やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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番外編
てな訳でどうぞ


懲りない白猫の新たな禁忌手記(マイレコード)

「まずいわ……」

 

 

学院の廊下をシスティーナは脂汗を流しながら何かを探し歩いていた。システィーナが脂汗を流している理由、それは……

 

 

「あれ以来、ずっと気をつけていたのにまた落とすなんて……」

 

 

秘密の手記帳を再び落としたからである。以前グレンに拾われて中身を読まれ、盛大に笑われて以来、二度と落とさないよう常に注意していたのだが、またしても落としてしまったのだ。

しかも、以前の図書館とは違い何処で落としたのか心当たりがないのである。

 

 

「うう……本当に何処に落としたのかしら……?」

 

 

システィーナは肩を落として廊下を歩き続ける。落とし物に上がっていない以上、まだ誰かに拾われていないと思うのだがグレンの例がある以上、絶対とは言い切れない。

ちなみに、システィーナが一人で手記帳を探している理由はシスティーナ自身が断ったからである。

システィーナがまた手記帳を落としたと分かった時、近くにいたルミア、リィエル、ついでにウィリアムが探そうかと言った際―――

 

 

『だ、大丈夫よ!!こ、これくらいひ、一人で探して見せるから!!』

 

 

システィーナはテンパりながら申し出を断り、そのまま慌てて立ち去っていったからである。そのシスティーナの様子にウィリアムとリィエルは首を傾げ、何となく察したルミアは曖昧な笑顔でシスティーナを見送っていた。

事情を知っているルミアの申し出まで断った理由。それは今回落とした手記帳の内容に大きな問題があるからだ。

 

 

「あれの中身は絶対に知られる訳にはいかないわ……特にあの二人には」

 

 

そう、あの手記帳に書かれた恋愛小説のシチュエーションがとある二人を参考にしてしまっているからである。もし当人に読まれたらと思うと……想像すらしたくない。

 

 

「と、兎に角、しらみ潰しに探さないと……ッ!!」

 

 

システィーナは奥底から沸き上がる焦燥と不安を抑えながら、落とした手記帳を探し続けた。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

―――学院の附属図書館にて。

 

 

「本当に大丈夫だったのか?宛もなく探すのは相当苦労していると思うんだが」

 

 

書架から幾つか本を抜きながらウィリアムは本を探しているルミアにそう問いかける。

 

 

「あ……はは……だ、大丈夫じゃないかな…………?」

 

「?」

 

 

どこか気まずそうに曖昧に答えるルミアの様子に、ウィリアムの隣にいるリィエルは首を傾げる。

 

 

「……まぁ、本当にまずかったら自ら言いに来るだろうし、いいか」

 

 

内心で面倒臭そうだしと思いながら、ウィリアムはルミアの言葉に納得してあっさりと引き下がる。

そうして、引き抜いた数冊の本を抱えてホールへと戻り、三人で勉強するのだが……

 

 

「…………眠い……」

 

「寝るな」

 

 

魔術の基礎が書かれた本を数ページ読んだだけで眠そうにするリィエルに、対面に座っているウィリアムはリィエルの脳天に右の手刀を落とす。

 

 

「痛い……」

 

「勉強せずに成績が水準以下だったら、また落第退学の話が出てくるかもしれないんだぞ?」

 

 

相変わらずのリィエルにウィリアムは若干呆れつつも以前の話を持ち出す。あの時は様々な思惑から回避できたが、それ以前に口実を与えた事で起こった問題でもあるのだ。暴走は編入当初より大分落ち着いているが成績は相変わらずなので、政治組がまたやらかす可能性もある。なので、口実を与えない為にそれなりに頑張る必要があるのだ。

 

 

「……それはやだ」

 

「いやなら頑張って勉強しろ。分からない事があれば俺が教えるから」

 

「……ん、分かった。それならここを教えて」

 

 

リィエルは素直に頷きながら、本のページの一部を指差しながら教えを請う。ウィリアムは苦笑しながら可能な限り分かりやすく説明してリィエルに教えていく。

その光景をリィエルの隣に座っているルミアは微笑ましく見つめていると―――

 

 

「珍しいですねー。先輩達が此処にいるなんて」

 

 

本を片手に持ったオーヴァイが気づいて話しかけてきた。

 

 

「まぁ、たまにはな。一応勉強しているところだ」

 

 

オーヴァイの質問にウィリアムは何て事のないように返す。オーヴァイはスノリアの旅行以来、ウィリアムに積極的に関わるようになっている。理由は言わずもがなである。

 

 

「そうですかー。あっ、この本返した後でご一緒に勉強していいですか?」

 

「別にかまわないぞ。二人もいいよな?」

 

「うん」

 

「ん」

 

「ありがとうございます。すぐに本を返してきますね」

 

 

了承を得られたオーヴァイはお礼を言いながら本を返しに奥へと行き、数分もしない内にウィリアム達の下へと戻り一緒に勉強を始める。……ウィリアムの隣の席に座って。

 

 

「早速ですがここを教えて下さい、ウィリアム先輩」

 

 

オーヴァイは早々に参考書片手に、わざとらしくウィリアムに近寄りながら教えを請う。

 

 

「いきなり質問かよ……ヒントだけ教えるから後は自分でやれ」

 

 

いきなりの質問にウィリアムは呆れつつも、ヒントを教えようとした矢先、ウィリアムの前にページを開いた本がつき出される。

 

 

「ウィル。ここ、わかんないから答え教えて」

 

 

何故か少しだけ眉をひそめたリィエルが答えを求めてきていた。

 

 

「それじゃ自分の力にならないだろ。ヒントは教えてやるからちゃんと自分で考えろ」

 

「……いじわる」

 

 

その後も一緒に勉強していくのだが……

 

 

「ウィリアム先輩。これの配列式を教えて下さい」

 

「ここ、教えて」

 

「少しは自分で考えてやれよ!?」

 

 

リィエルとオーヴァイが交代でウィリアムに教えを請い続けており、自身の勉強が一切手がつけられないウィリアムは小声でツッコミを入れる。

 

 

「あはは……」

 

 

一人蚊帳の外となっているルミアはオーヴァイとリィエルの内心を察し、子犬と狼の姿を幻視しながら苦笑いして、その光景を見守っていた。

オーヴァイがここまで積極的になっている理由。それはある意味リィエルにある。

リィエルは(無自覚な)大胆行動をウィリアムに起こしているので、それで大きく離されていると実感しているオーヴァイは、勝ち取る為には露骨な程が丁度いいという結論を出しているからだ。

対するリィエルは胸に宿る不快なモヤモヤ感から動いており、その結果、女の戦いがわりと何回も起こっているのである。それでも物理的に排除しようとしない辺り、案外二人の仲は良いのかもしれないが。

 

 

「そういえば、これに心当りはないですか?」

 

 

そんな中、オーヴァイは唐突に鞄から一冊の本、否、手記帳を取り出した。

 

 

「そいつは?」

 

「誰かの落とし物のようでして。気になって中身を拝見した所、内容的には生徒同士の恋愛小説を綴ったものでした。表現も文章も痛々しく、ストーリーもご都合主義とテンプレの連続で相当酷いものでしたね。シチュエーションには憧れましたが」

 

「どんな内容なんだ?」

 

 

オーヴァイの容赦のないダメ出しに、ウィリアムは気になって手記帳の内容を聞く。オーヴァイも律儀に答えていく。

 

 

「ヒロイン視点で進む物語ですが、このヒロインは幼い記憶を失った編入生で、編入初日からモテモテですが、感情の起伏も乏しく、常識も生活能力も皆無の残念な美少女設定ですね」

 

「ふーん」

 

「お相手となる男子生徒は普段からサボってばっかりでやる気の欠片もない、まさに絵にかいた問題児ですが、ヒロインの少女の面倒だけはよく見ていましたね」

 

「…………うん?」

 

「話を読み進めると、実はお二人は昔生き別れた幼馴染みだったんですよ。その後、その記憶を取り戻したヒロインは彼に無自覚な猛アタックを仕掛けていきますね」

 

「…………」

 

「抱きつくのは勿論、口移しのキスに彼の家にお泊まり、果ては馬乗りに同じベッドで寝るという……」

 

「それ以上はヤメロ」

 

 

オーヴァイが語る話の概要を聞き、ウィリアムは能面の顔で打ち切りにかかる。

 

 

「?どうしてなんですか?この後、留学生の眼鏡少女とヒロインの修羅場があるんですが……」

 

「……オーヴァイさん。ページの最後を見てみて」

 

「?はい……」

 

 

手記帳の内容からを全てを察したルミアは物凄く気まずそうに、オーヴァイに最後のページを見るように言う。

オーヴァイは首を傾げながら最後の方のページを開き……

 

 

「……あっ」

 

 

最後のページに書かれていた文字―――“システィーナ”にオーヴァイは一気に察し、何とも言えない表情に変わる。

そう、オーヴァイが拾ったこの手記帳の持ち主はシスティーナであり、手記帳に書かれている話の人物も、どう考えても今この場にいる二人をモデルにして書かれたものである。

 

 

「えっと……その…………御愁傷様です……」

 

「…………言うな」

 

 

オーヴァイの慰めに、ウィリアムはそれだけ言って顔を覆い、机に突っ伏してしまった。

 

 

「?どうしたのウィル?」

 

 

リィエルは話の内容を理解できていなかった為、首を傾げるだけだった。

 

 

―――この一時間後、学院に女子生徒の叫び声が響き渡った。

 

 

 




次はどうしようか·······
IFルートであの子を出す方向の話でも書こうかな·········?
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