チートな人狼がDLされました   作:呼び水の主

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第3節 今を生きる英雄

「トオル、あれを見て!」

 

 それは翌日の朝のことだった。朝食の後、歩き出してしばらく。

 オルガマリーが目を細めて、遠くを指差す。魔術で視力を強化しているようで、私の肉眼では何も捉えられない。私も『其は有限なる小奇跡』を使い、視力を強化し目を凝らす。

 遥か遠く、ワイバーンの群れに襲われている数十の人の姿が見えた。

 

「襲われている。避難民かフランス軍かはわからないが……」

 

「──いえ、おそらくその両方よ。トオル変身よ!」

 

 オルガマリーが背中に担いでいた荷物を地面におろした。剣を鞘から抜きはなち、状態を確認してから、また鞘に戻す。彼女は戦うつもりだ。

 

「いいのか?狼に擬態したとしても、私の姿は目立ちすぎる」

 

「なりふり構っていられないでしょう!彼らを助けないと!目の前の人達を救えなくっちゃ、人類なんて救えない!そのために私は、カルデアに居たんだから」

 

 オルガマリーは本気だ。

 剣を握る手も、膝も震えているのに。口をキュッと引き締めて、目だけはしっかりと据わってる。

 だったら私も、それに応えないとな。

 メキメキと私の身体が音を立てて『変化』していく。小型犬から、ライオン程の大きさの狼へ。野生にしては大き過ぎるが、いない事はないかもしれない、と思わせるくらいのギリギリのサイズだ。

 オルガマリーが私の背中に跨った。

 

「お願い!」

 

 よしきた。私は力強く地面を蹴った。

 大地を疾走する。景色がみるみる後ろに流れていく。巡航速度、80キロ。騎乗用装備なしで、これ以上の速度は上の彼女に負担がかかり過ぎる。

 ワイバーンと戦うのは、これで9度目だ。奴らは空を飛ぶ。こちらからの攻撃方法は私の跳躍による空中戦のみ。背中に跨るオルガマリーの持つなまくらの剣「触れれば粉砕」が急所に当たりさえすれば一撃で戦闘不能にできるが、奴らもそう簡単には接近させてくれないからな……。馬上槍があればまだ楽なのかもしれないが、無い物ねだりしても仕方ない。

 

 点のように小さかった人影が明瞭に確認できる距離に近づいた。

 30名程の避難民と思わしき群衆と、それを守りつつ後退するフランス軍僅か16名。対するワイバーンの数は5匹。

 よく持ちこたえている。代わる代わる飛びかかってくるワイバーンを、統率のとれた動きでフランス軍兵士達が追い払う。その様はまるで、寄せては返す波のよう。兵達の練度もさる事ながら、さぞや優秀な指揮官がいるに違いないと思わせる、手馴れた動きだった。

 

 兵士達はワイバーンの対応に必死で、まだ私達には気付いて居ない。

 ワイバーンの数匹がこちらに気が付いた。私達は奴らの風上にいる。風が私達の仇になったか。

 

「左に回り込んで。手前のワイバーンを私達に引きつけるわよ!」

 

「了解。振り落とされるなよ。加速する!」

 

 2匹のワイバーンがこちらの動きに食らいついた。フランス軍兵士を無視してこちらに反転する。急降下。接近戦なら望むところだ。一番近くのワイバーンとすれ違う。

 

「届いてぇ!」

 

 オルガマリーが振るった剣が、ワイバーンの翼を叩く。ドコンッ!という派手な音をあげてワイバーンの片翼が根元からあらぬ方向に折れ曲がった。まずはひとつ!

 もう1匹が飛び上がった。翼を大きく広げる動作、……切り裂く風が来る!

 

「そうそうとやらせるものかよ……!」

 

 跳躍。正面。鋭い牙で頭に食らいつく。そのまま体重を利用して首をねじ切る。ワイバーンが力を失って落下する。身を捻って、軽やかに着地。

 

「ちょっと!跳ぶなら先に言いなさいよね!?」

 

 オルガマリーが震える手で私の背中の毛を掴み直して言った。残りは3匹。

 兵士の正面に釘付けになっているワイバーンに後方から距離を詰めるべく走り出す。

 私が近づくと、3匹の動きを牽制していた矢の斉射が止んだ。

 

「弓兵、撃ち方やめ!挟撃します!各員、私に続きなさい!」

 

 指揮官と思われる、白銀の鎧を纏った騎士が先頭に立ち前進を開始した。こちらの動きに合わせた完璧なタイミング。あの判断、やはり相当な手練れを思わせる。

 先頭の騎士が一瞬視界に入る。

 んん……!?あの顔、どこかで見覚えがあるような……!?

 

「トオル!跳んで!」

 

 思考中断。オルガマリーの合図で跳躍する。空中で振るわれた「触れれば粉砕」が、ワイバーンの頭をカチ割る。目が飛び出し、口から真っ赤な泡を吹いて、頭を潰されたワイバーンが錐揉みしながら落下していく。これでみっつ。

 急所に当たれば幻想種だろうが問答無用で一撃だ。改めて『其は有限なる小奇跡』の強さを思い知る。サーヴァントだってコンクリートで倒したんだもんな……。

 

「うぅ。お、終わったようね。それにしても、やっぱり慣れないわね。この手に残る感触って……」

 

 オルガマリーが剣を鞘に戻して、ひたいの汗を拭う。

 残る2匹のワイバーンは、無事に兵士達に討ち取られたようだ。

 

「白銀の女騎士殿だ!白銀殿が我らを助けに来てくれたぞ!」

 

「見たか!?あの猛々しくも美しい戦い!白銀殿万歳!フランス万歳!」

 

 兵士達が勝鬨を上げる。後方に隠れて見守っていた避難民達から、安堵のため息が漏れるのがこの距離からでも聞こえてきた。我ながら地獄耳だなと思う。にしても、オルガマリーの噂ってどこまで広がってるんだ?助けた避難民が行く先々で話してるにしても、この拡散具合は……。

 

「各員!周辺の警戒を怠るな!死体を確認しろ!まだ息があれば確実にトドメをさせ!」

 

 騎士が剣に付いた血を振り払って叫んだ。

 先程片翼を折ったワイバーンに、3人の兵士が駆けていく。なるほど、入念な事で。

 騎士がこちらに駆け寄ってくる。オルガマリーは私の背中から下りて騎士に応じた。

 

「その姿、その武勇。白銀殿とお見受けします。お噂はかねがね。此度は窮地を救っていただき、感謝の念に堪えません。我々だけではどうなっていたことか。ああ、失礼。申し遅れました。私の名は──」

 

 その男の姿を間近で見て、確信した。

 十字の紋章があしらわれた白銀の鎧、病的とは言わないまでも、血管が透けて見えそうな非常に薄く白い肌、濡れたような黒髪。剃り上げられた眉。そして何よりこのCV鶴岡聡な声!

 

 フランス元帥。かつて聖女ジャンヌ・ダルクの副官として、共に戦場を駆けた男。この時代を生きる、フランスの英雄。

 その名を。

 

「──ジル・ド・レェと申します」

 




だんだん所長がファイアーエンブレムのカムイ(女)に見えてくる不思議。
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