やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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正真正銘、今年最後の投稿
てな訳でどうぞ


獣耳再び

再建されたアルフォネア邸、その一室にて。

 

 

「なぁセリカ。こいつは……」

 

 

グレンは薬瓶を手に持ち、ひきつった表情でセリカに問い質していた。

 

 

「そいつは例の薬の改良型だ。服用した次の日に効力を発揮するようにな」

 

「まさかとは思うが……」

 

 

セリカの何て事はないという感じの説明に、グレンは猛烈なまでに嫌な予感を覚え、続きを促すと……

 

 

「ああ。既に飲ませてあるぞ。お前達のお昼の飲み物にな」

 

「セリカぁああああああああああああああああああ―――ッ!?」

 

 

予想通りのセリカの返答に、グレンは叫び声を上げる。

 

 

「安心しろよ。子供にはならないから」

 

「安心できるかぁッ!?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――まだ、日が昇らぬ朝のフィーベル邸にて。

 

 

「…………ふぁ……」

 

 

ウィリアムは何時のようにベッドから身体を起こし、背伸びする。腰の辺りに奇妙な違和感があるが、それは起きたばかりで思考が麻痺している故の気のせいだろう。

そして、リィエルを起こそうと視線を向け―――

 

 

「……………………は?」

 

 

ウィリアムはあり得ないものを見たように目が点となって硬直した。

 

 

「いやいやいや。流石にあり得ないだろ。まだ寝惚けているのか?」

 

 

ウィリアムは目の前の現実を否定しようと、目を擦ってから再びリィエルに目を向けるも、そのあり得ないものは未だ存在していた。

 

 

「ハハハッ……どうやら幻覚が見えてるみたいだな……」

 

 

ウィリアムは今度は幻覚と考え、ソレに触れるも―――

 

モフッ。

 

 

「……ん……」

 

 

リィエルの背中にあるソレに触れた瞬間、柔らかい感触と共にリィエルの身体が僅かにピクッと動いた。

 

 

「……ハ、ハハッ……そうか、俺はまだ夢にいるのか……」

 

 

ウィリアムはひきつりながら自身の頬っぺたをつねり、引っ張るも、しっかりと頬から痛みが伝わってきている。

 

 

「……マジでどうなっているんだ……?」

 

 

ウィリアムは目の前の現実を受け入れきれず、頭を抱えた―――その時。

 

ムニッ。

 

 

「…………へ?」

 

 

頭から伝わった奇妙な感触と、手から伝わる柔らかい何かに、ウィリアムは猛烈なまでに嫌な予感を覚え、急いで鏡を見ると―――

 

 

 

―――頭から丸い耳が生えていた。ご丁寧に丸く太い尻尾もウィリアムの後ろからチラチラと見えているというオマケ付きで。

 

 

「―――またなのかぁああああああああああああああああああ―――ッ!?!?!?」

 

 

その瞬間、ウィリアムは一気に原因を理解し、大きな叫び声を上げ、その場に四つん這いで崩れ落ちる。

 

 

「……んむぅ……うるさい……」

 

 

その大声でリィエルが目を覚まし、少し不機嫌そうに起きてウィリアムを見るも、ウィリアムから生えている“狸の耳と尻尾”を前に目を瞬かせ唖然としていた。

 

 

「……ウィル……?それは……?」

 

「……ほぼ間違いなく教授の仕業だ……お前も鏡を見てみろ。お前にも耳と尻尾があるから」

 

 

ウィリアムに言われるまま、リィエルもベッドから起き上がって鏡の前に立ち、姿を確認すると、鏡には“栗鼠の耳と尻尾”が生えた自身の姿が写っていた。

 

 

「……お揃いじゃない」

 

 

ウィリアムとは違う獣の耳と尻尾に、リィエルは悄気たように尻尾を垂らして力なく呟く。

 

 

「……あー……その耳と尻尾も似合っているから……あんまり落ち込むなよ……?」

 

「……ホントに?」

 

 

何とも歯切れの悪い感じでウィリアムはフォローするも、リィエルは何故か探るように聞いてきた。

 

 

「ホントホント」

 

「……じゃあ、触ってほしい」

 

「ッ!?」

 

 

リィエルのまさかの切り返しに、自ら首を絞めてしまったと気づいたウィリアムは絶句してしまう。

だが、ここで躊躇うのと、上書き行動(ディープキス)をされる事を天秤にかけた結果―――

 

 

「……ベッドに座ろうか」

 

 

ベッドの上で尻尾を触るという選択を選ぶ事にした。

 

 

「ん」

 

 

ウィリアムのその言葉に素直に頷き、ベッドの上で女の子座りとなり、尻尾をフリフリと可愛らしく振ってスタンバイする。

そして……

 

 

「……うん。以前の狐の尻尾と比べたら弾力があって、こっちの尻尾も良いな」

 

「……ん」

 

 

ウィリアムはリィエルの尻尾に抱きつくようにその感触を堪能し、リィエルはどこか嬉しそうに目を若干細めてされるがままにしていた。

 

 

「わたしもそろそろウィルの尻尾を触りたい。だから触らせて」

 

「……ハイハイ」

 

 

リィエルのお願いに、ウィリアムは肩を竦めて頷き、リィエルの尻尾から離れ、リィエルに背を向けて胡座をかいてスタンバイ。

それを確認したリィエルは何の躊躇いもなく、ウィリアムの尻尾に抱きつき、その感触を堪能し始める。

 

 

「……ん。この尻尾もモフモフして気持ちいい」

 

「……そうかい」

 

 

リィエルの感想にウィリアムはそう返し、システィーナ達への説明と今朝の通学手段に頭を悩ませていった。

ちなみに……

 

 

「な、な、な、なによこれぇえええええええええええええええ―――ッ!?!?!?」

 

 

早朝特訓の為に目を覚ましたシスティーナは鏡に写った“犬の耳と尻尾”が生えた自身の姿にすっ頓狂な声をあげ……

 

 

「……すぅ……」

 

 

朝に弱い“兎の耳と尻尾”が生えたルミアはすやすやと眠り続け……

 

 

「なっ、なっ、なっ、なっ、なっ…………ッ!?!?」

 

 

イヴは鏡に写った自身の“狐の耳と尻尾”が生えた姿に絶句し……

 

 

「やっぱりこうなったか……」

 

 

グレンは自身に生えた“猫の耳と尻尾”に、諦めたかのように深い溜め息を吐いていた。

またしても、獣耳騒動が幕を開ける事となった。

 

 

 




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