やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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てな訳でどうぞ


獣耳再び・2

ウィリアムとリィエルは一通り互いの尻尾をモフり、ウィリアムがある事実に気付き、リィエルの()()が炸裂した後、制服に着替えて食堂へ向かったのだが……

 

 

「……システィーナ。お前もか……」

 

「……それ以上は言わないで」

 

 

今朝の食事当番で先に訪れていたであろうシスティーナは、犬耳と尻尾を力なく垂れ下げながら気落ちして食堂に居た。勿論、こんな姿なので早朝特訓には行っていない。

 

 

「確実に教授の仕業だよな……」

 

「ええ……そして、先生も一枚噛んでいるでしょうね」

 

「そして、この流れからして……」

 

「うん……ルミアも同じように生えてるでしょうね……」

 

 

精神を削られたような表情のウィリアムの言葉に、システィーナは溜め息と共に概ね同意する。

 

 

「それにしてもウィリアム。私以上に窶れているわよね?……何かあったの?」

 

「…………」

 

 

システィーナの質問にウィリアムは目を逸らして無言を貫く。

実はモフッた後、着替えを促そうとした時にウィリアムは漸く気がついたのだ。リィエルの寝間着のスカートが大きな栗鼠の尻尾によって捲り上がっているという事実に。

当然、スカートの中身が丸見えなわけで、ウィリアムが大慌てで着替えを促した結果―――

 

 

『じゅる……ちゅるちゅる、くちゅれちゅ……ちゅぅぅぅぅぅーー……』

 

 

上書き行動(ディープキス)が炸裂した。

 

 

「……あー…………」

 

 

ウィリアムのその反応に、システィーナは何となく察して顔を赤めながら何とも言えない声を出す。そんな中―――

 

 

「えっと……その……おはよう……」

 

「「…………」」

 

 

兎の耳と尻尾を生やしたルミアが恥ずかしそうに顔を赤めながら食堂に入ってきた。

ルミアの頭にでピョコピョコと動いているウサ耳を見て、ウィリアムとシスティーナはああ、やっぱりと言った感じでルミアに視線を送る。

 

 

「ルミア。すごく似合ってる」

 

「……うん。ありがとう」

 

 

リィエルだけはいつも通りだった。……踵を浮かせて背伸びして手を伸ばし、ウィリアムの獣耳の付け根辺りを触りながら。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

何とも言えない空気の中、朝食を済ませた四人はウィリアムが具現召喚した人工精霊(タルパ)の鳥に乗って学院へと足を運んだ。

そして、真っ先に教職員室に向かったのだが……

 

 

「えっと……イヴ先生?」

 

「…………何も聞かないでちょうだい」

 

 

教職員室にはまだグレンは居らず、代わりにフード付きのローブを被った不審者全開の姿となったイヴがいた。……フードから二つの出っ張りが出来て、尻尾が見え隠れしているが。

 

 

「……取り敢えず、グレンの先公が来たら絶対に問い質す。物理的にな」

 

 

ウィリアムはそう呟いて全長一・二メトラ程あり、中心部分に引き金がある巨大な真っ黒な十字架を右手に錬成する。この十字架は火薬で内蔵した杭を()()()()ウィリアムの初期の近接武装である。もちろん、普通に鈍器としても使える。十字架に使われている材質は特殊な合金であり、その剛性と靭性はウーツ鋼を越えている。

これがお蔵入りになったのは人工精霊(タルパ)の種類が増えた事とこれ自体の取り回しの不便さからである。

現在はこれを元にした新しい魔導器を目下開発中であるが、あまり上手くいってはいない。先日、アルベルトが持ってきていた魔杖《蒼の雷閃(ブルー・ライトニング)》を()()()()見せてもらい、携帯出来るレベルでの劣化版を作ってはいるのだが、それを含む幾つかの機能を上手く統合させるのに苦労しているのが現状だ。

そんな事はさておき、グレンに質問という名の制裁を加えようと待ち構えていると、ついにグレンがその場に現れた。

 

 

「グレンの先公ッ!!どういう事か……」

 

「グレンッ!!覚悟しな……」

 

 

……猫耳と尻尾を生やした状態で。

 

 

「「「「……………………」」」」

 

「……何だよ?」

 

「……グレンの先公も被害者だったのか?」

 

「……ああ。明日の朝になったら消えるんだとよ」

 

「……そう」

 

 

グレンの返答を境に、辺りに何とも言えない空気が漂う。加害者だと思っていた人物(グレン)が自分達と同じ被害者だったのだから当然だろう。

ちなみに……

 

 

「モフモフ……ぎゅうう…………」

 

 

リィエルはウィリアムの尻尾を堪能し続けていた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

すっきりしない気分のまま、グレン、ウィリアム、システィーナ、ルミア、いつも通りのリィエルは二組の教室へ、イヴは自身の受け持つ軍事教練の授業へと向かう。

二組の教室に入ったグレン達を最初に迎えたのは―――

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

圧倒的な彼らの沈黙と……

 

パシャッパシャッパシャッパシャッ!

 

魔導撮影器が鳴り響く音であった。

女子学生達はすぐにいつもの事だと察して曖昧な笑顔になるも……

 

 

「「「「「ぺっ」」」」」

 

 

男子生徒達はふて腐れたように、そっぽを向いていた。その理由は勿論。

 

 

「スリスリ……」

 

 

ウィリアムの尻尾に頬擦りしているリィエルの気持ちよさげな顔を見たからである。

 

 

「くそ、ウィリア充め……」

 

「本当に先生とウィリア充ばかりずるい……(泣)」

 

「一体どれだけ僕達を苦しめれば気が済むんだ(号泣)」

 

 

そんな風に彼らが嘆いていると、教室の扉が再び開け放たれる。その扉から二つの影が飛び出し、一つはウィリアムへ、もう一つはシスティーナへと向かっていく。その人影の正体は……

 

 

「うはー!!本当にモフモフしていますねー!!」

 

「お姉様ぁあああああああああああああ―――ッ!!!!」

 

 

話を聞いて駆けつけた自称・天才剣士のオーヴァイと、システィーナに恋愛対象で惚れているアルシャであった。

 

 

「ひゃっ!?ちょ……やめ……」

 

「モフモフ……くんかくんか……やっぱりお姉様は最高です……ハスハス……」

 

「いやっ……そこは……んっ……や……」

 

 

目の前で一方的に展開される百合百合しい展開。そのすぐ近くでは―――

 

 

「スリスリ……ぎゅうう……ああ、幸せです……」

 

「むぅ……」

 

「さ、流石に二人がかりはぁああ……」

 

 

オーヴァイがウィリアムの尻尾を堪能しており、リィエルはそれに対抗するようにウィリアムの尻尾にしがみつき、ウィリアムは容赦のないモフりに四つん這いとなって崩れ落ちていた。········子犬と狼が睨み合う幻覚を出現させながら。

 

 

「なぁ……どうやってウィリア充を始末する?」

 

「刺殺、撲殺、毒殺、絞殺。もしくは社会的抹殺で」

 

「下剤はあったかなぁ……?」

 

「視線で穴が空けられるかなぁ……?」

 

 

その光景に男子生徒達は血涙を流しながら物騒極まりない事を呟き続け……

 

 

「これはすんごい美味しい光景や!!」

 

 

チャールズは目を輝かせながら、百合百合しい光景と修羅場な光景を撮影していった。―――グレンの姿も撮影しながら……

 

 

 




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