箱庭に流れる旋律   作:biwanosin

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今回でガルドとのゲームは終わりです。

では、本編へどうぞ!


歌い手、歌を受け入れる

 さて・・・多分あの十字剣が指定武具なんだろうけど・・・あれを取るにはまずクズタイガーをどうにかしないとだよね・・・

 それと、クズタイガーってあんな感じだったっけ?真っ白だし、知性を感じないんだけど・・・

 

「ボーっとしてないで逃げて!」

 

 そんなことを考えていたら、僕と飛鳥さんは春日部さんに階段まで突き飛ばされる。

 

「女の子に庇われるって、カッコ悪いなー・・・」

「くだらない事考えてないで逃げるわよ!ジン君も!!」

 

 あ、ジン君飛鳥さんに引っ張られてる。僕も逃げないとな。

 

「GEEEYAAAAAAAAAAaaa!!」

「ま、待ってください!まだ耀さんが上に!」

「そうだった!早く戻らないと!」

「ああ、もう!奏君、いいから早く逃げなさい(・・・・・・・・・・・)!」

 

・・・・・・悔しいけど、ここにいてもやれることはないよね。

 

「OK。さっさと逃げるよ!」

「ちょ、ちょっと!?」

「奏さん!?」

 

 とりあえず、二人を抱えて逃げることにした。

 体力に自信はないけど、そうも言ってられないよね!

 

「私はいいから、二人で逃げなさい(・・・・・・・・)!」

「断る!悪いけど、後よろしくね春日部さん!」

「うん、任せて」

 

 とりあえず、館を出て、何にも考えずに逃げることにした。

 少し心が痛んだけど、そんなことは一切考えずに。

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

「もういいわ!どこまで逃げる気なの!」

「あ、それもそうだね」

 

 無我夢中で逃げていたら、飛鳥さんに止められた。

 冷静になってみると春日部さんが足止めしてくれてるんだから、邪魔にならない程度でよかったよね。

 

「ゴメン、今おろすよ」

 

 その場に二人を下ろす。

 とっさの事だったけど、女の子を抱え上げるって失礼だったかな?

 

「ジン君。白銀の十字剣があったのだけど、指定武具と考えて間違いないかしら?」

「はい、間違いないと思います」

「そこまで自信満々ってことは、何か理由があるの?」

 

 確か、あれのギフトはワータイガーのはずだし、銀はともかく十字架は関係ない気がするんだけど。

 

「彼はもう既にワータイガーではありません。吸血鬼によって人の部分を鬼種に・・・吸血鬼に変えられています」

「だから虎の姿だったのか・・・もしかして、この気持ち悪い木とかも?」

「はい、鬼化しています」

「だから脈打ってるのか・・・」

「もしかして、この舞台を準備したのもその吸血鬼なの?」

 

 あ、それもそうか。あの状態でそんなことが出来るとは思えないし。

 

「いえ、まだそうなのかは分かりません。東側で吸血鬼は希少種ですから。しかし、黒幕がいるのは間違いないかと」

「そう・・・誰だか知らないけれど、生意気なことをしてくれたものね」

「これだと、あれを裁いたって言いづらいな」

 

 理性を失った獣の退治なんて、ただの狩だ。

 そういう意味合いもこめてギフトゲーム名は付けられたのかもしれない。

 

 そう思っていたら、すぐ後ろの茂みが揺れた。まさか、あれのほかにも敵が?

 

「誰?」

「・・・私」

「ああ、春日部さんか・・・ってその怪我は!?」

 

 出てきたのは敵ではなく、右腕からものすごい量の血を流している春日部さんだった。

 とりあえず、倉庫の中から簡単な止血を出来るもの、その他使いそうなものを取り出し、倒れそうな春日部さんを支えながら傷口に当てる。

 

「大丈夫?ちょっと沁みるよ」

「大丈夫じゃ・・・ない。本気で泣く」

 

 春日部さんの目から涙が流れてるけど、消毒だけはしておかないとどうなるか分からない。

 そして、今気付いたけど春日部さんの右手には白銀の十字剣が握られていた。

 まさか、ここまでなっても取ってきたのか?

 

「春日部さん、その剣・・・」

「本当はあそこで倒すつもりだった。・・・ゴメン」

 

・・・いや、春日部さんは何も悪くない。

悪いのは、自分の力に恐怖した僕だ。

本来なら、あの場で(・・・・)倒せたんだ。僕が恐れてさえいなければ。

 

「ジン君、飛鳥さん、必要そうなものは置いていくから、春日部さんの右腕、止血とかお願い」

「まって、どこに行く気なの?」

「簡単なことだよ」

 

 そう言いながら、僕は春日部さんの握っていた白銀の十字剣を取り、館のほうを向く。

 

「あのクズタイガー・・・ガルドを退治してくる」

 

 もう、彼をクズだなんて呼ばない。

 勝つために自らを変えた勇気は、賞賛に値する。

 

「危険よ!私も行くわ!」

「こんな言い方、出来ればしたくないんだけど、邪魔になるから、春日部さんのことをお願い」

 

 飛鳥さんがとても驚いているのが見て分かる。

 まあ、ただの歌い手だってここまで主張してきた僕が、ここまで自信満々になってたらそう思うよね。

 

「大丈夫、必ず勝って、生きて帰ってくるから」

 

 固まっている飛鳥さんを置いて、僕は館へと歩いていった。

 

 

 

♫♫♫

 

 

 

 さて、館に着いたはいいけど・・・どうやって出てきてもらおうか。

 まあ、早く終わらせたいし手軽に行きますか。

 

 そして、犬笛と同じ音を、歌う。

 きっと、ガルドは反応して出てきてくれるだろう。理性を失った今なら。

 

「GEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAaaaaaa!!!」

 

 しばらく歌っていると、予想通りガルドは出てきた。

 そして、そのまま僕のほうに向かって走ってくる。本能に従い、食い殺す気なんだ。

 だけど、僕は逃げない。ここで逃げたら、もう本当に春日部さんに顔向けできない。

 だから・・・僕は歌う(・・・)。全てに干渉する、奇跡の歌(・・・・)を。

 

 僕は、『ハラム・ハチャトゥリアン』のバレエ『ガティーヌ』最終幕にて用いられる楽曲『剣の舞』を歌った。

 そして、僕の歌を聴いた『白銀の十字剣』は、舞う(・・)

 

「GE・・・GUAA!!」

 

 それを見たガルドは本能的にであろう、白銀の十字剣を警戒している。

 それゆえに避けて通ろうとするが、十字剣はその道を、踊るようにふさぐ。

 

 この力をはじめて使ったのは、小学校に入ってすぐのことだ。

 僕がこんなことができるとは知らず、無意識のうちに発動してしまってその場を破壊し、たくさんの友達を傷つけた。

 そして、僕を気味悪がった両親は僕を捨て、別の施設に預けられた。

 

 そんなことがあったから、また使ったらたくさんの大切な人を傷つけてしまうんじゃないかと怯えて、真後ろからガルドを倒せるチャンスを失ったんだ。

 

《もうこれで、終わりだ》

 

 歌がクライマックスに入り、それと同時に十字剣はガルドを貫いた。

 

「GeYa・・・・!」

 

 白銀の十字剣の輝く光、歯切れの悪い悲鳴。それが、ガルドの最後だ。

 どんな形であれ、僕が自分の歌を受け入れる、そのきっかけを作ってくれた、ガルドの。

 

「御静聴、ありがとうございました。どうか、安らかな眠りを」

 

 だからだろう、僕は無意識のうちに、崩れ落ちていくガルドに向けて腰を折り、そう声をかけていた。

 




こんな感じになりました。

『剣の舞』というタイトルを聴いてなんだそれ?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、絶対に知っていると思います。

運動会のテーマのあの曲です。徒競走のやつです。


いちど、youtubeか何かで探してみてください。


では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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