ソードアート俺ライン   作:きのみ

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エピローグ

「テイル君」

 低くよく通る声に呼ばれ、俺は目を覚ました。目を覚ましたという表現は合っていないような気がしたが、そう思った。

「茅場……」

 俺を呼んだのは茅場晶彦だった。俺は周囲を見回した。ここはどうやら空の上らしい。夕日がとても美しく、眼下に浮かぶアインクラッドを照らしていた。

「キリトとアスナは……」

 ここに彼らがいないのを俺は不安に思った。

「大丈夫だ、現実に帰したよ」

「そうか……」

 俺はほっとして安堵の溜息を溢した。

「君は……全てを知っていたような目をしているな」

「!」

 俺は目を見開いた。確かに、俺は転生者だから原作を知っている。だが、

「全てを知っている、という訳ではないな。俺の知識は限定的だ」

 俺は苦笑した。

「それでも、私がこうなることを知っていたのだろう?」

 俺は知らないふりをすることもできたが、正直に頷いた。

「ふむ、君は面白いな、何かしてやりたいが、生憎、私には君にしてあげられることはない」

「気遣ってくれて、ありがとう。それだけで十分だ」

 茅場は微笑みを浮かべると手を差し伸べてきた。俺はそれに応えて握手を返した。

「君が最後に私にプレゼントしてくれた曲は最高だった。ありがとう」

「どういたしまして。お気に召したようで、俺は嬉しいです」

 手を離すと、茅場は目を細め、夕日を眺めた。

「私は私の脳を完全にスキャンし、このVRの中で生き続ける」

「ああ」

「君は君の人生を楽しく生きるといい」

「ああ」

「また会おう、天野司」

「じゃあ、またな、茅場晶彦」

 俺の視界は白く染め上げられ、意識が遠のいた。最後に見たのは仮想世界の美しい夕暮れだった。

 

 

 

 白く染まった世界を抜けると、目が開けられなかった。

 身体の感覚が戻ってくると、酷くだるく感じた。それでも、筋力の衰えはそこまで無いようで、俺は両腕で俺の頭に被せられているナーヴギアを外した。

 長くなった髪の毛が降りてくるのを感じた。

 俺は全身に付けられた黒い器具を外していった。この器具は筋力を鍛える為の器具だと思われる。

 臭いも音もまだ感じられない。触覚は戻っているし、身体も動かせるようだから、問題は無いと思う。

 音が聞こえるようになるまでは起きない方がいいと判断した俺は枕元に置いてある花に目を移した。

 黄色いガーベラと白い薔薇が美しく、俺の目を楽しませる。

 花が活き活きしているのを見ると、定期的に変えてくれていたことが容易に分かる。きっと、母がしてくれたのだろうと辺りを付ける。

 俺は自然と微笑みを浮かべていた。そして、次々と涙が出てくるのを感じた。

(やっと、現実に帰って来たんだ)

 それが嬉しくて、俺は一頻り泣いたのだった。

 音が戻ってきた頃に、俺は起き上がると、ナースさんに大層驚かれ、知らせを聞いてやってきた両親にもみくちゃにされるのだった。

 

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