インフィニット・ストラトス~終焉の銀河の果てに~ 作:とっぷパン
IS学園・第二アリーナ
専用機を所持している代表候補生による模擬戦がさくっと進み、とりあえずセシリアちゃんと鈴ちゃんが試合を行いお互いのシールド値が半分を切った所で引き分け。衝撃砲とレーザーガンがクロスする様にお互いの胸部を撃つ事により見事な引き分けだった。
残った一夏君は幼馴染である鈴ちゃんから試合を行い、善戦はしたものの経験の差と鍛錬の差によるダブルパンチで負け。次いでセシリアちゃんとの試合は、ガンナータイプ特有の弾幕の雨霰を掻い潜る芸当を披露した後に待っていた小型誘導式ミサイルをも切り裂くが、更にダメ押しの大出力レーザーガンの直撃を受けてフィールドに沈んだ。
日々着実に前に進んでいる事を感じさせてくれる一夏君に、在りし日の俺自身に対する懐かしさと師としての嬉しさを感じて高揚する。思わずにんまりとした笑みを浮かべていると、何時の間にやら隣に座って観戦していたミナキに見られて二人して忍び笑う事に。
大戦中はよくシミュレーター訓練でアムロさんやヒイロ相手に散々にやられ、肉体訓練では鉄也と凱の二人に足腰が立たなくなるまで扱かれ、空手の稽古では一矢と只管に組み手を繰り返した。お陰で俺も雷鳳と共に日々前に進む力を養ってきた。
しかして現実は残酷なものであり、また当時の俺自身の進歩する速度が遅かった為に様々な軋轢を生んでしまった事もある。敵の将だったバランに対して異様な執着を見せたのもその焦りが突き動かした表れであり、結果として一度は雷鳳のパイロットから外されて尚不満を抱えていたのも、自身の目的を見失い力を渇望する餓鬼となったのも全ては結果が付いてこない故の焦燥。
ボスに一喝を入れられアルマナの言葉に導かれ、ミナキの心を託され大雷鳳に乗り込んだあの時から俺はどれ程進歩したのか。今では一丁前に師匠紛いな役回りも大分板についてきた様に思えると、自然と笑みも零れようものだな。
「惜しかったわね、織斑君。前回のクラス対抗戦時のデータと照らし合わせると、回避の部分で少し数値の上昇が見られるわ。だけど、状況判断速度はちょっと下降気味みたい」
「ああ、戦術分析をしているんだろうけどまだまだ鈍い。初めの頃みたいに考え無しで突撃されるよりはマシだからな、彼も一歩進んで考える事の大切さが分かってきたんだろうさ。感心感心!」
「うふふ、負けは心身の栄養剤でしたか? 何時だったか、貴方が汗まみれになりながら特訓している時に教えてくれた言葉を思い出すわね……」
そんな事も言ったっけな。
大戦中は周りに凄い奴等が沢山居て、敵にも味方にも師事を受けた事もあった。殆どが半ば強引な師事だったが、そのお陰もあって負け続ける事から学び糧にする術も身に着けたもんだ。一夏君も今は周りに学びお姉さんに学び、ISを通して世界を知る地ならしをしている段階だ。この世界を知っているはずも無い俺やミナキでも、男性操縦者と言う立場が抱える危険と希望は否が応にも理解できる世界。今は一歩ずつでも良い、しっかりと歩みを進める事が彼にとって大事な事であると俺は思っている。
「さて、専用機所持者による戦闘はこれまでとする。次いで先生方との模擬戦闘に入るが……そうだな、織斑はデュノアと組んでみろ。ボーデヴィッヒは……折角だ、カノウ君と組んでみるがいい」
「先生、それですと私は鈴さんとでしょうか?」
「そう言う事になるな。先生方は其々がお前達の先達であり、実力の程も断然上だ。オルコットと凰のペアは山田先生との二対一、織斑とデュノアのペアはクレメンティ先生と二対一の模擬戦闘を。最後にボーデヴィッヒとカノウ君のペアはミーア先生と私の二対二の模擬戦闘を行ってもらう」
「「ええ゛っ!?」」
このええ゛!? は勿論俺と一夏君の二人である。俺の疑問点に関しては専用機が不在である事と、病み上がりであるにも拘らず織斑さんとやる事への体力的な不安感からくるものだ。一夏君に関してはあれだ、国家代表を務めたキッカさんとやる事への純粋な不安から来るものだろう。彼女は確かゴリゴリの近接格闘型、それも俺に近い戦闘スタイルだった筈……デュノア君の力は未知数だが善戦出来れば大したもんだろうな。
各々が準備の為に各ピットへと移る。そうと決まれば後は速いと言わんばかりなセシリアちゃんと鈴ちゃんペアは、早速自身のISにエネルギーを充填させている所だ。俺達先生と対戦する側はAピットに集まっている訳だが、其々のペアで心持が全く違うのにはある意味微笑ましさすら感じる。
勿論一番沈んでいるのは一夏君達なのだが、不安全開の一夏君を何とかデュノア君が宥めている状況だ。彼も欧州出なのでキッカさんの実力はよく知る所の様だな。それでも笑顔を見せられる辺り、中々に実践慣れしているご様子。もしかしたら織斑さんの采配はこれを見込んでの事だったのかもしれないな。
「大丈夫だよ、一夏君。クレメンティ先生は確かに元気溌剌な笑顔でえげつない攻撃を仕掛けてくる人だけど、僕が間に入って射撃で援護するから君は近接戦闘だけに集中してくれればいいよ」
「……あ、ああ。いや、ISのゲームで散々使ってる手前先生の攻撃が尚更――その、凄く見えてな」
「ゲーム……? ああ、
ゲームは所詮ゲームさ。どこまで行っても技を繰り出すタイミングは各々により違うから、一夏君がキッカさんになり切っても本人とはまるで違う。それに気づくと後は楽なんだが……心持だけだが。
「それじゃあ、セシリア。さっき決めた通りに私が先生に切りかかるスタイルで、あんたは私を中距離射撃ができる一夏と思って合わせて頂戴」
「ええ、背中はお任せ下さいですわ。ですが、先も申しました通り。くれぐれも視線だけでターゲットを捉えて狙うのはお勧めしません。砲身が無く視覚では捉えにくいとは言え、やはり空間に圧を加える為に衝撃砲には微妙な揺らぎが存在していますので」
「分かってるわよ、それは。一番使ってる私がね……」
ほうほう、此方は至極まっとうな作戦会議と言った所か。互いに弱点を見出しつつフォローし合う……ペアとしては理想的な関係だな。
肩に担いだ双天牙月に悔しそうな苦笑を携えて頷く鈴ちゃん。シニカルな笑みが彼女の苦労を感じさせるぜ。しかし、それはセシリアちゃんも同じの様で、やはり弱点の接近時に攻撃を受けた際の迎撃にはまだまだ不安が残るのが否めない。毎朝の特訓、放課後の特訓を経て徐々に改善に帰している二人であっても、そこはそれ先生方と比べれば幼子と大人位の開きがある。展開速度も勿論だが、武器を振りかざし切るまでの動作が遅ければ早い方が勝つに決まっている。狙いを定めるにしても早い方が勝つのは自然の摂理――……これに反しているのがアムロさんを筆頭にするニュータイプなんだが、考えるだけ無駄な気がするので割愛しとこう。本人曰く、唯人より空間認識能力が高い普通の人、らしいからな。
ま、要するに攻撃が当たる前に気付ければ回避は可能。当たらなければ最後には勝つ、の精神で日夜訓練に励むしか彼女達には道は無い。
「カノウ殿。貴方の専用機は修理中と先に聞き及びましたが、今回の模擬戦闘では打鉄を?」
「ああ、基本的なノーマル装備一式を積み込んでな。これでも一応は病み上がりだからな、ハンディキャップはきっちり頂いておいたよ」
「ハンディキャップ……ですか?」
きょとんと首をかしげる彼女の背後からそのハンディキャップが姿を見せる。重い金属ロックが外れる音共にハンガーから姿を現したのは、ごく普通の第二世代型量産型モデルIS・打鉄。先の授業で一夏君達の小隊で扱われていた機体で、
「ほら、これが俺に対するハンディキャップ――という名の実験材料品さ」
「……実験ですか、流石は教官だ……」
「主にトオミネ先生と篠ノ之博士の方が主犯だけどな。だけどまあ、これなら俺も気兼ね無くやれるってものだな。精々リハビリの修行をさせて頂くか」
装備一式を確認すれば、何時通りの近接格闘ブレードが一振りと小型のブレードが二振り。IS用小型拳銃が一丁にIS用種子島レールガンが一丁、IS用の短槍と長槍が一本づつか……豪華だな。ブレードは打鉄の基本装備だから大小があっても不思議じゃないけど、拳銃はまだしも種子島レールガンとはな。槍もついでみたいに入っている訳だが……絶対に何かありそうな槍だぜ、こりゃ。
一応の確認の筈が背筋に寒気が走る展開で既に気疲れ。兎にも角にも、これだけサービスをくれたんだからこっちも気を引き締めてかからないと、恐らくは織斑さんも普段と同じ感覚で対戦してくるだろうし。
「とまあ、こっちはほぼ近距離格闘専門だ。ボーデヴィッヒちゃんのスタイルはどっちかな?」
この問いに関する彼女の答えは、俺の目の前に展開したごついレールカノン装備のIS……シュヴァルツェア・レーゲンだった。一見すると長距離射撃型のIS……しかし、カタログスペック上ではワイヤーブレード六つと両前腕に装備されたプラズマ手刀。それに加えて特種兵装である第三世代型装備・AIC、慣性停止結界なるものがあるのだから一概には断定できない。
「私は云わば万能型に近いスタイルです。ですが、あくまでも近いだけであって完全なスタイルではないですね。近接はプラズマ手刀、中近距離はワイヤーブレードと言った所です」
だろうな。大体のスタイルを頭でイメージしつつ場面的には観戦モード。第一試合はセシリアちゃんと鈴ちゃんペア対山田さんの組み合わせだ。入学前のIS訓練では山田さんが最も多く付き合ってくれた対戦相手でもあるから良く分かるが、彼女が普段のテンパリ易い女性だと思ってる内は勝機が微塵も無い。初戦の時は知らなかった情報だが、織斑曰く彼女は後輩に当たる元・日本代表候補生筆頭だったらしい。本番に今一適合できない性格から代表の座こそ逃したものの、射撃センスは同期の中でも一番の成績だったと言う話だ。
「それじゃあ。行くわよ、セシリア!」
「はいですわ、鈴さん。私達の実力、是非山田先生に見て頂きましょう……!」
おおう、結構二人とも燃えてるな~。あんまり油断した様子もないし、これなら良い所まで食いつけるか……?
カタパルトデッキに展開したISの足をかけ、やる気十分に声を掛け合う二人の少女達。ピットのアナウンスにより教職員の声でカウントダウンが始まり、カウントゼロの声でアリーナへと射出される。
……こうしていると、何だがあちらの世界で幾度と無く見た戦艦の発射用カタパルトを思い出すな。雷凰のサイズ的に普通の
特に、ダイターン3とかガンバスターとか……ある意味じゃ戦艦クラスのロボットは格納すら不可だったしな。横付けだけで精一杯、ラー・カイラムでもガンダム試作三号機のアームドベース・オーキスは格納できなかった覚えがある。ステイメン状態なら余裕だけど……。
「さてさて、それじゃあ一丁二人の勇姿を見せてもらいますかね」
「了解です。学園教師の実力、得と見せていただきましょう。……ついでに同期の候補生もじっくりと」
状況分析に戦術分析か……本当にこの子は軍属なんだと、改めて思わせる凛とした表情と仕草。しかして、それに混ざって幾許かの年相応な態度……うん、この子も苦労人の部類だな~。
パートナーの人となりを想像しつつも、俺達の模擬戦がついに始まった。
IS学園・第二アリーナ
アリーナに羽ばたく私のブルー・ティアーズと鈴さんの甲龍。既にクラスメイトの皆さんと二組の皆さんは観客席に着き、対する正面Bピットからの山田先生が御出になられる時を待つばかりですわ。
一応この度御相手願う山田先生に関して、鈴さんが持っている情報を確認しておいた方が良さそうですわね。
「鈴さん、山田先生は日本代表候補生に名を連ねたお方……その意味分かっていらっしゃいますわよね?」
「当然じゃない。私は一応日本でも暮らしてたのよ? 日本の代表だった織斑先生の影に隠れがちだったけど、優秀な候補生が居たのは知ってるわ……まさか学園に職員として働いているとは思わなかったけどね」
あら、意外な事にきっちりと把握されておりますのね。
鈴さんのお話の通り、山田先生は何時ものおっとりとしたご様子と慌てやすいと言う印象からはご想像できないけれど、列記とした日本代表候補生の御一人でした。その銃撃の腕前はイギリス代表であるカーン様をトップに頂く私ですら見惚れる程に美しく、ターゲットを撃ち抜く様は正確無比であられました。
惜しむらくは本番に弱いという欠点。その所為で代表に届かず、現役からは退かれたと聞き及んでおります。同世代に織斑先生と言う強力無比な御方が居らねば、彼女が代表であっても何ら可笑しくはないと評される程の実力者ですわ。
「なら結構。油断も傲慢も無いのなら、私達でもある程度までは食いつけるでしょう」
「あんたにしては嫌に弱気な言葉だけど――――裏が分かるだけにほんと複雑だわ……」
「私も同じでしてよ……っ! 来ますわ!」
他愛の無い会話の中に、代表候補生だからこそ分かる事実。そう、今の私達では食いつける時間は僅か数分、それを過ぎれば――負ける。
「お待たせしました~! フィッティングに手間取って待たせちゃいました……ごめんなさいね。ルールは分かっていると思いますが確認だけ。条件は貴方達二人で私のシールドエネルギーを半分まで減らせば勝ち、私にシールドエネルギーを零にされたら負けです。先生も頑張りますから、貴方達も頑張って下さいね」
優しい笑みが迫る戦いの合図までの時間で刻一刻と当時の顔へと変化する先生。お手元に展開している武装は中・近距離戦用アサルトライフル・ヴェントが一丁、他には
『セシリア。私が開始と同時に突っ込むから、あんたは一旦距離を取ってからビットで牽制しつつレーザーライフルで狙撃して頂戴』
『分かりました。ですが、迂闊に近づけばショットガンがありますのでくれぐれもご注意を……!』
『OK、最初からフル稼働最大戦速でぶつかるわ……出し惜しみは無し!』
始めから最大で――そうですわね、出し惜しみなどしていられませんわ!
開始の合図ランプが点灯し、
『始め!』
「いくわよ!」
「参ります!」
開始の合図を受けたのにも拘らず静かに目を閉じる先生。その先生目掛けて瞬時加速で以って鈴さんが双天牙月を振りかざして迫ります。私は後方への瞬時加速で瞬間的に息が詰まりそうになりますが、それを抑えてじっと二人の様子を観察。
後一歩で剣戟の間合いへと入る瞬間、瞳を静かに開けた先生の唇から声が紡がれました。
「……行きます!」
明らかに顔付きが戦闘状態へと切り替わった先生の御姿に、私の背中に冷たい汗が流れる。完全に鈴さんの間合いだと言うのに、先生は普段の慌てる姿は微塵も見せずに手元へIS用拳銃を展開。振り下ろされる双剣を一瞥すると私の方へと視線を流し、上段より振り下ろされる一撃を真半身になって回避されました。
「さすが……でもまだま――――がっ!?」
振り下ろした勢いのままに一回転して横薙ぎに一閃を喰らわせようとした鈴さんでしたが、次に待っていたのは御自身の頭部に受けた衝撃でした。
「――っ、一旦お引きなさい鈴さん!」
ダメージを負った彼女と距離をとらせるため、私は先生へとスターライトMkⅢを向けて銃撃を仕掛ける。脳が揺さぶられた事により若干のふらつきを見せる鈴さんでしたが、私の銃撃に対処する先生とは難とか距離をとることに成功致しました。
「っ、痛~~! サンキュー、セシリア」
左側頭部を押さえて痛みを堪える鈴さん。無理もありませんわね、あの距離でまともに銃撃を頭部に受ければ意識があるだけでも大した者です。
鈴さんが受けた攻撃は云わば側頭部を狙った零距離でのピンポイント銃撃。真半身になった先生は振りぬいた勢いを利用して再攻撃を図った鈴さんへピタリと近づき共に回転。後ろを取ったと同時にこめかみへ銃を当てて、視界が元の位置へと戻る前に引き金をお引きなさいました。
その結果私は助ける事も叶わずにある種鈴さんを盾にされたままの状態で見逃すほか無く、衝撃を受けて無防備なった所に追撃をする隙を狙うしか方法がありませんでした。流石は先生、容赦がありませんわね……!
「駄目ですよ~、闇雲に突撃するのは……。せめて織斑君との試合で見せてくれた衝撃砲との併用じゃないと、今の貴方達では後ろを見せるだけで何時でも狩れちゃいますよ?」
影を背負い丸眼鏡が逆光を反射している状態でのこの一言、まるで死神の如き凄みですわ!?
「凄いまともな指摘なんだけど――――普段が普段だけに凄い怖いわね!?」
なんとも可愛らしく首をこてんと傾ける姿が反って凄みを増大させていると分析。恐ろしくも戦場でするには不相応な思考を遮断するべく、先生の
この状態で私がすべき事は一つ。鈴さんの回復を維持しつつ先生を大きく移動させない為に囲う様に蒼い雫を降らせる事。だから――
「出し惜しみは致しませんことよ、山田先生! ……お行きなさい、ティアーズ!」
スライドステップにステップ、無限軌道を駆使して私の銃撃を回避し続ける先生。合間合間にしっかりと私を狙ってヴェントの銃弾が頬を掠める感触が襲う。全く止まらずに地面を滑る様に移動する先生は鈴さんにも狙いを定めて居られますが、それはさせじと私が難とか阻んでいる状況ですわ。
「ありがと、セシリア! もう大丈夫、今度は御指名通りに衝撃砲付きで双天牙月をお見舞いしてやるわ。援護頂戴!」
「存分におやりなさいですわ!」
再び双天牙月を振りかざしつつもスライドステップで先生の銃撃を回避する鈴さん。護衛としてティアーズを一基着けて私は続けてミサイル型ティアーズの装填に入ります。量子展開させたティアーズを砲身に積め、鈴さんが一撃を入れたと同時に時間差で発射。波状攻撃と見せかけてスターライトで撃ち抜く、この際ティアーズは全て落とされたとしても構いませんわね!
「ご注文の一撃ぃ、お届けに参りましたー!!」
先生の銃口が鈴さんを捕らえる前に右下へ回りこみ、その場から
「つあぁぁぁっ!」
瞬時にブレッド・スライサーを展開なされた先生は、致命の一撃を避けるべく狙われている左脇腹に挟み込む事に成功。
しかし、次いで衝撃砲が先生の胸部目掛けて直撃して大きく体勢を崩しましたわ。狙うは今、追撃のミサイル型ティアーズを発射し波状攻撃を仕掛けます!
「そこですわ!」
ニ発動時発射を三連続で仕掛ける。この体勢が崩れた状態ならばミサイル型ティアーズの波状攻撃もやすやすと迎撃は出来ません。そこをスターライトで狙い撃ちです!
「…………うふふ、うふふふっ! 御二人ともまだまだ甘いですよ~」
それは銃口で先生を捕らえた瞬間の出来事でした。連続で発射されたミサイル型ティアーズが着弾前に突如爆発、ダメ押しとして続け様に放ったブルー・ティアーズの追撃も当たる前に霧散しました。
「――ですが、本命はこれでしてよ!」
動揺する心はありますが、今は一刻も早くこの一撃を入れる事――――
「まずっ!? セシリア、避けなさ――」
「――え?」
残念ですが私が覚えているのはここまでですわ。鈴さんからの警告が聞こえ理解するまでの間で腹部に大きな衝撃を受けて視界は暗転、気が付いた時には試合が終わりAピットの中でベンチに寝かせられていた……。
唯最後。そう、鈴さんに回避をする様言われて視線を山田先生へ戻すその一瞬。衝撃砲を激突し吹き飛ばされているはすの先生の口角がニッと釣りあがり、私を丸い眼鏡越しに見つめ微笑むその姿だけは見えました。
そうですわ、あれこそ山田先生の二つ名――――
IS学園・第二アリーナ Aピット内
「嘘だろう……? セシリア達が、負けた?」
決着の衝撃がアリーナ全体を静まり返す中、一夏君が絞りだした感想がピット内はおろか試合を観戦している生徒達全員の感想を代弁している。
「これが……IS学園の教師……!」
編入したてのデュノア君の一言も実に言い当ていると言えよう。そうだ、これが学園に勤めている教師達の実力なのである。
「……あ~あ~、やっぱり山田さんは強いな。セシリアちゃん達がああも見事に踊らされるとはね」
個人的な感想をつぶやく中、周りの生徒達は半ば放心状態に陥っているな。無理も無い。
衝撃砲を喰らって見せたのも全ては山田さんの誘い。放たれたミサイルを
直後に攻撃を仕掛けてくるであろうセシリアちゃんをグレネードで仕留め、アサルトライフル・ヴェントをセシリアちゃんのアンロックユニットに向けて射撃。上手く角度をつけた弾丸は装甲を滑るようにして後ろの鈴ちゃんに兆弾を撃ち込む。結果、先にダメージを重ねていた鈴ちゃんもダウンと言う幕引きだった。
生徒である彼女達にしっかりと考えさせながら徐々にダメージを与え続け、最後は鮮やかにニ撃決着。見事の一言だぜ。
「山田先生、か。初めに名前を聞いた時もしやとは思っていたが……まさかこんな場所に居たとはな。元・日本代表候補生、山田麻耶――――別名・
おおう、なんだその中二病全開の二つ名は……。そういや、織斑さんも元・日本代表で二つ名がブリュンヒルデだったな。彼女の後輩って言ってたし、二つ名ぐらいあっても可笑しくはないか。
「や、やめて下さいボーデヴィッヒさん……!? もう昔の事ですよ!」
試合が終わりシールドエネルギーが尽きた二人を此方のピット内へと運ぶ山田さん。スタイル抜群でいつも和やかな笑みを浮かべている印象だが、実は凄腕の学園教師……。そんな事実を欠片も感じさせない申し訳なさそうな八の字眉を引っさげ、彼女は若干照れた笑みを浮かべアリーナへと戻っていくのであった。
お待たせいたしました。連載の再開で御座いますれば、これからも暇を見つけては書き進める所存で御座います。
既にIS自体は半ば忘れ去れても可笑しくはない位に時が経ち、概巻も今年になって新刊がやっとこさ発売された次第。ですが、私は一度完結させるといったら最後までやりきりますとも!
どうぞ、これからも当小説を宜しくお願いいたします。
今回は麻耶さんに新たな属性の追加で御座いました。死弾の女神……我ながら実に中二病臭くていい感じです。原作ではこんな設定はありませんでしたが、当小説ではキャラクターや世界観が違いますので、山田先生のファンの皆様にはどうぞご了承下さいませ。
では、感想待ってます!
追記
感想で指摘を頂きました本来の彼女の二つ名、キリング・シールド「銃央無塵」ですが。無くすのはもったいないので何れまた触れる機会を作りたいと思います。