東方模倣録   作:雷炎

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雪が降って来た。ここに来た時にはそれなりに冷え込んでいたので冬の訪れは容易に想像出来た。

しかしここの冬は俺が知っている冬とは違うようだ。今までの冬は三〜四ヶ月ほどで寒さは安らぎ、桜が咲き始め春の訪れが来るはずだった。

それに比べてここの冬は長い、すでに春の訪れが来てもおかしくないほどの日数は経過しているはずなのだが温かくなる様子が微塵も感じることができない。

吐く息は白く、朝方は墓に霜が降りて水たまりは氷の板となっている。

能力のおかげで冬の寒さでもへっちゃらな体質になっているが個人的に春が恋しい。

満開の桜を眺めながらお酒を楽しむのが春の名物なのだがいつになったら春になるのだろうか。

 

 

 

そんな事を思いながら寒い日々を過ごしていたが、今日はいつもとは違った。

それは朝起きてすぐに気づいた。

 

 

端っこの方の空間に穴が空いていた。穴が空いているとしか言いようのないなんとも奇妙な光景だ。

真っ暗な穴、少し光を当ててみるが何処につながっているのか全くわからない。

その上、穴からは嫌な感じのオーラが出ていた。

体の芯まで凍えるかと思うほどの冷気、かつて死体を見た時に感じた死の気配。

生きとし生けるものを拒んでいる、そんな独特の雰囲気が出ている。

 

そんな摩訶不思議な穴を眺めていると、真っ暗な穴から突然一匹の蝶が出てきた。

これまた不思議な蝶な発光している蝶だ。

宝石のような美しさなのに危険な気配を隠そうとせず、キラキラ光る鱗粉を撒き散らせながら優雅に羽ばたいている。

幻想的な蝶に目を奪われていると、俺の頭の上をぐるぐると回り始めたかと思うと再び穴の近くに戻っていった。

もしかしてこの蝶は付いて来てほしいのだろうか。

 

恐る恐る穴に近づいていくと、蝶は穴に吸い込まれるように消えていった。

こうなったらついていってやろうじゃないかと意気込みながら真っ暗な穴へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

不思議な穴を飛び込むとそこは日本庭園だった。

素晴らしいという言葉が陳腐になってしまうほどお見事な日本庭園に、非常に大きな日本家屋。 それら単体でも十分すぎるがさらにそこへ大量の桜の花びらが舞い散り、幻想の世界を作り出していた。

いつもなら、普通の状態ならこの見事な風景に歓喜するところだったがここは普通ではなかった。

 

沢山の桜が咲き乱れる中に一際、いや圧倒的な存在感を放っている巨桜が一本あった。

その花びらは今にも満開にならんとしており、その巨桜からはおぞましいほどの死の気配が溢れていた。

それは今まで見たことのあるどの生命体よりも貪欲に命を欲し、周りの命を吸い尽くそうともがいているようにも見える。

 

 

直感でわかった、アレは咲かせてはならない。どんな手段を用いても咲かせてはならない存在なのだと体の隅々がそう叫んでいた。

命を取られないために足を踏みしめ己に喝を入れ、ふと上を見ると空は戦場と化していた。

 

日本庭園や日本家屋が静の美しさなら空を覆い尽くす弾幕は動のうつくしさ。今ここは静と動の美しさが完璧に噛み合っている。

 

 

俺はその弾幕に見惚れるたもののそれも一瞬、即座にあの桜の元へと駆け出していた。

 

一歩、一歩、足を動かすたびに命が遠ざかりそうになる

死者の囁きがだんだんと大きくなっていく

体が重くなっていく

 

どうすれば満開を止めれるのかわからないがあの妖力を少しでも削るほかない。僅かでも削ることがこの場で出来る精一杯のことだから。

 

巨桜の根元までようやくたどり着いたはいいが意識が朦朧としてきたため早くしなければ。

やることは単純、この桜の妖力をポンプのように吸い出し圧縮する。

シンプルで効果があるかわからないがやってみるしかない。

 

 

 

桜に溜め込まれていた妖力がナナシへと吸い出されていく、その量たるや増水した川の鉄砲水を彷彿とさせる。

吸い出された妖力はナナシの体内で圧縮され、また後日排出される。

 

 

ナナシが優秀であれば膨大な妖力を多少は吸い出せたのだろう。しかし悲しいことに理想と現実の差は大きく、ほんの十秒間ちょい吸い出しただけで許容オーバーになり、ナナシの意識はあっさりと薄れることとなった。

 

 




書いていて自分の語彙力や表現力のなさに絶望

本編では主人公として頑張っているナナシですが、別にナナシがいなくても西行妖の満開は阻止できていました。
ですので霊夢達視点からすれば突然現れて妖力を吸ったかと思えばすぐにぶっ倒れる変人になっています。

色々突っ込みどころや無理矢理なところもありますが温かい目で見ていただけると幸いです。
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