てな訳でどうぞ
*少し改変しました
「わ、わたしは……」
自分を、兄を、全てを失ったわたし。その上でわたしは何を願うのか。
素直に自分の心に目を向けてみる。
そこに浮かんだのは、魔術学院に来てからの生活、呆れるグレン、怒るシスティーナ、笑いかけるルミア、自分に話しかけるクラスのみんな、容赦のなく折檻するウィリアム、そんなみんながいるあの場所に―――
―――また一緒に居たい、遊びたい。
(あ……)
ソコでようやく気がつく。あの暖かい世界が自分にとって、かけがえのない大切なモノだということに。
そして、再び思い出されるイルシアの記憶―――
―――いつか、ウィルと再会してほしい。
―――僕もそう思っていた。けど、組織の話を偶然聞いたんだ。
―――四年程前、一人の老人に妨害され殺せなかった、組織から逃げ出した子供がいたと。殺した事にして、他の人が裏切れないよう釘を指したということを。
―――もしかしたらウィルは……ウィリアムは今も生きているかもしれないんだ……
イルシアの記憶の中の兄の言葉。そして―――
『そ、そうだ!君の名前は何て言うのかな?』
『……ウィリアム=アイゼン』
『ウィリアム、かぁ…………それならウィルだね』
『……は?何でだよ?』
『えっと、怖がっちゃったお詫びなんだけど……ダメかな?』
『……好きにしろ』
『ありがとうウィル!』
『ふん……』
イルシアの記憶の中にある靄の取れた紺髪銀目の少年との最初の出会い。そのイルシアの記憶の中の少年と、大切だから守ると言って、目の前で戦い続けているウィリアムが重なっていく。
(ああ……)
どうしてウィリアムにグレンと似たような心地よさを感じていたのか、今、はっきりとわかった。
ウィリアムはあの時の―――死んだと思っていた彼だったんだ―――
わたしは、もう、ルミアとシスティーナ、クラスのみんなと一緒にいられないけど。
ウィリアムに対するこの気持ちは、イルシアのものかもしれないけど。
ルミアとシスティーナが悲しい顔をするのは、クラスのみんなから笑顔が消えるのは、すごく嫌だ。
ウィリアムが死ぬ姿を見るのは―――すごく、嫌だ。
「……ぅ」
そして、湧き起こる激情と燃え上がる熱情が、リィエルに力を与えていく。
その胸の内に宿った想いのままに、リィエルは改良型の【
錬成した大剣を手に立ち上がり、残像すら置き去りにする挙動で躍動した。
――――――――――――――――――
―――風が吹き上がった。
その風は瞬く間に、グレンとウィリアムを斬ろうとしたレプリカ達を、盛大に咲いた血華と共に吹き飛ばした。
「は……?」
その目の前の現実―――リィエルによって、一瞬で斬り伏せられたレプリカ達の姿にライネルは呆然とするが、次第に顔を歪めていき―――
「ば、ば、馬鹿なぁあああああああああああ―――ッ!?」
信じられないと云わんばかりに、叫び声を上げた。
「何故だ!?コイツらは、そこの
「アホか」
そんな喚き散らすライネルに、全身ボロボロとなっているウィリアムは冷め気味で答えを口にする。
「人間は成長するもんだ。リィエルは『人間』だから、むしろこうなって当然だろ」
リィエルはグレンに保護されてからずっと、宮廷魔導士として戦い続けていた。当然、実力は自然と上がる。
それに対し、レプリカは当時―――二年前の『イルシア』のデータで作られていた。
ライネルの言葉と、最初のレプリカとの攻防でウィリアムはそれに気づいていたのだが、リィエルの事があり、レプリカ達を殺せなかっただけである。
「『人間』……わたしが……」
「ふ、ふざけるな!人形が成長なんてする筈―――」
「……お前と議論するつもりはねぇ……今重要なのは……」
ウィリアムはそのままライネルの前に立ち、据わった目で睨み付け、右手の拳銃をライネルへと向ける。
「ケジメをチッキリつけてもらう事の方だ……」
「ひ……た、《猛き雷帝よ・極光の閃槍以て・刺し穿て》―――ッ!」
ライネルは怯みながらも、左手を構え、呪文を紡ぐ。
左手から放たれる雷閃―――黒魔【ライトニング・ピアス】。
ライネルから放たれたその一条の雷閃は、突如顕れた幾何学的な羽を有する盾―――【
「なッ!?」
「人の
ウィリアムはそう言い、いつの間に持ち変えたのか、左手に持つ淡く発光する
「じょ、冗談なんだろ?俺を―――」
ドゴォオオオオオンッ!!!
ライネルの言葉は、凄まじい銃声と後ろの破砕音で返された。
ライネルは脂汗を流しながら、恐る恐る後ろへと振り向くと、後ろの壁には大きな窪みが出来上がっていた。
そして、改めてウィリアムへ顔を向け直すと、拳銃から立ち上る硝煙と、その拳銃の上に一対の羽を持つ紫色の重四角錐の小さな何かが留まって電気を放出している。
「ひぃいいいッ!?」
ウィリアムが本気と分かり、身を震わせながら悲鳴を上げるライネル。そのウィリアムは懐から金属薬莢の銃弾を取りだし、拳銃へと手作業で装填する。
そして装填を終え、再びライネルへと拳銃を向ける。
「駄目だよウィリアム君!!復讐なんて―――」
「ルミア、目を瞑ってろ」
今までの会話から、事情を察したルミアがウィリアムに静止の声をかけるが、ウィリアムは取り合わずにルミアにそう言い、がちり、と撃鉄を引く。
「ゆ、許してくれ……俺は……」
そんなウィリアムに、ライネルは命乞いを始める。
「アイツが羨ましかった……常に俺の先を行くアイツが……」
「……」
嫉妬と羨望、様々な感情が混じったライネルの吐露をウィリアムは無言で聞く。
「アイツは本当の天才だった!だから簡単に目の前の成功を手放せたんだ!!俺には出来なかった!お前のように、誰かの為に戦うことも!!シオンのように、自由の為に捨てることも!!そんな強さは俺には……!」
「言いたいことはそれだけか?」
ライネルの告白を、ウィリアムはそんな無情な言葉で返した。
「『家族』をその手にかけた時点で俺はお前を許す気は一切ないんだよ……」
その言葉を区切りに、ウィリアムは銃の引き金に力を入れていく。
その迫り来る死に、ライネルは逃げる事も出来ず、ガタガタと身体を震わせ……
「い……嫌だぁあああああああああああああああああああああ―――ッ!!!?」
ドォオオオオオオオオンッ!!!!
引き金が引かれ、凄まじい銃声が再び鳴り響く。ルミアは最悪の光景を覚悟し、恐る恐る目を見開くも……
「……え?」
ルミアの目に映った光景は、硝煙の昇る拳銃を構えたウィリアムと……
「あ……ぅあ……」
腰が抜け、床に尻餅をつき、憔悴した顔ながらも確かに生きているライネルの姿だった。
「空砲だ。火薬だけの空撃ちだバーロー」
「あ……あ……ああ……」
「俺はお前と同じ『家族』殺しのクズになる気は更々ねぇんだよ。だから、お前に送るのは銃弾じゃなく……」
ウィリアムは拳銃をホルスターに仕舞いながら、経垂れ込むライネルの胸ぐらを左手で掴み上げ―――
「この
そのままライネルの顔面を引き絞った右拳で、全力で殴り飛ばした。
「うごはッ!?」
「……正直、肝が冷えたぞウィリアム」
見守っていたグレンは深い溜め息をつく。最初の銃撃をわざと外し、見せつけるように銃弾を装填していた時点でウィリアムの魂胆をある程度見抜いていたのだが、それでも、本当にライネルを殺すのではないかと不安だったのだ。
「それで、先公はどうする?」
「モチロン、最後の仕上げだ」
先程までの雰囲気を霧散させたウィリアムの質問に、グレンはそう言ってロープを取り出す。そんなグレンにウィリアムは―――
「じゃあ、ちょっとだけ『手入れ』をするか。と、その前に……」
ハサミとクシをその手に錬成したウィリアムは、ルミアを解放し、その場から消えようとしたリィエルの走る道に錬金術で窪みを作る。
リィエルはその窪みに足を取られてしまい、地面へ顔面からダイブする。見事なまでに足を取られ、地面と口づけしたリィエルに、ルミアが覆い被さって抱きつき、これからもリィエルと一緒に居たいという思いを伝える。
そんなルミアの優しさに、リィエルは大粒の涙を流して泣き始める。
その光景を尻目に二人は『作品』作りにせっせと取りかかっていった。
――――――
出来上がった東方由来の『落武者』の髪型の『作品』に製作者の二人は大爆笑、リィエルは首を傾げ、ルミアは目を反らしながら苦笑い、アルベルトは呆れていた。
ちなみにある部署の魔導士の老人はその『作品』の写真を見て―――
「ぷぎゃーーーーっはっはっはっ!こりゃ傑作じゃわい!!」
腹を抱えて爆笑していた。
落武者ヘアであの作品······どう思います?
笑えるのは私だけでしょうか?
感想お待ちしてます