用に向いていない」

 

「じゃあ、戻す」

 

 

ウィリアムの説明に、リィエルは若干悄気ながらも何の躊躇いもなく、ゴールドフィッシャーを掴んで、湖畔へと放り投げた。

 

 

「ゴールドフィッシャー、カムバァアアアアアアアック!!」

 

 

ゴールドフィッシャーの存在に漸く気付いたグレンが鬼気迫る表情で駆け寄るも、時既に遅し。ゴールドフィッシャーは湖畔の中へと瞬く間に消えていった。

 

 

「うおぉおおおおおおおおおおお―――ッ!!!」

 

 

それにも関わらず、グレンは諦めずに湖畔に飛び込んでゴールドフィッシャーを追いかけて行くのであった。

 

 

「……グレンが釣りに行った……わたしも行く」

 

「行かんでよろしい」

 

 

そんなグレンを目の当たりにして再び制服を脱ごうとしたリィエルを、ウィリアムは頭痛を感じながら止めるのであった。

―――次の日。

グレンは風邪を引いた為に、その日の授業はセリカが代わりに教鞭を取ることとなり、魔のつく授業となったのは言うまでもない。

 

 

 




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