やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


魔獣スペルモンキーのイタズラ・3

「……これより、スペルモンキー対策会議を始めます」

 

 

重苦しい雰囲気の中、生徒会長のリゼが口を開く。

 

 

「スペルモンキーは数十分前、学院の屋上から変態マスターの『なぜか服だけ溶かす液』を小雨のようにばら蒔き、中庭にいた多くの生徒の制服を溶かしました……」

 

「現在、服を溶かされた生徒達は学院に置いてある実験用のフード付きローブを着用させて空き教室に男女に分けて待機させてますが……女子生徒達が負った心の傷は甚大です……」

 

 

生徒会役員の一人が痛ましげな表情で報告する。

スペルモンキーはオーウェルの研究室から件の液体が入った瓶を持ち出した後、屋上へと上がり、魔術を使って振り撒いたのだ。

当然、振り撒いた先の中庭に居た生徒達の衣服は溶け、男女の肌色桃源郷が形成された。

全身肌色となった女子生徒達はその場で己の秘所を隠すように蹲り、同じく肌色となった男子生徒達は自身の秘所を隠すのを忘れて充血するほど凝視し、騒動を聞き付けた男子生徒達が女子生徒達の生まれたままの姿を拝みに行くという事態が起きた。

その後は被害にあっていない女子生徒達の迅速な()()の対応でその場は何とか収まったが、このままだとスペルモンキーによる被害は拡大していく一方である。

 

 

「現在、この場にいない生徒会と有志メンバー達がスペルモンキー捕獲に動いていますが……」

 

「この学院にいる全ての人達に【マインド・アップ】を自身に付呪(エンチャント)するよう徹底してください。これ以上の犠牲者を出さないためにも―――」

 

「大変です会長さん!!」

 

 

その会議を中断するように、生徒会に入り浸っているオーヴァイ=オキタが生徒会室へと入って来る。

 

 

「どうしましたか!?まさか、またスペルモンキーの被害が……ッ!?」

 

「はい!今回の犠牲者はハーレイ先生です!!ハーレイ先生の頭に強力な魔術接着剤を塗りたくられたハゲ頭のカツラを被せられて、それをハーレイ先生が無理矢理外した結果、貴重な毛根に甚大なダメージを負いました!!間違いなくスペルモンキーの仕業ですよ!!」

 

「……そうですか」

 

 

スペルモンキーがもたらしたであろう微妙(?)な被害の報告にリゼが力なく応答した矢先、机に置いてあった通信魔導器が音を立てて点滅を繰り返し始める。リゼは慣れた手つきで通信器を操作し、耳へと装着する。

 

 

「どうかしましたか?」

 

『大変ですリゼ会長!!着替え中の女子更衣室に数名の男子生徒が堂々と更衣室に入り、女子生徒達から集団リンチされていました!扉を確認したところ、女子更衣室を示すプレートが男子更衣室を示すプレートにすり替えられており、スペルモンキーの仕業に違いあ―――』

 

『会長!!学院飼育用のラナード蛇が学院の廊下を徘徊しています!!おそらくスペルモンキーが―――』

 

『割り込み失礼します!!こちらは死んだ魚のように倒れている男子生徒二名を発見しました!!周りから事情を聞いたところ、その男子生徒は顔が不自然に距離を詰め、互いに唇を重ね合わせたとの事です!!これもスペルモンキーの仕業―――』

 

『廊下にクリームまみれの女子生徒が―――』

 

『こちらはツェスト男爵がスペルモンキーの仕業に託つけイヤァアアアアアアアアアアアア―――ッ!?!?』

 

『シュウザー教授!!お願いですから何も―――』

 

 

次から次へと上がっていく被害報告。たった一体のスペルモンキーにいいようにやられている現実に、リゼは必死に頭を回転させていく。

一度頭を落ち着かせようと、リゼは手元にある紅茶の入ったカップを口につける。

 

 

「あ、私も頂きますねー」

 

 

オーヴァイも軽い水分補給程度でポットの紅茶をカップに注いで口につける。

そして、リゼが生徒会メンバーに指示を出そうとした―――その直後。

 

 

「ふふっ……」

 

「か、会長……?」

 

 

突然全身を小刻みに震わし始めたリゼに、その場にいるメンバーが困惑した―――次の瞬間。

 

 

「「あーっははははははははははははははははははははははははははははははは―――ッ!?」」

 

 

リゼとオーヴァイが突如、部屋中に響き渡るほどの馬鹿笑いを始めた。

 

 

「か、会ちょーーーーーう―――ッ!?」

 

「い、いきなりどうしたの!?」

 

「ど、どうしたんですか!?急に―――」

 

 

その場にいた全員がリゼとオーヴァイの突然の急変に慌てて駆け寄ろうとした直後、不意に生徒会室の扉に気配を感じ、急いでそちらに目を向けると、開け放たれた扉の前には灰と黒の縞模様、不釣り合いな程に大きな黒い目の子猿―――件のスペルモンキーと小さな妖精がいた。

 

 

「「「「…………」」」」

 

「キキャ♪」

 

 

スペルモンキーは楽しそうな鳴き声を残し、妖精―――召喚した使い魔とともに立ち去っていった。

 

 

「「「「……急いで追いかけろぉおおおおおおおおおお―――ッ!?」」」」

 

 

ようやく我に返った一同は大急ぎでスペルモンキーの後を追いかけていった。

 

 

「あははははははははははははははっ!?あっはははははははははははははははは―――ッ!?」

 

「あははははははあごはぁッ!?あはごはげほっはごほぉッ!?」

 

 

強力な精神高揚剤入りの紅茶を飲んだリゼとオーヴァイを放置したまま……

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――三度医務室にて。

 

 

「す、すいません……御迷惑をおかけしました……ふふっ」

 

「まだ無理しないでくださいね。中和剤は射ったけど、完全にとはいかないからね」

 

「はい……」

 

「うきゅう~……」

 

 

あの後、リゼは何とかオーヴァイを背負って自力で医務室へと訪れ、ギーゼンから精神高揚剤の中和剤を射ってもらい、何とか会話ができるまでには回復した。

オーヴァイも中和剤と治癒魔術を施され、何とか無事である。

 

 

「本当にスペルモンキーの被害が広がっていく一方ですよ……」

 

 

ギーゼンは力なく視線を横へと向けると、未だ夢の中のウェンディ、氷嚢に抱きついて寝ているリィエル、失神しているハーレストア(?)、全身がボロボロとなっている数名の男子生徒、うなされているセシルとハインケル等、多くの犠牲者が医務室に居た。

 

 

「早く解決しないでしょうか……」

 

 

ギーゼンがそう呟いて深く溜め息を吐いた―――その直後。

 

 

「―――イヤァアアアアアアアァァァ…………」

 

 

遠くの方から、羞恥から立ち直り怒りへと転化してスペルモンキー捕獲に参加していたシスティーナの悲鳴が聞こえてきていた。

その数分後―――

 

 

「あは、あははは……」

 

 

壊れたように笑い声を上げるシスティーナが運ばれてきた。

 

 

「……彼女に一体何がありましたか?」

 

「……ラナード蛇に情熱的に巻き付かれていました」

 

 

ギーゼンの質問に彼女を運んできた生徒が痛ましそうに答える。

システィーナはスペルモンキーにラナード蛇が好むフェロモン液を頭からかけられてしまい、それを嗅ぎ付けたラナード蛇が求愛行動で巻き付いた結果、蛇が苦手なシスティーナはその恐怖のパラメーターが振り切れてこうなってしまったのだ。

一先ず、ギーゼンはシスティーナに精神安定剤を投与し、床に敷いたシーツに寝かせると……

 

 

「……上等だ。この(オレ)自ら成敗してくれようぞ」

 

「あのふふっ、ギーゼン先生……?」

 

 

リゼの疑問を無視してギーゼンは王者のような歩みで医務室から出ていった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

学院本館の廊下にて。

 

 

「くぉおおらぁああああ―――ッ!!待ちやがれぇええええ―――ッ!!!」

 

「キキー♪」

 

 

グレンが決死の表情でスペルモンキーを追いかけていた。

現在、グレンは【愚者の世界】を起動しスペルモンキーの魔術を封じているのだが、スペルモンキーは【フィジカル・ブースト】で強化した身体能力で軽々と逃げ回っている。

そんなからかうようにグレンの方に顔を向けるスペルモンキーの前方が突如、空間が波紋のように揺らめき、その揺らめきから三本の剣が発射された。

 

 

「ウキャッ!?」

 

 

その突然の攻撃にスペルモンキーは咄嗟に飛んでかわすも、スペルモンキーの周りの空間が幾つもの波紋の揺らめきが出来上がり、そこから大量のネットがばら蒔かれる。

 

 

「キキャーッ!?」

 

 

そのネットの弾幕にスペルモンキーはなすすべなく捕まり、無様に地面へと這いつくばる。ネットには【ディスペル・フォース】が付呪(エンチャント)されているようであり、スペルモンキーはバタバタと足掻くだけであった。

 

 

「フン。随分と虚仮にしてくれたな、山猿」

 

 

そんなスペルモンキーと、あっさりと捕まった事に茫然となるグレンの前に、口調と雰囲気が見事に変わっているギーゼンが悠然とした足取りで現れる。

 

 

「今からこの(オレ)自ら貴様に躾を施してくれよう。有り難く受け取るがいい」

 

 

ギーゼンはそのまま不適な笑みでスペルモンキーへと歩み寄り―――

 

――― 一時間後。

 

 

「キ、キキャァ……」

 

 

檻の中でガクガクブルブルと震えているスペルモンキーが出来上がっていた。

 

 

「スペルモンキーの捕獲、お疲れ様ですグレン先生」

 

「あー、うん。ソウデスネ……」

 

 

普段の雰囲気に戻ったギーゼンの労いの言葉に、グレンは遠い目で頷く。

ギーゼンはどういうわけかシスティーナに薬を投与した後からの記憶が物の見事に抜け落ちており、躾の一部始終を見ていたグレンはそれに触れてはいけないと思い、その辺りの追及を諦めていた。

こうして、スペルモンキーのイタズラ騒動は幕を……

 

 

『何々……『カッシュ……マイ……フレンド……』ダト?』

 

 

閉じる前にまだ一悶着がありそうであった……

 

―――数分後。

 

 

『カシューナッツヨ。オ前ガ黒幕ダッタカ』

 

「違う!断じて違う!!」

 

『アノ猿ハ、『カッシュ……マイ……フレンド……ダカラ……喜バセタカッタ……』ト言ッテイタゾ』

 

「だから違うと―――」

 

『ソシテ、オ前ハ昨日、『ドウセナラエロイイタズラヲシテクレタライイノニナ』トコノ猿ノ前デ喋ッテイタダロウ』

 

「確かに言ったけど誤解だぁああああああああ―――ッ!!」

 

『三ッ!二ィッ!一ッ!!』

 

 

スパパパパパパパパパパパパパパパパパンッ!!!

 

 

「ブファファファファファファファファファファファファファッ!?」

 

『ガッデムッ!!!!!』

 

 

バタフライフィールドの制裁の往復ビンタを喰らい、顔をタコのように大きく真っ赤に染まった男子生徒が出来上がっていた。

 

 

 




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