ソードアート俺ライン   作:きのみ

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03.月夜の黒猫団

 それから俺たちはレベル上げをしつつ、モンスターのパターンや特性を把握し、情報を流した。少しでも被害が減るようにと祈りを込めて。それは他の最前線のプレイヤーたちも一緒だった。

 最前線のプレイヤーによる初心者向けの攻略本が無料で配布されたのは、すぐのことだった。

 最前線では死が付きものだが、俺はその死を少なくしたかった。ディアベルが原作で死ぬのは分かっていたので、彼を助けることはできた。が、キリトがビーターと呼ばれるのは防げなかった。

 俺は原作でキリトに強い心の傷を残すこととなる【月夜の黒猫団】と早々に遭遇した。キリトと同様、武器の素材を収集する為に十層も下のフロアに潜っていたときのことだ。

 原作通りバランスの悪いパーティーだった。そのパーティーは敵に周りを囲まれて、絶体絶命のピンチだったので、俺はその敵を蹴散らした。それはもう、いっそ清々しいほどに鮮やかに。

 

「あ、ありがとう、助かったよ」

 

 パーティーのリーダーと思われる男性に礼を言われて俺は会釈した。

 

「いいえ、当然のことをしたまでですから」

 

 俺はにっこりと笑って。サチに目を向けた。原作の通りの姿だったので、サチに違いないだろう。

 どうやって関係を持とうかと思案していると、男性プレイヤーから声を掛けてきた。

 

「あの……もし良かったら、出口まで一緒に行っては貰えませんか?」

「ああ、良いですよ」

「良かった!おい、お前等、お兄さんが一緒に付いて出口まで行ってくれるってさ」

 

 そう男性プレイヤーが告げると皆、安堵した表情を浮かべた。

 

「実は、俺たち、自分たちの実力よりも少し高いこのフィールドで戦ってたんで不安だったんですよね」

 

 ケイタと名乗った男性プレイヤーは頭を掻きながら告白した。おい、何、危ないことやってんだよ。

 

「それは……あまり危険なことはなさらない方が良いですよ」

「はい、今回の事で身に染みました。絶対にしません」

 

 ケイタは反省の色を深く滲ませ、そう言った。よし、それならいい。

 そうして、俺はケイタ達を護衛し、主街区へと向かった。

 主街区に着くと、ケイタは俺を酒場に誘った。俺はその誘いに乗った。

 ケイタ達は俺に今までどんな冒険をしてきたのかと、質問攻めにされた。サチはその様子を微笑んで眺めていたが。

 そんな中、ケイタがおずおずと、俺に話をしてきた。

 

「あの、テイル、」

 

 彼が敬語でないのは、俺がそうしようと言ったからだった。

 

「もし大丈夫であれば、しばらくの間、俺たちと一緒にいてはくれないか?」

 

 ケイタは俺の応えを待たずに続けた。

 

「俺たち、レベル的にはさっきのダンジョンくらいなら十分に狩れる筈なんだ。でも、スキル構成がさ……前衛が出来るのはテツオだけで、どうしても回復がおっつかなくて、ジリ貧になるんだ。それで……おーい、サチ、ちょっと、来てよ」

 

 ケイタはサチを呼んだ。

 

「こいつ、見ての通りメインスキルは両手用長槍なんだけど、もう一人の槍使いに比べてまだスキル値が低いんで、今のうちに盾持ち片手剣士に転向させようと思ってさ、よかったら、コーチして貰えないかと思って」

 

 俺はサチを見詰めた。

 

「ケイタ、俺の提案なんだが、そのサチではないもう一人の槍使いを盾持ち片手剣士に転向させてはどうだろう?」

「……それは、」

「この子は元々大人しい性格だし、争いを好まないだろう? 何よりレディだ。レディに前を任せるのは男として不甲斐ないとは思わないか?」

 

 ケイタは目を瞠った。何か驚かせることを言っただろうか?

 

「テイルはよく人を見ているんだな、そうだな……サチには向いていないかもしれない……」

 

 ケイタは目を伏せた。

 

「今まで、効率のことばかり考えていたから、向き不向きは目に映ってはいなかった。……テイルのお陰で目が覚めたよ。ありがとう」

「いいや、俺は当然のことを言ったまでだ」

 

 俺とケイタは笑い合った。

 その夜は賑やかで楽しい時間が続いた。

 

 その宴の後、俺はクラインに許可を貰って、暫く、月夜の黒猫団と行動を共にした。

 槍使いのササマルに片手剣と大盾の使い方を指南し、気合いを込めて指導しまくった。ササマルにとっては少し難易度があるダンジョンに共に潜ったりした。ササマルが涙目になったのは言うまでも無い。

 ケイタがギルドホームを買いに行くという日、やはり、テツオが「ケイタが帰ってくるまでに、迷宮区でちょっと金を稼いで、あいつをびっくりさせてやろうぜ」と言った。原作と違うのはキリトがいないことと俺がいることだ。

 その日、ギルドホームを買い終えたケイタを俺たちは新しい家用の家具を持って迎えたのだった。

 

 

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