てな訳でどうぞ
宝石獣をウィリアムが
「敵はさっきので品切れだったみてぇだな」
「あんなのが何体もいてたまるか、メンドイし」
そんなグレンとウィリアムのやり取りの中、アルベルトを含めた三人は進んでいく。
そして、薄暗く、液体で満たされたガラス円筒が、規則正しく、無数に立ち並んでいる、何かの保管庫のような部屋にたどり着いた。
「これは……?」
グレンが訝しげにガラス円筒に近づき、その中を覗きこみ―――
「―――ッ!?」
―――中身を確認したその瞬間、グレンは口元を抑えて後退った。
ウィリアムもその中身を知った瞬間に目を見開いて絶句し、アルベルトもいつも以上に表情を険しくする。
ガラス円筒の中にあったのは―――人間の脳髄だったのだ。
そしてガラス円筒に貼られたラベルから、この者達は『異能者』の成れの果てであることが分かった。
アルベルトの口からバークスは相当な異能嫌いで、典型的な異能差別主義者であった事が語られる。
「この国では何故か異能は『嫌悪』の対象……理由がある故か、そうなるよう誰かが仕向け――」
「今はンなこと、どうでもいい!」
アルベルトの考察にグレンはそう叫んだ直後、何かに気付く。
「おい、見ろ!あいつ、まだ生きてるぞ!早く――」
そのガラス円筒に近づいたグレンの言葉はそこで途切れ、言葉を飲み込んだ。
ガラス円筒の中にいたのは少女だが、その少女は魔術的に無理矢理『生かされて』おり、既に『死んで』いたのだ。
コ、ロ、シ、テ。
少女の口がそう言ったかのように、弱々しく動く。
ウィリアムは苦渋の顔で拳銃に手をかけようとし―――
「“牢記されよ、我は大いなる主の意を代弁する者なり――”」
―――たが、アルベルトがそれを手で制し、粛々と聖句らしき言葉を紡いでいく。
そして―――
「“――
―――その言葉と共に少女の心臓を雷閃で撃ち抜き、少女に永遠の眠りを与えた。
やるせない感傷が三人の間を支配していた―――その時。
「貴様らぁ!?なんてことをしてくれた!?」
そんな場違いな罵声が部屋中に響き渡る。
声がした方向に一同が顔を向けると、そこにはこの研究所の主であるバークスが怒りを露に姿を現していた。
「貴様らが壊したサンプルがいかに貴重なのか、それすら理解できんのか!?絶対に許さんぞッ!この駄犬共めがッ!」
そんなバークスの人を人と思わぬ発言に、グレンは罪の意識があるのかと問う。その問に、バークスは寧ろ自分に貢献できたのだから感謝しろと、ぬけぬけと言い放つ。
その答えにウィリアムとグレンは―――
「……テメェは魔術師じゃねぇ、ただの――」
「本物だよ、本物の――」
「「――クズだ」」
その溢れる黒い衝動のまま、バークスに攻撃を仕掛けようとし―――
「待て、お前達は先に進め」
アルベルトがそれを制し、グレンとウィリアムに移動を促した。
「お前達はリィエルを説得するんだろう?王女の件もある以上、今は時間が惜しい。このクズの相手は―――俺が務める」
先程よりも冷徹な雰囲気を纏ったアルベルトに、頭の冷えた二人は素直に頷き、一気に駆け出した。
「バカめ!通すと―――」
「《気高く・吠えよ炎獅子》!」
バークスの言葉は、二人の真後ろにある火球―――アルベルトが放った【ブレイズ・バースト】によって止められる。
直後、火球は床に着弾して炸裂するも、嵐のように渦巻く爆炎はバークスだけを呑み込み、二人はそのまま、その場から立ち去った。
―――――――――――――――
ウィリアムはグレンと共に廊下を走り抜ける。
そんなウィリアムの心中には、あの時からの後悔が巡っていた。
もし、あの時、無理でも追いかけていたら、
もし、あの時、逸る気持ちを抑えずに駆けつけていたら、
もし、あの時、もっと上手くやっていたら、
救えた、助けられたのではないか?その後悔が二年前からずっと己の胸の内にあるのだ。
助けられず、目的を見失い、宛もなくさ迷い続けながらも、譲れないものがある。
―――なにもせずに、大切と思えるものを失う事だけはしたくない。
たとえ、この先に否定したかった可能性が、この先にあるのだとしても、その可能性から逃げて、大切と思えるものを失えば、その想いまで否定してしまえば、今度こそ自分が分からなくなる。
ぞんな想いを胸に走り続け、遂に最後の扉が見え―――
「「だらっしゃぁああああ―――ッ!!!」」
その扉をグレン共々乱暴に蹴り開け、部屋へと突入する。
「さあ、この茶番劇にケリをつけようか」
《詐欺師》、遂に邂逅する。
ついに邂逅する者たち
彼らの結末はどうなる?
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