やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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この展開に無理はない、無理はない筈だ(切実)
てな訳でどうぞ


二十二話(改)

白魔儀【リヴァイヴァー】は無事に成功した。

命の危機を脱したグレンの呼吸は安定したものへと落ち着いており、仮サーヴァント契約で霊絡(パス)だけ繋いで魔力を供給していたシスティーナも疲労困憊からグレンの寝るベッドにもたれかかって眠っている。

アルベルトは壁を背にもたれかかっており、ウィリアムも椅子に座り、紫の小さな結晶を使って魔力を回復していた。

 

《マナ・クリスタリウム》―――外界マナを結晶化した紫の結晶体は、ウィリアムの魔術特性(パーソナリティ)を利用して作りあげられた独自の回復アイテムである。

しかし、これにももちろん欠点がある。

使用者の外界マナの親和性、一回使うと霧散する一度きりの使い捨て、連続で使い過ぎるとマナ・バイオリズムがしばらくの間乱れ続けるという一概に便利とは言えないものである。

 

 

「……う」

 

「ふん、相変わらずのしぶとさだな」

 

 

そんな回復に努める中、目を覚ましたグレンにアルベルトは不機嫌全開の皮肉をぶつける。

 

 

「俺は……確かリィエルのアホに斬られて……」

 

 

そこから状況がアルベルトの口から説明されていく。

そして、アルベルトが肝心なことを問いただす。

 

 

「リィエルは何故裏切った?」

 

「……アイツの『兄貴』が現れやがった」

 

 

グレンのその言葉に、ウィリアムは相当苦い顔をする。

アルベルトからリィエルの裏切りを聞いた時点でその予想が出来ており、見事に的中したからだ。

その『兄』を名乗った人物はほぼ間違いなく『アイツ』と見ていいだろう。

正直、否定したい可能性が現実になりつつある中、アルベルトはさらに状況を説明していく。

 

白金魔導研究所の所長であるバークスが裏で件の組織(天の智慧研究会)と繋がっている可能性があり、軍はその尻尾を掴むためにリィエルを囮にルミアを撒き餌としたこと、クロならリィエルとアルベルトでそこをおさえる算段を立てていたのだ。

だが軍は、グレンがリィエルに関するとある事実を隠蔽したため、リィエルに存在する爆弾については知らなかった。

 

その結果が―――今の状況である。

 

 

「なんで止めなかった!?」

 

「軍が一度決めた事を変えると思うか?それとも、真実を話してでも止めるべきだったか?」

 

 

その言葉にグレンは怯む。もし真実を話せばリィエルは確実にモルモットにされてしまうからだ。

 

 

「とにかく俺はこれから王女を奪還しに行く。リィエルが立ちはだかるなら、俺は全力を以て奴を殺す……以上だ」

 

 

アルベルトはそれだけ言って、部屋から出て行こうと踵を返す。

 

 

「「……待てよ」」

 

 

そんなアルベルトをグレンとウィリアムが呼び止めた。

 

 

「なんだ?」

 

「一緒に連れてけ。そしてあのバカと話をさせろ」

 

「ああ。アイツの勘違いを正して連れ戻す」

 

 

そんな二人の言葉を―――

 

 

「よくそんな事が言えるな」

 

 

アルベルトは冷たい言葉で返した。

 

 

「グレン。お前が去った理由には薄々予想が付いている。その甘ったれな考えを否定する気はないが……お前は逃げた」

 

「!」

 

「お前は勝手な都合で何一つ語る事なく戦友達を捨てて逃げた。リィエルの裏切りも間接的にはそれが原因だ。さらに言えば、お前の自己満足で肝心な情報を伏せ、()()()の責任を放棄したのも原因だ。違うか?」

 

「そ、それは……」

 

 

アルベルトの容赦のない指摘にグレンは口ごもり、そんなグレンを脇目にアルベルトは続いてウィリアムにその鋭い視線を向ける。

 

 

「そして《詐欺師》。お前がいくら()()()()に関わりがあるとはいえ、俺がそれを容認すると思っているのか?」

 

「……」

 

「お前は何の権利があってリィエルに関わろうとする?リィエルをあの女と重―――」

 

「ちげぇよッ!!!!」

 

 

アルベルトの言葉をウィリアムは怒鳴り声で遮る。

 

 

「アイツはイルシアじゃねえ!確かに容姿は瓜二つだが、バカで、常識の欠片もなくて、事ある事に暴走するし、問題ばかり起こすし、中身が全くっていいほど全然似てねぇよ!」

 

「なら何故関わろうとする?」

 

「そんなん―――後悔したくねぇからだッ!!!!」

 

 

ウィリアムの脳裏に思い起こされるのは二年前のあの記憶。

雪の上で彼女の遺体を抱きしめ、泣き叫ぶ己の姿――――

 

 

「ここでアイツを見捨てたら俺は確実に後悔する!そんな面倒な思い、これ以上したくねぇし、するつもりもねぇ!だからあのバカを叩きのめして連れ戻す!!!それだけだ!!!」

 

「……」

 

「……アルベルト」

 

 

無言でウィリアムを睨むアルベルトに、グレンが再び話しかける。

 

 

「今の俺は教師だ……そしてリィエルも今は俺の生徒なんだ。アイツらを泣かせる真似だけは絶対にしたくねぇ……俺のことが気にいならいならぶん殴ってでも止めればいい……だけどウィリアムだけは連れて行ってやってくれ……」

 

 

頼む、とグレンは頭を下げアルベルトに懇願する。

そんなアルベルトの答えは―――

 

 

「ふん……」

 

 

そんな言葉と共に、グレンを殴り飛ばすことであった。

 

 

「何も言わずに去った落とし前は、これで勘弁してやる」

 

 

アルベルトはそう言い、懐からあるものを放り投げる。

それはパーカッション式のリボルバー拳銃―――グレンのかつて愛用していた《魔銃ペネトレイター》だった。

 

 

「これは……ッ!?」

 

「条件は二つ。俺は王女奪還を最優先する。状況がリィエル排除を余儀なくしたら俺は迷わずリィエルを討つ。以上の事を邪魔しなければ、リィエルはお前達に任せる」

 

 

アルベルトが事務的に、淡々と告げた言葉に、二人は呆然とし―――

 

 

「ハハ……」

 

「そういえばお前は結構、義理堅いやつだったな……」

 

 

ウィリアムは笑みを、グレンは思い出したかのように呆れていた。

よくよく考えれば、一人でやるつもりならグレンを助けたりはしないし、目覚めるまで待たないだろう。

そんな簡単な事にも気づかなかった事に、相当自分も頭にきていた事にウィリアムは今さらながら気がつく。

 

 

「黙れ。このままリィエルという『戦力』を失うのが惜しいのと、ここで《詐欺師》に恩を売っておけば、こちらに引き込めやすくなると判断したまでだ」

 

 

アルベルトはそれだけ言い、部屋から出ていった。

 

 

「それ言っちゃあ、意味ねぇだろ……」

 

 

その建前と口実に呆れつつも、圧縮してあった紺色の外套を取りだし羽織っていく。

この外套には黒魔【トライ・レジスト】等が永続付呪(パーマネンス)してあり、宮廷魔導士の礼服に勝らずとも劣らない性能を有している。

そして銃のホルスターも装着し、そこに《魔銃ディバイド》を仕舞う。

 

 

「先行っとくぜ、先公」

 

 

ウィリアムはグレンにそう言って、部屋から出ていく。

宿から出ると、クラスのみんなが不安げな顔で集まっていた。

 

 

「ウィリアム、その格好は……?」

 

「先公とそのダチと一緒にあのバカを探しに行くだけだ」

 

 

カッシュの疑問にウィリアムはそれだけ言って、アルベルトと同じく前庭(アプローチ)でグレンを待つ。

そして遅れて出てきたグレンはみんなにリィエルの事を聞き、皆がリィエルを受け入れてくれていると改めて知ったグレンは、明日には全部元通りと皆に言い、その場を後にする。

 

三人は人気のない道を歩いていく。

 

 

「頼りにしてるぜ」

 

「寝言は寝て言え」

 

「精々気張るとすっか」

 

 

 

《詐欺師》。譲れぬものの為、《愚者》と《星》と共に敵の拠点を目指す。

 

 

 




向かうは三人
蹂躙劇はどう変わる?
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