ソードアート俺ライン   作:きのみ

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01.リンクスタート

 俺はクラインこと壺井遼太郎とねじり鉢巻きの巨漢カルー、バンダナに口ひげのジャンウー、黒髪顎髭のアクト、逆立った茶髪に細身のオブトラ、普通の青年トーラス達と共に並んでいた。どこに並んでいるのかと言えば大手電機メーカーの巨大店舗の前に並んでいた。

 何故かと言えば、今話題のソードアート・オンラインを手に入れる為である。俺はこのゲームがデスゲームになること、俺がモブで死ぬ可能性があることを知っていて、並んでいる。原作では名前も出てこない俺のキャラクターは死ぬ可能性が高いのに、何故ならんでいるのか?それは、偏に神様に特典を貰ったからという理由に尽きる。神様に特典を貰った俺が死ぬ可能性は低い。それに、俺はソードアート・オンラインに入るともう決めたのだ。今更、止める気にはならない。

(こいつらと一緒にいたいからな)

 それは純粋な気持ちだった。俺は風林火山の皆と一緒にいたいし、裏切りたくないし、見捨てたくも無い。

 風林火山のメンバーとは前のゲームからオフ会やら何やらで何度も会っていて、気が置けない仲間だと思っている。酒も飲み交わし、一緒に温泉にも行ったり、お互いの家に遊び行ったり、もう家族同然だ。

 こいつらとならどこにだって行ける。

 俺はそんな事を思いつつ顔を上げた。空は白みがかり、朝を告げていた。あと二、三時間もすれば、開店するだろう。

 

「テイル、眠れたか?」

 

 俺と同じく寝袋から起き上がったクラインが声を掛けてきた。俺のキャラクター名はテイルなので、風林火山のメンバーには「テイル」と呼ばれている。

 

「ああ、眠れたよ。今はこうして朝日を拝んでるところさ」

 

 俺は巫山戯て両手を合わせて拝むようなポーズをすると、クラインにウインクした。

 

「イケメンは何しても様になるんだな……」

 

 クラインは呆れたようにそう言うと、溜息を吐いた。

 

「おい、何言ってんだよ、クライン。お前だってその悪趣味なバンダナさえなきゃ十分、イケメンだって」

 

 そう、クラインはイケメンだ。悪趣味なバンダナさえ無ければ。

 

「悪趣味言うな!」

 

 俺とクラインはじゃれながら話を続けた。これからSAOで何をするか、何をしたいか、攻略サイトを見ながら、まだ見ぬ世界に思いを馳せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 クライン達と無事にSAOを購入した俺は自宅に戻っていた。自宅は都内から少し離れた東京寄りの埼玉にある豪邸だったりする。俺の父が資産家であり、IT企業の社長で代々この豪邸に住んでいる。俺は好きなことをして、ある程度満足したら、父の仕事を継ぐつもりだ。父もそのつもりでいるらしい。

 俺はSAOのサービス開始前に家族と話す時間を持つことにした。これが本当の最後になってしまうこともあるからだ。

 今日は休みの日なので、リビングで寛いでいる二人の元に向かった。

 

「父さん、母さん」

「司、どうした?」

「いつも、ありがとう。二人に聞いて欲しい曲があるんだ」

 

 俺はリビングに置いてあるピアノに向かった。

 ポーンと音を鳴らして俺は目を閉じた。思い浮かぶのは育てて貰った記憶。俺は両親に感謝を込めて鍵盤に手を添えた。奏でるのはバッハ「主よ人の望みの喜びよ」だ。

 両親も俺もクリスチャンなのと、俺は個人的にこの曲の音色が好きだから選んだ。穏やかで優しい音色、どこか春の陽気を感じさせるような明るい曲。

 ありったけの感謝を込めて弾く。

 俺はこれでもプロのピアニストだから腕もいいし、聞くに堪えないということは無い。

 横目で見た両親も聞き入っているようだ。

 俺はピアノに集中して、弾き続けた。

 最後の一音まで感謝を込めた。いつの間にか、俺の目から涙が流れていた。

 

 パチパチパチパチ……

 

 父と母の拍手がリビングに響く。二人の目にも涙が浮かんでいた。

 俺は堪らず、二人の元に飛び込んだ。

 

「ありがとう、司、とても良い曲だったよ」

「司は私たちの自慢の息子だわ」

「……ありがとう」

 

 俺と両親はしばらくリビングで語らっていた。

 

 

 

 

 

 

 俺は覚悟を決めてナーヴギアを被った。そして、あの言葉を口にする。

 

「リンクスタート」

 

 視覚、味覚、嗅覚、聴覚、触覚の五感がナーブギアに繋がれていく。そして、俺ははじまりの街、主街区にいた。

 そこで、アナウンスが流れた。

『おめでとうございます。貴方はソードアート・オンラインに一番最初にリンクしました。特典であるスキル【成長促進】が付与されます。それでは、ソードアート・オンラインをお楽しみ下さい』というアナウンスだった。

 俺はステータスを確認すると、スキル【成長促進】が追加されていた。

 成長促進はその名の通り、成長を促進させる為のスキルで、経験値が通常より十%高く貰える。有り難いスキルだ。

 こんなスキルを貰ったなんて知られたら、袋だたきにされる恐れがあるので、誰にも言わないと決めた。

 まずは教会で祈ってからと思うと俺は教会に向かい、聖堂で祈りを捧げた。

 そしてアナウンスが流れた。

 『おめでとうございます。貴方は初めて教会で祈りを捧げました。特典であるスキル【神の祝福】が付与されます。この後もソードアート・オンラインをお楽しみください』どんだけだよ!

 俺はスキルの安売りセールなのか?と思いながら【神の祝福】を確認した。

 神の祝福は致死ダメージを負っても、必ず一ポイントHPが残る。そして、五分間無敵状態になるというものだった。その間にいかなる回復もできないのが欠点だろう。だが、凄いスキルだった。

 これも誰にも言わないでおこう。

 俺は自分の運の強さに末恐ろしいものを感じつつ、教会を後にした。

 

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