インフィニット・ストラトス~終焉の銀河の果てに~ 作:とっぷパン
IS学園・アリーナ
「まずは、カノウ君が身に着けていたISを展開してみるか」
そんな千冬の言葉から、トウマ達はIS操縦の訓練に使われるアリーナに来ていた。広さはかなりの物で、一般的なサッカーグラウンドが10個分位の広さがあった。完全なドーム型ではなく、天井には青空が広がり、アリーナ全体を覆うように特殊なシールドが張られている。
「とりあえず、どうすりゃいいんだ? 展開の仕方なんて、俺は知らないぞ」
首に掛けているネックレスをしげしげと見つめながら千冬に展開の仕方を尋ねるトウマ。その言葉に千冬は念じるようにISに呼びかければいい、と教えどんな機体か計測するために機材のほうへ真耶とミナキをつれてその場から離れた。
「よーし、いっちょ気合を入れてやってみるか!」
トウマは精神を集中させ静かに空手の構えをとり、そして裂帛の気合と共に拳を天へと突き出した。
「…………こぉぉおい!インフィニット・ストラトス!!」
すると、首に掛けてあったネックレスが淡く光り、トウマの手足、胸、肩、腰、顔などの各部分に未知のISが装着された。
トウマにISが装着されたのを確認した千冬達は、早速この機体のデータを採り始める。トウマはそのまま空手の型をやり、千冬や真耶の指示に従って飛行やさまざまな機動訓練をやってのける。ミナキはその様子を興味深そうに眺めていたが、自身も何かトウマのためにしたくなったのか真耶にオペレーションのレクチャーをお願いしていた。
『カノウ君、もうその辺でいいだろう。……しかし、初めて操縦するにしては飲み込みが早いな。やはり、歴戦の勇士というのは事実のようだな』
起動した当初こそぎこちない動きだったが数分もすれば自由自在に動くことが出来る様になっていた。
「まぁ、そこはあの戦いを経験してきたからこそ出来たことだろうな。宇宙空間での戦闘なんて日常茶飯事だったし、なによりISを操縦する感覚が俺の乗っていた機体の操縦感覚に若干似ていたからな」
トウマは苦笑しながらISをゆっくりと降下させ、地上に降り立つと改めて自身のISを見てみた。
「どことなく雷鳳に似てるな……」
ネックレスから展開されたISは全体的に白と黒と金色のカラーリングで、胸と両手両足の所に赤い宝玉が輝いていた。ヘッドパーツには顔を覆うようなヘルメットのような物で、口の部分が開いる。
『トウマ、今からそちらに戻りますのでISを解除していてくださいね。一度預かって詳しく調べるそうです』
少し感慨深げに自身のISを眺めていたトウマだが、ミナキからの連絡にいったん頭を切り替えて指示通りにISを解除することにした。
「カノウ君、大まかにだがこのISのデータが採れた。後はこちらで預かって詳細なデータを採らせてもらうことになるが、一週間以上はかかると思われるからそのつもりでいてくれ。……まさか、IS初心者の君でこんなに早くデータ採取ができるとは思わなかったよ」
今しがた採れたばかりのデータを観覧しながらトウマに話しかける千冬。トウマの異常な上達速度に驚きながらも、先ほどの事情説明の内容が事実であったことに納得し今はただただ感心していた。
千冬の感心しきった表情にに若干照れながらも、信じてもらえたようで良かった、と返すトウマ。そこに、真耶とミナキもやってきて4人でこれからの予定を話し合う事になった。
「これからのカノウ君の予定だが、IS学園の入学式までは13日間の余裕がある。この時間をフルに使って、ISの専門的な知識や用語など勉強してもらうことになるだろう」
「カノウさんにはそれと同時並行で、ISの機動訓練もしてもらいます。普通に動かすだけならば今のままでも十分なんですが、さらに専門的な訓練をすることによってグッと上達しますので、カノウさんには是非がんばっていただきたいです」
千冬と真耶によってトントン拍子に予定が決まることに苦笑が漏れるのを隠せないトウマと、ワクワクしながら瞳を輝かせるミナキ。
二人は対照的な表情だった。
「と、とりあえず、これから俺は訓練漬けの毎日が始まることが決定したんだな、……はぁ~」
「がんばりましょう、トウマ。私がついていますから、大丈夫ですよ!」
ため息をつくトウマに鼻息を荒くしながら励ますミナキの顔には、トウマと一緒にいられる喜びと、研究者として未知のIS触れられる喜びがあいまって笑顔が輝いていた。
「それじゃあ早速、専門用語の知識から叩き込む勉強を――――!?」
鼻息を荒くするミナキに若干ヒキながら千冬は早速トウマに勉強をさせようと口を開いたその時、アリーナ内にけたたましい警報音が鳴り響いたのだった。
IS学園・アリーナ内
「今、警備主任の先生から連絡が入った。情報によると中型のミサイルが一機この学園に向かっているそうだ。しかも、このミサイルがIS並みの機動性を有しているらしいことも確認された。迎撃に出た部隊によると、こちらのミサイルや対空射撃に対してシールドを発生させて無効化したという……」
学園の警備主任から入った情報ににわかに慌ただしくなるアリーナ内、トウマやミナキは落ち着いていたが新米教師の真耶は完全に慌てていた。
「ど、どどど、どうしましょう先輩!? IS学園に襲撃だなんて、前代未聞ですよ!?」
「落ち着け山田先生。ここをどこだと思っているんだ、ISを一番多く有する場所だぞ。いくらミサイルがIS並みの機動性を持っていようとも、教師陣にかかれば撃墜するのは簡単だ」
両の手をバタバタさせて、大きな胸を揺らしながらを慌てる真耶に喝をいれ、自分達がいる場所がどこだか思い出させる千冬。その喝が効いたのか次第に落ち着きを取り戻し、目に理知的な光が戻る。
「そうでした、ここはIS学園でした。……じゃあ先輩、これから私達は出撃ですか?」
真耶の質問に、そうなる、と頷いてその場で着ていたスーツを脱ぎだす千冬。トウマは彼女が突然スーツを脱ぎだしたことに、慌てて目をそらす。その隣ではミナキが笑顔ながらも重いプレッシャーを周囲に撒き散らしている。
千冬のスーツの下から出てきたのは、スクール水着のようなピチピチのボディースーツに包まれた豊満なボディーだった。
コレにはさすがのトウマも、目をまん丸にして千冬をガン見してしまった。危うく鼻血を吹きそうだったと、後にトウマは語った。
トウマの反応に同じく目を丸くしていたミナキは、目を吊り上げ彼の足を思いっきり踏んだのだった。
広いアリーナにトウマの悲鳴が響く。
その事態に、千冬は先ほどの行動の軽率さに気がつき心の中で詫びた。真耶は相変わらずワタワタしている。
「んんっ! それでは山田先生、私は行くぞ。先生はこのままここに残り、カノウ君達の護衛をしてくれ」
「ハッ、ハイ。先輩、気を付けて下さいね」
「ああ、ではいって来る」
力強い言葉と共に量産型IS打鉄乗り込み瞬く間にアリーナ内から空へ飛び立つ千冬。その姿はすぐに肉眼では確認できなくなった。
「……さて、さっさと終わらせてカノウ君にISを教えなければな」
世界最強の乙女は好戦的な笑みを零しながら、飛んできているミサイルの撃墜に向かうのであった。
IS学園・領海内
とある天才こと篠ノ之 束は、人参型ミサイルに乗ってIS学園の領海にまで進入していた。IS学園はもう目と鼻の先である。
「ふう、鬱陶しいやつらも大体撒いた事だし、あとはIS学園に着陸するだけだね~。うん、順調順調!!」
相変わらずのハイテンションで、世界各国の追跡を撒いてきた彼女は実に楽しそうだ。
「あれれ、打鉄が一機こっちに向かってきてる? この生体反応は、……ちーちゃんだ!?」
自身の乗るミサイルに打鉄に搭乗した千冬が迫っているのを見つけ、さっきまでのハイテンションは何処に逝ったのかガタガタ震えだす束。
口元は笑っているが、顔色は蒼白だった。
「まずい、まずい、まずーい! ちーちゃんが来たら、束さん下手したら死んじゃう!!」
狭いミサイルの中で盛大に取り乱す束。すると、何か閃いたのか落ち着きを取り戻しISの「オープンチャンネル」を開きだした。
「んんっ! こちら束さん、こちら束さん。そこの打鉄に乗っているちーちゃんにお話があります、至急オープンチャンネルで返答ください!」
事前に連絡しておけばよかったと思いながら、必死の形相で千冬に話しかける束。それが功を奏したのか、高速でミサイルに迫っていたISは速度を緩めつつ束に近づいててきた。
『こちら、IS学園教師・織斑 千冬だ。束! どうしてお前がここにいるんだ! それと、来る時は連絡の一つでもよこせ馬鹿者!!』
おかげこっちは大騒ぎだ、そんな千冬の言葉に束は苦笑いをしてしまう。
「にゃははは、ごめんねちーちゃん。事前に連絡しとけばよかったね。……でも、また会えて束さんは嬉しいよ」
『ふん、確かに無事に再会できたことは嬉しいがな。出来ればでいい、もっと穏便に来てくれ』
互いに再開できたことを喜んでいるのを確認できた束は、千冬の誘導に従いIS学園に向かうこととなった。
「さーて、ここからが本番だぜぃ。学園で起きた異常エネルギーの感知、いっくんと似た反応を示したコアの事。……未知の謎が束さんを呼んでいる~!」
IS学園・アリーナ内
「あっ!先輩が帰ってきましたよ!……何か抱えていますね」
アリーナで千冬の帰還を待っていたトウマ達三人は、打鉄が小わきに抱えてきた人参の様なミサイルを見て頭に?を浮かべた。
「今帰った。……みんな聞きたい事があるだろうから先に答えておくと、この人参が例のミサイルだ。そして――――」
千冬がトウマ達の疑問に答えているその時、人参型ミサイルの装甲版が開き一人の人間が飛び出した。
「やっほー! 私が皆さんご存知の天才科学者、篠ノ之 束だぜぃ! ブイ! ブイ!」
やたらとハイテンションな声と派手な衣装で人参ミサイルから現れたのは、さっきまで話していたISの生みの親である篠ノ之 束だった。突然現れた束にどう接していいか分からないトウマとミナキ。真耶は口を大きく開けながら驚いている。
「何で開発者がいきなり登場したんでしょうか、織斑さん」
「うむ。実は、束はミナキさんやカノウ君がこの世界に現れた時に発生した異常に高いエネルギーと、カノウ君がISを起動させてしまった時のコアの反応の原因を調べるためにここに来たらしい」
ミナキからの質問に束がやってきた理由を話す千冬。その間も、束は騒がしくトウマ達に話しかけていた。
「君が打鉄を起動させた青年かい? ぜひ、その体を調べさせてくれないかな? かな? 報酬は私のからだ――――ぎゃふん!?」
「お・ち・つ・け、束。あと、変な事言うのは止せ。ミナキさんにカノウ君が怒られる」
己の豊満な胸をトウマに密着させて迫る束を、物理的に拳で黙らせる千冬。寸での所で束の暴走を防いだ千冬だったが、顔をトウマに向ければ少し遅かったことを知る。トウマが青い顔をしながら、笑顔のミナキに謝っていた。
「どうしたんですか、トウマ。私は何も怒ってませんよ……フフ、フフフフ」
「いや絶対怒ってるだろう、ミナキ」
「怖いですよ~、ミナキさん」
ミナキが発するプレッシャーに、先ほどまで束の登場で呆けていた真耶までもが涙目で震えていた。
「ありゃりゃりゃ、コレは失敗しちゃっったね! 束さんでも恐怖を感じるプレッシャーだよ!!」
「お前の、所為だろが! こうなったらミナキさんは怖いんだ、何とかしろ束!」
しばらくミナキのプレシャーに押されていた四人だが、トウマが何とかなだめる事に成功し事なきを得た。その代償としてトウマは、今夜はミナキと二人一緒に寝ることになった。
むしろトウマにとっては褒美のような気がするが、ミナキの機嫌が直ったのだから由としたのだった。
「では、改めて。俺の名前は、トウマ・カノウだ。よろしくな、篠ノ之さん」
「私の名前は、ミナキ・トオミネです。篠ノ之博士、トウマ共々よろしくお願いしますね」
さっきの騒動で自己紹介ができなかったので、改めてすることにしたトウマ達。まだ若干ミナキが怖いのか、束の笑顔は引きつっている。
「よ、よろしくね~、二人とも。……じゃあ、早速君達のことを話してもらえるかい? 束さんは興味心身なのですよ!」
興奮気味に話す束に苦笑しながらも、トウマとミナキは自分達の身の上を話すことにした。
~二時間後~
「――――っとまぁ、こういう訳で俺とミナキはこの世界に来ることになったんだ」
「フニャ~、なんとも不思議な話だね! 君の世界では宇宙に人が住んだり、異星人や異次元なんてものが発見されてるのかぃ。羨ましいな~」
色々搔い摘んで話したつもりだが、どうやら世界観ぐらいは伝わったようで束は未知の世界に興味津々な様だ。
「話はその辺にしておけ束。カノウ君にはコレからISの授業があるのだからな」
放って置くと何時までも話が終わらなさそうな気がするので、一旦話を中断させる千冬。気がつくとすでに日は傾いてきていた。
「あららら、私としたことが、もうこんな時間かい。じゃあ、続きはまた今度にするとして、……ちーちゃん!」
話の続きをいつか聞かせてもらう約束を取り付けた束は、不意に千冬の方へ顔を向ける。千冬はそれに若干鬱陶しそうに返事をした。
「なんだ、束」
「あのね~、束さんからお願いがあるんだけど~」
「……だから何なんだと聞いている」
いつもは用件だけをさっさと告げる束が勿体つけるように話す様子に、千冬はなんだかいやな予感がするものの、一応久しぶりに親友と再会できたのだからと話の続きを促すことにした。
「えっとね~、二人から聞きたいことがたくさんあるし~、いちいちロケットで飛んで来るのもめんどくさいので――――」
申し訳なそうに話す束だが千冬のいやな予感はだんだん強くなる一方で、束のお願いにも検討がついてきた。
「――しばらくここに泊めてくんないかな? かな?」
その言葉が出た瞬間、その場に突っ伏す千冬と真耶。
彼女達の仕事がまた増える事が確定したのだった。
いかがだったでしょうか。本作の設定では束さんは人見知りではありません。割と社交的です。
まぁ、厄介な人物であることには変わりはありませんけどね。
誤字脱字、感想などお待ちしております。