やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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ようやく彼女との初邂逅·····
てな訳でどうぞ


十二話(改)

午前の部が終わった小一時間の昼休み。

学院敷地内の人気のない南西端でウィリアムは昼食を取っていた。

 

 

「今は人のいるところで食事をすると面倒だからなぁ……」

 

 

そんな事をのたまいながら自作のサンドイッチを口へと運んでいく。

単に恥ずかしいだけなのに、面倒という何時もの理由で必死に誤魔化し続けている。

みんなに褒め称えられたあの瞬間、馴れていない状況に恥ずかしさを覚えたのも事実だが、同時に心地よさも感じていた。

 

 

「……今の俺に彼処にいていい資格はあんのかな……?」

 

 

助けたかった人たちを助けられず、むざむざと失った自分にその資格が本当にあるのか。あの日以来、その疑問は尽きる事なく自身に問いかけ続けている。

 

 

「……やめだ、やめ。こんな暗い事を考えるのは今は面倒だ」

 

 

ウィリアムはサンドイッチをほおばり、お茶で強引に流しこんで食事を済ませ、手頃な木の上へと登っていく。

そしてその木に背を預け、ウィリアムは瞳を閉じて寝始めていった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

ざくざくと音を鳴らしながら雪の上を歩く。

今ウィリアムが向かっているのは天の智慧研究会が管理するアジトの一つだ。

ようやく掴んだ彼女らの居場所。

ウィリアムは逸る気持ちを抑えながらそのアジトへと目指して歩いていく。

少し前に一番助けたい彼女とは会えたのだが、その時の状況が状況だっただけに後を追う事はできなかった。

彼女は仮面をしていた自分に気付いていないだろう。精々噂の《詐欺師》、《鋼の再来》だという事くらいだろう。

彼女と対峙して分かった事は彼女は自我を保っていた事、人の心をまだ失っていなかったという事だ。

確証は得られていないが可能性が得られた事で希望がでてきた。

その希望を胸にウィリアムはアジトへと向かっていく。その希望は―――

 

 

 

 

―――赤毛の兄妹の死という絶望へと変わった。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「……最悪だ」

 

 

夢から目を覚ましたウィリアムの気分は最悪だった。

あの時の絶望の記憶の夢を見たウィリアムは鬱憤とした気分で首を振り――――

 

 

「―――ん?」

 

 

その途中で視界に何かしらの光景が目に入る。目を凝らしてよく見ると誰かがルミアの首もとに細剣(レイピア)を突きつけていた。

その光景を目にしたウィリアムは面倒事になっていると思いつつ、圧縮凍結していた、以前錬成した拳銃と同じ形状である、銃身に幾つものルーン文字が刻まれた黄金に輝く拳銃を解凍した。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

「抵抗しなければ苦しみは一瞬で済む」

 

 

ルミアは現在、王室親衛隊の手によって処刑されそうになっていた。

親衛隊曰く、ルミアに国家転覆罪により見つけ次第処刑せよ、とのいう女王陛下の勅命でルミアを処刑しようとしていたのだ。

ルミアと一緒にいたグレンは親衛隊に抗議するも気絶させられ、ルミアもその濡れ衣を受け入れて、大人しく処刑されようとしていた。

 

 

(ああ……やっぱり、いやだな……)

 

 

涙を流し、そう思いつつも最後の瞬間を待つ―――

 

ドパンッ!

 

―――その瞬間は一発の銃声によって遮られた。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

それと同時に、ルミアに細剣(レイピア)を突きつけていた親衛隊の隊長格の男が叫び声を上げて倒れ込み、他の親衛隊も突然の事態に慌てて周囲を見回して警戒していく。

そんな彼らが、次々と頭に衝撃を受けたかの様に地面へと倒れ気絶していく。倒れた親衛隊の近くには黒くて小さな球が幾つも転がっている。

気づけば、その場に立っているのはルミアだけとなっていた。

突然の事に彼らと同じ様に困惑していたルミアの前に一人の人物が現れる。

その人物は紺の外套に黒い仮面、右手に少し奇妙な形をした黄金の拳銃を持った、見るからに怪しい人物だ。

 

 

「貴方は……誰なんですか?」

 

 

ルミアは気丈に振る舞いながらも、恐る恐る目の前の人物に素性を問い質すも―――

 

 

「なんでお前がここにいるんだよ……ウィリアム」

 

 

その答えは気絶していた筈のグレンからもたらされた。

 

 

「ええ!?」

 

「ここで寝ていて目を覚ましたら、ルミアが殺されそうになっていたから助けたんだよ」

 

 

驚くルミアを他所に、怪しい人物―――ウィリアムはグレンに面倒臭そうに説明する。

 

 

「ていうか名前で呼ぶな。何の為にこの格好をしてるんだと―――」

 

「いたぞ!」

 

 

ウィリアムがグレンに対して文句を言おうとするも、それを遮るように増援の親衛隊が現れ、此方へと迫ってくる。

 

 

「うわ、もう来たのかよ」

 

「だな、とりあえず……」

 

「「逃げるか」」

 

 

グレンがルミアを抱き抱えると同時に、二人はその場から逃げ出した。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「分かっているのウィリアム君!?このままだと罪人として殺されるんだよ!?」

 

「元々犯罪者扱いなので、今さらと同時に痛くも痒くもありませーん」

 

 

ルミアの叱責に、事態を知ったウィリアムはそんな軽口で受け流している。

ウィリアムたちは現在、空き家の多い住宅街の路地裏にいる。ちなみにウィリアムは黒い仮面をここにきてから外しており、本当にウィリアムだと分かったルミアは自ら危険に首を突っ込んだ事に怒っていた。

グレンは事態解決のために現在セリカと連絡をとっている。

 

 

「どうだった?グレンの先公?」

 

 

セリカとの連絡を終え、近づいてきたグレンにウィリアムはその結果を問い質す。

 

 

「ダメだった。なんでか分からんが、セリカは動けないらしい」

 

「面倒、厄介、騒動の三拍子がキレイに揃い過ぎだろ」

 

「だな。だが、俺が女王陛下の元に来れれば事態は解決できるらしい。俺だけがこの状況を打破できると言っていた」

 

「先公にしか出来ない事があるって事か……」

 

 

グレンの報告にウィリアムはうんざりしながらも、とりあえず、女王陛下の元へどうやって辿り着くかその方法を考えようとした矢先―――強烈な殺気が襲いかかった。

 

 

「「―――ッ!?」」

 

 

グレンとウィリアムは殺気がした方向へと急いで顔を向けると、そこにいたのは青年と少女の二人組だった。鷹のように目が鋭い長髪の青年は《星》のアルベルトだが、少女の方は―――

 

 

(―――なッ!?)

 

 

その少女を見てウィリアムは驚愕に目を見開く。その少女は長い淡青色の髪を後ろのうなじ辺りで括り、感情が死滅したような無表情だが、その少女の容姿は死んだ彼女と瓜二つ、イヤ、髪と瞳の色が変わっただけと言えるくらい、あまりにも一致し過ぎていた。

 

 

「リィエルにアルベルトか!?」

 

 

グレンが二人の名前を叫ぶ。リィエルと呼ばれた少女は大剣をその手に錬成しながら、こちらに向かって突撃してくる。

 

 

(あの錬金術は!?)

 

 

リィエルが使用した錬金術を見てウィリアムは再び驚愕するも、直ぐに意識を戦闘のものへと切り替え、グレンの前へと立つ。

それを見たリィエルは、邪魔だと言わんばかりにウィリアムに大剣を振り下ろそうと―――

 

ドガキィイイインッ!!

 

―――するも、何時の間にか握られていた黄金の拳銃―――《魔銃ディバイド》の銃撃で大剣はリィエルの手から離れ、後ろの方へと弾き飛ばされる。

ウィリアムはそのままリィエルの肩を掴んで地面へと押し倒し、銃口を額に押し付ける。

 

 

「下手に動くな。抵抗しようとした瞬間、お前を撃つ」

 

 

ウィリアムはより鋭くなった目付きで、抵抗しようとしたリィエルにそう警告する。

 

 

「リィエルといったな……その錬金術、どこで、いや、誰から学んだ?」

 

「……?」

 

 

リィエルはウィリアムの質問の意味が分かっていないのか、首を傾げるだけで何も答えない。

 

 

「なら、質問を変える。お前は『イルシア』という名の少女を知っているか?」

 

「!?」

 

 

ウィリアムの質問に出てきた少女の名前に、ウィリアムの後ろにいるグレンは驚愕に目を見開くが、当然ウィリアムはそれに気づけていない。

 

 

「イルシア……?誰それ?」

 

「……知らないならいい。なら別の質問だ。お前達の目的はなんだ?」

 

 

リィエルの反応から本当に知らないと判断したウィリアムは、アルベルトに警戒しながらも質問を続ける。

 

 

「グレンとの決着をつけに来た」

 

「「……」」

 

 

リィエルがあっさりと答えた瞬間、周りの空気が死んだ。そしてウィリアムはリィエルを見てこう思った。

 

 

(こいつ、バカだ!)

 

 

親衛隊に協力しているのではなく、完全に目の前のリィエル(バカ)の私情だと分かり、一気に疲れた気分となったウィリアムはリィエルから離れていく。

 

 

「グレンの先公に斬りかかったら、その頭に非殺傷弾をぶちこむぞ?」

 

 

割と物騒な警告付きで。リィエルはその警告を無視し再び大剣を錬成しグレンに斬りかかろうとしたので……

 

 

「ぎゃんッ!?」

 

 

非殺傷弾―――ゴム製の銃弾と発砲音が一切しない特殊火薬―――音無火薬(サイレント・パウダー)による問答無用の不意討ちで、その後頭部に三発叩き込んだ。

 

 

「……久しぶりだなグレン。そして、そこのお前はやはり《詐欺師》だな?とりあえず場所を変えるぞ、付いてこい」

 

 

そんなカオスとなった空間に、アルベルトは冷たい声色で二人に挨拶し、移動を促した。

 

 

 




彼女、リィエルとの出会いはウィリアムに一体何をもたらすのか!?(作者次第)
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