やる気なしの錬金術師   作:厄介な猫さん

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簡略って本当に難しい
てな訳でどうぞ


四十九話(改)

遺跡調査最終日。

一行は遺跡の最深部―――大天象儀(プラネタリウム)場へと辿り着いた。

大部屋の中央には古代魔術(エインシャント)が生み出した、巨大な天秤の形をした天象儀(プラネタリウム)装置がある。

グレンが天象儀(プラネタリウム)装置を、手にした論文通りに操作すると、小宇宙のような幻想的な空間が顕現する。

誰もがその光景に見惚れる中、セリカが装置を操作して機能を停止させる。

そのままセリカの音頭で部屋の調査が開始される。

ウィリアムとリィエルは何時も通り入り口の見張りなのだが、今のウィリアムにとっては見張りはキツかった。

何かに没頭しないと、昨日の出来事を思い出してしまうからだ。本人としてはさっさと忘れたいのにだ。

 

 

(こうなったら、《ファランクス》の小型化について考えるか!)

 

 

ウィリアムは兎に角、昨日の出来事を考えないようにするため、別の事を考える事で誤魔化そうとする。

機構自体は同じにして、銃口を小さくしたり、砲身等を短くしたりすれば、取り回しが利き易くなるだろう。

その分、威力や射程が落ちるだろうが、前回のような戦闘でなら、十分牽制の役割を果たせる筈だ。

そんな見張りを殆どそっちのけで考え続け、具体的な構成を整えていると―――

 

きん、きん、きん――

 

魔力反響音が聞こえてきた。

ウィリアムは音のした方に目を向けると―――

 

 

「―――なッ!?」

 

 

あの天象儀《プラネタリウム》装置が先程とは違う動作で動いていた。その装置の近くには呆けたシスティーナとルミアがいる。

呆気に取られた周りを尻目に、天象儀《プラネタリウム》装置は駆動し続け―――

部屋の北側に、蒼い光で三次元的に投射された『扉』が現れた。

そしてその『扉』は、どこか切羽詰まったセリカが、通った事で閉じられていった……

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

セリカが『扉』の向こうへ消えた後、グレンは事情聴取のため、システィーナとルミアを音声遮断結界を張った自身の天幕へと招き入れていた。

ウィリアムとリィエルも同席しているが、問題は無い。

 

 

「お前らが何をしたのか……話してもらおうか?」

 

「はい……」

 

 

グレンの問いかけにシスティーナは答えていく。

システィーナの話を要約するとこうだ。

システィーナはルミアの『異能』―――『感応増幅』を使ってあの装置を魔術解析したら今まで見えなかった術式が見えるようになり、その驚きのまま装置を操作したら、あの『扉』が現れたそうだ。

話を聞いたグレンとウィリアムはやっぱり、という気分だった。

『感応増幅』は単に魔力を増やすだけの能力。出来ない事を出来るようにする能力ではない。

だが、あの遠征学修の一件―――ルミアの『異能』により、ルーン語の機能限界で不可能だった筈の魔術儀式、『Project:Revive Life』を成功させていた。

つまり、ルミアの『異能』は『感応増幅』と似て非なる別の『異能』だろう。

だが今はその事ではなく、これからの事が重要だ。

話を聞き終えたグレンは一人でセリカを連れ戻しに行くと言ってきた。

それに対し、システィーナとルミア、リィエルは同行を申し出る。

 

 

「俺も行くぜ。戦力は少しでも多い方がいいだろ?」

 

 

当然、ウィリアムも同行を申し出るも―――

 

 

「駄目だ」

 

 

グレンはキッパリと拒絶した。

戦闘能力の高いウィリアムとリィエルはまだしも、システィーナとルミアを連れていくわけには行かず、他の生徒の事もあるのだ。

 

グレンは正論を言って天幕から出ると、他の皆が物言いたげな顔で集まっていた。

グレンが一人でセリカを連れ戻しに行くと言った途端、カッシュが盛大にグレンに飛び蹴りを放つ。

そして、自分達は大丈夫だからセリカを連れ戻す為にシスティーナ、ルミア、リィエル、ウィリアムを連れて行けと言う。

他の皆もカッシュと似たような事を言い、その思いを受けたグレンは―――

 

 

「頼む……力を貸してくれ。セリカは、俺の唯一の家族なんだ……」

 

 

その懇願に近いグレンの言葉に、四人は強く頷いて返した。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

準備をすませ、天文遺跡の最深部から例の『扉』を開き、光の回廊を踏破した先に広がった最初の光景は―――

 

 

「――ッ」

 

 

独特な衣装と杖を持つ、大量のミイラだった。

この地獄の光景の空間に一同は(約一名を除き)呑まれかけていると―――

 

ずる、……り……

 

と、後方から這うような音が聞こえてきた

一同は咄嗟に振り替えると、後方の曲がり角から、下半身の無く、左腕もなくした長い金髪の女だった。

 

 

「きゃああああああああああああああ―――ッ!?」

 

 

システィーナの悲鳴を皮切りに、その女は素早い動作でグレンへと右腕一本で跳躍して迫り、髪を伸ばしてグレンの口と首を絞め上げる。

 

 

『憎イ―――憎ィイイイイイ―――ッ!アノ女サエ居ナケレバァアアアアア―――ッ!!』

 

 

そんな意味不明な事を口走る女にリィエルは大剣を振りかざし、その女を斬り伏せようとするも―――

 

 

「―――うあッ!?」

 

 

突如、壁から生えた無数の腕がリィエルの全身に絡み付き、壁へと引っ張り拘束する。

 

 

「チィ―――ッ!」

 

 

ウィリアムは這い上がってくる悪寒を抑え、直ぐ様翡翠の石板(エメラルド・タブレット)に触れて【詐欺師の工房】を起動する。

そして、全体的に細身であり手を祈るように組んだ上半身のみの甲冑騎士―――人工精霊(タルパ)騎士の祈り(ナイツ・プレアー)】を二体、その場に具現召喚する。

その甲冑騎士達から歌声が奏でられると―――

 

 

『ギャァアアアアアアアア―――ッ!?』

 

 

足元で動き出していたミイラも含めて、亡霊達が一斉に苦しみだす。

騎士の祈り(ナイツ・プレアー)】は祓魔用の人工精霊(タルパ)だが、浄化までには至らない。精々、動きを鈍くする程度だ。

ウィリアムはそのまま【騎士の誇り(ナイツ・プライド)・剣兵】を具現召喚しようとするも―――

 

 

「《送り火よ・彼等を黄泉に導け・その旅路を照らしたまえ》」

 

 

その前に、ルミアが香油を少しずつ垂らすように振りかけながら白魔【セイント・ファイア】を詠唱し、橙色の聖なる炎が死者達を焼き尽くしていく。

炎が収まると、その場にいた死者達は残らず消滅しており、辺りの穢れも清められていた。

 

 

「……あ、ありがとう……」

 

「ん。助かった」

 

 

ゾンビに触れられパニックを起こしていたシスティーナと拘束されていたリィエルが、二人にお礼を言う。

 

その後、近くの小型モノリスを調査し、帰れる事を確認してから、一同は通路の奥へと進んでいった。

 

 

 




人工精霊は本当に便利である
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