やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

84 / 215
おかしな所は·····ない筈·····
てな訳でどうぞ


三十七話(改)

―――夢を見る。

それはウィリアムにとって、辛い過去の記憶の夢だ。

 

最初の記憶は二人に拾われ、村で暮らしていた。

二人は記憶のない自分に『ウィリアム』という名前を与えた。

ウィリアムは二人の優しさに触れて一緒に暮らし始めた。

しかし、その幸せは直ぐに崩れ去った。

 

とある魔術師が快楽目的で村を襲撃したのだ。

二人はウィリアムに逃げるように促した。ウィリアムは涙ぐみながら、二人を『見捨てて』その場から逃げ出した。

そして、天の智慧研究会にモルモットとして捕らえられた。

 

その後、魔術特性(パーソナリティ)の有用性から研究者として上げられ、彼ら三人と出会った。

三人は常に悲しみ、苦しんでいた。だから三人の心からの笑顔の為に脱走計画を立てていった

しかし気付かれ、組織に対する恐怖から、ウィリアムは彼らを『見捨てて』組織から逃げ出した。

 

そしてその『見捨てた』罪悪感から、自分を助けてくれた老人(師匠)に教えを請うたのだ。

『見捨てた』彼らを今度こそ助けて救い、守る為に。

 

辿り着いた先は―――

 

 

 

「嘘だ……」

 

 

イレッセの大雪林にて吹き荒れる雪の中、ウィリアムはイルシアの遺体を抱き上げていた。

ウィリアムは無駄だと分かっていながら、法医呪文(ヒーラー・スペル)を唱える。当然ながら変化はない。

そして抱き上げる前の彼女の雪の積もり具合から、死んでからそこまで経っていないのも分かる。

 

 

「そんな……」

 

 

胸中に激しい悲しみと後悔が渦巻く。そこに熱はない。

様々な思いが渦巻く中、ウィリアムの心に、一つの罪禍の十字架が突き刺さる。

 

これは罰なのか?『見捨てて』逃げ出した自分への……

 

助ける為に、救う為に、守る為に。

 

その思いで足掻き、自らの意思で裏社会に踏み込み、この手を血で汚す事も許容して、力を付けたのに……

 

 

「イルシアが死んでいるということは……シオンとライネルも、もう……」

 

 

その結果がこれとは―――喜劇もいいところである。

 

 

「……何が《詐欺師》だ……ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお―――ッ!!!!!」

 

 

この日、雪林で一つの涙と後悔の叫びが響き渡った。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「―――ッ」

 

 

目が覚める。

目に入ったのは家の天井。一年半前から住んでいる、自分の家の寝床の部屋だ。

 

 

「ハァ……」

 

 

ウィリアムは鬱憤とした気分をため息と共に吐き出そうとする。しかし、何時も通り気分は晴れない。

この前の遠征学修で『ケジメ』はつけたが、『罪』が消える訳ではない。

結局、彼らを『見捨てた』事には変わりはないのだから当然だ。

当時から復讐の意志は芽生えなかった。それ自体が『筋違い』だと既に理解していたからだ。

だから焦ったし、短い期間で力を付けようとした。絶望と罪しか掴めなかったが。

 

 

「……本当に俺は此処にいていいんだろうか……?」

 

 

ウィリアムは胸中の不安を洩らす。それに答えるものはいなかった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「「「「「ふっざけんあぁああああああああああ―――ッ!!?」」」」」

 

 

グレンがシスティーナを賭けた魔導兵団戦の説明を受けたクラスメイトの開口一番がそれだった。

自分たちを巻き込んだグレンに全員文句をぶつけられても、仕方がない事だから当然の結果である。

 

 

「ふん……どうせ無駄ですよ」

 

 

ギイブルが冷ややかな言葉で無駄だという。

決闘相手であるレオスの得意分野、クラスの個々の実力差、同条件での競い合いを挙げていき、勝てる要素がないと言い切る。

だが、グレンは特に気にすることなく特別授業を始めていく。

 

 

「魔術師の戦場に英雄はいない」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――放課後。

 

 

「《雷精よ・紫電の衝撃以て・撃ち倒せ》」

 

 

リィエルが放った【ショック・ボルト】が二百メトラ先に立っている丸太へと向かう。しかし不意に曲がって手前に着弾する。

 

 

「むう……」

 

「相変わらず壊滅的だなぁ……」

 

 

リィエルの黒魔術の腕前に、ウィリアムは最早ため息しか出て来なくなってきている。

魔導兵団戦ではお得意の錬金術、格闘戦は禁止であるため、リィエルが戦力外にならないようなんとかしようとしているのだが、【ショック・ボルト】を十回以上撃っても、丸太には一つも掠りもしなかった。

 

 

「……やっぱ、こうするしかないか……」

 

 

マトモに使えないなら、マトモに使わなければいい。

そんな考えの元、ウィリアムはリィエルにある事を試させた。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

―――魔導兵団戦が当日を迎えた、アストリア湖南端付近の湖畔。

その湖畔から北西部にある学院保有の魔術の演習場にて、ハンペン(?)先生から魔導兵団戦のルールが説明がされていく。

 

 

「頼みましたぞレオス先生。ぜひこの男に一泡吹かせてやって下さい!」

 

 

ハンペン(?)からすれば、グレンの行為は最低なものだが、グレンの内心を大体察しているウィリアムからすれば、相当滑稽なセリフである。

 

 

「よぉしッ!頼むぞお前ら!俺が逆玉に乗れるよう頑張ってくれ!!」

 

 

……道化を演じているグレンもグレンではあるが。

そんなこんなで魔導兵団戦が始まり―――

 

 

「そんじゃいくか」

 

「ん」

 

 

ウィリアムとリィエルは東の丘ルートへと進軍していった。

 

 

 




文才無いとはいえ·····矛盾は無いと信じたい
感想お待ちしてます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。