やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


魔獣スペルモンキーのイタズラ

アルザーノ帝国魔術学院のとある日。

 

 

「昨日、授業の為に取り寄せていたスペルモンキーが脱走した」

 

 

学院校舎本館の大会議室の議長席でリックが沈痛な面持ちで告げた言葉に、急遽呼び集められた全教職員がざわめき立つ。

スペルモンキーとは、見た目は縞模様の毛並みに目が不釣り合いな程に大きい小猿であり、相応の時間をかければ魔術を扱えるという珍しい魔獣だ。一見すれば使い魔として優秀に見える魔獣なのだが、このスペルモンキーは大のイタズラ好きという傍迷惑な習性を持っているのだ。しかも、無駄に悪知恵が働くというオマケつきで。

 

 

「全く、誰が原因で逃げ出したのだ!!」

 

「…………」

 

 

ハーテンダー(?)の怒りに満ちた言葉に、グレンは若干目を泳がせる。それをハーテンダー(?)は見逃さなかった。

 

 

「グレン=レーダス!!よもや貴様がスペルモンキーを逃がしたのかッ!?そういえば昨日は貴様が授業の為に持ち出していたな!?」

 

「違いますよハーレイチェル先輩ッ!!確かに昨日一回檻の中から取り出しましたけど、ちゃんと鍵は閉めて戻しましたよ!?」

 

「余計な言葉が混じっているぞグレン=レーダス!!兎に角、本当に鍵は閉めたのか!?物理的だけでなく魔術的にも閉めなければ、スペルモンキーは簡単に檻から抜け出すぞ!!」

 

「…………あっ」

 

 

ハーレイチェル(?)の続く言葉にグレンは普通に施錠しただけだと思い出し、抜けた声を洩らす。

ハーレイチェル(?)の言う通りスペルモンキーは悪知恵が働く為、物理的な鍵だけでは魔術を使って簡単に解錠してしまう。

しかも今回取り寄せたスペルモンキーは魔術を結構覚えているのだ。簡易な魔術的施錠なら簡単に解呪(ディスペル)してしまう。

 

 

「やはり貴様が原因かぁあああああああああああ―――ッ!!!!」

 

「イヤ、マジで違いますって!!確かに魔術的施錠は忘れましたけど、そのすぐ後、男爵に渡しましたよ!?」

 

 

グレンのその弁明で一斉に視線がツェスト男爵方へと向く。

 

 

「そうだったのかい?スペルモンキーが大人しかったから、てっきりちゃんと閉まっていると思って、試しに白魔術の使い方を教えたのだが……」

 

「使い方ですか!?まさか……」

 

 

最近新しく赴任したギーゼン=Gアルバーンが焦燥を露に問いかけると、ツェスト男爵は紳士然とした雰囲気で答えた。

 

 

「うむ。女の子を泣かせたり、怖がらせたりする使い方等だ」

 

「さ、最悪だぁあああああああああああああああ―――ッ!?」

 

「あのスペルモンキーになんという事を教えたのですか男爵!?」

 

「……グレン君。責任以てスペルモンキーを捕まえてくるんじゃぞ?捕まえられなかったら減給ね」

 

「そんな!?」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――同時刻。いつものように賑やかな学生食堂にて。

 

 

「あれ?俺のライ麦パンが消えてるぞ?」

 

「もう食べちゃったんじゃないの?」

 

「そんな筈はないんだけどなぁ……?」

 

 

テーブルに座って食事を摂っていた男子生徒はいつの間にか消えていたライ麦パンに首を傾げながらも地鶏の香草焼きを口に運んでいく。

そんな彼らのテーブルの下には、黒魔【セルフ・トランスパレント】―――自己透明化の魔術で隠れている縞模様の子猿―――件のスペルモンキーがライ麦パンをモグモグと頬張っていた。

そんな中、普段は学院外の高級料亭で食事するウェンディは久々に学生食堂で昼食を摂ろうとしている。

 

 

「《キキキ》ッ」

 

 

スペルモンキーが料理が載ったトレーを手に抱え、空いている席を探しているウェンディに左手を向けて詠唱する。

 

 

「ん……ッ!?」

 

「どうし―――」

 

「え―――」

 

 

すると、周りの生徒達が一斉にウェンディに向ける目が点となり、視線が釘つけとなる。厳密に言えば彼女の下半身に。

 

 

「え……?」

 

 

ウェンディは周りの視線と、突然感じる下半身の涼しさに顔を下に向けると、足下には制服のスカートが落ちていた。

スペルモンキーが白魔【サイ・テレキネシス】でウェンディのスカートを降ろしたのである。

 

 

「―――イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?!?」

 

 

事態を理解したウェンディは顔を真っ赤に染めて大声を上げ、トレーを手放してその場にしゃがみこむ。

料理が載ったトレーが音を立てて床に落ち、床を汚すも、ウェンディはそれに気も止めずに急いでスカートに手を伸ばす。だが―――

 

 

「ああッ!?待ってくださいましぃいいいいいいい―――ッ!?」

 

 

スカートは何かに引っ張られるようにウェンディから離れていき、そこまま窓の外へと消えていった……

 

 

「《キキ・キキキ・キキウキ》ッ」

 

 

そんな窓に向かって手を伸ばすウェンディに、スペルモンキーは更に呪文を唱える。

すると―――

 

 

「イヤァアアアアアアアアアア―――ッ!?わたくしの身体中に虫がぁああああああああああ―――ッ!?!?」

 

 

白魔【ファンタズマ・フォール】で蜘蛛、バッタ、蟷螂、黒い悪魔、ムカデ、等の昆虫達が身体中にくっつき、這う幻影がウェンディに襲いかかる。

今見えている光景が幻影だと気づいていないウェンディは完全にパニックとなり、身体中に張り付き、服の中に侵入している虫達を振り払おうと必死になっている。

 

 

「《ウキャ・キキキ・キキャー》」

 

 

そんな涙目のウェンディに、スペルモンキーは白魔【マリオネット・ワーク】を唱え、ウェンディにセクシーダンスを無理矢理踊らせていく。

 

 

「お願いですから、見ないでくださいましぃいいいいいいい―――ッ!!!!!」

 

 

もう何が何なのかわからないウェンディはガチ泣きで必死に叫ぶ。

 

 

「《ウキ》」

 

 

スペルモンキーは最後に白魔【スリープ・サウンド】を放ち、パニック真っ只中のウェンディを一気に夢の世界へと旅立たせた。

 

 

「キキッ♪」

 

 

スペルモンキーは上機嫌で鳴き、混乱真っ只中の食堂を後にしていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「もう既に被害が出ていたとは……」

 

 

医務室のベッドの上で眠っているウェンディを見てグレンは悔やむように声を絞らせ、拳を握り絞めていく。

あの後、学生食堂で騒ぎが起きていると聞き、グレンが急いで駆けつけたのだが、その食堂では自身の生徒であるウェンディが憐れな姿で眠っている光景が広がっていたのだ。

そして、周りの生徒達から詳しい事情を聞き、スペルモンキーの仕業だと気づいたのである。

 

 

「早くスペルモンキーを捕まえないと、被害がどんどん広がっていきますよ」

 

「……ああ、わかっている」

 

 

ギーゼンの言葉にグレンは沈痛な面持ちで同意する。

 

 

「僕はセシリア先生の面倒もありますので、捕獲には参加出来ませんが頑張ってください」

 

「ああ……」

 

 

グレンはその瞳に静かな闘志を宿し、スペルモンキーを捕獲する為に医務室を後にしていった。

 

 

 




オリ主出なかったなぁ·····
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