やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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文字表現に四苦八苦する厄介な猫さんです
今回の話でウィリアムの正体が明かされます
てな訳でどうぞ


六話(改)

骨人形(ボーン・ゴーレム)黄金の剣(ナイツ・ソード)が激しくぶつかり合う。

黄金の剣が一太刀で骨人形を砕き、その骨人形がその黄金の剣を砕く。それが繰り返されている。

 

 

「そろそろいいか……」

 

 

ボーン・ゴーレムの数がいい感じで減った為、ウィリアムは床にわざわざ手をつきあるものを錬成する。

出来上がったのは―――ドッジボールサイズの魔晶石だ。

 

 

「そらよッ!」

 

 

ウィリアムはその魔晶石を残りのボーン・ゴーレムに向かって投げ飛ばす。

そしてすぐさま右手の親指と人差し指を擦り合わせ、一対の幾何学的な羽を有する四角い純白の盾―――人工精霊(タルパ)騎士の楯(ナイツ・シールド)】を具現召喚し、防御障壁を展開させる。

そして投げ飛ばした魔晶石はボーン・ゴーレムへと当たり―――

 

ドガァアアアアアアアアアンッ!

 

凄まじい爆風を発し、残りのボーン・ゴーレムを粉々に吹き飛ばした。

ウィリアムが投げ飛ばした魔晶石は爆晶石という、ちょっとでも衝撃を与えると爆発するという取り扱いが難しいものだ。

しかも威力も大きさに比例して高くなるため、ドッジボールサイズの大きさは相当危険な威力だ。現に爆発地点に軽くクレーターができており、周りの壁にも幾ばくかヒビが入っている上に窓ガラスも砕け散り、【騎士の盾(ナイツ・シールド)】も一発で砕け散った。

 

 

「……加減を間違えたな」

 

 

やはり二年ものブランクが確実に響いている。

できれば制圧、無力化ですませたいが、チンピラはともかくダークコートの方はそれができる程甘い相手ではないだろう。最悪の場合―――殺すしかない。

そう考えていると上の方から破壊音が鳴り響いた。

 

 

「!?」

 

 

ウィリアムは驚き音がした方向を見る。音からして誰かが戦っていると見ていいだろう。

 

 

「……」

 

 

ウィリアムは一瞬の迷いを振り切り音がした方向へと走り出した。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「てめえ、その剣両方かよ」

 

 

空中に浮く五本の魔導器の剣を見てそう見抜くグレン。

 

 

「御名答だ。二本の手動剣と三本の自動剣、これが実戦によって導き出された最適解だ」

 

 

満身創痍のグレンは現在、ダークコートの男―――レイクと一人で戦っている。

先程の破壊音はグレンが黒魔改【イクスティンクション・レイ】でボーン・ゴーレムの大群を一網打尽に破壊した音だったのである。

しかし、分不相応な魔術を裏技で無理矢理使ったためマナ欠乏症に陥ったところをレイクは狙って襲撃してきたのである。

一緒に行動していたシスティーナをある理由から突き落としてその場から逃がし、単身で挑んでいるが当然劣勢を強いられている。

レイクはそんなグレンに考える暇は与えないとばかりに手動剣を差し向け―――

 

キィインッ!!

 

―――たが、銃声とともに剣が弾かれた事でその行動は遮られる。

グレンは予想だにしなかった援護に思わず後ろを向く。そこに居たのは硝煙が昇る拳銃を片手に佇んでいるウィリアムだった。

 

 

「ウィリアムッ!?」

 

「おーおー、死にそうな顔してんなグレンの先公」

 

 

グレンの驚愕をウィリアムはそんな軽口で受け流し、改めてレイクに視線を向ける。

 

 

「ちっ、予想よりも早かったな」

 

「という事はあの骨人形はあんたのかよ」

 

 

忌々しげにするレイクに、ウィリアムはうんざりといった顔をする。

 

 

「学生の分際で人工精霊(タルパ)が使えるのは見事だが、その程度では私には勝てんぞ」

 

 

レイクの言葉にグレンは再び驚く。

人工精霊(タルパ)―――魔術の『等価対応の原則』を逆手にとり、魔薬(ドラッグ)によるトランス状態で深層意識に『そこに居る』と強固に暗示認識し、疑似霊素粒子粉末(パラ・エテリオンパウダー)をスクリーンに空想存在を現実世界に具現召喚するという、一歩間違えれば廃人確定の、禁呪に近い錬金術の奥義だ。

 

 

「じゃあ、試すか?」

 

 

ウィリアムは右手の親指と人差し指を擦り、疑似霊素粒子粉末(パラ・エテリオンパウダー)を辺りに散布し、五体の【騎士の剣(ナイツ・ソード)】を具現召喚し、魔導器の剣へと向かわせ撃ち合わせる。

互いに弾かれ合う魔導器の剣と人工精霊(タルパ)の剣。

その合間にウィリアムはレイクに向けて残り二発の銃弾を叩きこもうとする。

 

 

「ふん」

 

 

レイクは自身へと向かう銃弾を手動剣であっさりと弾き飛ばす。

フォウルとの戦闘で二発、グレンを手動剣から守った二発、そして今の二発で計六発。

もはやあの銃は弾切れ。そして銃は再装填に手間がかかる、魔術師からすれば玩具(オモチャ)でしかない武器だ。

しかし、その考えはあっさりと崩される事となる。

ウィリアムは拳銃のフック部分を降ろす。するとフレームが半ばから折れると同時に回転弾倉から六つの金属製の筒が吐き出される。そして回転弾倉の六つの穴に空中から新たな金属製の筒が装填される。装填されると同時にフレームを元に戻して引き金を二回引くと、銃声と共に二発の銃弾が吐き出された。

 

 

「―――なッ!?」

 

 

レイクは咄嗟に手動剣を盾にして銃弾から身を守る。

金属製の筒。グレンはそれの正体を知っていた。

金属薬莢。金属製の筒の中に火薬を入れ、先端に弾頭を、尻の部分が雷菅という、装填性、安定性に優れた次世代型の銃弾だ。しかし製造法が確立しておらず、安定した供給が出来ないためあまり普及していないのだ。

魔術的な製法での方法も見当されたが、手間と成果が全く釣り合わないため白紙となった。

玩具の為に寸分違わずに錬成するのと、攻性呪文(アサルト・スペル)の精度を高めるのとでは当然後者の方が効率も成果も高い。

だがグレンは一人だけ知っている。それを選び、自由自在に錬金術を行使し、正体もその目的もその一切が不明だった錬金術師を。

 

 

「―――《雷精》」

 

 

そんなグレンをよそにウィリアムは短く呪文を唱える。すると拳銃にバチバチと電撃が迸る。

それを見たレイクは直感であれは不味いと感じ、一本の手動剣を【騎士の剣(ナイツ・ソード)】を掻い潜りながらウィリアムへと向かわせる。

迫りつつある手動剣。

ウィリアムはその手動剣へと拳銃の照準を合わせ―――引き金を引いた。

 

バンッ!

 

銃声と共に、まるで岩石を発破した音と共にその手動剣は粉々に砕け散った。

レイクは驚愕に目を見開く。先程の銃撃は弾速、威力、全てが通常の銃撃を遥かに凌駕している。

ウィリアムはここぞとばかりに人工精霊(タルパ)を予備動作も仕込みも無しで自身の周りに具現召喚し、残りの魔導器の剣を抑え込んでいく。

 

 

「何ッ!?」

 

 

レイクはそのあり得ない光景に再び驚愕する。

人工精霊(タルパ)を使った事にではない。その人工精霊(タルパ)()()()()()()()()()()()()()()事に対して驚愕したのである。

そんなレイクにウィリアムは拳銃の照準を合わせる。

ウィリアムは気づいていた。レイクは本気を出さずこちらを侮っていた事に。遊びの内で殺らなければならない事に。

 

 

「くッ·····《光の障壁――」

 

(おせ)ぇッ!」

 

 

レイクが身を守るために咄嗟に【フォース・シールド】を目の前に張ろうとするも、グレンの持つ愚者のアルカナ―――広範囲の魔術起動を完全封殺する固有魔術(オリジナル)【愚者の世界】によって不発に終わってしまう。

ウィリアムはそのままレイクに向かって引き金を引き―――その心臓を過たずに撃ち抜いた。

 

 

「……見事だ」

 

 

口から血を流すレイクから賞賛の声が上がる。

魔術師の世界では常に勝った方が正義。一対二が卑怯等と言うつもりは無い。

そして自分を打ち負かした二人を一瞥し、何かに納得したように呟き始める。

 

 

「そうか……そこの魔術講師は宮廷魔導士団の魔術師殺し……コードネームは《愚者》………学生の方はあの《詐欺師》か……」

 

 

《詐欺師》の言葉にウィリアムは苦い顔をする。

 

 

《詐欺師》。

それは四年前からの二年間で活動していた、紺の外套に黒の仮面をした正体不明の錬金術師の異名である。

圧倒的な錬成速度と相手を騙すかのような戦い方で幾つもの外道組織を叩き潰しており、つけられた異名が《詐欺師》。

その実力と結果として帝国の益になっていた事から宮廷魔導士団特務分室に目を付けられ、戦力増強の為に捕らえようとしていたが、その都度、あの手この手で逃げられていた。

グレンもその《詐欺師》と一度戦っており、魔術起動を完全封殺したにも関わらず平然と錬金術を行使し、まんまと逃げられた事からグレンにとっては相性の悪い相手である。

 

 

「……何が言いたい?」

 

「……それがどうしたってんだ?」

 

 

そんなレイクの言葉に二人は暗い顔で問いかける。

 

 

「さあな……?」

 

 

レイクはそれだけ言い残し、血だまりの床へと崩れ落ち―――二度と動かなかった。

 

 

「……なにが《詐欺師》だよ……」

 

 

その言葉で、ウィリアムの過去の記憶が呼び起こされる―――

 

 

 




ありなのかと問われるであろうウィリアムの戦闘方法
一応その理由は考えてます
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