やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


魔獣スペルモンキーのイタズラ・2

グレンが決死の表情で医務室を後にした頃―――

 

 

「珍しいなギイブル。俺に質問してくるなんて」

 

「ふん。君に勝つ為なら、これくらいは甘んじて受け入れるさ」

 

 

学院のカフェテラスにウィリアムとギイブルはそれぞれの飲み物とサンドイッチをテーブルの上に載せてそこにいた。

午前の授業が終わった後、ギイブルが先の錬金術の授業でウィリアムに聞きたい事があると言ってきたので、ウィリアムはたまにはいいかと思い、昼食を摂りながら質問に答える事にしたのである。

 

 

「ここの配列式と根源素(オリジン)の数値は大体こんな感じだな……」

 

「なるほど……だが、それだと……」

 

「ああ、それは……」

 

 

そんな会話に夢中になっている二人のそれぞれの飲み物に、何かが混入されるような波紋が広がっているが二人はそれに気づいていない。

 

 

「―――まぁ、大体こんな感じかな?」

 

 

ひとしきり説明を終えたウィリアムは、そのまま手元のコーヒーが入ったカップを持ち、カップを口につけると―――

 

 

「ブフゥ―――ッ!?」

 

 

あまりにもあり得ない辛さに、口に含んでいたコーヒーを一気に噴き出した。

 

 

「どうしたんだいウィリアム?急に―――」

 

 

ギイブルは呆れながらカップの中の紅茶を口に運ぶと―――

 

 

「―――ッ!?ゴホッ、ゲホッ!」

 

 

最初に飲んだ時とは全く違う、あり得ない甘さに噎せて、紅茶を吐き出してしまっていた。

 

 

「ウキキッ♪」

 

 

その光景を、彼らの飲み物に食堂から掠め取った調味料を大量に投入していたスペルモンキーは上機嫌で視界に収めた後、次のイタズラの為にその場から密やかに離れていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

スペルモンキーが次に訪れたのは中庭であった。そんなスペルモンキーが次に狙いを定めたのは、和気藹々と食事を摂っている三人の女子生徒―――システィーナ、ルミア、リィエルである。

 

 

「だからあの論文はおかしいのよ!!今まで出された論文を総合的に考えれば―――」

 

「あはは……」

 

 

古代遺跡マニアのシスティーナは自身の持論を熱烈に語っており、それを聞いているルミアは曖昧に笑い、話の内容を理解していないリィエルはモグモグとパイを頬張り続けている。

 

 

「《キィキィ・キキャキャ・ウキュー》」

 

 

茂みに隠れたスペルモンキーは、変わらずに鳴き声で呪文を唱える。唱えた呪文は―――白魔【チャーム・マインド】だ。

 

 

「だから―――」

 

 

そんな捲し立てるように熱く語っていたシスティーナの口が不自然に止まった。

 

 

「…………」

 

「?システィ?どうしたの急に?」

 

 

突然静かになったシスティーナにルミアが心配そうに声をかける。すると、ルミアを見るシスティーナの顔がまるで恋する乙女のようになり、そのままゆったりとした動作でルミアに近寄っていく。

 

 

「……ルミア……私は貴女の事がずっと……」

 

「えっ、ちょっ!?システィ!?」

 

 

心無しか、目がハートになっているシスティーナはそのままルミアを押し倒し、彼女の制服の上着に手をかけ始める。

 

 

「ど、どうしたのシスティ!?急にこんな……」

 

「また、育ってる……本当に羨ましいなぁ……」

 

「ひゃん!?駄目だよシスティ……あ、あんッ!」

 

 

システィーナはルミアの制服のボタンを外して、その白い肌と豊満な胸を覆う下着をさらけ出させ、揉んで、顔を埋めていく。

その百合百合しい光景に、中庭にいた男子生徒達は鼻を押さえてその場で蹲った。

その光景をリィエルは不思議そうに見つめていたが……

 

 

「《ウキ・キキウキャ・キュー》」

 

 

そんなリィエルに向かって、スペルモンキーが白魔【コンフュージョン・マインド】を唱えた。

 

 

「……暑い」

 

 

当然、何の備えもしていなかったリィエルはその【コンフュージョン・マインド】をマトモにくらい、熱にうなされたようにポツリッと呟く。

 

 

「……水浴び、したい……」

 

 

リィエルは周りを見渡すが近くに池も噴水も見当たらず、探している間にも感じる暑さがどんどん高くなっていく。

 

 

「……仕方ない。脱ぐ」

 

 

リィエルはそう呟くや否や、自ら制服の上着を脱ぎ始めた。

 

 

「だ、駄目だよリィエル!こんなところで脱いじゃ、あぁんっ!」

 

「……そうなの?だけど、すごく、暑い……」

 

 

システィーナに身体をまさぐられているルミアが制止の声をかけ、リィエルは一度手を止めるも―――

 

 

「……やっぱり、脱ぐ……」

 

 

やはり暑さに耐えきれずに制服を再び脱ぎ始めた。

 

 

「目の前に『楽園(エデン)』があるぞ!!」

 

「たとえ底辺に墜ちようと、この光景を脳裏に焼き付けなければ、悔やんでも悔やみきれない!!」

 

「男子!!今すぐここから立ち去りなさい!!」

 

「しっかりして!!ここでそんな事をしたら駄目だよ!!」

 

 

目の前で出来上がりつつある光景に、男子生徒達は記憶に焼き付けようとしたり、女子生徒達は止めようとしたりと騒動はどんどん大きくなっていく。

 

 

「ウキャキャッ♪」

 

 

その光景をスペルモンキーは大変満足そうに眺めた後、軽い身のこなしで立ち去っていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

―――再び医務室にて。

 

 

「―――~~~~~~~~ッッッ!!!!!!!!!!!」

 

「涼しい……」

 

 

ベッドの上でシーツにくるまって悶えているシスティーナと、大きな氷嚢に抱きついて眠っているリィエルがいた。

あの後、騒動を聞き駆けつけたグレンと、騒がしさから顔を出したウィリアムにより、その場は何とか収まった。

システィーナは精神を浄化された後、自身の仕出かした行動からの羞恥で悶えまくっており、リィエルも精神を浄化されたがその余韻はまだ残っており、ウィリアムが用意した氷嚢で涼を取って眠りこけてしまっていた。

 

 

「スペルモンキーが脱走とか……本当に面倒臭い事態だろ……」

 

「うん……そうだね……」

 

 

医務室で事態を知ったウィリアムはうんざり気味に呟き、ルミアも複雑な表情で同意する。

ちなみにグレンはシスティーナとリィエルを医務室に運ぶよう指示した後、再びスペルモンキー捕獲の為に動き回っている。

 

 

「しかし、スペルモンキーは何故ここまで卑猥なイタズラを……?男爵の入れ知恵があるとはいえ、ここまで執拗に―――」

 

『ガッデム!!』

 

 

ギーゼンが今回のスペルモンキーの行動に疑問に思っていると、医務室の扉が大きな音を立てて開き、そこからズカズカとオーウェル製の魔導人形『バタフライフィールド』が入って来た。

 

 

「うわ!?何なのですか!?」

 

『マスターノ研究室カラ発明品ガ盗マレタ!オ前達、何カ心当タリハナイカ?』

 

「……何が盗まれたんだ?」

 

 

バタフライフィールドの質問に、ウィリアムは猛烈なまでに嫌な予感を覚えながら盗まれた物を聞く。

 

 

『マスター謹製『ナゼカ服ダケ溶カス液』ダ』

 

 

その瞬間、全員の顔が一気にひきつった。この状況でその液体が盗まれた理由等一つしか浮かばない。

 

 

『ソノ反応、何カ知ッテイルナ?』

 

「えっと……」

 

 

ルミアが代表してそれに答えようとした―――その時。

 

 

「「「「…………きゃああああああああああ―――……」」」」

 

「「「「…………う、うおぉおおおおおおお―――……」」」」

 

 

遠くから叫び声が響いてきていた。

 

 

「「「…………」」」

 

 

その瞬間、ウィリアム、ルミア、ギーゼンは最悪の事態が起きた事を悟った。

この数分後、『対スペルモンキー緊急会議』が生徒会室で開かれる事となった。

 

 

 




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