チートな人狼がDLされました   作:呼び水の主

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遂にサーヴァント戦です


第3節 狼とロケットパンチ

 やっべぇぇぇぇぇぇ!!

 勢いで所長を助けに来たけど、まさか相手がサーヴァントだとは思いもしなかったよねぇぇぇぇ!

 か、勝てるのか私!?

 いや、対抗手段はある。

 私が天使さんから授けられた転生特典『其は有限なる小奇跡』(今命名)はサーヴァント相手にも生き残るための力。

 捻り出せ!サーヴァントに勝つ方法を!

 

 倒壊したビルからサーヴァントが這い出てきた。

 あの風貌、年末アニメで見たことあるぜ!

 知っているのか私!?

 ランサー・メドゥーサ。

 石化の魔眼キュベレイを持つ怪物だ。

 キュベレイは確か常時発動型。対抗手段は魔力だ。ある程度魔力を有する者なら石化はしないんだったか?詳しい原理はよくわからないが、今の私には全身に重圧がかかっている。体内の保有魔力がキュベレイの力を軽減している?

 とにかく、石化しないのはありがたい。全身にかかる重圧で、かなりやりにくいが……。

 どうやってランサーに勝つ?

 先程は不意の一撃でなんとか退けたが、たぶん二度は効かないぞ。

 私の武器は身体に魔力を纏わせての格闘のみ。対してランサーの得物はハルペー。リーチが違いすぎて懐に入る前に迎撃されてしまう。

 何か武器はないのか?ハルペーとの打ち合いに数合持てば何でもいい!何か!

 

「獣風情が、この私に傷を付けるとはッ!!」

 

 怒号とともに、ランサーが地面を蹴った。速い!

 彼我の距離が一瞬で埋まる。

『其は有限なる小奇跡』で動体視力と反射神経を強化する。成功だ。相応の魔力が対価として抜け出ていく感覚。

 今施したのは永続的な身体強化。元々ウェアウルフとサーヴァントじゃ地力が段違いだ。ウェアウルフの持つスペックの上限を突き抜けろ──!

 ランサーの持つハルペーが閃く。

 寸前で身をかわし瓦礫からコンクリートの破片をいくつか両手に持つ。

 武器!武器!そうだ、こいつで!

『其は有限なる小奇跡』でコンクリートの形状を籠手状に変化させ両腕を覆う。流石にコンクリートを別の物質に変化させる事はできない。なのでコンクリートの持つ「頑丈」という概念をありったけ強化する。

 ランサーの追撃が来る!ヤバイ!こぇぇぇぇ!!

 普通にガードしたんじゃ、あの弧を描いた刀身は防げない。刃を振るわれる前に柄を押さえ込むしかない。

 心を奮い立たせて前に出ろ!

 

「はいだらーーー!!」

 

 ハルペーを押し込むように、私はランサーめがけ身体ごと突撃した。

 籠手とハルペーが激しく火花を散らす。衝撃で籠手から僅かにコンクリートの破片が飛び散る。

 だが止めた!概念強化、土壇場の思い付きだが上手くいってくれたか!

 ここで腕を振りかぶる時間はない。最小の動きで、渾身の一撃を放つ。

 

「ぜぁっ!!」

 

 私はコンクリートの籠手で覆われた右の拳をランサーの霊核である頭に放った。死に晒せよやぁ──!!!

 

「舐められたものですね」

 

 私の拳が放たれる直前にランサーが嗤った。

 私は自らの失策を悟った。完全にこちらの動きを読まれていた!拳を咄嗟に引こうとするが、間に合わな──

 ──パァン!小気味の良い音が燃え盛る街に木霊した。何かが地面にポトリと落ちる。私の右腕が、妙に軽い。

 

「づ───ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!?」

 

 熱い、熱い熱い熱い!

 私の右手首から先が切り落とされていた。

 痛いとすら感じない。ただひたすら熱い。けど、足を止めたら駄目だ!動かないと、死ぬ!

 振るわれた追撃の斬撃を前に飛び込むように躱す。すれ違い間際に、尻尾による殴打をランサーに見舞う。

 

「チッ……悪足掻きを!」

 

 ランサーが僅かにバランスを崩した。

 私は熱さの次に痛みが押し寄せてきた右手首を左手で庇いながら、ランサーのその姿に光明を見出した。

 ヤツは怪物に堕ちた女神の成れの果て。生粋の戦士ではない。ヤツが戦士なら、私は最初の一手で斬り殺されていたはずだ。きっとそこに付け入る隙がある──!

 

「ちょっと、貴方!」

 

 うん?オルガマリー・アニムスフィアだ。気丈にも立ち上がり、私に声をかけてきた。

 ビクビク震えて、今にも泣きそうなくせに。

 ちょっと今取り込み中なんだけどー!

 

「私がなんとか隙を作るわ!その間にあのサーヴァントを打倒なさい!!」

 

「正気か?死ぬぞ!」

 

 私がいとも容易く手首切り落とされるの見たでしょ。

 そら、のんびり話してるうちにランサーの追撃がきた!『魔力放出(音)』!!

 

「ウォォォォォォッッッ!!!」

 

 私の咆哮が魔力の圧を伴って周囲の空間を揺らし、瓦礫を巻き上げた。音と粉塵の壁だ。

 さしものランサーも怯んだ。今のうちに!

 私は所長を胸に抱えてビルの裏手に逃げ込んだ。

 

「ちょっと聞いてるの!?」

 

 聞いてます聞いてます。耳元で叫ばないで!私の耳敏感なんだから!

 私は『其は有限なる小奇跡』で右手首の痛みを抑えながら問いかけた。

 それでなんだって?

 

「ランサー相手に隙を作るなんて無謀だ。あっという間に殺されるぞ!」

 

「無茶は承知の上よ!貴方が何者で、どこから来たかなんて今は問いません。……貴方、私の声に応えて助けてくれたでしょう。だから今度は、私が貴方を助けるわ」

 

 ──私、借りを作るの嫌いなの。

 

そう言ってオルガマリー所長はそっぽを向いた。

 ……私は心底驚いていた。オルガマリー・アニムスフィアは傲慢で、意地っ張りで、プライドばっかり高くて、承認欲求が強くて……そんな(ヒト)だと思っていた。

 けど、それと同じくらい頑張り屋の、心根は優しい(ヒト)なんだ。ちょっと素直じゃないけどな!

 

「いいだろう。君はなんとか隙を作る。その間に私がランサーにトドメを刺す。シンプルに行こう」

 

「いいわ。今、貴方との間に簡単な使い魔契約をしてパスを繋いだわ。あとは念話で指示を伝えます。それと貴方、右腕見せなさい。治療できるかも」

 

 いや、こいつはこのままでいい。

 私にいい考えがあるんでね。

 

「コソコソと内緒話は終わりましたか?」

 

 殺気がぞわりと這い上がってくる。

 オルガマリーを置いて、私は一人ビルの裏手から飛び出した。

 その勢いでランサーに組み付き、空中でもみ合いながらオルガマリーから距離を取る。

 私はランサーに腹を蹴られて突き放された。

 地面に叩きつけられる瞬間にしなやかに受け身を取ってランサーから逃げるように走り出す。

 

(左手にある一番大きなビルの屋上にランサーを誘い出して!)

 

 オルガマリーからの念話だ。

 追ってこいランサー!お前の死地に招待してやるぜ!

 私は指示通り、左手にある一番大きなビルに辿り着き、壁を蹴って屋上まで駆け上がった。ランサーが私の後を追い屋上に着地する。

 

「逃げるのは終わりです。獣風情が私をここまで手古摺らせるとは、楽には殺しませんよ」

 

 ランサーの殺気が肌をヒリつかせる。

 さっきから受けるキュベレイの重圧も尋常じゃない。これ以上逃げ回るのは、本当に無理だな。

 さあきたぞ、オルガマリー所長!どうすればいい!?

 

(私が合図をしたら、跳びなさい!)

 

 合点!

 

「まず、耳を削いで、鼻を切り落として、最後は贓物をブチまけて死ぬほど痛めつけやるっ!!」

 

 ランサーの殺気が膨れ上がり、爆発するように突撃してきた。き、きたゾォーーーー!!

 

(──今よ!跳んで!)

 

「おうよぉ!」

 

 瞬間、地面が──否、ビル全体が爆発した。

 

「し、しまった──!?」

 

 ランサーが瓦礫の落下に呑まれ落ちていく。

 いくらサーヴァントでも、足元の地面がなくなりゃ隙の1つはできるよなぁ──!!

 

 今だ!力をよこせ!『其は有限なる小奇跡』!!

 ──『エンチャント』!!!

 

 私の体内に秘められた無垢の魔力が「破壊」という概念を与えられ籠手にエンチャント(付加)される。ただ頑丈さを突き詰めたコンクリートの塊が、ただ破壊するそれだけに特化してランサーの霊核たる心臓に振り下ろされた。

 

「トドメを受けろーーッ!!」

 

「──ッ!?コケにしてぇ!!」

 

 私の渾身の一撃は、ランサーの必死の抵抗によって寸前で受け止められた。私の左拳は完全にハルペーの芯を捉えていたが、流石は宝具だ。この一撃でも、ビクともしないとは──!

 ランサーが勝ち誇った顔をする。

 

(そんな、防がれた!?)

 

「ああ、だが予想通りだ!」

 

 私の言葉に、ランサーの瞳が揺れた。その瞬間。

 

「ガッ────!!??」

 

 ランサーの心臓を、()()から私の()()が貫いた。

 

「な、何故……?」

 

 ランサーはそれだけ呟いて、空中を落下しながら金色の粒子になって虚空に溶けていった。




マスター不在、本来の思考を失っている黒化英霊相手だからこそギリギリ勝ちを拾えた感じ
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