矢澤にこ自身がラブライブ   作:にこあん

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綺羅星「さよなら実践が忙しい時期だから遅延も止む無しよね……って! さよなら実践って何よ!?」


7.ゼロから始めるスクールアイドル生活

◆忍アイコン⇒萌え尽き注意の心境◆ ――にこの部屋

 人生とは言葉一つで世界が終わるということを、狂気のヤンデレ毒舌攻撃にて知ったツバサ。心の傷は深いが、傷つく前より視野が広がった。

 

……あ、さんびきのちょうちょがひかったりきえたりしてる。すごくきれいね。

 

 訂正――立ち直れれば、きっと以前より世界に怯える日々が待っているかもしれない。

 

「にこも漫画も読んだりするんだね」

 空気を入れ替えるように英玲奈が本棚を見て話題を提供する。少年漫画とはジャンルが違うとはいえ、同じ漫画というのはツバサへの優しいフォロー。

「最近買うようになったのが多いけど」

 『桜とリク』『ひまわりと加藤さん。』『やがて気になる』

 百合漫画と呼ばれる物が最近買った漫画の全て。高校生になって、スクールアイドルを立ち上げてからまだ少ししか時間が経っていないが、今まで知らなかった世界を知ることになっている。

「にこさんもということは英玲奈さんも漫画を読むのかしら?」

「ああ。恋愛物限定だけど」

 棚の本が知らないタイトルのみなので恋愛物ではないと判断しての発言。にこは少しだけ女の子同士の恋愛物だと知らせたらビックリするかな? と悪戯っ子のような考えをしたけど、あんじゅに知られるのが恥ずかしいので伏せた。

「きっとその恋愛物の前には幼馴染同士のっていうのがつくのね」

 代わりにあんじゅがからかうように笑って言う。図星だったようで、英玲奈は言葉なく頷いた。心底けーちゃん大好きな英玲奈である。そんな反応ににこはほっこりしながら、宇宙(ソラ)を仰いでいるツバサをチラ見して、

「けーちゃんさんは少年漫画読んだりするの?」

 ふっかつのじゅもんを唱えた。

「いや、けーちゃんは漫画より小説を読むのが好きだから」

 じゅもんをまちがえています。だが、二人の優しさがツバサを復活させるに充分だった。友情インプット!

「残念ね。同じ漫画好きだったらラインで話あってみたかったのに」

「男好きの臭いがするわ」

「しないわよ!」

 ツバサが復活したことに安堵しながらあんじゅに問う。

「あんじゅちゃんのお部屋にはツバサさんの漫画しかなかったけど、普段は漫画読まないの?」

「小学生の頃までは読んでいたんだけどね。ほら、恋愛物って必ずと言っていい程ライバルが登場するじゃない? それも男のライバル出したら次は女。その逆でもいいけど」

「それか男のライバルを増やすみたいな。どれにしろ同じようなパターンばかりだし、何より女のライバルの男の前でだけ猫かぶって、男が消えた後は本性見せるキャラが大嫌いで。それで読まなくなったのよ」

「それ分かるわ! 私も少女漫画を借りて読んだことあるけど、それが嫌で結局少年漫画が一番ってなったのよ。あんじゅさんがああいう感じだったら、今私はここに居なかったわね」

 

 あんじゅは顔を横に向け――その最中あんじゅの髪が太ももを擦ってにこがくすぐったそうに笑っていた――意外な共通点を見出した相手を凝視すると、笑顔を向ける。

 

「ツバサさんと同じ共通点があったなんて意外ね。なんだか凄く嬉しいわ」

「……?」

 思わず目を点にして我が耳を疑った。あんじゅの言葉が何か不可思議な呪文のようにさえ聞こえた。

「もっと同じ共通点があれば、今よりもツバサさんと仲良くできそうね」

「…………!」

 ここで漸く答えに辿り着いた。なんで唐突に薄気味の悪い発言をしてきたのか。呼びにくいと言っていた名前呼び。その作られた笑顔の意味。

 

「今更にこさんの前で猫被ったって辞めたりしないわよ!」

「ハンッ! 其れを先に言いなさい。時間の無駄なことをしてしまったじゃない。無能なツバさんね」

「あ、ごめんなさい。さが続くと言い難いから思わず減らしてしまったら唾液みたいになってしまったわ……汚い」

「酷っ!」

さっきにこの唾液が染み込んでるかもしれない枕を欲しがった人物とは思えない発言。

「でもあだ名とかある方が馴染みも出るし、これからは唾さんでいいんじゃないかしら? 蔑称は間違いなく唾液ね」

「だったら綺羅星でいいじゃない! 個性溢れる、だけどどれも自慢の衣装を着たスクールアイドル達の一番星になるという意味だし」

 

「え!?」

 

「え!?」

 

 予想を超える言葉にあんじゅの暗黒モードも一瞬で吹き飛び、思わず素の驚きを発すると、その声にツバサが驚きを返した。

「……綺羅星の意味は元々は誤用からきてるから、御用。つまりはお縄につくという意味を掛けていたのだけれど」

「知りたくなかったわよ、そんな理由!」

 デートを邪魔した時から呼ばれ始めたのだから、どう考えても好意的な意味をつけるわけがなかった。だが、ツバサは純粋だから良い意味で解釈してしまう。結果、今衝撃の事実に介錯されてしまった訳だけど。

「でもほら、綺羅星さんの好きな少年漫画とかも後付け設定好きだし、其れでいいんじゃないかしら?」

「その言い方だと後付け設定ばかりだと誤解されちゃうでしょ!」

「事実そうじゃない」

 確かに大体連載が長く続く程、最初の設定ガン無視のことは大いにある。読者に面白いと思われればツッコミ満載な後付けでも許される流れはある。綿密に張られた伏線を回収して驚かされる方が気持ちいいのは確かだけど。でも、やっぱり一番重要なのは面白いことだとツバサは思う。つまりわたモテ15巻も完全に許された!

 そんな二人のやり取りを見ながら、同じ名前ネタで日に二度もやりとり出来るのは凄いなぁという感想を抱くにこ。そんな視線に気づいたのか、顔の位置を元に戻してあんじゅがにこの顔を下から覗き込む。

「にこさんに特別な呼ばれ方したい!」

 瞳にハートマークと目の周りに光のキラキラを纏いながら唐突な申し出。いや、何度か呼び捨てに呼ばれたいアピールをしているので、そこまで唐突という意味でもないのかもしれない。

「うぅ~ん」

 今までなら『あんじゅちゃんはあんじゅちゃん』で終わるところだったけど、悩むよう仕草を見せた。確実なる好感触。なんだかとっても優しく甘い今日ならばいける! あんじゅは謎の確信を得た。

 

 そんなやり取りを見ながら英玲奈も考える。けーちゃんという呼び方は特別だ。でも、けーちゃんの呼び方は普通にちゃん付け。一考の余地ありかもしれない。恋人という特別な関係になったのだから、今までと変わってもいい。その為に新しい友達を呼び捨てにするようになったわけだし。

 だけど、出逢った時から呼ばれ続けてきた呼び方を変えられるのは少し複雑な感じもする。呼び捨てにされるのは嬉しいと感じる反面、寂しさを覚えてしまう。今までの二人の歴史に終止符を打ってしまうような不安。アルバムの空白を思い出させる。

 恋人になったからといって、何かを無理に変える必要なんてないのかもしれない。特別な時に呼んでもらったり、呼んだりする。そういう方がいいのかも。だけど一人で完結せずに、けーちゃんにも話してみよう。クールな見た目だけど、心は乙女色の英玲奈。

 

「よくよく考えると家族含めて今ちゃん付けで呼んでるのあんじゅちゃんだけだから、今のままの呼び方が一番特別だよ」

 この切り返しは想定していなかった分、頬がユルユルと弛緩を始める。息の詰まりそうな愛を育みながら、にこを見つめるとにんまりと反撃される。

「あんじゅちゃんの方が皆と同じ呼び方だよね?」

 これこそ正に小悪魔チック。何を言えばいいのか頭がついてこない。だけど、言うべきは一つだと心が叫んでる。

「にこさん大好き!」

「あっ、ズルい!」

 呼び方で返すのではなく、言葉で返す。ズルいのではなく、他に用意すべき言葉がなかったから。選択肢は三つとも大好きしかない。愛満ちる時、人は心に素直な想いしか紡ぐことはできない。若干息を荒くしながらの告白。

 にこは「ズルいにこ」と連呼しながらあんじゅのほっぺたをぷにぷに弄る。潤沢な愛情を補充しながら、あんじゅは一つのワガママを実らせる。その実こそがあんじゅの強さの証明。

 

 

◇これが私の猿乗せよぉぉぉ!◇ ――にこの部屋

 穏やかな時間の中、徐にあんじゅが体を上げる。最高の枕から離れるのに血の涙を流すような思いをしながらも体を上げた。寧ろ、今血の涙を流しているかもしれない。

 

 ツバサである私を差し置いて血の涙!?

 

「あんじゅちゃんどうかした?」

 唇を強く噛み、目をギュッと瞑って、体を震わせるあんじゅ。傍から見ると異常者そのものだけど、にこは怯えることなく普通に心配する。ツバサは何か自分の知らないところでアイデンティティを奪われたような、そんな謎の悪感に支配されていた。

 にこの声に呼応するように、大きく深呼吸。最上の状態から自ら抜け出したことに激しく後悔しながらも、其れでもこれは愛の為。愛深き故に愛ある状態を捨てた。目を開き、にこを射抜くように真っ直ぐに見つめる。ど真ん中いただくような真の強い瞳。口元が若干震えるけれど、もう一度強く唇を噛み締めて不安を飲み込む。

 

「にこさん。ワガママ言ってもいいかしら?」

 

 先程とは逆の立場。何を言われるのかドキドキしていたにこは、その言葉を聞いて思わず笑ってしまう。当然、あんじゅを小ばかにするような笑いではなく、安心させるような笑い方。

 

「いいよ。何でも言って」

 

 自分の明らかに無理難題を承諾してもらったのだから、応えないという選択肢はありえない。可能な限りあんじゅのワガママを叶えてみせる。

 

「機を見るに敏。一週間以内にというにこさんの考えは理解したわ。だけど、ううん。だからこそ五日で仕上げて見せる。日曜日に作詞が完成したと過程して、金曜日までに曲を完成させる。だから残りの二日間を自由な時間に充てさせて欲しいの」

 

 これには真っ先にツバサが声なき声で驚く。英玲奈も次いで大人びた魅力あるその瞳を大きく見開いた。一週間でも時間が足らないであろうことは予想に容易い。そんな無謀を承諾し、更に自らの首を絞めにいく。

 

 あんじゅは変態かもしれないが馬鹿じゃない。ヤンデレであるが知性は高い。少なくとも良い格好したさに大口を叩くような真似をしない。寧ろ、にこに大しては積極的でありながら臆病な面も見せることから、磐石を期せずしてこんなことを言えない筈。

 

 にこが焦りにすら見える無茶を言い出したことに確かな意味があったように、あんじゅにもあるのだろう。身を削ってでも手に入れなくてはいけない時間。不可能なんて現実を征服し、可能という未来を服従させるに値する渇望の二日間の意味が。

 

「それは……どうして?」

 

 自らの我侭を受け入れて貰った以上、理由まで聞く必要はなく受け入れるのは決まっている。だけど聞かずにはいられなかった。無理難題をより不可能に近づけてさえ手に入れたい時間の意義を。

 

「デートする為の時間が必要だから」

 

 絵心のない人すら惹き込む名画のように、美しいという言葉すら足りない微笑みを浮かべる。胸がギュッとなり、思考を奪われる。其れはにこがあんじゅと出逢った時に感じたあの感覚。完全に優木あんじゅに魅入られているのが分かった。

 

 一方のツバサはなんというか納得といった感じだった。にことデートしたいが為に普段以上の力を出す。報酬があれば人は頑張れるという簡単な理論。だけどあんじゅでなければ不可能。そう答えを出した。そんな自身の考えが未熟であると知らされたのはこのすぐ後。あんじゅの言葉はまだ終わっていなかった。

 

「スクールアイドルという物は青春の象徴であり、束縛の対象であってはいけないわ。普通のアイドルと違って恋人がいてもいい。だけど、その活動に犠牲になる想いがあってはならないと思うの」

 

「活動が忙しいからデートできない。そういうことがないようにするというのは其れは其れで部活動だから違うというのも分かってる。でも、初めからずっと我慢させるのはこの先にきっと大きな闇を落とすことになる」

 

「私はたった一日にこさんと会えなかっただけであんなに苦しい思いをしたのに、英玲奈さんはモデルをしながらその苦しい日々を耐え続けてきた。自分のファンにそんな暗い部分を見せず、魅了してきた」

 

「私には絶対にできないことだわ。勧誘の際はあんな風に言ったけど、会いたくても会えない事情というのも理解してる。だからこそより苦しかったと思う。会える距離なのに、会いたいと願うのに、その距離は永遠にも等しい境界線」

 

「全てを捨てることで漸くその距離を取り戻せた。恋人同士になれた」

 

「一緒に活動できるだけじゃ駄目。今が一番大切な時。デートをしながら取り戻した愛を実感しながら、これからの活力に変えていく。スクールアイドルの活動を通じながら、そうなってなかった時には味わえなかった思い出を作りながら、愛を育んでいくの」

 

「今はまだその時間を取り戻せてない、言わばマイナス地点。二日間人目もスクールアイドルのことも忘れてデートをして貰って、漸くゼロになる。そこから始めましょう。ゼロから始めるスクールアイドル生活」

 

 愛を知ることで人の想いを汲めるようになる。其れを知る前には考えつかなかったことを思いつけるようになる。にこと出逢ったお陰で知ることの出来た愛という鼓動。未来は誰にも分からないと言うけれど、今のあんじゅには分かる。英玲奈と愛しの彼が二日間デートをする姿が。

 

「じゃあ、あんじゅちゃん。そうなったらにことデートしようね」

 

 幼さを強調するような満面の笑みで誘われるデート。心に刻み込みながら、その返事はにこをベッドに押し倒すことで返答した。主軸でありながらその選択権を与えられなかった英玲奈はあんじゅの言葉に感動に似た思いを感じていた。

 勧誘の際に背中を押して貰ったのがあんじゅであり、自分と違って許されざる恋を全力で頑張っている。恋をしている時間は自分の方がずっと長いのに、その行動力や考えはあんじゅの方が遥かに上。

 忙しくてけーちゃんとデート出来ないことをスクールアイドルの所為にする。そんなことは考えもしなかったけど、恋人同士になった満たされた自分なら、いつかそう思ってしまってたかもしれない。

 今が一番忙しいだけだと分かっていても、人間の心は簡単に割り切ってくれないというのは嫌になるほど学んだから。その不安を払拭してくれると言う。出会ったばかりの自分の為に。スクールアイドルを卒業する日は必ずくる。何故ならば高校生という限られた花だから。でも、この手にした絆はずっと続いていくという確信を持てた。

 

「あぁん! にこさん! にこさん!」

「んぅんっ! あんじゅちゃっ、くすぐったいよ」

「一日はパジャマのまま一日中外にも出ないで家でデートしましょう」

 

 ベッドの上の二人のイチャつきを見ながらツバサは思う。どうすればこの気高き強さを持つメンバーに追いつくことが出来るのか。自信を持って並ぶことが出来るのか。強さの意味。自分の弱さ。ツバサの前には見えない迷宮が広がっていく……。




次回予告【亜里沙 ~いもうと~】

私には甘えん坊の妹が――

いる

いた


⇒いる


私には甘えん坊の妹が――いる。

少女が生まれて初めて目にしたのは、白銀の世界
日本で生まれ、育ったのは美しき雪の国ロシア
家族の温かな愛に囲まれて、幼き胸に灯すはお婆ちゃまとの夢
才能有る彼女はバレエを極める道を歩み始める
だけど、その道は残念ながら早々に閉ざされることになる
語られるは姉妹の絆の物語

「スクールアイドルのライブが見たい」
人生言ってみるものだ。

「今日ライブを見た。もう、怖くない」
胸に決まる覚悟。

「星を降らせたい」
少女の最後の願い。

私には甘えん坊の妹が――いた。


レム「そんなエターナルブリザードの臭いを漂わせて! 次回予告するなんて!」
鬼羅星「このメイドさん誰? というかこの予告絶対に嘘でしょ!?」
亜里沙「もう何も恐くない!」
鬼羅星「死亡フラグを重ねるのヤメて!」
絵里「私には甘えん坊の妹が――いた」
鬼羅星「改めて意味深な台詞繰り返さないで! 何なのよこの混沌空間! 後、私は鬼は嫌いじゃないわ。だって未来の話をすると一緒に笑って(ry」

もしくは普通にあんじゅのご褒美回・・・?

※急募:十五巻までの内容で加藤さん×もこっちを書ける人
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