やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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何事も
帳尻合わせの
天秤あり
てな訳でどうぞ


三十一話

電撃お宅訪問が決まった日から数日たった休日。

フェジテ西地区―――賑やかな住宅街から少し離れた、空き家が目立つ地域。

そのなかの一つ、少し古い家の前にグレン達は私服姿で来ていた。

 

 

「此処にアイツが住んでいる筈だ」

 

 

学院の資料等から事前に把握していたグレンは家を見上げて呟く。

目指すはこの家にある筈のお宝(お金)である!!

 

そんなドクズな事を考えるグレンを尻目に、三人は玄関の前に立ち、システィーナから拝借したブラウスとスカートに身を包んだリィエルが代表して扉を叩く。

少しして、がちゃりっ。と玄関の扉が開く。

 

 

「……何しに来たんだ?」

 

「遊びに来た」

 

 

家の家主―――半袖姿で突然の訪問に訝しむウィリアムに、リィエルはそう答えた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「それで、一体何しにこんな所まで来たんだ?先公と一緒に」

 

 

とりあえずリィエル達を家に上げ、訪問目的を聞くウィリアム。一応紅茶を出したのだが―――

 

 

『微妙』

 

 

と、見事にハモった感想に若干不機嫌になっていた。

 

 

「ん。ウィルの住んでいる家に来てみたかった」

 

「そんなリィエルに、俺らは付き添ったんだよ!コイツ一人じゃどうなるか分からないからな!!そうだろ、お前ら!?」

 

 

リィエルの純粋な理由に、グレンは便乗するように理由を話す。

 

 

「え、ええ!その通りよ!」

 

「う、うん。リィエル一人で辿り着けるか心配だったし!」

 

「むう……」

 

 

便乗しつつ、失礼極まりないシスティーナとルミアの物言いにリィエルは頬を若干膨らませて、ふて腐れる。

 

 

「……まあ、そうだな」

 

 

その理由にウィリアムも理解を示し、一応は納得した。

 

 

「まあ、たいした持て成しは出来ねぇがゆっくりしとけ」

 

 

ウィリアムは布袋に包まれていない義手の右腕でヒラヒラと手を振る。義手の右腕は灰色であることをを除けば、普通の腕と何ら見た目が変わっていなかった。

 

 

「……どう見てもヤワには見えないわよ、その腕」

 

「こんなん堂々と見せたら流石に怪しまれるっつーの」

 

 

システィーナのツッコミにウィリアムはそう返す。

システィーナは確かに、と納得する。神経と霊絡(パス)が義手と繋がっているだけでも凄いのに、ここまで普通の腕と似ていたら、流石に怪しむ。

 

 

「それにしてもウィリアム君、髪伸びてない?」

 

 

ルミアがウィリアムにそう聞く。まずは日常的な会話から進んでいき、本命を聞く。いきなり本命を切り出せば話さないだろうという考えからだ。

 

 

「そういえばそうだな。近々切るか」

 

「どこで髪を切っているのかな?」

 

「自分で切ってる」

 

「……へ?」

 

 

ウィリアムの予想外の返しに、ルミアは思わず呆けた声が洩れる。

 

 

「で、でも、後ろとか自分で切れないよね?」

 

 

ルミアのそんな最もな指摘に、ウィリアムは翡翠の石板(エメラルド・タブレット)を取り出す。

翡翠の石板(エメラルド・タブレット)が淡く発光すると同時に人工精霊(タルパ)―――上半身のみの、ゴツい甲冑をきた幾何学的な羽を有する騎士を具現召喚する。

 

 

「視覚を同調させた人工精霊(タルパ)を使って髪を切っている。理解したか?」

 

 

その説明と同時に具現召喚した人工精霊(タルパ)を消去る。だから妙に散髪技術が高かったのかと、グレンとルミアは納得した。

 

 

「しかし、魔薬(ドラッグ)無しで人工精霊(タルパ)召喚をやるとか、今でも信じられねぇよ」

 

 

グレンがウィリアムの裏技にそんな事を言う。実はウィリアム自身、試しにやってみたら出来たという、偶発による産物なのだ。

 

翡翠の石板(エメラルド・タブレット)により展開される領域は、一種の疑似深層意識領域(パラ・キャパシティ)となっている。術者のイメージが相当反映されやすい領域となっており、だから疑似霊素粒子粉末(パラ・エテリオンパウダー)があれば人工精霊(タルパ)が具現召喚可能となっているのだ。

 

当然ながら、リスクがない代わりの欠点も幾つか存在する。具現時間の制限に強大な人工精霊(タルパ)の召喚不可である。

疑似霊素粒子粉末(パラ・エテリオンパウダー)をスクリーンとして具現召喚する人工精霊(タルパ)は、当然、大きい存在ならそれ相応のスクリーンが必須だ。【詐欺師の工房】ではそのスクリーンが小さい。だから天使クラスの人工精霊(タルパ)が限界であり、それ以上の存在―――神の具現化等、不可能である。そして、一度に呼び出せる量にも限りがあるのだ。

 

 

「そうだウィリアム!!貴方のその固有魔術(オリジナル)なら空想上の古代魔法遺産のアレを作れるんじゃない!?」

 

 

古代文明マニアのシスティーナが何を思いついたのか、あの魔法金属を作れるんじゃないのかと訊いてくる。

それに対しウィリアムは―――

 

 

「アホか。知らないモンを作れるわけねぇだろ」

 

 

バッサリと否定した。

ウィリアムのこの固有魔術(オリジナル)は願えば何でも作れる、そんな便利なものではない。

仮に銃を錬成する場合、形状は勿論、その内部の構造、構成する材質に、それに対する根源素(オリジン)の数値と元素の配列等、具体的かつ正確な知識とイメージが必要なのだ。

これを組んだ最初の頃は、イメージと全然違っていたり、中身が全く成立していないガラクタだったり、全く別のものが出来上がったりと、散々な結果だったのだ。

だから、名前だけで中身を全く知らないものなど作れる筈がない。その説明を受けたシスティーナは肩を下ろす結果となった。

 

 

 

彼らの休日はまだまだ続く。

 

 

 




こんな感じの説明会
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