最強のパンサーに 私はなる   作:黒禍

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ベビー編
第一歩 家に帰ってママのミルクでも飲んでる


霧深く高い山を越えた先、光が遮られる程の森奥深く。

人目を避けるようにひっそりと存在する村がある。

その村の名は、サカイ村。キラーパンサーと共存共栄してきた村である。

 

そんなサカイ村には伝承があった。

 

 

【我ら境界(さかい)の民 生きとし生けるものへの感謝と畏怖を忘るることなかれ さもなくば災いが訪れるであろう】

 

これが、この村に住む人々に知られている伝承だ。

 

 

しかしこのサカイ村には、もうひとつの伝承が存在する。

それは代々この村の長となる者へ口伝として伝わる真の伝承であった。

<獣の眼>と呼称される伝承には、ある約束が記されていた。

 

【我ら境界(さかい)の民 遥か古より四ツ足の獣と絆を深めたり

 我ら境界(さかい)の民 絆をより深めんと四ツ足の獣王と魂の契りを結ばん

 

 四ツ足の獣王 境界(さかい)の民に 契約と制約を与えん

 

 心せよ 我ら四ツ足の獣 汝らの従僕に非ず 汝らが朋なり

 心せよ 我ら四ツ足の獣 朋として有る限り 汝らに狩猟と俊足の業を授けん

 心せよ 我ら四ツ足の獣 背反には報復を以て応じたり

 

 境界(さかい)の民と獣の絆分かたれし時 境界(さかい)諍界(いさかい)となりて

 永劫の苦しみが汝らの魂を縛るだろう

 

 心せよ境界(さかい)の民よ 我らの眼は汝らを視ている】

 

―――これが、この村に代々伝わる真実の伝承である。

しかして人は忘れる生き物。口伝など尚更のこと。

当然、この伝承も廃れつつあった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そして長く続いた私達の絆は、今の代の長で終わりを迎えたのよ……』

『ふーん…』チューチュー

 

ごめんね、おかん ほぼ聞いてなかった。長いんだもん。

私がキラーパンサーとして生まれてからもう…どれくらいだ? 三ヶ月くらいたったかな。

未だに主食は母乳だが、ちょっとずつ肉も食べられるようになってきた。

でもやっぱりまだお乳の方がいいな…美味いし。

なんつーかアレだ、お肉が好きです、でもミルクの方がもぉぉぉっと好きですってヤツだ、うん。

時期的にはもう乳離れの時なんだけどね…はぁ、おいちい…。

 

 

ひたすら乳房回りをフミフミと揉みしだき母乳の美味しさに酔いしれるベビーパンサー

だが、このベビーパンサー 元は20を過ぎた人間である 20を過ぎた人間である 大事なことなので(ry

そして至福の時は至福の元によって終わりを迎える

 

 

『さて、もういっぱい飲んだでしょ 訓練を始めるわよ』

『ああっ!おっぱい…っ』

 

おっぱいがいっぱい……いや、なんでもない。

最近は狩りの手伝いと一緒に戦闘訓練も受けている。母曰く、死なない為だそうだ。

…まぁ、そりゃあね、ごもっとも。でも、なんかね、尋常じゃないんだよね。

生きるためというよりは殺すためって感じがするのよね。

訓練してる時のおかんの顔…凄く怖いもん。伝説の超野菜人ばりに白目剥いて血管浮かび上がらせてんだもん。モーモン。

 

 

暗い森を抜け 草原を横切り 山を登り 断崖絶壁を飛び越え 川を渡る

―――彼女は気づいていない

己が考え事をしている間に 肉体がとんでもない成長を遂げていることを

そして その身体能力が 既に成獣(おとな)のキラーパンサーを凌駕しているということを

そんな我が子を見て 母親が嬉しそうに、寂しげに 笑っていたことを

 

 

どうでもいい事を考えてたら本日の狩場に到着してたでござる。

…硫黄臭っ!うっわくっさ!くっっっっさ!!火山地帯かよ…キラーパンサーの鼻にはキツいんじゃないのこれ…。

 

『かあさん、めっちゃくさい、よ、ここ…ゲホッ』

『あら、この程度で音を上げてたら私やパパみたいに強くなれないわよ』

 

嘘だろ…平然とドヤ顔してやがるぜこのキラーパンサー…何者だよカーチャン…。

しかも私やパパみたいに強くって言ってたな…そうだ、私 父親の事なにも知らない。

 

『ねぇかあさん』

『何?おっぱいはもう無しよ』

 

そんなー…って違う、そうじゃない。

 

『パパってどんなキラーパンサーだったの?』

『………』

 

ッヒィ!地雷踏んだ!?おかん、シワがっ眉間のシワがっ!!ヒィィィ怖い!!キラーパンサーの地雷踏むとこうなるんだね!凄いですねェ!?猫踏んじゃったどころじゃあないねェ!!ふおおおおおぉぉぉ……!

 

 

目に涙を滲ませ体を縮め小刻みに震えるベビーパンサーは母の無言の圧力に怯えていた。

 

 

『………その時が来たら、話すわ』

 

 

母の目がベビーパンサーから外されると、威圧感は消え去った。

 

 

…ちびるかと思った。

 

『う、うん…ぜったいだよかあさんっ』

『えぇ、でも…うん…そうねぇ…』

 

おっふ…おかんが悪巧みの顔をしていらっしゃる…!何する気ィ!?

 

 

ベビーパンサーは小さな体をさらに小さくし、耳をぺたんと後ろに倒してしまった

 

 

『今日…お家に帰ったら、教えてあげてもいいわ』

『え″っ…ほ、ほんとにィ…?』

 

これは条件を突きつけられるパティーンだな…うわっ…

かといって断るとあとが怖いし…ぶっちゃけおかんがこうなると選択肢が[はい]か[YES]なんだよなぁ

 

『ただし』

 

ほら来た

 

『あそこにいるエビーメタルをあなただけで仕留めてくること』

 

今のあなたにならできるはずよ。そう言っておかんは不敵に笑った。

……ちびっても、いいよね…?

 

 

ベビーパンサーは震えながら火山へと足を踏み入れた




プロローグの時点でお気に入り登録とコメントまで頂いてしまった…!
ふ、ふおぉ…!ありがとうございます!!
文法とか説明文とか色々滅茶苦茶な小説ではありますが、生暖かい目で見ていただけたら幸いです!


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