「ふ―――ッ!」
ウィリアムのお得意の
その音速を優に超える弾丸を―――ヴァンは突撃しながら軽々とかわす。
「ぉおおおおおおおお―――ッ!!」
ヴァンはそのまま、法力が漲る
ウィリアムは当然、《詐欺師の楯》で音もなくその一撃を受け止める。
その直後、ヴァンの左目から発せられている魔力が狼の姿を形作り、そのまま伸びるように回り込んでウィリアムの後ろから襲い掛かる。
「ちぃ!」
ウィリアムは舌打ちしつつ、既に起動した【詐欺師の工房】で具現召喚した【
ウィリアムは《詐欺師の楯》を手放しつつ、その場から横に飛んで魔力の狼をかわす。
かわしたタイミングで、跳躍していたヴァンが
ウィリアムは地面を転がって避けるも、大きなクレーターが出来上がる程の衝撃を受けて吹き飛ばされてしまう。
(マトモに受けてたら大きな風穴が空いてたぞ!?)
ウィリアムは内心で引き攣りつつも、新たに錬成した拳銃と【
地面が捲れ上がり、土煙が巻き起こる。
ヴァンの視界を遮った隙にウィリアムは
しかし、土煙から飛び出したヴァンは何の迷いもなく本物のウィリアムへと迫り、法力が漲る左拳を叩き込もうとする。
「なっ!?」
ウィリアムは咄嗟に両手の拳銃を盾にしてその拳を受け止めるが、衝撃を流しきれずに再度吹き飛ばされる。
ヴァンはそのまま左腕を引き絞り、鉤の手で振り下ろす。
ウィリアムは咄嗟の判断で
そんな残心するヴァンに、ウィリアムは
威力は拳銃の時よりも高いそれは、ヴァンの右手に当たると同時に弾かれてしまった。
「マジか……」
おそらく、法力と魔力の二段構えを全身に纏って防御力を高めているであろう。それでも傷一つないことには戦慄を覚えてしまうが。
「……これが人間と狼男の違いだよ。そこで佇んでいる彼女の妙な能力で強化されても―――」
これ見よがしに話すヴァンに構わず、ウィリアムはヴァンの頭上に瞬間錬成した不純物がたっぷりの水の塊を被せ、紫電を纏う上半身のみの甲冑騎士―――【
「あばばばばば!?」
突然水を被せられ、感電しやすくなった状態で雷撃を叩き込まれて奇怪な声を上げるヴァン。
「……ふん。この程度の雷撃が効く筈がないだろ。勝ち目はないんだから素直に―――」
ドドドドドンッ!
今度は周りに錬成された大量の爆晶石で、普通なら肉片になる程の爆風と衝撃がヴァンに叩き込まれる。
「……だから、いくらやっても無駄だよ。私達は君達を殺す気は―――」
ドゴォンッ!
《魔銃ケヴァルト》によって放たれた雷加速された砲弾がヴァンの顔面に激突する。
「君は何度、人の言葉を遮れば気が済むんだい!?普通は最後まで聞くものだよね!?」
顔に張り付くレベルめり込んでいたウーツ鋼製の砲弾を魔力の獣の顎で砕きながら、ヴァンは怒りを露に吼える。
「戦いの最中で一々会話に付き合う義理も義務もねえだろ。そんな暇があるなら、お前をぶっ飛ばす事を優先するわ」
「正論だけど、無性に腹が立つよ……ッ!」
こめかみと額にビキビキと青筋を立て、
そして、長大な光の柱を形成する。
「このまま、全員吹き飛ばしてやる!!」
ヴァンはそう叫ぶと、長大な光の柱―――
「ちょっ、ヴァン!?」
「ヴァン!?帝国の守銭奴連中だけじゃなく、私とチェイスも巻き込んでるわよ!」
オーヴァイと斬り結んでいたチェイスとグレンの拳を剣で競り合っていたルナが、ヴァンに驚いたように視線を向けている。
どちらも相手への意識を逸らしていないが。
「大丈夫、ちゃんと加減してるから!それにチェイスさんなら簡単に避けられるし、ルナ姉さんも無駄に硬いから傷一つ付かないよ!」
「無駄に硬いって何よ!?もっと姉を大事にしなさいよ!」
そんなやり取りをしつつ。
どちらも互いの相手から距離を取ると、チェイスはそのまま黒い霧となり、ルナは背中の翼をはためかせてヴァンの
対してウィリアム達は―――回避行動すら取らなかった。
「《起きよ盾霊》―――《
ウィリアムは残りの《詐欺師の楯》も展開、浮遊状態にしてヴァンの
「な……ッ!?」
加減していたとはいえ、かなりの法力を込めた一撃がいとも容易く止められた事に、ヴァンだけでなく滞空しているルナと実体化したチェイスも言葉を失ってしまう。
「《天に満ちし怒りよ》ッ!!」
そのタイミングでイヴが黒魔【メテオ・フレイム】を発動。空から無数の炎弾を降り注いでいく。
「―――ぜあっ!!」
その無数の炎弾を、飛び上がったヴァンが
ウィリアムはすかさず
「《睡毒の紫蛇よ》ッ!―――《
ウィリアムは睡魔に襲われる毒に改変した結晶化した毒の槍―――錬金改【晶毒槍】を
「―――かぁあああああああああッ!」
鼓膜が張り裂けんばかりの咆哮を迫り来る毒の槍に向かって放つ。
その咆哮を受けた毒の槍は粉々に砕け、吹き飛ばされる。
「《咲き乱れる銀色の刃》ッ!」
ウィリアムは再度呪文を唱える。
ヴァンの着地地点から、鋭い銀の刃が伸びるように飛び出てくる。
ヴァンはそれを魔力の獣で払おうとするも、魔力の獣は触れた瞬間に容易く霧散する。
「……チッ」
ヴァンは舌打ちすると、法力を漲らせた足で苦もなく砕いてそのまま地面へと着地する。
「……これでも、まだ分からないのかい?」
「何が分かるって?まだ勝負は序の口だろ」
ヴァンの言葉にウィリアムが皮肉で返すと、ヴァンの表情が苛立ちを露にするように顔を顰めた。
「……何でだよ」
「あ?」
「何で諦めないんだよ!?圧倒的な力の前に、人間は抗うだけ無駄なのに!!お前みたいな犯罪者風情が何でなんだよ!?」
いきなり意味が分からないことを喚いたヴァンに、ウィリアムは訝しむしかない。
そんなウィリアムに、ヴァンは独白するように言葉を紡いだ。
「……僕はただ、守れるだけでよかったんだ」
「…………」
「師匠に姉さん達……僕の大切な人達を守れるだけでよかったんだ。その為に必死に修行して、聖堂騎士団に入団して、周りから期待の星と呼ばれて……それでも、守れなかった」
「…………」
「だから僕は、人間を捨てて化け物になる事を選んだ。大切な人を……ルナ姉さんを一人にさせない為に」
そう告げたヴァンは、ウィリアムを睨みつけた。
「それなのに……お前は何で《愚者》と共にあれだけの事を人間のままで成し遂げられたんだ!?妥協して妥協して、親い人達まで喪った姉さんと、お前達と何が違うんだよ!?そんなお前達なんかに、負けるわけにはいかないんだよ!」
そんなヴァンの叫びに対し。
ウィリアムは呆れたように溜め息を吐いた。
「妙に突っ掛かるような態度だったのが……まさかの言いがかりと八つ当たりかよ」
「言いがかりでも八つ当たりでも構わない!成功ばかりしているお前達なんかに―――」
「確かにグレンの先公と再会してからの活躍は、さぞかし素晴らしく見えるだろうよ。けど、何も失っていないと思っていたら大間違いだ、ボケ」
成功ばかりならグレンは軍を退役していないし、ウィリアムだって目的を果たせていたらこの場にはいない。
そんな事を存外に告げるウィリアムに、ヴァンは厳しい目を向け続ける。
「何を言ってるんだ?実際―――」
「俺にもかつて、助けたい人達が、守りたい人達がいた。その為に力を付け、犯罪者と呼ばれてでもそれに手を伸ばし続けて……結局は届かなかった」
「―――ッ!?」
「その事に絶望して色々と見失って……生きる意味もないまま流されるままに生きて……迷いながら魔術学院に入って……」
「…………」
「そんな俺を、あいつらは笑って受け入れてくれたんだ」
「!?」
「だから、あいつらの想いをここで潰えさせはしない。俺は俺の譲れないものの為に、お前をぶっ飛ばす。それが今の俺の戦う理由だ」
そんなウィリアムの宣言に。
ヴァンはギシリ、と歯を噛み締める。
「……やっぱり、お前は気に食わない……ッ!」
「気に入られようとは思わねーよ」
苛立ちを露にするヴァンの鋭い視線を、柳に風のように受け流すウィリアム。その態度が逆にヴァンの神経を逆撫でていく。
「絶対に潰してやる……ッ!この力で、お前の心をへし折ってやるッ!」
ヴァンが憎々しげにそう叫んだ直後、ヴァンの右目が左目同様に青く染まる。
それと同時にヴァンの顔の左半分が突如生えた
「グゥルルルル……ッ!」
まるで―――ではなく、完全な獣の呻き声。
それに応えるように、瓦礫や観客席から冒涜的な姿の霊的な獣が、滲み出るように次々と姿を現し始めていく。
「ここに来て、戦力の増加かよ!?」
ウィリアムは焦りを覚えながらも、【
あの霊的な獣達がどのような存在なのかは不明だが、少なくとも物理に偏った手段は通用しない筈だ。
「オオォーンッ!!」
そんな遠吠えがヴァンを中心に大競技場に響き渡ると同時に、霊的な獣達がウィリアムに群がるように突撃してくる。
同時にヴァンも四つん這いとなるように駆け出し、獣の如く迫ってくる。
「クソッタレ!」
ウィリアムは
霊的な獣が爪を立てて噛み付き、
ヴァンも魔力と法力が混じり合った
ウィリアムは《魔銃ケヴァルト》を手放し、直ぐ様錬成した拳銃と合わせた二丁拳銃で対処していく。
槍も鉤の手のどちらも必殺の域に達しているヴァンの攻撃を、ウィリアムは全神経を集中させて決死に捌いていく。
(どう見ても理性が飛んでるよな、これ)
ヴァンの今の動きは技術が介在していない、力任せの直線的だ。
狼男の話の中には、理性を失うといったものがある。おそらく、“左目”の力を強く引き出すと理性が薄くなっていくのだろう。
それでも、ルナが再び歌い出した事を流し見た辺り、敵味方の区別くらいは出来ているようだが。
(なら、勝機はある。ルミアが本当に《銀の鍵》を制御して使えれば……それが向こうの隙になる)
元々、オーヴァイが言った通り
大競技場へ向かう際に、ルミアが《銀の鍵》を使う事を提案したのだ。
前のような自身を蔑ろにした義務や自己犠牲で使うのではなく、自身の希望と意志に従って使うのだと。
そんなルミアの決意を、グレンはぶっつけ本番になる事を指摘した上で問い質し、確かな覚悟で頷いたルミアをグレンは信じて託した。
(今のルミアなら……大丈夫だ。なら、俺もそれを信じて戦うさ)
ウィリアムは