チートな人狼がDLされました   作:呼び水の主

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第6節 人間性を捧げよ

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!?」

 

 私は身体中に剣を突き立てられて、息も絶え絶えに前のめりに倒れこんだ。

 ニチャリという感触が顔を撫でた。血溜まりの向こう側で、もう1人の私が瞬きする。

 

「生物の急所と云われるところは全て貫いた。それでもまだ、君は生きている。まさかギリシャの大英雄と同じ宝具を持つというわけでもあるまい」

 

 ギリギリだ。ギリギリの状況だ。私の見た目は今かなりヤバイことになっている。全身に剣山かよっていうくらい隈なく剣がブッ刺さっているのだ。

 それでもまだ私が生きているのは、『其は有限なる小奇跡』で痛覚を無視してショック死を回避し、身体の生きるための最低限の機能だけを何度も何度も回復させているからだ。

 脳に剣がブッ刺さっても、心臓を剣が貫いても、それでも生きてる。デタラメな力だ。まさか、こんな状態でも生きることができるとは。意識が途切れる度に『其は有限なる小奇跡』によって叩き起こされる。正直、心が折れそうだ。

 死に続けながら生き続けてる。

 

 しかも。

 

 しかも、私の体内の保有魔力はとっくに尽きていた。

『其は有限なる小奇跡』はその対価として魔力を必要とする。その筈だ。

 

 ──じゃあ、なんで私はまだ生きている?

 

『其は有限なる小奇跡』は()()()()()()()私を生かしているんだ……?

 私は全身が粟立つのを感じた。

 

「あぁ……、ぐっ!く、狂ってるよ、アンタ」

 

 私は全身に突き刺さった剣を全て抜きながら言った。新たな剣は飛んでこなかった。

 私の足元には生きてるのがおかしい程の血溜まりができている。

 全身の傷が自動的に修復されていく。やはり魔力は尽きているのに、だ。何これ怖い……。

 なんか気分悪くなってきた……。

 とりあえず痛覚遮断をオフにする。

 これ以上対価を払いたくない。

 

「そうとも。とうに狂っているさ。私も、この世界も、どこかでおかしくなった。気が付いた時には手遅れだったがね」

 

 アーチャーがその手に双剣を投影する。

 

「この柳洞寺から君とランサーの戦いを見ていた。驚愕したよ。なにせただの魔獣がサーヴァントを打倒したのだからな。そして君と直に対峙して確信した。君の力は魔術なんてものではない、まるで万能の魔法だ」

 

 コイツ、『其は有限なる小奇跡』の能力を探っていやがったのか……。

 確かに、この能力は強力ではあるが、決して万能なんかじゃない。出来ることと出来ないことがある。しかもここにきて魔力以外を対価に発動することまで判明してしまった。こえーよ……。

 

「それで?仮に私の能力が万能の魔法だったとして、それがどうだというんだ。私を甚振る目的はなんだ」

 

「──見極めさせてくれ」

 

 見極める?ハッ!?

 アーチャーが踏み込み、一瞬で私の懐に入り込んできた。

 ふた振りの斬撃が私を襲う。

 私は後ろに跳躍したが、完全に躱すには至らなかった。

 いってぇぇぇぇぇ!?

 足元の血溜まりが私の動きを阻害する。

 続く斬撃から這々の体で逃げ回るが、身体中にドンドン新しい傷が刻まれていく。

 頰に、胸に、腕に、脚に、赤い線が疾る。痛くて痛くて、涙が出てくる。こ、コイツ、手を抜いてやがるッ……!

 

「停滞していたこの世界に、カルデアと君が現れた。セイバーがカルデアを試すというならば、私もそれに倣おうかと思ってね」

 

「なんでアンタはサラッとカルデアと私を分けてるんだよ!」

 

「言っただろう?ことの一部始終を見ていたと」

 

 フッざけんなぁぁぁぁ!!!

 私は周囲の魔力を強引に吸い上げた。

『魔力逆流』によって周囲から吸い上げた魔力を己が物として、『其は有限なる小奇跡』を起動する。

 私の肉体を魔力が駆け巡り、傷口がみるみる塞がっていく。

 サーヴァントに対抗するだけの身体強化が再び全身を奮い立てた。腕が、脚が、頭が、全身の神経がフルに起動して行く。

 

「オォォォォォォォォォッ!!」

 

 私は咆哮を上げた。

 迫り来るアーチャーの斬撃を、今度こそ躱しきり、反撃に転じる。

 私はアーチャーに殴りかかった。

 こんなところで足止めを食らうわけにはいかないんだよ!

 はやく合流しないと、オルガマリーが!!

 

「そこをどけ!アーチャーッ!」

 

 

 ※

 

 

 オルガマリー達は大聖杯があるという大空洞の奥深くまで入り込んでいた。

 だがそこに人狼のトールはいない。

 アーチャーの固有結界に呑まれてしまったのだ。

 トールとの間に繋いだ使い魔契約のパスはまだ生きているから、彼が死んでいないことだけはわかるのだが。

 それでもやはり、気が気じゃない。

 相手はアーチャーのサーヴァント。しかもそのホームグラウンドに取り込まれてしまったのだ。万に一つも、トールの勝ち目はないだろう。

 

「狼の旦那が心配かい?」

 

 キャスターがオルガマリーに問いかけた。

 その言葉に、オルガマリーはトールと初めて出会ってからここまでの事を思い出した。

 オルガマリーの窮地に風のように現れて、あろうことかサーヴァントを叩きのめした。かと思えばいきなり突拍子もないことを言い出して、好き勝手に彼女の心を掻き乱す。

 なんて傍迷惑な人狼なんだろうと思う。

 でも、別に、嫌いでは、ない。

 ランサーに襲われ絶望した彼女の前に降り立った銀色の大きな背中と、ゆらゆらと揺れる尻尾が、目に焼き付いて離れなかった。

 ……私のことを救うって言ったくせに。

 そこでオルガマリーは思考を中断した。

 

「別に、心配なんかしてないわよ!アレはただの使い魔。囮として使えるなら上等だわ」

 

「へぇーそうかい。その割には落ち着かねぇ様子だが、これを言うのは野暮かねぇ」

 

「からかうのはやめて頂戴」

 

 オルガマリーはピシャリと言い放ってキャスターからプイッと顔を背けた。

 どうもこの英雄は苦手だ。飄々としている癖に、色々と抜け目ないところとか。

 

「先輩!所長!キャスターさん!到着しました。ここが大空洞の最奥部です!」

 

 そこにあったのは、まさに奇跡を具現化するために作り上げられた特大の魔術炉心。

 そしてその大聖杯を守るように一体のサーヴァントが仁王立ちしていた。

 

 

 ※

 

 

 だ、だめだぁもうおしまいだぁ……。

 やぁ、全身血だらけ、満身創痍のトールだよ☆(ヤケクソ)

 カッコよく啖呵を切ったものの、アーチャーはマジで強かった。

 というか、ヤツの固有結界に取り込まれた時点で私に勝ち目はないわな。いきなり空中に浮かび上がった剣が飛んでくるし、アーチャーも無尽蔵に手元に剣を呼び寄せやがる。

 まるで気分は鬼畜難易度シューティングゲームだね。こんなの躱しきれるかよぉ!

 しかも現状、私には武器がない。

 コンクリートの籠手はランサー戦で寿命が来てしまったし、この固有結界内の剣は私が触れようとすると爆発するし……。正直詰んでいる。

 素手でアーチャーに勝つのは無理だ。

 なにか、なにか武器はないのかッ!?

 その時、空中にザザッという雑音と共に青白い立体映像が現れた。

 ──もしかして、これは?

 

『──いやぁやっと通信が繋がった!途中で何故か通信地点の数値がおかしな変動をして驚いたよ!そのおかげで解析が遅れてね!けどもう大丈夫!無事かいマシュ!!君の他に生存者は────てうぇええええええ誰だ君は!?』

 

 ゔあ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!

 

「ト"ト"ト"!Dr.ロ"マ"ーーーーン"っ!!!」

 

 この赤い荒野の中に、一筋の光明が見えてきた!




スキルレベルアップ!▼

『其は有限なる小奇跡』C
魔力を対価に任意の効果発動
↓↓↓
『其は有限なる小奇跡』C+
魔力もしくは◼️◼️◼️を対価に任意の効果発動
◼️◼️◼️が枯渇した場合狂化判定を行う。

※主人公はサーヴァントではないのでスキルランクはあくまで目安です
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