てな訳でどうぞ
学院にある資材倉庫の一つ。
その倉庫内には顔を覆面で隠した集団が集まっていた。覆面の下の服は学院の男子の制服だ。
「……全員揃ったな?」
その言葉にその場にいる全員が頷く。
「では報告を」
「社交舞踏会の時点で既に判明していたが、今年も奴らが多く存在していた」
その報告をした人物は拳を堅く握り締め、ブルブルと震わせている。周りの人物達も肩をわなわなと震わせている。
「その中でも特に注意すべき人物は二人いる……」
「その人物は?」
「二年二組の担任講師グレン=レーダスとその学生、ウィリアム=アイゼンだ。特に後者が」
ギリッと歯を噛み締めているのを見る限り、相当な憎悪が宿っているのが一目でわかる。
「あの二人は確かに注意すべき人物だな。特に後者が」
「そうだな……」
拳をギリギリと堅く握り締める音が辺りに響いていく。
「アイツにはそんなのとは無縁と思っていた時期があったが……」
「今では奴らの筆頭だ……ッ!」
「ああ、あの子が来てからウィリアムの奴らの仲間入りが加速していった……ッ!」
「教室で寝ている時はウィリアムに添うように一緒に寝ていた……ッ!」
「休日には一緒に買い物や食事をしてすごしていたという情報もある……つまり、デートしていたという事だ……ッ!」
「社交舞踏会ではダンス・コンペに出場。一緒に踊って、優勝一歩手前だった……ッ!」
「詳細不明の女学院の同行前には口移しでのキスを……あの子の方から……ッ!!」
「あの事件からはシスティーナの家に居候…………そして、その子と毎日一緒に寝ているときたッ!!!!」
「「「「「あのリア充めがッ!!!!!!!!!!!」」」」」
全員から呪詛の声が一斉に上がる。
この集まりは
「チクショウッ!!どうしてアイツらばっかりがいい思いするんだよ!?」
「グレン先生は我らが大天使とメチャクチャ仲良くしてるし、システィーナとも……ッ!!」
「ウィリアムはリィエルちゃんと濃厚なリア充振りを……ッ!!」
「先日の獣耳では、リィエルちゃんの耳と尻尾を触っていたし……ッ!!」
「しかも本人公認だぞ!?」
「「「「羨ましすぎるぞ、チクショウッ!!!」」」」
全員、覆面の穴から血涙が流れている。
「しかもこれは噂だが、その日のベッドの上でウィリアムがリィエルちゃんを愛でたようだぞ!?」
「「「「何だと!?」」」」
「詳細は勿論、真偽も分からない……だが、その翌日のウィリアムの顔は真っ赤となっていたし、起きているのに机の上に突っ伏していたから信憑性は高い!!」
「このままではそう遠くない未来、二人がバージンロードの上を歩く事になるぞ!!」
「一刻も早く恋愛格差社会に終止符を打たなければ!!」
「……待て、お前達」
場が混沌とするなか、静止の声が静かに響き渡る。
「誰かは知らねえが止めるな!!」
「このうらやま階級をぶち壊し、我らの嘆きと怨嗟を晴らすべきなのだ!!」
「確かにその通りだ。だが……」
落ち着いた声でその人物は語っていく。
「この彼らの愛を今ここで潰してはいけないのではないか?真の愛なら尚の事。俺達は一度彼らリア充を祝福すべきだ……」
「そ、それは……」
「そうかもしれない。だけど……」
「俺達は……俺達はぁ…………ッ!?」
苦渋の声があちこちから響き渡る。
「そして、最高の瞬間で奴らリア充を地獄の底へと叩き落とすのだ!!そうすれば我らの無念を奴らも理解するだろう!!」
「「「「外道だッ!!外道がここにいるぞ!?」」」」
「「「「だが、異議なし!!!!」」」」
「それなら出来立てほやほやのリア充はどうすべきでしょうか!?」
「出来立てのリア充は、魔術を使って男の浮気を偽装して、その仲を破壊すればいい!!」
「了解であります!!」
「了解じゃないですよー」
不意に少女の声が倉庫内に響き渡った。
「だ、誰だ!?」
一同が振り返ったその先に居たのは、学院の制服にブーツ、黒いマフラーを首にかけ、若干長い金髪をポニーテールで括った、肌白い少女だ。
「一年三組のオーヴァイ=オキタさんです。これから貴方達を叩きのめしますよー」
「何故自称天才剣士が俺達を!?」
「いやー、見廻りしていたら何やら不穏な会話がこちらから聞こえてきたので聞いてみたら物騒でしたので、この最強無敵、天才のオキタさんが貴方達を成敗しますよー!!!後、自称ではありません。オキタさんは本当に天才ですよ」
オーヴァイは木刀をブンブンと振り回しており、気合いは十分である。自称呼ばわりされ、若干目が据わっており、最後の声は底冷えしていたが……
「それにしても丁度良かったです。この間の防衛戦はゴーレム達をバサバサと斬りまくっていましたが、最後のドデカイゴーレムを斬れませんでしたからねー。消化不十分でしたからここであの時の鬱憤を晴らしますよー。あ、後、生徒会長さんからは既に許可は貰ってますよ?『馬鹿している人がいれば叩いていい』と」
「用意周到すぎる!?」
「それじゃあ、いきますよー」
オーヴァイは素早い動きで彼らへと仕掛けていった。
·····そこから先は多くは語るまい。
「奥義、無明三段突き!!」
「うぎゃーっ!?」
――――――――――――――――――――
「ふー、スッキリしました」
いい笑顔をするオーヴァイの周りには死屍累々と男子生徒達が転がっており、ピクピクと痙攣している。
「……やり過ぎですよ、オキタさん」
連絡を受けた生徒会長のリゼは呆れたように溜め息をはきながら、オーヴァイに注意している。
「えー?そうですかぁ?木刀ですし大した怪我は負ってない筈なんですが……」
「……それより身体は大丈夫?貴女は体質で身体が弱いから……」
「大丈夫ですよ。この程度で倒れたりは―――ゴバハァッ!?」
会話の途中でオーヴァイは口から血を吐き、その場に倒れてしまう。
「……やっぱりこうなりましたか……」
リゼは呆れながらも微笑んでオーヴァイを背中に担ぎ、医務室へと向かって行き……
「お願いしますね、ギーゼン先生」
「……またなのね……」
ギーゼンは泣く泣く“宝箱”から薬瓶を幾つか取り出し、オーヴァイに飲ませていく。
「確か彼女、スノリア地方の出身だったよね?」
「その筈ですが……」
「彼女、薄着で暮らしていたと言っていたんだけど……」
「……普通は厚着で過ごすべきでは……?」
「この子の身体、本当にどうなっているの……?」
ギーゼンの疑問に答える者はこの場にはいなかった。
下手に出しすぎると舵を取るのが難しくなってくる········どうすればいいのだ!?(自業自得)
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