状況を飲み込めずに慌てふためいているDr.ロマンに私は必死に現状の説明を試みた。
「私はオルガマリー所長の使い魔だ!サーヴァント・アーチャーの固有結界に取り込まれて打つ手がない!なんとかならないか!?」
『う、ウェアウルフの使い魔なんて聞いたことがないぞぅ!?それにサーヴァントに襲われてるだって!?マシュは?オルガマリー所長は今どうなっているんだい!?』
アーチャーの追撃が迫る。
双剣を用いた接近戦だ。
私に回避以外の選択肢はない。
アーチャーの横薙ぎに振るわれた斬撃を四つ足になり身を低くすることで躱す。
そのまま足払いを試みる。
避けられた。
アーチャーは大きく後ろに距離を取り、何処から取り出したのか大きな弓を構え私に向けて刀剣の矢を三連射した。
一射目。頭部を狙った一撃を頭を振ることで躱す。こめかみを掠った。すれ違いざまの衝撃が私の脳を揺さぶる。
二射目。一射目で生まれた私の一瞬の隙を突いて、私の右脚、太ももの部分に矢が突き立つ。機動力を削がれた。
三射目。心臓を狙った必殺の一撃。
──避けきれん!
極限まで研ぎ澄まされた感覚が私の意思を無視して咄嗟に『魔力放出(音)』を発動させる。
「カァッッッ!!!」
私は魔力放出を全方位にではなく、迫り来る矢を狙撃するように指向性を持たせ一点に集中して放出した。
キュン!という発砲音にも似た風切り音が鳴った。
私の口から撃ち出された魔力を乗せた空気弾が真っ向から矢に突撃する。
──直撃!
だが破壊には至らない。
僅かに弾道の逸れた矢が私の左肩に深く突き刺さった。
「ぐっ……!?」
もはや痛みすら感じない。
アドレナリンドバドバ状態なのだろう。
こりゃ、終わった後キツイぞ。
終わった後に、私が生きているかは甚だ疑問ではあるが……。
『だ、大丈夫かい!?』
Dr.ロマンが深手を負った私を見て叫び声を上げた。
「……これが大丈夫に見えるものかよ!?それより!」
『ああわかった!わかったよ!君が所長の使い魔という事は信じよう!それで、君を助ける事はマシュや所長を助ける事にも繋がる!それでいいんだね!?』
「話が早くて助かるねェ!カァッッッ!」
空気弾が今度こそアーチャーの矢を完全に弾いた。
よっしゃ!新しい技もコツが掴めてきた!
アーチャーが本気じゃない間に、Dr.ロマンと連携してヤツをブチのめす!
「
アーチャーが何事かを呟いた。
瞬間、私の左肩と右脚に刺さっていた刀剣の矢が爆ぜた。
私の左肩から先と、右脚が花火のように血を撒き散らしながら吹き飛んだ。
「がぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!?」
手足を失った身体がべちゃりと赤い荒野に投げ出される。
即座に『其は有限なる小奇跡』が発動し、全開で私の飛び散った肉を掻き集めて再結合を開始する。
爆風で逝った背骨がゴキゴキと音を立てて元の配置に戻される。
途中で魔力が尽き、にも関わらず『其は有限なる小奇跡』は私の身体を癒し続ける。
「〜〜〜ッッ!?」
「特異な力ではあるが、そろそろ底が見えてきたな。やはり君は、この先に進むに値しない」
チックショォォォォォォォォ!!!
反則なんだよテメーはぁ!!!!!
私はなんとか立ち上がる。
身体は全快だ。ただ物凄く気分が悪い。
なんだか、頭にモヤがかかったような……。
アーチャーが私を見る目が鋭くなる。
「終わりだ」
アーチャーの双剣が私の首を落とさんと振るわれる。
──速、避けられ、無理、死
流石に、頭を落とされたら死ぬんじゃないか?
頭を駆け巡るのは、そんなどうでもいい思考。
私は死を覚悟した。
だが、アーチャーの攻撃は私の首を落とすには至らなかった。
『よォし!試作礼装No.007!転送!』『だぁぁぁぁ勝手になにやってんるんだレオナルド!?』
突如私とアーチャーの間に現れたソレは。
『さぁ使い給え画面の向こうの狼クン!この万能の天才お手製!大型決戦礼装D型!!自分用に作ったはいいが全く普段使い出来なくて倉庫で埃をかぶっていたこの礼装で、存分に暴れてくれたまえ〜ッ!』
ドデカイドリルが!
地面にデデンと突き立っていた!
私は本能でそれに取り付いた。
おおおお!装!着!
プシュゥゥゥゥガコンッという重々しい音と共に、籠手型のドリルが私の左腕に吸着した。
《サイズオーバー!サイズオーバー!装着者トノ適合率48%……。左腕補助装置ニ異常ヲ検知。エネルギー伝達率73%マデ低下。強制装着プログラムヲ実行。完了。オッケ〜イツデモイケルヨ〜》
キェァァァァァァァシャベッタァァァァァァァ!!?
フォウ、フォーーーウッッッッ!(特別意訳:ダ・ヴィンチちゃんってバカだよねーー!)
ドリルの見た目は「穿孔ユニット ラピッドボーラー」で検索してネ。
※大型決戦礼装D型については活動報告にて詳しく解説しているので、興味のある方は是非覗いてみてください。