執務室に一人の男がいる。五十代ぐらいの黒髪と白髪が入り混じっている、何処にでもいそうな人だ。男は何枚かに集められている書類をじっと見ている。
そんな中、トントンという音が聞こえてくる。
「入れ」
「失礼します」
ドアが開き、若者が入って来る。そこから出てきたのは鮮やかな黒髪があり、顔が整っていて、年は十八のように見える陸軍の軍服を着ている男だった。
若者は男に敬礼してから、
「陸軍二等兵、魚住隼人。ただ今参上いたしました!御用とはなんでありますか」
「うむ、魚住二等兵。君に来てもらったのは他でもない」
男は間を置いて言った。
「君は一週間以内に、今いる陸軍の寮から出ていってもらう」
それを聞いた若者の目が一気に見開かれる。無理もない。男の言う事は遠回しではあるが、要するにクビだ。
「な、何故そうなったのでありますか!?自分に駄目なところがあるのでしたら、できる限り改善していきます。ですので……」
「落ち着いてくれ、話には続きがある」
「続きですか?」
「あぁ、そもそも今日何で呼ばれたか分かるか?」
「さっきの辞令のことだけではないのですか?」
「よく考えてみたまえ、君のような一兵士を何故海軍の元帥である私に呼ばれたんだ。おかしいと思わないか?」
「確かに」
そう言って若者は一人で考え始めた。しかし、それでもやはり分からないのか、目はあっちこっちキョロキョロさせていた。
男はため息をつくと、さっきまで見ていた書類の一部を若者に見せた。
「これは提督適正の検査の結果が書かれているものだ。君の名前の欄を見てごらん」
言われるがままに若者は見ると、そこには「適正」という二文字がある。
「も、もしかして自分が呼ばれた理由は……」
もう流石にここまできたら、誰でもこの男の言いたい事が分かるだろう。もちろん、若者も自分が呼ばれた理由について理解できた。
「そう、そのもしかしてだ。君には艦娘を率いて深海棲艦と戦ってもらう」
淡々と男は告げる。しかし、どうしても腑に落ちない若者はしどろもどろになりながら、言う。
「し、しかし、自分は陸軍の兵士です。しかも、二等兵です。提督は少将以上でないとなれません」
「いや、その心配は無用だ。何故なら、今の君は陸軍を辞めさせられたのだからな。それに」
ゴホンと軽く咳払いをしてから、真剣な眼差しで若者を見る。
「それに君を海軍少将にすれば問題はない。ということで海軍少将のバッジだ。受け取ってくれるよね?」
若者は最初は戸惑っていたが、覚悟を決めたのか「はい」と返事をして受け取った。
「それでは魚住隼人少将。君には呉鎮守府を任せる」
「はい、分かりました。前山元帥!」
こうして魚住隼人の鎮守府生活が始まる。
なんで、どれも最初の話はギャグ大幅カットになるんだと思ってしまいます。