てな訳でどうぞ
ルミアそっくりの少女の手引きによってその場から離脱した一同。
モロクロ調の世界が元に戻る頃に、少女に何者かと問うと―――
『そうね……今はナムルスと名乗っておくわ』
あらかさまな偽名で返された。
その後も質問しても彼女はのらりくらりとかわしていくし、喋ろうとしない。
分かったのは精々、遺跡限定の幽霊という事と、ルミアを相当嫌っているという事位だ。
そんな敵意をぶつけられても、ルミアは助けてくれた礼をナムルスに伝える。
ナムルスはこのまま教えた通りに進むよう、頭を冷やしてくると言って、その場から消えていった。
「……う…ん……?」
その直後にセリカが目を覚まし、グレンがセリカに容態を聞く。
どうやら、あの魔人の右の魔刀は斬った相手の霊魂を喰らって、自らの力として吸収するようであり、その為、セリカは霊魂に多大なダメージを負っており、下手したら魔術が二度と振るえない程だそうだ。
そして、セリカは足手まといとなった自分を置いていくように言い出す。
「……そんな事、できるかよ」
グレンはセリカの弱音をキッパリと拒絶する。
その後もセリカは置いていくように言い続けるも、グレンは全く曲げずに、家族だからという理由で突っぱねる。
「本当に……私達は……家族、なのか……?」
セリカはそのまま、胸の想いを吐露する。
遺跡探索に拘っていたのは、最初は『内なる声』によるものだが、今は自分の秘密を解き明かし、グレンと同じ時を生きる『人間』になりたかったのだと。
そんなセリカにグレンははっきりと大切な『家族』だと伝える。
『
グレンの心からの言葉を受けたセリカは再び眠りにつく。
それを生暖かい目で見つめられていた事に、グレンは気恥ずかしそうに顔を背ける。
そして、再び現れたナムルスと共に、地下迷宮を進んで行く。
暫く進んでいると、遂に背後からあの魔人の気配が伝わってきた。
まだ出口まで辿り着くには遠く、確実に追いつかれる。
グレンが自ら足止めを買って出るも、ナムルスがそれを引き止める。
ナムルスとしては、グレンとセリカには生き伸びてほしいそうだ。
なら―――
「だったら、俺がここに残る」
「ウィリアムッ!?」
「しゃあねぇだろ。議論する時間すら勿体ねぇんだ。なら、俺が時間を稼ぐしかねぇだろ」
ウィリアムは覚悟を決めてグレン達にそう告げ、《詐欺師の盾》を一つ解凍し、左手に携える。
「これが何処までアイツに通じるか判らねぇが、防御と足止めに徹すりゃ多少は時間を稼げるはずだ」
この《盾》なら、少なくともあの太陽球は防げる筈。
そう伝えようとした矢先―――
『……貴方、その盾の金属、どこで手にいれたの?』
ナムルスがいきなり問い質してきた。
「は?」
『早く答えなさい。その盾に取り付けられた碧い金属を、一体どこで手にいれたの?』
懐疑的な目を向けてくるナムルスに、ウィリアムは時間が惜しいから手早く答える。
「自分で作ったもんだ。分かったら早く先公らを連れて行け」
『自分で作った?…………』
ウィリアムの答えに、ナムルスは考える仕草をする。そして―――
『だったら、貴方もここで死ぬわけにはいかないわ』
「はぁ!?ふざけてんのか!?」
『ふざけてないわよ!それを本当に貴方が作ったのなら、貴方にも生き伸びてもらわなきゃ困るのよッ!!』
「ならどうするつもりだ!?このまま追い付かれて全滅させるつもりか!?」
『ならせめて、アイツを倒せる手段をこの場で出しなさい!!』
「あの不死身ヤローを倒せる手段なんざ持ってねぇよ!!」
ナムルスの意味不明な言葉に苛立ちを増しながら、ウィリアムは激しく言葉をぶつける。
そこにグレンも混ざり、まさに一触即発の激しい言い争いになろうとした時、ずっと考え込むように黙っていたスティーナが割って入る。
「だったら……みんなであの魔人と戦って、倒しましょう……私の推測が正しければ……」
システィーナは『メルガリウスの魔法使い』の本を取りだし、あの魔人が物語に登場する魔将星の一人―――魔煌刃将アール=カーンの可能性を指摘していく。
二振りの魔刀とあの不死性―――物語のアール=カーンは十三の命を持っているとの事。
確かにあの魔人がアール=カーンなら打倒する手段と攻略法は存在する。
物語では七回死んでおり、闘技場では二回殺したので、命のストックは残り四つ。
勝機の芽は十分にあるが、これは賭けである。
本当にあの魔人がアール=カーンなら、今の段階で高確率で三回は殺せる。だが、四回目が怪しいのだ。
そんな思い悩むグレンに―――
「先公、上手くいけば奴を倒せるかもしれねぇ…………相当、危険な賭けだが」
ウィリアムがその言葉と共に、その危険な賭けを話した。
―――――――――――――――
迷宮内の空中庭園らしき場所。
そこで彼らは魔人を迎え討つ事にした。
広間にはグレンとリィエルにウィリアム、広間から少し離れた二、三メトラ程高い位置にシスティーナとルミアが待機している。
ウィリアムは四つの《詐欺師の盾》を浮遊状態にし、隠蔽の魔術を施して、二つを広間の隅に、一つは後方のシスティーナ達の近くに、残りの一つは眠っているセリカの傍に待機させている。
ウィリアムのあの策は最終手段―――ギリギリの策だ。そうなる前に本人も含め、あの魔人と決着をつけなければならない。
やがて、魔人が遂に階段から姿を現した。
『我に立ち向かうか……我に敵わぬと知り、牙剥くその蛮勇は愚か。だが、天晴れ』
魔人はそう言い、ゆっくりと階段を登ってくる。
そんな魔人に、グレンは精一杯、余裕の演技で小馬鹿にするように言い放つ。
「そうかねえ?あと四回殺せば、テメェは死ぬんだろ?」
『……』
「古代の英雄サマに俺一人じゃ無理だろうが、五人で戦えば、テメェに勝てる。命が残り四つなら……なんとかしてやるぜ?」
グレンの渾身の釜賭けに魔人は―――
『……良いだろう。汝等がいかに我が秘中を知ったかは与り知らぬが……その群の力を以て、我を四度殺してみせよ。愚者の民草共よ』
見事に引っ掛かり、決定的な言葉を吐いた。
「さぁ、行くぞッ!!」
「ん。任せて!」
「ああ!」
「援護するわよ!」
「うん!」
グレンの号令により、壮絶なる戦いの火蓋は切って落とされた。
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