やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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またしても番外編
てな訳でどうぞ


ウィリアムとリィエル、仲直り大作戦

学院のとある日。

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

授業開始直前であるにも関わらず、二組の教室の空気がそれとなく重かった。

 

 

「……なぁ、ウィリアム」

 

「……なんだ?」

 

「……いや、やっぱり何でもねぇよ」

 

「そうか」

 

 

その重い空気を作っている原因の一人であるウィリアムにカッシュは話しかけるも、ウィリアムの素っ気ない態度の前に、カッシュはすごすごと引き下がった。

 

 

「……ねぇ、リィエル。もういいんじゃないかな?」

 

「うん。もう済んだ事だし、仲直りしても……」

 

「やだ」

 

 

システィーナとルミアが困ったような笑顔を浮かべながら、この空気を作っているもう一人の原因であるリィエルに話しかけるも、リィエルは不機嫌そうにそっぽを向いて拒否するだけだ。

そう、二組の教室内の空気が重いのは、周りが嫉妬する程に共に過ごしているウィリアムとリィエルがあらかさまに距離を置いているのが原因である。

ことの発端は三日前、リィエルが虫歯を患ったことが今回の始まりだった。

虫歯が発覚した一度目の虫歯治療の際、セシリアの施した麻酔が効かなかったことから、魔力駆動式ドリルで削られた瞬間に凄まじい激痛が走り、リィエルは全力で医務室から逃亡したのだ。

その後、二組の教室にある掃除用具ロッカーに閉じ籠り、追いついたグレンとシスティーナ達が説得しようとしたが、リィエルはその痛みから頑なに虫歯の治療を拒んでしまったのだ。

その時、ウィリアムが―――

 

 

『……仕方ない。このまま連れていくか』

 

 

と、錬金術で完全にロッカーを封鎖して、ロッカーごとリィエルを虫歯治療の為に医務室へ連れて行くという行動に出たのだ。紫電がロッカーに爆ぜた瞬間、リィエルは己の失策に気付くも時既に遅し。

当然、ロッカーごと連行されるリィエルは激しく抵抗し、ロッカーを内側から破壊して脱出しようと試みるも、ウィリアムは得意の錬成で凹んだ瞬間に修復。更に追加でロッカーを覆うように分厚い新たな金属をウィリアムが錬成した為に、自力での脱出は不可能となってしまったのだ。

台車に乗せられて運ばれる間も、『出して!出して!!』『やだやだ!!痛いのはやだぁ!!』『どうして!?どうしてなの!?』『助けて!誰か助けて!!』とリィエルは泣き叫んでロッカーをガンガン叩いていたがウィリアムは全部無視。グレン達も良心の叱責に耐えて無視した。加えて、『虫歯治療の為に連行中』という札が取り付けられていた為、周りも納得して動かなかった。

 

 

『フヒヒ……閉じ込められて泣き叫ぶ少女……実にエグブォアッ!?』

 

 

ちなみに、この事態にあの変態男爵が息を荒げて同行しようとしていたが、ウィリアムは速攻で義手で殴り飛ばして排除した。追加で大した威力もない、錬金術で作った即席爆弾も叩き込んで。

そうしてリィエルを医務室に連れ戻した後、窓は錬金術で封鎖、出入口も分厚い透明な壁を錬成し、魔術罠(マジック・トラップ)を設置してからロッカーの封を解いた。解かれた瞬間、リィエルは弾丸の如く飛び出して逃亡を図るも、出入口の分厚い透明な壁にぶち当たり、そのまま魔術罠(マジック・トラップ)―――黒魔儀【リストリクション】で完全に捕縛。

そのまま診療台に厳重に拘束し、頭も固定。口も特殊な器具を嵌めて、強引に開口させた。

 

 

『んん~~ッ!!んんんんんん―――ッ!!んんん~~ッ!んんんんんんんん―――ッ!!!!』

 

『セシリア先生。今の内に虫歯治療してください』

 

『は、はい……』

 

 

必死に抵抗して泣き叫ぶリィエルに構わず、セシリアに虫歯治療をさせると―――

 

 

『あれ?これは乳歯ですね』

 

 

と、虫歯になっていた歯は乳歯であり、加えてすぐ下に新しい歯が生えかけていたことが分かった為、今度はちゃんとリィエルに効く麻酔を施してから乳歯を引き抜いたのだ。

それで虫歯治療が終わり万事解決……とはいかなかった。

 

 

『ウィルなんて……ウィルなんて、だいっ嫌いッ!!!!』

 

 

拘束から解放されたリィエルは開口一番、涙目でウィリアムに向かってそう叫んだ後、そのまま医務室を飛び出すように立ち去ってしまったのだ。

それ以来、ウィリアムとリィエルはずっとこんな調子である。

ちなみにロッカーはちゃんと元通りにしてあるので問題はない。変態男爵も……一応一命はとりとめている。その事実に大多数から舌打ちが入ったが。

 

 

「……そんじゃあ、本日も授業を始めるぞー……」

 

 

グレンも、そんない心地の悪さを感じつつも、気だるげに授業を進めるのであった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――という訳で、二人を何とか仲直りさせましょう!!」

 

 

そんな訳で。

本日の学院の放課後、ウィリアムとリィエルを除く二組の生徒達は二人の仲直り方法を考える羽目になっていた。

 

 

「うーん……確かにこのままじゃい心地が悪いよな……」

 

「最初は万々歳だったけど、今は滅茶苦茶居づらい雰囲気で心が痛いです……」

 

「お二人が喧嘩したままというのも、あまりよろしくありませんしね……」

 

「まったく、世話がやける……」

 

 

集まったカッシュ達は現状を憂いたり、心を痛めたり、呆れたりしていたが、二人の仲直りには賛同的だった。

 

 

「だが、どうやって仲直りさせるんだい?リィエルは頑なにウィリアムから距離を取っているし、ウィリアムも意固地になっているけど?」

 

「そうね……原因は文字通り、強硬手段だったことなのよね……ウィリアムがそこを謝れば、リィエルも機嫌を直すと思うんだけど……」

 

「でも、リィエルが虫歯治療を完全に拒んだちゃったのも原因なんだよね……ウィリアム君も最初は口で説得しようとしてたし……」

 

 

ルミアの言う通り、ウィリアムは最初から強硬手段に出た訳ではない。最初は口で説得しようとしていたのだが……

 

 

『リィエル。虫歯を直さないとお前の好きな苺タルトが食べられないんだぞ?』

 

『……それは困るけど……やだ』

 

『放置したら今以上に悪化して、そのすごい痛みが常時襲ってくるんだぞ?』

 

『……それでも、やだ』

 

『今回は麻酔の効きが悪かったんだ。ちゃんと麻酔が効けば、痛くないさ』

 

『……ウソ。次もきっと、すごく痛い』

 

『……最悪、命にも関わるんだぞ?』

 

『……痛いのは、いやだから……絶対やだ』

 

『…………』

 

 

と、こんな感じで頑なになってしまったので、仕方なく強硬手段に出た部分もある。一概にウィリアムが全面的に悪いと言い切れないから余計に難しくなってしまったが。

その事実にシスティーナ達が頭を悩ませていると、教室の扉が盛大に開かれる。そこに居たのは……

 

 

「話は聞かせてもらったッ!このグレン大先生に任せるがいいッ!!」

 

 

……丸めた用紙を片手に抱えたグレンだった。

 

 

「……カッコつけてますけど先生、既に知っていることをドヤ顔で言わないで下さい」

 

「まぁまぁ、システィ……」

 

 

ジト目でツッコミを入れるシスティーナを、ルミアが曖昧に笑ってたしなめる。他の生徒達も、呆れたような視線をグレンに送っていた。

そんな中、グレンはドヤ顔していながら、内心ではものすごく焦っていた。

 

 

(あのまま二人が仲違いなんて冗談じゃねーぞっ!?漸く、リィエルの手綱を押し付け……任せられる相手が現れたってのに、このままだと俺の心労が宮廷魔導士時代に戻っちまうじゃねーか!!それだけは、絶対に阻止しねーとマズイ!!)

 

 

……相当ロクでもない理由で、二人を仲直りさせようとしていたのだった。

 

 

「と、とにかく!あの二人を仲直りさせるんだろ!?それなら、既に俺がとっておきの策を用意しているんだッ!!」

 

「……本当ですか?」

 

「ああ!本当だ!これが、そのプランだ!!」

 

 

グレンはそう言って、抱えていた用紙を広げ、黒板へと張り付ける。

大まかな内容は……

 

1.学院の仕事と称して、とある倉庫にウィリアムとリィエル、二人きりでやらせる。

2.そこで仲直りすれば終了。仲直りしなればプラン2に移行。

3.プラン2は密かに作り上げたセリカが用意した特性空間に放り投げ、オーウェル製の仕掛けや小道具で二人にちょっかいを仕掛けていく。

4.最後に大型の魔導人形を倒させてハッピーエンド。

 

……何とも微妙なものであった。

 

 

「……いい加減過ぎませんか?」

 

「あはは……」

 

 

当然、システィーナからは相変わらずのジト目でツッコミを入れられ、ルミアも変わらずに曖昧な笑みを向ける。他の生徒達も似たり寄ったりの反応だ。

だが、これ以外に妙案が思い浮かんでいないのも事実だ。

 

 

「とにかく、実行は明日だ!気合いをいれろよ、諸君!?とにかく、『仲直り大作戦』ッ!!ここにスタートじゃぁああああああああ―――ッ!!!」

 

「「「「ぉおおおおおおおおおおーーッ!!!」」」」

 

 

グレンの力強い宣言に、システィーナ達は半分ヤケになった心境で作戦参加を決め、雄叫びを上げるのであった。

 

 

 




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