やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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「命は、何にだって一つだ!」――by大和のセリフ
てな訳でどうぞ


二十五話(改)

蹴り開けた扉の部屋の中には、天井から延びる鎖に拘束されたルミア、宮廷魔導士の礼服に身を包んだリィエル、そして魔導演算機の前に立つ青い髪の青年がいた。

 

 

「先生っ!?それにウィリアム君も!?」

 

 

今のルミアは衣服がボロボロで、あられもない姿にされているのだが、それ以上に、ウィリアムは青年を睨み付けていた。

青い髪だが、顔の輪郭は『アイツ』の面影がある。そして、状況から見てこの青年が、リィエルの『兄』を名乗ったと見ていい。

……最早、疑いようがない。二人を殺したのはコイツだ。そして部屋の奥にある六本の氷晶石柱も視界に納め―――

 

 

「……相当、好き勝手やってたみたいだな……」

 

 

沸々と沸き上がる激情を必死に抑えながらも、目付きの悪いその銀眼を、より一層鋭くし、怒気を宿して目の前の青年を睨み付ける。両の拳は相当堅く握られており、相当な怒りを抱いている事が窺える。

 

 

「……ああ。俺の生徒にも、随分と洒落たコーディネートをかましてくれやがったしな……」

 

 

グレンもウィリアムのその怒りと言葉の意味を正確に読み取り、同じように青年を睨み付ける。

 

 

「うう……バカな……何故、あなたがたがここに……」

 

 

その睨みをマトモに受け、その『兄』は顔を青ざめさせて後退る。明らかに怖じ気づく『兄』に、ウィリアムは近づこうと一歩踏み出す。が―――

 

 

「それ以上……兄さんに近づかないで」

 

 

リィエルが錬成した大剣を向け、ウィリアムの前へと立ちはだかった。

 

 

「本気でソイツの為に戦うつもりか……?」

 

「さすがにオイタが過ぎるんじゃねぇか?」

 

 

そんなグレンとウィリアムの静かな問いかけの言葉を―――

 

 

「なんとでも言って。わたしは兄さんのために戦う」

 

 

リィエルは二人を虚ろに見つめたまま、盲目的な言葉で返した。

そんなリィエルに、ウィリアムは容赦なく怒声を上げて言い返した。

 

 

「アホか!ソイツはお前の兄なんかじゃねぇよ!」

 

「え?」

 

「お前の兄と呼べる奴は二年前に死んだんだ!死んだ人間は生き返ったりしねぇッ!!」

 

「で、でも……現に生きて……」

 

「こんな事をあっさりとやる奴が、本当にお前の記憶にある優しい兄だと断言できるのか!?」

 

「ウィリアムの言う通りだ!どうせ、よく思い出せもしなかったくせに!」

 

「……うるさい……」

 

 

ウィリアムとグレンの容赦ない指摘に、リィエルは―――

 

 

「うるさいうるさいうるさいッ!わたしには兄さんしかいないの!兄さんの邪魔をするなら―――斬る!」

 

 

逆上して、二人に剣を向けて構える。

ウィリアムは、やっぱりか、という気分になっていた。

こうなると、リィエルはロクに話を聞かないだろう。いくら“真実”を言っても寝耳に水でしかない。だから、一回叩きのめす必要があるのだが……

 

 

(正直……キツイんだよな……)

 

 

ウィリアムは、魔術による肉弾戦は得意ではない。自身の魔術特性(パーソナリティ)の影響で、召喚魔術、白魔術への適性が低いからだ。

相手の動きを見切る目は相当培われており、技巧自体もそれなりにあるが、経験による我流の動きなため、純粋な格闘戦能力は二流レベルである。

殺し合いであれば然程問題ではないのだが、制圧となれば、その弱所が浮きぼりとなってしまう。

加えて、雷加速は非殺傷弾では使えない。非殺傷弾はその材質から、威力が強すぎると、耐えきれずに砕け散ってしまうからだ。

グレンも同様に、リィエルとの相性は最悪だ。

 

 

(それでも、やるしかねぇんだよ!)

 

 

だが、どうせ殺すと決めても土壇場で躊躇ってしまい、逆にやられてしまうのがオチだ。

なら、最後まで貫ける方を取る。

リィエルをぶん殴ってでも連れ戻し、ルミアを助け、『アイツ』に落とし前をつける。それ以外の選択は不要だ。

 

 

「こいよブラコン!ここまで迷惑かけてんだ、拳骨一発で済むとは思うなよ!?」

 

「ウィリアム――ッ!」

 

 

ぞの言葉を区切りに、リィエルは大剣を振りかざしてウィリアムに突撃する。

リィエルはその大剣を、稲妻の如く降り下ろす。

ウィリアムはホルスターの拳銃を引き抜き―――日緋色金(オリハルコン)で構成されたフレームでその大剣を受け止め、横へと受け流していく。

交錯する銃と剣。激しく飛び散る火花。

そして、そのまま流れるように、ウィリアムは後ろをとり、非殺傷弾を放とうとするも―――

 

 

「――ッ!」

 

 

リィエルは斬りかかった勢いを活かし、その場から離脱して駆け抜けており―――

 

 

「いぃやぁあああああああああああ―――ッ!」

 

 

その超機動でグレンの後ろを取り、斬りかかろうとする。

 

 

「うげッ!?」

 

 

グレンは慌てて横に跳んで、その一撃から逃れるも、リィエルは床に手をつき、大剣をもう一本錬成すると、手に持っていた二本の大剣をグレンに向かって投げ飛ばす。

ウィリアムはすぐさま、炸裂量を調整した高威力の通常弾を猛回転して飛来する大剣に向けて発砲してその軌道を変え、グレンを守る。

リィエルはその間に、ウィリアムに肉薄し、新たに錬成した大剣を横凪ぎに振るう。

ウィリアムはその大剣に向かって銃撃し、大剣をその手から弾き飛ばす。

それに対しリィエルは、大剣をすぐさま錬成し、その場で一回転してウィリアムへと再び斬りかかる。

 

 

「ぬおあッ!?」

 

 

ウィリアムはその斬撃をなんとか拳銃で受け止めるも、その勢いを捌き切れず、その場から吹き飛ばされてしまう。

ウィリアムは吹き飛ばされながらも、体勢を整え、追撃を防ぐためにリィエルに向かって非殺傷弾の銃撃を連続で放つ。

しかし、リィエルは既にその場にはおらず、再びグレンに斬りかかっていた。

 

 

(ああクソッ!本当に面倒だな!!)

 

 

二対一なのに、五分五分になっている事に、ウィリアムはリィエルの戦闘能力の高さを実感する。

リィエルの剛剣技にほぼ初見で対応できている辺り、ウィリアムも相当ではあるのだがそんな事は今のこの状況では全く関係ない。

そんな思考を隅へと放り投げ、必死にリィエルの隙を作る算段をウィリアムは立てようとする。

 

 

 

戦いは始まったばかりである。

 

 

 




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