やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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私の素人振りが滲み出る········
てな訳でどうぞ


十八・五話

本日の最後の授業だった錬金術の授業が終わった放課後。

二組の教室では数人の生徒達がリィエルの席に寄り集まり、リィエルの錬金術―――高速武器錬成の魔術式の解説を受けていた。

 

 

「……ここの元素配列式をマルキオス演算展開して……こうやって算出した火素(フラメア)水素(アクエス)土素(ソイレ)気素(エアル)霊素(エテリオ)根源素(オリジン)属性値の各戻り値を……こんな感じで根源素(オリジン)を再配列して……物質を再構築……わかった?」

 

「まったくわからん」

 

 

羽ペンを紙面に走らせながらのリィエルの説明に、途中から完全放棄していたカッシュがやたら爽やかに返す。

 

 

「本当に凄すぎるよ……」

 

「一体、誰がこんな術式を作ったの……?」

 

 

座学だけは優秀なセシルや、学年トップクラスの成績優秀者のシスティーナ等の、グレンのマニアックな授業を受け、ある程度は辛うじて理解出来る生徒達は驚愕に顔を強張らせていた。

 

 

「まさかルーン語のバグすら利用していたなんて……道理で帝国軍にも配備されていない術式だと思ったよ……」

 

「リィエル……いつもこんなことをやっていたの?これ一歩間違えたら、脳内演算処理しきれずに意識が飛んで、数日は確実に寝込んでしまうわよ?最悪の場合、廃人よ?」

 

 

セシルは脂汗を浮かべながら感嘆の息を吐き、システィーナが険しい顔で記載された術式の危険性を指摘するも。

 

 

「……そうなの?」

 

「そうよ!!」

 

「……だけど、こうした方がまだ安全だって·····わたしにこれを教えてくれた人はそう言ってた」

 

 

何の感慨もなく、リィエルはそう呟く。

 

 

「ちょっと待って。この術式がまだ安全の部類だって言うなら、これよりもっと危ない術式があるというの?」

 

「んと……」

 

 

リィエルが再び羽ペンを紙面に走らせ、その術式を記載していく。そして―――

 

 

「なんなのこの術式は!?こっちの術式は術者の安全を全く考慮していない、一歩間違えたら廃人確定じゃない!!これなら、最初の術式の方が遥かにマシだわ!!」

 

 

リィエルが再び羽ペンを走らせて書き終えた術式―――()()の【隠す爪(ハイドゥン・クロウ)】の魔術式―――を見たシスティーナは激しく憤慨する。

新しく記載された術式の錬成速度は前者のより僅かに上だが、術者へのリスクが前者よりも高い。

片方は失敗すれば意識が飛んで数日は寝込む、もしくは廃人になる危険性。もう片方は失敗すれば確実に廃人となる危険性。どっちが優れた術式なのかは言うまでもない。

 

 

「見比べてみると本当に凄いね……この術式は間違いなくこっちの術式の安全性を向上させた術式(もの)だよ。この術式を教えた人は間違いなく天才だよ」

 

 

記載された二つの術式を見比べてたセシルは感服したように呟く。

この二つの術式には共通点があまりにも多く、最初に記載された術式が今記載された術式を改良したものであることが容易に理解できるからだ。

 

 

「本当にその通りね。一度会ってみたいくらいだわ」

 

「リィエルちゃん、その人はどこにいるか知っているか?」

 

 

システィーナもセシルの意見に同意し、話の内容から凄い事だけは理解したカッシュは好奇心からその人物に対しての質問をする。

その質問を受けたリィエルは、彼女にしては珍しくどこか憂いを含んだ瞳になっていた。

 

 

「……」

 

「……リィエルちゃん?」

 

「……その人は死んだ。もう大分昔に」

 

「あ……」

 

 

リィエルのその返答に、周りにいた生徒達は一気に気まずくなり、重い空気が流れ始める。

 

 

「その……ゴメンな……嫌な事思い出させちまって……」

 

「……大丈夫」

 

 

カッシュは申し訳なさそうにリィエルに謝罪し、リィエルはポツリと呟いて応じるも、一度形成された重い空気はそう簡単には晴れない。

 

 

「どっちにしろ、この術式を使いこなすには錬金術に対して圧倒的な天賦のセンスがいるから真似できないわね。もう固有魔術(オリジナル)と言っても過言じゃないわ」

 

 

そんな空気を破るために、システィーナが場のまとめにかかる。

 

 

「真似なんかできねーよ……」

 

「多分、ウィリアムにしか真似できないよ……」

 

 

カッシュとセシルがシスティーナの言葉に同意した、その時だ。

 

がたん!

 

リィエルから少し離れた場所の席に座っていたギイブルが荒々しく席を立ったのは。

 

 

「ギイブル?」

 

「……帰る。君達もそんな暇があるなら、帰って魔術の勉強をしたらどうだい?」

 

 

どこか苛立ったように言いながら、ギイブルは苛立ちを発散するかのように荷物を鞄に詰め込み始める。

鞄に荷物を詰め込み終えたギイブルは踵を返して歩き去ろうとするも……

 

 

「これ、落とした」

 

「~~~~ッ!」

 

 

リィエルがギイブルが落とした羽ペンを拾って差し出し、ギイブルは顔を真っ赤に染めて羽ペンをひったくるように奪い取り、荒々しく教室を出ていった。

 

 

「なんなの?一体?」

 

「多分、リィエルちゃんに嫉妬してるんじゃねーか?あんな凄い錬金術を見せられてさ」

 

「それ、絶対に本人の前で言っちゃ駄目だよ?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

学院の人気のない屋上にて。

 

 

「まー、やっぱこうなるよなー……」

 

 

【アキュレイト・スコープ】で教室を覗き見ていたウィリアムは軽く息を吐きながら呟いていた。

リィエルの実力ははっきり言って滅茶苦茶だ。魔術自体の腕前は大したことはないが、本気でやり合えば完敗を喫することは最初の授業で証明されてしまっている。そんなリィエルに魔術師としてのプライドを傷つけられた生徒はすんなりと受け入れられる筈がない。

ちなみに、ウィリアムが屋上にいる理由はリィエルが使ったあの錬金術の話題が上がり、それに対する面倒事を避けるためである。

実はリィエルが使っているあの錬金術―――【隠す爪(ハイドゥン・クロウ)】は、ウィリアムが手を加えてイルシアに教えた【隠す爪(ハイドゥン・クロウ)】であり、ウィリアム自身も扱えるからだ。

だからこそ、リィエルがあれを使った時は本当に信じられなかったし問い質しもした。その答えはグレンがもたらしたが。

 

 

「さてと……もう帰るか」

 

 

【アキュレイト・スコープ】を解除し、ウィリアムは背伸びしながら屋上を去って帰路につくのであった……

 

 

 




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