元陸軍兵提督   作:夜仙

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誰でしょうか


5 初めての重巡は…

「これからよろしく頼むぞ二人共」

 

「はい」

 

「任せなさい」

 

 二人の少女はそう返事すると出て行った。

 

 隼人は出て行った少女達のステータスを見た。この鎮守府で初めての重巡が来て、さらに駆逐艦が来るという朗報。これには彼も胸を踊らせた。

 

「これで、この鎮守府の戦力も良くなるし、何より賑やかさが増すな…」

 

 だが、隼人は気づかなかった。その初めての重巡がかなりの問題児だった事を…

 

 

 

 

〜一週間後〜

 

 私は急いでいる。あの巫山戯た奴を締め上げないと気が済まない。

 

「こんな、こんなデタラメを流して……!許さない!!」

 

 私は今そいつのいる重巡ゾーンのところにいる。

 

 そもそも、この鎮守府、いや全ての鎮守府ではそれぞれの艦の種類によって居住できるゾーンがあり、そこを共同生活の場としている。例えば、私だと駆逐艦のゾーン、これは陽炎も暁も同じだ。他にも、今はいないが、軽巡のゾーン、空母のゾーン、戦艦のゾーン等ある。

 

 そして、つい最近。私達は新たに重巡を仲間に出来た。それはそれは嬉しかったわ。けれど、まさかこんな事になるなんて……

 

 私は思いっきし廊下の床をダンと踏んだ。音は辺り一体にこだます。やはり、人はいないため静かだ。

 

 そして、あいつの部屋をノックもせずにバンと開く。

 

「…ど、どうしました?」

 

 私の不意打ちに驚いてか、あいつは目を丸くして用件を聞いてきた。……分かってるくせに。

 

「青葉、あなたでしょ、このニセ情報を発信したのは!」

 

「とんでもない!嘘じゃありませんよ!」

 

 青葉は手を振り否定する。

 

「どこがよ!」

 

「ほら、そこの『陽炎、提督からご褒美のゲームを!?』は正真正銘本当ですよ!」

 

 ん?なになに……あぁ、あいつ願いを叶えてもらったのね良かったわね。

 

「確かにこれは本当ね」

 

「でしょう〜」

 

 ニヤニヤした余裕そうな顔をする青葉。まぁ……

 

「それとこれとは話が別だけどね」

 

 私は青葉に笑い返す。青葉は「オゥ」とビクッとなって、体を後ろへのけぞらした。

 

 

「青葉、あんたは何でこんな記事を書いたのかしら?」

 

 私はその部分に指を指し示し、青葉によ〜く見せつける。

 

 そこには『提督と叢雲はデキているのか!?』という題名と共に記事内容が小さい文字によってに語られている。

 

「これに見覚えは?」

 

「……あります」

 

「どうして、こんな記事を書いたのかしら?」

 

「え?だって叢雲さんと提督はデキていると思ったからで、もしかして間違っていました?」

 

 何処をどう見たらそうなるの!?あんたの目って大丈夫!?

 

「違うわよ。私とあいつはそういう関係じゃないの」

 

「本当ですか〜?」

 

 こいつ……ニタァって顔している。さては私が意地を張っていると思っているのね。

 

「まぁ、でも私とすればネタができるので構いませんが。さぁ、そうとなれば潔く真実を言ってください!」

 

 駄目だ、こいつ。目がキラキラして、私とあいつがデキていると本気で思っている。

 

「さぁ、吐くなら今のうちですよ〜」

 

 私の中の頭の何処かの線が切れた。

 

 

 

 

 

 

 

「……これで最後だな」

 

 俺こと魚住隼人は執務を終え、一段落ついているところだ。傍らには秘書艦である叢雲に代わって、任務艦である大淀がいる。学校のクラスに絶対一人はいそうな丸眼鏡をかけており、長い黒い髪と制服は何処か真面目な雰囲気を出している。それはまさに『委員長』と呼ぶにふさわしい娘だろう。

 

「お疲れ様です、提督。後は私に任せてください」

 

「あぁ、任せたよ。大淀。俺は鎮守府の見廻りに行ってくるから」

 

 書類を大淀に託し、俺は見廻りに出た。廊下に出てみると、外からざーざーと雨が降っている音がする。そこまでひどくはない雨で、何処か心を落ち着かせる感じだ。こういう雨は嫌いではない。

 

「良い天気だ」

 

 独り、そう呟く。

 

 そして、それはおかしな表現だと気づくのには一分もかからず分かった。

 

(おかしいと言えば……)

 

 彼はふと、さっきの書類のことを思い出す。その書類はなんとなく読み、理解し、了承のハンコを押した。

 

 その書類を内容を改めて思い出してみる。確かこんな内容だった。

 

『魚住隼人少将の居る鎮守府に重巡の艦娘を近いうち一人送る』

 

 よくよく考えてみれば変な話だ。

 

 最近、大本営から重巡である青葉と駆逐艦である満潮が来たばかりというのに、どうしてまたそんな重巡の艦娘をこちらに送って来るのか。いくら、『期待されている』『目をかけられている』と言ったってこんな連続して重巡を送ってくることなんか尋常ではない。それだけ期待されているのか、或いはこの海域の近くにすごく強い奴がいるのか、それとも……。

 

 そんな事を思って歩いていると、いつの間にか重巡のゾーンに来てしまっていることに気づいた。思わず、しまった、と思ったがここを使っている艦娘は一人しかいないし、普段みんなここには来ない。それに偶には別の所から行ってもいいか、と思いそのまま歩いていく。

 

 すると、前方の部屋から二人の聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「だから、違うって言ってるでしょ!!何回も言わせぬなぁ!!」

 

「いやいや認めてください、叢雲さ〜ん♪私としてはネタが増えてありがたいし、叢雲さんとしてはライバルが撲滅できるというメリットがあるんで〜♪認めてくださ〜い♪」

 

 部屋を覗いてみると、そこは戦場となっていた。叢雲は部屋の机に置いてある家具やら小道具やらを片っ端から青葉に向かって投げている。その顔は不動明王のような怒り顔だった。一方の青葉はそれを華やかに避けていく。しかも笑顔で。それはまるで何処かのテレビや小説であるお花畑でキャキャウフフフと言ってそうな感じだった。

 

 この状況はどうすれば良いのだろう。提督として、俺はどうしたら……。まぁ、取り敢えず止めるか。

 

「おい、二人共それぐらいに……」

 

 そう言おうとした時だった。叢雲が投げた机が青葉には直撃せず、俺の方に向かってきた。

 

「うわー机が飛んでるー」

 

 俺は棒読みでそう呑気に言った。

 

 

 

 

 

 

 その後、俺は机をとっさの判断で右に避けて、なんとか直撃を防ぐことができた。ただ流石に机等の家具類を投げたのはまずかったらしく、みんな来てしまう。その時の二人は顔が青ざめていて、やっと自分達が何をしたか理解したらしい。二人は大淀から部屋の後片付けと鎮守府の掃除をやらされることになった。

 

「ところで提督は叢雲さんと付き合っているのですか?」

 

「ん?付き合ってないけど」

 

「そうですか……残念」

 

「ちょっと待ちなさい、なんで私は駄目であいつはオッケーなのよ!」

 

「それは叢雲さんがツンデレだから〜♪」

 

「コロス」

 

 取り敢えず叢雲と青葉は仲良くやっていけそうで良かった。 

 

 

 




平和な鎮守府です。
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