元陸軍兵提督   作:夜仙

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題名をちょっとおふざけな感じにしてみました。

あと、かなり投稿が遅くなってすいません。次からはもうちょっと早く出していきたいと思います。

まぁ、『不定期投稿だから、そんなの気にするんじゃないよ』とか言われたら終わりなんですけどね。


7 元帥降臨!

 昨日のことだった。

 

 いつも通り執務室で仕事をしていると、電話が鳴った。誰かと思い、電話に出る。

 

「もしもし」

 

『隼人君かね』

 

 思わず目がぎょっとしてしまう。何故なら……

 

「前山元帥!何か御用がありますか!!」

 

 そう……電話をかけてきた主は海軍のトップ前山元帥だ。

 

『いや何。ちょっと業務の事で電話をかけたんだが……』

 

 ゴクリと唾を飲む。海軍の元帥である前山さんの話……きっと物凄く重大な機密事項があるに違いない。

 

『だが、今ここで告げる訳にはいかない。そこで、明日追って場所と時刻を連絡する』

 

「はい分かりました」

 

 その返事からすぐに元帥の電話からツーツーという音が聞こえてきたため、受話器を元の位置に戻す。

 

 その時、偶然叢雲が執務室に入ってきた。彼女は俺を見ると、いつものような罵声を言わず、俺が終わらせた書類の点検をしている。

 

 俺は執務室の椅子を引き寄せ、机に置いてある少しの量の書類をさばいていく。

 

「さっきの電話は家族からなの?」

 

 叢雲は書類から目を離さず、訊いてくる。

 

「元帥からだよ」

 

 すると彼女の眉間がぴくっと動く。

 

 そして、こっちに顔を向ける。叢雲の顔はとても絶望しきった顔で、半ば世界の終焉を受け入れるような顔になっていた。

 

「あんた、一体何をやらかしたの?」

 

「え?何もやらかしてないけど……」

 

「本当?」

 

「本当に」

 

 叢雲はなおもこちらを疑う目で見てくる。が、それはほんの僅かの間だった。彼女は小さく「はぁ」とため息をつくと、

 

「まぁ、それもそうね」

 

 と言って、事務作業をし始めた。彼女なりに納得したのだろう。

 

 

 

 

 

 ただ、この後同室の吹雪から叢雲が寝ているときに魘されていたという話を聞くのは三日後の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もうすぐ広島駅〜広島駅〜』

 

 車掌の声を聞いて俺は地図を見て、元帥に言われた居酒屋の場所のルートを確認してから外へ出る。

 

「ここからだと……ちょっと近いな」

 

「おいおい、なんで俺もいんだよ。お前だけでいいだろうが」

 

 ぶつくさぶつくさと安田が文句を垂れる。なんでこいつがいるかというと、昨日の追加の元帥からの電話で場所と共に安田を連れてこいと言われたからだ。

 

「元帥が呼んでいるからしょうがないだろう」

 

「だったら、部下のお前だけでいいじゃん!俺なんか所属も違うんだからな!」

 

「しょうがないだろう。元帥が呼んでいるんだからな」

 

 そう、元帥自身が昨夜に電話で安田と源さんも連れて行くように言われたのだ。ただ、源さんは用事があるらしく行けなくなってしまったが。確か腰痛だった気がする。かわいそうに。

 

「えぇと、この先に……あった!」

 

 見つけたのは『BARカミハラ』とお洒落な看板を出しているバーであった。レンガ造りに扉の左右はイルミネーションをつけた感じはいかにも洋風な感じがする。

 

「ヒェ〜!流石は元帥が選ぶ店だけあるぜ、こりゃあ!」

 

 安田は大袈裟なリアクションをとる。それを無視して、俺はてくてくとバーの中に入って行く。

 

「おい、待ってくれよ〜!」

 

 追いかけるように安田は俺と共にバーの中に入った。

 

 

 

 

「お、来た来た。お〜い!ここだぞ〜!!」

 

 カウンター席に座った元帥がこちらに手を振っている。周りを見てみると、元帥以外誰一人としていない。貸し切り状態にでもしているのだろうか。

 

 それにしても……

 

「あの、ボディーガードとかはつけなくてよろしいのですか?」

 

 俺は率直に元帥に尋ねる。自分個人としてはやはりお偉いさんではあるのでつけたほうがいいと思ったのだが、元帥はそれを真っ向から否定するかのように高笑いした。

 

「ワハハハ!!その必要はない!一応、これでも軍人だからな。腕には覚えがある」

 

 そう言って、腕を軽くたたく。

 

「それより、ほれ!座らんか!安田君もほら!」

 

「失礼します」

 

「では」

 

 安田は元帥の左隣に、俺は右隣に座る。

 

 元帥はそれを見て、益々機嫌を良くし、日本酒を頼む。

 

「二人も何か頼むか〜?金ならば安心してくれ、俺が出してやるから!」

 

「マジっすか!元帥!」

 

 安田は目をキラキラさせて元帥を見た。安田、お前ってそこまで酒好きだったのか? 

 

「おいおい、なんかお前、俺が酒飲めねぇんじゃないかと思っているようだな。それは勘違いだ。俺だってちゃんと飲めるよ」

 

 そう言うと安田はビールを注文する。

 

「ほれ、隼人君も何か頼みなさい。お代は儂が払うから」

 

 元帥にそう言われると、遠慮してはいけない。俺はウィスキーを頼む。

 

「ウィスキーなんて洒落た物を頼むな、お前」

 

 安田はゲラゲラ笑いながら、出てきたビールをぐいっと飲む。

 

「ハハハハッ!安田君、君中々の酒豪だねぇ」

 

「それほどでもないっすよ!」

 

 元帥と安田は楽しそうに話す。安田と元帥はどうやら波長が合うらしい。

 

 良かった。これで元帥と変な揉め事にならず、叢雲にも叱られない。一安心だ。

 

「ところで隼人君」

 

 少し顔を紅くした元帥が身をカウンターに乗り出して話す。

 

「実は今度君の所に移動する娘なんだが」

 

 少し躊躇っいがちになる元帥。気のせいか目は俺の方にではなく自分の持っているグラスを向けている。

 

「かなりの問題児なんだ。それもかなりの」

 

 場に重い空気が徐々にバーを支配する。だが、それにも気づかず安田はビールを飲み続ける。

 

「そうですか」

 

「まぁ、よくしてやってくれ。あの娘も好きでなった訳じゃないんたから」

 

 そう言うと元帥はガハハと大声で笑い、場を和ませる。

 

「まぁ、これで重い話は終わり!さぁ、飲もう!」

 

 そう言って、元帥が再び酒を飲もうとした時だった。

 

 入り口が音をたてて開く。びっくりして、その場にいる者全員が音のした方向を見る。そこには短い茶髪で目の色がそれぞれ違う中学生ぐらいの少女がいた。

 

 だが、何故だろうか。彼女からものすごい覇気を感じる。恐い系の。

 

 少女はコツ…コツ…とゆっくりと足音を立てながら、中へ入って行く。そして、誰かと待ち合わせをしているのかキョロキョロと辺りを見回す。

 

「元帥、あの娘誰か探しているみたいですけどーーあれ?」

 

 ふと元帥のいる左方向を見ると、さっきまでそこに居た元帥が消えていた。俺は消えた元帥を目でキョロキョロと探してみると、彼がさっきまで座っていた椅子の下に隠れているのが分かった。

 

「あの、何しているんですか?」

 

 俺の問いに元帥は何も答えず、ただぶるぶると体を震わせて隠れている。

 

「どうしたんだろう」

 

 そう思って、前を向き飲みかけのウィスキーを飲む。

 

 その時、ふと視線を感じた。

 

 俺はそっちの方向を見ると、さっきの少女が俺の後ろに居ることに気づいた。

 

 少女は愛想よく、にこにこ笑いながら「どうも」と言う。これには面食らってしまい、俺も「どうも」と返事をする。

 

 酔っ払っていた安田も何故か「よっす!」とよく分からない挨拶をする。ただそのあとはいびきをかいて寝たので、本人が反射的に挨拶をしただけなのであった。

 

「何か御用ですか?」

 

 取り敢えず要件を聞いてみることにした。もしかしたら、この娘がこの店に忘れ物をしたとかいうささいな事かもしれないからだ。

 

 まぁ、この店に彼女のような中学生ぐらいの娘が来ること事態がそれこそ一大事だが。

 

「いえ、ちょっと探している物があるんですけど」

 

 何気無さそうに相変わらずキョロキョロと目を動かす少女。

 

 彼女自身がそう言っているものの、人が話している最中にもこうやって探すのだから余程重要な物に違いない。

 

「よかったらですけど一緒に探しませんか?ほら二人で探した方は効率が良いでしょう?」

 

「いいんですか、お手を煩わしても」

 

「いいんです、困った時はお互い様ですから」

 

「そうですか!」

 

 少女はその言葉を聞いて、表情が前と違った意味で明るくなる。

 

 やっぱり、こういうギスギスしたオーラを放つよりも、こっちのほんわかしたほうが大分安心感がある。

 

「ところで、それってどんな物なんですか?」

 

 少女は「そうでしたね、ちゃんと特徴とか言わないと分かりませんものね」と微笑してから、

 

「大きくて、白い服を着ていルアー物ですかね」

 

「大きくて白い服を着た物ですか?」

 

 俺は頭の中でその情報を取り敢えず入れて考える。

 

 やはり、まず第一に思い浮かぶのが着せ替え人形などと言った物だ。

 

 だが、大きいとなるとどうも当てはまらない。 

 

「それで年齢は五十代、白髪と黒毛が入り混じっている髪をしているんですよ〜♪」

 

「え?」

 

 目を見張り、思わず少女を見る。その目にはハイライトが灯っていない。

 

 ただ、怒っている、というさらに先を言った物がなんだか体から出ているようにも思える。

 

 少女はさっきまでそこで楽しく酒を飲んでいて、そして近くでガタガタ震えている元帥の元を振り返り、そして、顔を下に向けた。

 

「そういうことなんですよねぇ〜♪前山元帥〜〜!!」

 

「ひぇ〜〜!!」

 

 急な怒鳴り声を上げる少女。一方、逃げようとする元帥。

 

「ごめんよ、古鷹!」

 

「ゴメンじゃありません!!貴方はいつもいつも酒ばっかり飲んで!!ちょっとはこっちの気持ちも考えてください!!」

 

「もう、もうやめるから、ね!」

 

「『ね!』じゃないです!それ何度目ですか!」

 

「……三回ぐらい」

 

「十何度目ですね!はい」

 

 元帥と少女はお互いに人がいるのも知らずに大声で夫婦喧嘩のような事をしている。

 

 なんだろう、この状況……。

 

「あの、前山元帥」

 

「……なんだ?」

 

 元帥は喧嘩により、出てきた冷や汗が青くなっている顔がびしょびしょになっている。

 

「お二人の関係は……?」

 

「…………上司と部下です」

 

 長い空白の後、元帥はそう言う。

 

 少女はそれに相槌をうつ。

 

「と言う事は、彼女は……」

 

 こくり、と元帥はうなずき、少女に指図を送る。

 

 恐らく『自己紹介しなさい?』という意味のものだろう。

 

「前山元帥秘書艦の古鷹です」

 

 ぴしりと敬礼をする古鷹さん。彼女からは先ほどとは一転、かなり真面目な感じが出ている。やはり元はこういう感じのいい子だったんだな。

 

 しかし、そんな古鷹さんは元帥の方を向くと、途端にさっきまでのオーラが出てくる。

 

 元帥はそれに気づいたのか少し後退りをする。

 

「それはそうと、元帥、いや提督はここで何をしていらっしゃるんですか?今日の分、まだ半分残っているのですが?」

 

「え〜そうだったっけ〜」

 

 元帥の目はかなり泳いでいる。古鷹さんの言っていることは恐らく事実なのだろう。 

 

「提督〜♪」

 

「すみませんでした」

 

 元帥は土下座する。

 

 考えられるだろうか、国の元帥が自分の部下である秘書艦に土下座するなんて……。

 

「じゃあ、儂行くから……あ、今回は奢りだから」

 

「ご馳走様です」

 

 青い顔をしている元帥は古鷹さんに背負わされて、店の外へと出させられる。

 

 前山元帥……

 

「あ、古鷹、下ろして。魚住少将に言いたいことがあるから」

 

 元帥は何か思い出したのか、古鷹さんに言う。彼女はそれを聞いて、『少しだけですよ』と言って、元帥を降ろす。そこは許すんですね。

 

 元帥は降ろしてもらうと、俺の方に向かい、ひそひそ声で話しかけてきた。

 

 しかし、その声には重みがあった。

 

 俺は察した。元帥が何を言いたいのかを。

 

()()()()、分かっているよね」

 

「……もちろんです」

 

「もし、何か無理そうなことがあったら私に相談するが良い。力にはなる」  

 

「分かりました」

 

 元帥は俺の返事を聞き、うんうん、と頷いて、またさっきの感じに戻る。

 

「それじゃあ、また機会があったら飲もうな〜♪」

  

 手を振る元帥。それはまるで小さい子供が友達に別れを告げるような感じであった。まぁ、実際の話、幼稚園児のように古鷹さんに連れていかれていたけれども。

 

「こんなに食えねぇよぉ〜」

 

 ふと後ろでそんな声が聞こえたので振り向く。そこにはカウンター席で幸せそうな顔で眠っている安田がいた。

 




一話目での元帥像は最早微塵もないですね。
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