やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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イメージはあれど文に表すのが難しい
文才が欲しい
てな訳でどうぞ


二話(改)

「さて、なにを食うかねぇ……」

 

 

午前の授業が終わり、昼食を食べるために食堂へと向かうウィリアムはそう口にする。

 

 

「しっかし、何があったのやら……グレンの先公に」

 

 

錬金術の実技授業があったのだがグレンが不在の為中止となった。しかも、何故かグレンはボロボロでのびていたのだが……

 

 

「まぁいいか。面倒だし」

 

 

ウィリアムはあっさりと思考を放棄した。

そして食堂へと到着し、サンドイッチを三人前とアップルパイを注文して、空いているテーブルを探していると、復活していたグレンに話しかけられる。

 

 

「なあお前、それで足りんの?」

 

「見た目より結構あるとおもうんだが?」

 

 

トレイに料理を大量にのせているグレンの質問に対し、ウィリアムはそう答える。

 

 

「まあ、それもそうだな。ええと……」

 

「ウィリアム=アイゼンだ。改めてよろしく、グレンの先公」

 

「よろしくお願いしますグレン大先生、だろ?ウィリアム君」

 

「無理、面倒」

 

「即答かよ!?」

 

「それで、俺に何か用があるから話しかけたんじゃねえのか?」

 

 

話の流れをバッサリと無視して、ウィリアムは理由を聞き出そうとする。

 

 

「……お前、俺とどっかで会ったことねえか?」

 

「……は?いきなり何をいってんだ?まさか先公はホモ――」

 

「違ぇよ!俺はノーマルだ!」

 

 

わざとらしく後ずさるウィリアムにグレンは即座に否定する。

 

 

「じゃあなんでそんなことを聞くんだよ?俺の顔に見覚えでもあんのかよ?」

 

「いや、ただお前の雰囲気が誰かに似ていたからよ」

 

 

グレンのその言葉に、ウィリアムは内心で冷や汗をかく。

対峙したあの時より体は成長しているし、なにより顔は仮面で隠していた。

それでこれとは……魔導士の勘は恐るべしである。

 

 

「少なくとも俺は先公の事は知らねぇよ」

 

「……そうか、俺の勘違いか……にしても」

 

 

グレンはウィリアムの顔をまじまじと見詰め……

 

 

「お前、結構目付き悪いな」

 

「悪いか」

 

 

小さい頃から気にしている事をグレンにさらっと言われ、ウィリアムはイラッとした顔をする。

これが原因で最初は()()に怖がられたが……

 

 

「…………」

 

「?どうしたんだウィリアム?」

 

「何でもねえよホモ先公」

 

「まだ引きずっていたのかよ!?」

 

 

その後、面倒という理由からグレンと別れて一人で食べた。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

その後のグレンの授業は日を追う事に酷くなっていた。

そんな中でもウィリアムは相変わらず寝るか、本をだらだらと読み流すかのどっちかである。

 

 

「いい加減にしてください!」

 

 

グレンに対し、システィーナの怒りも我慢の限界であった。親の権力をかさに辞職の脅しを懸ける程に。だが―――

 

 

「よろしくお願いします!と伝えてください」

 

 

グレンはお辞儀してそんな事をいってのけ、全く脅しにならず、むしろ早く辞める為にやっていたと分かる始末だ。

そこでシスティーナの我慢の限界はついに迎え、左手の手袋をグレンの顔へと投げ、決闘を仕掛けてきた。

 

 

「貴方にそれが受けられますか?」

 

「……いいぜ。後悔するなよ?」

 

 

グレンは床に落ちていた手袋を拾い、決闘を了承する。

全員が外へと移動する中、ウィリアムに動く気配が全くなかった。

 

 

「面倒だし、興味ねぇ」

 

 

移動を促されたウィリアムの第一声がこれである。

結局、ウィリアムは置いていかれる事となった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

決闘はシスティーナの圧勝で終わった。理由はグレンは三節詠唱しかできなかったからだ。

システィーナの圧勝で、グレンは敗けたにもかかわらず授業はいい加減のままであった。

 

 

「魔術ってそんなに偉大で崇高なのかね?」

 

 

ルーン語の翻訳に辞書をリンに差し出したグレンに、システィーナが軽蔑した発言に対してのグレンの言葉である。

システィーナが嬉々として魔術について語るが―――

 

 

「―――だから、魔術は偉大で崇高な物なのよ」

 

「……何の役に立つんだ?」

 

「え?」

 

「そもそも、魔術は人にどんな恩恵をもたらすんだ?何の役にも立ってないのは俺の気のせいか?」

 

「……ひ、人の役に立つとか立たないとか、そんな次元の低い話ではないわ。もっと高次元な―――」

 

「嘘だよ。魔術は役に立ってるよ―――人殺しにな」

 

 

暗い顔となったグレンは、そのまま魔術の暗黒面をこれでもかと言わんばかりに語っていく。

 

 

「剣術で一人殺す間に魔術は何十人も殺せ、魔導士の一個小隊は戦術で統率された一個師団を戦術ごと焼き尽くせる。ほら、便利だろ!?」

 

「ふざけないでッ!」

 

「ふざけちゃいねぇさ。国の現状、決闘のルール、初等呪文の多くが攻性系、『魔導大戦』、『奉神戦争』、外道魔術師の凶悪な犯罪の件数と内容……魔術と人殺しは腐れ縁なんだよ。切っても切れない、な」

 

「違う……魔術は、そんな……」

 

「魔術は人を殺すことで進化・発展してきたロクでもない技術なんだよ!こんな下らない事に人生費やすくらいなら――」

 

 

ぱぁん

 

グレンの極論と言える発言は、システィーナにビンタされて止められた。

 

 

「……だいっきらい!」

 

 

システィーナは涙を溢しながらそう言い捨て、教室を飛び出していく。グレンも居心地の悪さからか、次いで教室を後にする。気まずい雰囲気が教室に漂う中……

 

 

「……下らね」

 

「何が下らないのかなウィリアム君」

 

 

ウィリアムの小さく冷めた発言がルミアにしっかり届いていたようで、面倒だと思いつつもその訳を話す。

 

 

「学問だろうが殺人だろうが魔術はそういう風に使えるというだけだ。結局のところ、自分がどう使いたいのかの方が重要なんだよ。技術に色はねぇんだからよ」

 

「……じゃあウィリアム君は魔術をどう使いたいのかな?」

 

「……これ以上はダルいから寝るわ」

 

 

ウィリアムはそう言ってルミアのその質問には答えず、机に突っ伏して寝始めた。

 

 

((((図太過ぎる!))))

 

 

ウィリアムのあまりの図太さにクラス一同は同じことを思った。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「魔術をどう使いたいか、か……」

 

 

夕方、帰り道でルミアに聞かれたことを口にするウィリアム。その表情はどこか陰りを感じられる。

 

 

「どう使いたいのかな、俺は……」

 

 

ウィリアムはそう呟いてズボンのポケットからあるものを取り出す。それは手帳サイズの大きさで、内部に小さなルーン文字がびっしりと刻まれている翡翠の石板(エメラルド・タブレット)だ。

魔術をどう使いたいのか。自分はどうしたいのか。

その答えは二年程前に見失い、未だ出せないままであった。

 

 

 




ウィリアムの見た目はTOBのアイゼンをイメージすれば分かりやすいと思います
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