インフィニット・ストラトス~終焉の銀河の果てに~   作:とっぷパン

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一夏がどんなにおばかさんでも、IS学園の授業は続く。


第8話~代表候補生とクラス対抗戦

 IS学園・一年一組 休み時間

 

 

 

 「ちょっとよろしいかしら?」

 

 「へ?」

 

 「ん?なんだいお嬢さん」

 

 二時間目の授業も終わり、再びトウマと話していた一夏の所に一人の女子生徒が話しかけてきた。

 話しかけてきた相手は地毛の金髪がきれいな女子だった。白人特有の透き通ったブルーの瞳が、やや挑発的に一夏とトウマを見ている。

 ロールがかかった髪がふわりと揺れながらどこかフローラルないい香りを振りまいている。いいとこのお嬢様の様な雰囲気だ。

 

 「初めまして、私イギリス国家代表候補生のセシリア・オルコットと申します。一年間よろしくお願いしますわ、カノウさん」

 

 「ああ、よろしくなオルコットさん」

 

 「あれ?俺は?」

 

 二人に話しかけられたはずなのに、一夏の存在をまるっと無視してトウマに自己紹介をするセシリア。

 

 「ふん、参考書を電話帳と間違えて捨ててしまう人にまともな挨拶なんて出来ませんわ」

 

 「うぐっ!……それを言われると言い返せない、って挨拶ぐらいしてくれてもいいだろうに……」

 

 たしかにISの関係者を馬鹿にするような所業をしでかしたのだから自業自得だろうと、トウマは思った。

 

 「あ、質問いいか?」

 

 「下々の者に答えるのも高貴な者の勤め、先の侮辱は無しにして答えてあげますわ」

 

 一夏の質問に優雅な仕草で答えるセシリア。代表候補生という立場からメディアに顔を出すことも間々あるのだろう、対人を意識した動作に彼女の努力の一端が見えた。

 しかし、その優雅さは次の一夏の質問内容によって見事に砕かれる事になるとは、セシリアは思ってもみなかった。

 

 「代表候補生ってなんだ?」

 

 がたたたっと、と言う音が聞こえ何事かと思いトウマはあたりを見回す。すると、周りで聞き耳を立てていた女子達が数十名が一気に崩れ落ちた所だった。

 

 本当に旧世紀のコントの様だった。

 

 先ほどまでの優雅な出で立ちで、セシリアは石のように固まっている。まぁ、無理もない、正直ここまで疎いとは考えてもみなかっただろう。

 

 「あ、あれ?俺おかしなこと言ったか?」

 

 「織斑君、さすがにそれは無いだろう。いいかい、国家代表候補生というのは――――」

 

 トウマは、一夏に国家代表候補生&国家代表について説明をすることにした。まさか、この世界の住人ではないトウマが、この世界の常識を説明することになるとは思ってもみなかったが……。

 

 「――――とまぁ、こういうわけで代表候補生っていう肩書きは、IS乗りなら誰でもあこがれる国家代表になれる可能性がある集団ってわけだ。簡単に言うと、エリート候補だな」

 

 「……そうなんですか、カノウさん詳しいですね」

 

 「いえ、貴方が世間の常識に鈍いだけですわ!」

 

 本当に大丈夫なんだろうか。一抹の不安が残るが、とりあえずは良しとした。

 そして、トウマが説明していた時も固まっていたセシリアが復活を果たした。

 

 「って私が言いたいのはそこです、カノウさんが仰られた通りエリートなのですわ!」

 

 「おおう、なんか復活した」

 

 ビシッという音が聞こえるくらいに人差し指を一夏に向けて指すセシリア。その指が一夏の鼻先につきそうだ。

 

 「本来なら私のようなエリートとクラスが同じことなだけでも幸運ですのよ。その現実を理解してますの?」

 

 「そうか、それはラッキーだ」

 

 「……何かこう、いま一つ腑に落ちませんが、まぁ、いいですわ。やはり、期待した私が馬鹿だったのですね」

 

 「…………」

 

 憂いを秘めた瞳で一夏の言動に諦めをつけるセシリア。その表情は若干悲しそうに見えたので思わず尋ねそうになったトウマだが、プライベートなことに関わりそうな気がするので黙っていることにした。

 

 「もうすぐチャイムが鳴ります、私はこの辺で失礼させていただきますわ。それではカノウさん、授業がんばりましょうね」

 

 「おう、オルコットさんもがんばれよ」

 

 次の授業の時間が迫っていることを確認したセシリアは、またしても一夏の存在を無視してトウマに挨拶を済ませるとそのまま自身の席へと戻っていった。

 

 

 

 「だから、俺は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園・一年一組 三時間目・担当教師 織斑千冬

 

 

 

 

 

 

 「それでは、この時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 一・二時間目とは違って真耶ではなく千冬が教鞭をとっていた。よほど大事な事だろうか、真耶がノートをとっている。ミナキは相変わらず後ろでニコニコして立っている。

 

 「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないか」

 

 ふと、思い出したように千冬が呟いた。どうやら忘れていたようだ。

 

 「クラス代表者とは文字通り、この一年一組の代表になる者のことだ。対抗戦や生徒会の会議への出席などの仕事がある。簡単に言えばクラス長の立場だな。ちなみに、クラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点ではたいした差などないが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間は変更が出来ないから心して決めるように」

 

 千冬が話し終わるとクラスがザワザワと騒ぎ出す。一夏は例のごとく頭に?を浮かべているが、トウマが横で一夏に説明をしている。

 

 「はい!織斑君を推薦します!」

 

 一夏はトウマに話を聞いている途中で聞こえていないようだ。ちなみに、トウマは聞こえているので大丈夫だろうかと心配している。

 

 「私もそれがいいと思いますー」

 

 まだ、一夏は気づかない。トウマはだんだん冷や汗が出てきた。   

 

 「では、候補者は織斑一夏……と、他にはいないのか?自薦他薦は問わないぞ」

 

 「はい!トッチ~がいいで~す」

 

 後ろの席からのんびりとした声が上がりトウマが後ろへ振り返ってみると、制服の袖がだぼついた女子生徒が手を振っていた。

 

 しかし、ここで千冬からトウマに関しての決まりが話された。

 

 「そのことだが。カノウ君については、代表に推薦することは出来ないことになっている。これは決定事項で理由としては、彼が代表になってしまうと意味がないからだ」

 

 「はい、先生。どうしてカノウさんが代表をすることに意味がないのでしょうか?」

 

 千冬から言い渡された言葉に当然のように疑問があがる。

 

 そして、一夏はまだ気づいていない。

 

 「理由か……。言ってもかまわないが騒動は起こすなよ。……では、説明してやろう。カノウ君がこのクラス、いや三学年全てあわせた生徒より実力があり強いからだ。そして、これは後で言うつもりだったが、クラス代表者には後でカノウ君との実践が執り行われることになっている」

 

 「「「「「えぇー!?」」」」」 

 

 「おわっ!?なんだ?なにがおこった!?」

 

 

 千冬の発言にクラス全体が驚きの声を上げた。

 

 一夏は周りが騒ぎ出したことでやっと気がついたようだが、何が起こっているのかはわかっていないようだ。 

 

 「落ち着け、馬鹿共が!騒動を起こすなと言っただろう!そして、織斑!お前は気づくのが遅いわ!!」

 

 スパーンという派手な音が一夏の頭から聞こえ一気にクラスは静まり返り、中には叩かれてもいないのに自分の頭を手で押さえて庇う者もいた。

 

 「「お、織斑先生。その辺にしておきましょう!」」

 

 「「「「「…………」」」」」

 

 「ふん、最初からそうして静かにしていればいいんだ」

 

 一夏は完全に沈黙しクラス全体も怯える中、トウマとミナキが千冬を諌める。

 

 生徒達が怯えているのは変わらないが、中には目つきを鋭くしてトウマを睨む者もいた。

 

 「織斑先生!私もクラス代表に立候補しますわ!」

 

 そう、先ほどの休み時間にトウマ達に挨拶をしにきたセシリアである。彼女は、自身より強いと言われたトウマに対抗意識が芽生え、それが確かな物かどうか見極めようとしていた。

 

 「本来ならば、代表候補生である私がクラス代表には相応しい者と思いますが、素人である織斑さんや織斑先生にここまで言わせるカノウさんに興味がわきましたわ。殿方が何処までISで足掻けるのか、私が試して差し上げます!」

 

 ゆえに、彼女はトウマや一夏に対して見下した顔で挑発を仕掛けるのだった。

 

 「な!?なんだよ、そのあからさまに見下した顔は。いいぜ、その勝負受けさせてもらうぞセシリア・オルコット!男の意地を見せてやる!!」

 

 いつの間にか復活をはたした一夏がセシリアの挑発に見事にかかったようで、鼻息を荒くして息巻いている。

 その様子にため息を一つ吐きながら、トウマとミナキは苦笑いをして白熱する子供達を眺めていた。

 

 「そうか、ではセシリア・オルコットっと。他にはいないのか?……いないならばこの二人によるIS戦闘で決めることにする。勝負は一週間後の放課後、第三アリーナで行う。織斑とオルコットはそれぞれ用意しておくように。……では、クラス代表については以上だ」

 

 パンと一つ手を打ってこの場をまとめる千冬。勝負は一週間後に持ち越されたのだった。

 

 

 

 

 

 IS学園・一年一組 放課後

 

 

 

 

 

 初日の授業全てが終わり、生徒達もまばらになった教室で一夏と箒、トウマとミナキが代表決定戦について話し合っていた。

 

 「しかし、大丈夫なのか一夏。お前は、セシリアの言う通り素人だろう。そんなお前が国家代表候補生に勝てるのか?」

 

 「うぅ……あの時はついカッとなって言い返したけれど、確かに俺はずぶの素人なんだよな~。どうしよう、箒……」

 

 話の流れでつい挑発に乗ってしまった一夏だが、早くも後悔していた。

 

 「あははは。まぁ、そう気を落とすなよ織斑君。まだ、一週間もあるじゃないか。男だったら最後まで諦めちゃだめだ」

 

 「そうですよ、まだ時間はあるんです。勝てないまでも、一矢報えるように私達も協力しますから」

 

 「は、ははは、勝てはしないんですね…………はぁ~」

 

 トウマが励ますものの、ミナキの現実的な言葉にがっくりと肩を落とす一夏。

 

 しかし、現実はその様なものだろう。今までISに関わってこなかった者が、平均で三百時間もの操縦経験がある代表候補生に勝てるわけがないのだ。

 

 「勝てなくともいいじゃないか、織斑君。君はまだ戦いの舞台に上がったばかりなんだ。これからどんどん強くなって、オルコットさんの様な格上の相手の鼻を明かしてやればいいさ」

 

 だが、たとえ勝てなくとも最初から諦めていては人は成長することが出来ない。そして、トウマはこの戦いを通じて一夏にISに関わることの覚悟を持ってほしかった。

 

 これからの人生で辛い事がたくさん待っているであろうこの少年に、少しでも有利な状況を進ませるために……。

 

 「……分かったよ、カノウさん。確かに、最初から諦めてちゃかっこ悪いもんな。それこそ、オルコットさんの胸を借りるくらいの気持ちでぶつかっていかなくちゃ!」

 

 「その意気だぞ、一夏!相手は代表候補生なんだ、負けても恥ずかしくはないし、むしろいい経験になるだろう!」

 

 これから特訓だ!などと元気に話す一夏と箒を尻目に、目論みが成功したことにホッと息をつくトウマとミナキ。ひとまず、前向きにさせることは出来た様だった。

 

 「ふぅ、どうやら心を前向きにすることは成功したようだなミナキ」

 

 「そのようですね、トウマ。この様子なら、きっと大丈夫でしょう」

 

 ちょうど話がまとまったその時、教室のドアから資料を抱えた真耶が姿を見せた。

 

 「ああ、織斑君にカノウさん、それにミナキさんに篠ノ之さんまで。まだ教室にいらっしゃったんですね。よかった、間に合いました」

 

 「どうしたんです、山田先生」

 

 トウマが代表して真耶に尋ねた。

 

 「はい、寮の部屋割りが完了しましたのでお知らせに来ました」

 

 そう言って部屋番号の書かれた紙とキーを一夏に渡す真耶。

 

 「え?もう決まったんですか。一週間は自宅からの通学だって聞いてたんですけど……」 

 

 ここ、IS学園は全寮制で生徒は皆寮に住むことが決まっている。無論、職員も寮生活なので寮館自体はかなり大きくなっている。

 寮生活の義務化の理由として、将来有望なIS操縦者、または整備員の保護を目的にしている。

 

 「その話でしたら、私と篠ノ之博士、ミナキさんと織斑先生で早急に処理しましたのでこの様な速さでの決定に至ったんですよ」

 

 「そうだったんですか。……しかし、織斑君の部屋番号は俺のと違いますけど大丈夫なんですか……倫理的に」

 

 「「え!?カノウさんと一緒じゃないのか!?」」

 

 トウマの口から驚きの事実が聞こえ、一夏と箒がうろたえだした。ミナキと真耶はその隣で苦笑いをしている。

 

 「はい、……その事なんですが。実は篠ノ之博士が私達三人が出払っている隙に悪戯された様で、篠ノ之さんとの相部屋になってしまったんです。……ごめんなさい!」

 

 すぐに寮部屋入れ替えの犯人が分かり、呆然とする一夏。

 

 「ま、まったく、姉さんたら…………」

 

 まさか、自身の姉が関わっているとは思わなかった箒は、若干顔を赤くしながら一夏をチラチラと見ている。

 

 「まぁ、誰とも分からないやつよりは、箒でよかったとは思うが……ってそれより、俺の荷物とかはどうするんですか?」

 

 「はい、荷物なら――――」

 

 「私が用意しておいた、ありがたく思うんだな」

 

 真耶の言葉を遮る形で教室のドアから千冬が顔を出し、こちらに歩いてきた。一夏の顔が若干引きつっているのは何故だろうか。

 

 「ど、どうもありがとうございます……」

 

 「まぁ、生活必需品だけだがな。着替えと携帯電話の充電器さえあれば事足りるだろうとは思うが、必要な物は次の休みにでも取りに戻るんだな」

 

 いくらなんでも大雑把過ぎないだろうか。織斑君ぐらいの歳ならしたい事には事欠かないと思うんだが、織斑さんならば仕方ないかと、トウマは思った。

 ミナキも同じ事を考えていたようで、トウマと視線が合うとお互いに苦笑がこぼれ出た。

 

 「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は……六時から七時、寮の一年生用食堂で摂ってください。それと、各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……織斑君とカノウさんは今の所使用できませんので注意してくださいね」

 

 「え?なんで入れないんですか?」

 

 一夏が心底残念そうに真耶に尋ねる。

 

 「お前は同年代の女子生徒と一緒に入りたいのか?……姉として家族から変態は出したくないのだがな」

 

 「へ、変態って……」

 

 千冬の辛辣でありながらもっともな言葉に、一夏はさらに肩を落としそれを箒が慰めている。

 

 

 「織斑君、そのうちお風呂の新規設置か時間帯による交代制でお風呂の時間を作りますから、それまで我慢してくださいね。もちろん、トウマもですよ」

 

 「はい、ありがとうございますトオミネ先生」

 

 「わかってるよ、ミナキ」

 

 ミナキからの補足情報に少し元気を取り戻す一夏と、最後のミナキの視線と言葉に苦笑を零すトウマであった。

 

 「それじゃあ、先生達はこれから会議がありますのでもう行きますね」

 

 「ちゃんと部屋に帰れよ、織斑に篠ノ之」

 

 「トウマ、またあとでね」

 

 会議のために教室から出て行く教師三人。千冬と真耶に続いてミナキが教室から出ようとしたとき、ふと思い出したようにトウマがミナキ達に声を掛けた。

 

 「なあ、三人とも今日の晩飯は――――」

 

 トウマが話し終わる前に、ミナキ達は疾風のごとき速度で教室に戻ってきた。

 

 「カノウ君、もちろん食べるぞ!」

 

 「今日のメニューは何ですか!」

 

 「トウマ!私は、中華がいいです!」

 

 先ほどまでの大人の威厳は何処に行ったのか、子供のようにはしゃぐ大人達に呆然とする子供達。一夏や箒は昔から厳格な女性であった千冬が、目を輝かせてトウマに晩御飯の進言をしている姿に驚いているようだ。

 

 あとで聞けばよかったと後悔しながらも、今日は一夏達の分も作ろうと思うトウマであった。

 

 

 余談だが、トウマの作った晩御飯を食べた一夏と箒は、その味に感動して涙を流しながら米粒一つ残らず完食しその場で弟子入りを志願した。

 

 そして、その横では千冬をはじめ、真耶やミナキ、束といったIS学園に勤める教職員達が一心不乱にトウマの作った晩御飯を食べていた。

 

 

 

 




 いかがでしたでしょうか。

 今回はイギリス代表候補生のセシリア・オルコットが登場しました。
 原作ではいろいろと弱い部分が目立つ彼女ですが、この小説では相応の実力を持たせたいと考えています。

 それでは、誤字脱字・感想などお待ちしております。
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