てな訳でどうぞ
遺跡調査五日目の真夜中。
「あぁ~、癒されるぅ~」
ウィリアムは現在、セリカが先日発見した温泉に一人で浸かっていた。
一人で温泉に浸かっているのは、師匠との過去の思い出に耽りたかったからだ。
義手を隠す腕袋を外していない辺り、一応万が一には警戒しているが……
「……いたのかよ、ウィリアム……」
突然の落胆したような声が聞こえ、緩くなった頭で声のした方を向くと肩を落とした一糸纏わぬ姿のグレンがそこにいた。
「貸し切りに水を差して悪いな、先公」
グレンの肩を落とした理由を当てながらも出る気配のないウィリアムに、グレンはため息を吐きながら温泉へと入っていく。
互いに無言で温泉を堪能していると―――
「……ん?」
グレンが新たな人の気配を感じ、ウィリアムもそちらに視線を向けると……
「――げっ!?」
「――ッ!?」
「なんだ、いたのか」
一糸纏わぬセリカがいた事に、ウィリアムの緩くなっていた頭が一気に覚醒した。
ウィリアムは慌てて後ろへと向き、グレンもテンパり同じように背を向ける。
そんな二人にセリカは気にする事なく近づいていき、グレンと背中合わせで浸かっていく。
ウィリアムは堪らずに離れようとするも―――
「まぁまぁ、折角なんだしお前もいろよ」
とセリカに引き留められた為、逃げられなくなる。
グレンとセリカはなにやら語り合っているが、緊張のせいでロクに言葉が入って来ない。
セリカが色々と不安を吐露している事だけは理解できたので、ウィリアムは少しだけ会話に加わることにした。
「そんなんじゃ幸せが逃げちまうぞ、もっと気楽にしとった方がええぞ。って師匠が言いそうだな」
「……ハハ、アイツなら確かにそう言うだろうな」
そんな茶化し言葉を、セリカは懐かしむように受け取った。
セリカはグレンともう少し話をして、先に温泉から上がっていった。
ウィリアムもそろそろ上がろうと立ち上がろうした矢先、向こうの岩影から複数の人の気配が近づいてくる。
「「…………は?」」
「システィ、早く~」
「急かさないでよ~」
「温泉は逃げたりしませんわよ」
「ええ、ですからゆっくり楽しみましょう?」
岩影からシスティーナとルミアの声が聞こえてくる。しかもそれに続いて、ウェンディとテレサの声も聞こえてきた。声は聞こえてこないが、リィエルとリンもいる可能性は高い。
「ま―――」
ウィリアムは咄嗟に叫ぼうとするも、それより早くグレンに肩を掴まれ、湯の中に引き摺りこまれてしまった。
(どういうつもりだ先公!?)
(す、スマン!!つい咄嗟に……!)
手話でグレンの真意を問うウィリアムに、グレンも手話で自身が指してしまった最悪の一手を素直に謝る。
そうしている間に彼女達は入浴してしまい、取り囲まれてしまった。
(ど、どうすんだよ先公!?)
(ウィリアム!お前が透明な通気口を錬成して……)
(無理だ!通常錬成じゃ確実に紫電が飛び散るし、瞬間錬成の鍵たる
(じゃあ【ウォーター・ブリージング】で……)
(今、水中詠唱なんぞしたら確実にバレるぞ!!)
(そうだったぁあああっ!!もう耐えるしかねぇのか!?)
(全員風呂から出るまで俺らの息が保つのか!?)
二人は地獄からの脱出案を模索するも一向に妙案が出てこない。
そんな事など露知らず、温泉を堪能している彼女達は会話に華を咲かせていく。
「そういえば、カッシュさんが覗きにくるんじゃ……」
「大丈夫よ。縛って吊るしておいたから」
「どうせなら火炙りにしていただければ、よろしかったのに♪」
「あはは、確かにそうね」
((お、鬼か!?))
彼女達の物騒な会話に二人は自分達の未来を想像し、萎縮する。
カッシュは先日、女子風呂を覗こうとして見事に迎撃されていたのだ。
カッシュが今日やたらとファムを探していたのは、契約を結んで視覚を同調し、女子風呂を覗く魂胆だったのだろう。
まぁ、当然失敗しているのだが。
(って、そんな事考えてる場合じゃねぇ!!)
ウィリアムはそんなどうでもいい事を頭の隅へと放棄し、見つかれば殺されるこの状況から脱出する為、グレンと一緒に案を出しまくる。
あれも無理、これも無理とボツ案しか出ず、無情に時間が過ぎ、限界が近づいていく。
そして……
「だぁあああああああああああああああ―――ッ!?」
「ぬあぁああああああああああああああ―――ッ!?」
遂に限界を迎え、二人は新鮮な空気を求め、湯柱を上げて浮上した。
「「ゼハァー…………ハァー………ハァー………」」
二人は深呼吸し、新鮮な空気を身体に入れていく。
「「「「「「……………………」」」」」」
その光景に温泉を堪能していた彼女達の時間が止まる。
二人は目の前の光景を視界に収め―――
「……
「……フッ」
グレンは実に眩く、清々しく、ウィリアムはどこか諦めたかのような達観した笑みの、漢の顔となった。
その直後、グレンには暴風が、ウィリアムには大剣の腹の横殴りが襲い掛かり、哀れな二つの悲鳴が岩山に響き渡った。
後に大剣で殴り飛ばした少女はこう答えた。
「よくわかんないけど、こうするべきだと思った」
「アハハ……」
若干不機嫌な顔で答えたその少女に、天使の如き少女は苦笑いするしかなかった……
この流れもありの筈
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