やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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多分、今年最後の投稿
てな訳でどうぞ


W(ウィリアム)O(抹殺)検討会

空が赤く染まっている学院の放課後。

その放課後の空き教室にて。

 

 

「では、これより議論を始める」

 

 

血のように真っ赤な文字で『WO』と書かれた、深淵のように真っ黒な覆面を被った謎集団が集っていた。

 

 

「まずは対象(リア充)の概要から」

 

対象(リア充)は前半期でも、俺達に血涙を流させる程のいちゃつき振りを発揮していた」

 

「それは学院内に留まる事はなく、あれ以降は()()僕達の知らぬところでいちゃつくという事態だ」

 

 

言葉の端々から隠しきれない憎悪が滲み出ている。

 

 

「秋休み中は一緒に旅行へ行っていたそうだ……教授と先生の家族旅行に便乗する形で」

 

「だが、あっちは元々先生を旅行に誘うつもりであった以上、結局は変わらないが……」

 

 

ギリッ……。歯を噛み締める音が辺りに響く。

 

 

「同志よ。今回はそちらの議論ではない。それについては後日、改めて議論しよう」

 

「ああ……」

 

 

そこから少し、静寂が漂うがすぐに議論は再開される。

 

 

対象(リア充)はペアルックのペンダントを所有し、仲の良さぶりをアピールしていた……そして、何より…………」

 

リーダー格が覆面越しで顔を俯かせ、ワナワナと震え――― 一気に感情を爆発させた。

 

 

「リィエルちゃんに『一番大好き』と腕を抱きしめられながら言われたウィリア充が、凄まじく憎いぃいいいいいいいいいいい―――ッ!!!!」

 

「「「「ああ、全くだ!!!」」」」

 

「しかも、あんなに幸せそうなリィエルちゃんの顔を向けられていたんだ!!!!だから、ウィリア充は俺達の嘆きと怨嗟をその身を以て知るべきだ!!!」

 

「「「「ああ、全くだ!!!!」」」」

 

「だから、どうやってウィリア充を始末するか、意見を出してくれ!!」

 

 

リーダー格の覆面―――カッシュが己の身を焦がさんばかりの呪詛の叫びを上げて意見を募る。

 

 

「夜、背後から襲うのは!?」

 

「システィーナの家に居候している以上、それは不可能だ!」

 

「なら、放課後に裏手に呼び出して集団でリンチするのは!?」

 

「それも出来ない!そもそも、アイツの実力は俺達とは天地の差だ!!」

 

「そういえばそうだったぁッ!!」

 

「それなら、勉強やら男の付き合いという体で、引き離すのはどうだ!?」

 

「忘れたのか!?アイツは居候中だから、帰れば普通にリィエルちゃんと一緒だぞ!?」

 

「ちくしょぉおおおおおおおおお―――ッ!!!」

 

 

意見は出れど出れど、どれもボツ案である事に、ウィリアム(リア充)への嫉妬を募らせつつ、皆が必死に案を出し合っていると……

 

 

「なら、社会的に抹殺すればいいんじゃないかな?」

 

「「「「それだ!!!」」」」

 

 

ようやく、現実的な案が出てきた。

 

 

「それならウィリア充に致命的なダメージを与えられる!!」

 

「上手くいけばいちゃつき度の低下に繋がる……なんという妙案だ!!」

 

「なら、どうやって社会的に抹殺するか議論するぞ!!」

 

 

希望を見いだした男達は具体的なプランを組み上げ始めていこうとする。

 

 

「まずは事件をでっち上げてウィリア充を女子更衣室に放り込む!!着替えを覗かれれば、リィエルちゃんの心証は下がる筈だ!!」

 

 

彼らは知らない。リィエルが普通に同じ部屋で着替えようとしたのを、ウィリアムが部屋のスペースを理由に阻止した事を。

 

 

「いや、待て!!『システィーナが忘レナ草で可愛くなってた事件』で、グレン先生が着替え中の女子更衣室に突入しても平然としていたという事実があるぞ!!」

 

「「「「あっ!!」」」」

 

 

その言葉で全員がそういえば、っといった声を洩らす。

 

 

「クソッ!!またボツなのか!?」

 

「だが、方向性は悪くない筈だ!!」

 

「それなら、ウィリア充が喋っていたと言って風呂を覗こうとしていたというデマを流すのはどうだ!?」

 

 

彼らは知らない。旅行中、セリカの入れ知恵でリィエルがバスタオルを巻いていたとはいえ、ウィリアムと一緒に浴槽に浸かったことを。その時、ウィリアムが恥ずかしいと言ってしまい、リィエルにキスされたことを。

 

 

「悪くない案だ!!なら、ウィリア充が他の女にも手を出しているという情報を流せばどうだ!?」

 

「現に自称・天才剣士がウィリア充達に積極的に交流を図っているから信憑性は高いぞ!!」

 

 

彼らは知らない。その自称・天才剣士も恋する乙女となっており、小規模な女の戦いが起きていることを。

そして、そんなデマ情報を流せば、桃色空間が加速することを彼らは知らない。だが……

 

 

「その自称・天才剣士だけど……」

 

「ん?どうした?」

 

「その子のウィリア充を見る顔が……なんていうか……虎視眈々とチャンスを狙っている顔だった気が……」

 

「「「「…………」」」」

 

 

その瞬間、圧倒的な沈黙が支配した。

 

 

「……まさか」

 

「そういえば、あの自称・天才剣士はスノリア地方出身だったな……」

 

「加えてスノリアでは大異常気象が起きていた……」

 

「そして、アイツらはそのスノリアに旅行に行っていた……」

 

「つまり…………」

 

「「「「後輩にまで手を出しやがったな!!あの野郎!!!!!!!」」」」

 

 

彼らは漸く気づいた。自称・天才剣士が恋している事に。

 

 

「ちくしょぉおおおおおおおおお―――ッ!!!一体俺達には何が足りないというんだ!?」

 

「これが持つものと持たざるものの宿命なのか!?」

 

「こうなったら実力とか、力量差とか関係ない!!」

 

「数の力を以てウィリア充を始末しにいくぞ!!」

 

「「「「おお!!」」」」

 

「「「「全軍抜刀ッ!!進軍開始ッ!!!」」」」

 

「「「「例え多くの同志が倒れても、ウィリア充を倒せば我らの勝利だッ!!!!」」」」

 

「「「「それだけではないッ!!!全てのリア充達に血の鉄槌を下し、恋愛格差社会に終止符を打つッ!!!それこそが、我らの真の勝利だッ!!!!!!」」」」

 

「「「「おぉおおおおおおおおおおお―――ッ!!!!!!」」」」

 

 

そうして一同は箒やモップ、バケツ等を手に持ち、怒涛の勢いで教室を後にした。

一方その頃……

 

 

「……なぁ、リィエル」

 

「ん?」

 

「何で指を絡ませるように俺の手を握っているんだ?」

 

「仲の良い男女はこうやって繋ぐんだって、セリカが言ってた」

 

「……本当に教授は……」

 

「?」

 

「うぅ~~~~……ッ!」

 

「こうやって握るんだね……うわぁ……」

 

 

ウィリアムはいつものセリカの入れ知恵に頭痛を覚えて右手で顔を覆っており、システィーナとルミアは目の前の『恋人繋ぎ』に複雑な気分を抱いて既に帰路についていた。

その後、暴れていた覆面集団は教師陣に制圧され、こっぴどく怒られたと聞く。

 

 

 




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