妖精たちの楽園が広がる世界……アルヴヘイム・オンライン。その世界はソードアート・オンラインが攻略される前にレクトによって作られた。
このゲームでキリトをサポートする為に俺はあらゆる方面に働きかけ、権力や財力でもって、SAOのデータを俺自身のアバターに引き継がせた。見た目も引き継いだのはキリトに発見して貰いやすい為にした。
須郷には知られないようにと再三レクトにお願い(という名の脅迫)をしたので、須郷は何も知らないと思う。
そんなこんなでキャラクターを作成した。俺は音楽妖精プーカが気になったので、プーカにした。容姿はSAOのままで薄い緑色の羽が加わり、耳が尖った。これでいいだろう。
武器は弓と細剣と片手棍しか装備出来ないようなので、細剣にした。イギリスにいた頃、フェンシングをやっていたので、勘が鈍ってなければ使いやすいだろう。
名前をテイルにし、俺はアルヴヘイム・オンラインの舞台に立った。
俺は何処かの街中にいた。
コテージやテントの多いその場所は街と呼ぶべきなのか量りかねたが、マップで確認するとプーカ領の首都になっていた。プーカ領は世界樹の北西に位置し、南西にケットシー領、北東にノーム領に接している。
とりあえず世界樹に向かうと決めた俺はチュートリアルをスキップした。
すると、アナウンスが流れた『あなたはこの世界で初めてチュートリアルをスキップしました。特典としてナビピクシーをお送りします。今後もアルヴヘイム・オンラインをお楽しみください』要約すると「なにチュートリアル吹っ飛ばしてんの?ナビを付けてやるから有り難く説明されとけ!」といったところだろうか。というか、二年も経っていて誰もチュートリアルをスキップしていなかった事実に驚きだ。
目の前に光が現れ、それは羽の生えた小さな少年の姿となった。銀髪に青い瞳を持った美少年で、青い服を纏っていた。
「ん? 君がオレの主人か? 初めましてだな。オレはナビピクシーのレン。よろしくな!」
「初めまして、レン。俺はテイル。よろしく」
「テイルか、よろしく。しっかし、チュートリアルを吹っ飛ばしたのはどこぞの兄ちゃんかと思ったら、イケメンの兄ちゃんで俺は驚いたぜ。テイルはせっかちなのか?」
「……いや、せっかちではないんだけど、今は急いでいてね。早く世界樹に行かなければならないんだ」
「へえ、そうなのか……ん? 兄ちゃん、アイテムに珍しいの持ってるな」
「? ああ、もしかして……」
俺はイベントリからあるアイテムを取り出した。アイテム名は【生命の結晶】だ。俺は戸惑うことなく、そのアイテムを使用した。
結晶は光り輝くと、その姿を変えていった。
現れたのは妖精の羽のような翼を持ったドラゴン……ジーノだった。
「テイル!」
ジーノは俺に抱きついて来た。俺はジーノを優しく抱き留めた。
「驚いた、テイム出来るのはケットシーだけだと思っていたけど……ん? 仕様が違う……」
「ああ、ジーノは俺のペットという括りになっている筈だ。テイムモンスターじゃないんだよ。だから、戦闘には参加できないんだ」
「ボクは敵の位置を正確に割り出したりすることは出来るよ」
「それならオレだってできる」
ジーノとレンは暫し睨み合った。
「まあまあ」
と言って俺は二人を宥めた。
「ねえ、そこの貴方」
と、後ろから声を掛けられたような気がして振り返ると、ビスクドールのように美しい銀髪緑眼の少女がいた。十五、六歳くらいだろうか、と俺は辺りを付けた。
「えっと、何か御用ですか? お嬢さん」
英国紳士の教育の賜物で俺は優しげな笑みを浮かべ、少女に紳士的な言葉を掛けた。
「貴方、ニュービーでしょ? なのに、ナビピクシーとペットを持っているから気になっちゃって……良かったら、喫茶店でお話しない?」
俺は無碍にすることもできず、頷いた。
「苺のミルフィーユとコーヒーで」
「じゃあ、私はコーヒーだけでお願いします」
「私」というのは仕事や外用の一人称だ。「私」と使えば自動的に俺は紳士的になってしまう。便利だ。
「お嬢さんはベテランさんなんですね」
装備からしてニュービーとは一線を画している。
「ええ……それより、お嬢さんは止めて。私は二十歳を超えているわ」
二十歳を超えているという事実に俺は驚愕した。肌もつやつやでぴちぴちだから十代かと思った。
「ええっと、では、何とお呼びしたら……」
「コトハと呼んで」
「では、私のことはテイルと呼んで下さい」
「ええ、あと、敬語は良いわ、同年代でしょ?」
参りましたね、と俺は困った様に笑った。
「分かった。よろしくな、コトハ」
「よろしく、テイル」
「で、どうやってナビピクシーとペットを手に入れたの?」
コトハは興味津々といった様子で俺に尋ねた。
「あー……」
俺はナビピクシーに関しては正直に応えた。ペットは課金で手に入れたと誤魔化したが。実際、ペットは課金して購入できるようになっているので、事実だ。
「ふーん、世界樹に行きたいのね」
「ああ」
「じゃあ、私も付いて行ってあげる」
「え?」
「私も世界樹というか世界樹の近くにあるダンジョンに用があるのよ。だから、一緒に行くわ」
俺は困った。この異常なステータスをどう誤魔化したらいいか分からなかったからだ。
「そうと決まれば、早速、央都アルンに向かいましょう」
「……はい」
なるようになると思って、俺は項垂れた。