ここに来て一週間。
私もだいぶこの鎮守府の空気になれてきた。とても明るい鎮守府だ。
提督と艦娘達は個性的で面白い。
提督は完璧な人なのにどこか天然というか鈍感というか、そんな感じがあり、叢雲は真面目だけど提督に振り回されて大変そうだな、と思う。ラリアットとか提督にしているけど…。あれって大丈夫なの?一応提督よ?
吹雪は真面目だけど、叢雲みたいにやる事に全力を注ぐタイプじゃなくて、コツコツと地道に積み重ねていくほうだ。その努力のかいあってか本人自身かなり強い。私もあそこまで強くなりたいわ。今度一緒に練習しようかしら?
陽炎は明るくて、イメージとしてはチームのムードメーカーと言った感じだ。ただ、ゲームの話になると、か
なりうるさいからそこは迷惑ね…。
暁は何か可愛そうね。「レディよ!」とか言っているけど、司令官や吹雪とかに飴を貰うと「しょうがないわね!」と嬉しそうに言いながら、貰うさまはお子様感が出てきていて、悲しいわ。でも本人は出撃とかになると頼りになる。多分、元々が器用だったりするからだろうが、実力はこの鎮守府の駆逐艦の中で一番強いと言われる吹雪と同じくらいの実力を兼ね備えている。人は見た目で分からないって言うけれども…
私が考えを膨らませていると、角から来た人と激突してしまった。ドンと頭同士がぶつかって、相手も私も後ろへと倒れる。私はぶつけたおでこを抑えながら、
「どこ見て歩いてんの!!」
と相手を見て言った。
しかし、私は相手を見た途端ぴたっと一瞬固まってしまった。
ぶつかったのは、憲兵だった。しかも背の小さい方の。
この憲兵は見るからに中学生のような見た目をしており、その見た目は男でも女でも行いけるような色白さ、顔の良さを持っている。もし、この憲兵に私達、艦娘の衣装を着させても、それっぽくなるだろう。そのせいか、この憲兵はなんだか人形のようにも見えてくる。
「満潮さん、すいません!余所見をしていまして」
憲兵は私の名前を出し、頭を下げて謝る。軍帽を脱いでまで。
「ちょっと待って!?あんた何やってんの!?」
これに私は動揺する。軍帽を脱ぐというのは謂わば目上の人にする事。私達、艦娘と人間である提督や憲兵は立場上は彼らの方が上なのだ。そんな彼ら側のこの憲兵が軍帽を脱いで謝っているのは、つまり会社の社長が普通の社員に土下座しているようなものだ。
「え?いや、僕は誠心誠意を込めて謝っているつもりなんですけど……」
こいつ、何言ってんの?
「私が言いたいのはそういう事じゃなくてね。あんたが脱帽してまで私に謝らなくていいって事よ!」
「でも相手に誠心誠意謝るときはきちんと礼儀を込めて言わないと駄目だと母が言っていたので」
どういう教育してんの、あんたの母親!?
「とにかく僕はそういう主義だから譲りません」
何なのこいつ?でも……
「ふん!ならいいわ。それだったらそれでやっていったら!」
「はい!そのつもりでいきます!」
そう言って憲兵は無邪気な笑みを見せた。それは初めて見たものだった。というのも私は彼を冷静沈着な中学生憲兵と思っていたからだ。
ドキッ
心臓が一瞬大きく鳴った。
何故だろう、分からない。
だけど私の胸の鼓動は高鳴るばかりだ。
「あ、そういえば自己紹介していませんでしたね」
そんな私の心情など察していないのか彼は呑気に自己紹介の事を言っている。
しかし私は彼を止めない。いや止めることができなかった。
今の私は彼の顔をただ、ぼーっと見てしまう。そのため止めることができない。
「僕の名前は森治といいます。よろしくね」
そう言って、彼は自己紹介を済ませた。
かなり短い話で、すみません。